ハリーポッターと忘却のハルピュイア   作:カネナリ

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あまり変わらないけど *** で視点変更です。
最初は彼女側からです


07

彼女は公園のベンチに一人で座っている

よく知っている公園であった

 

家族の一団が彼女の前を過ぎ去った

母親は父親と手を繋ぎ父親は遊び疲れたのか眠っている少女を抱えている

幸せな家族のお手本のような姿であった

脱げた少女の靴が地面に落ちた

 

場面が切り替わる

太陽が落ちかけている夕暮れ時の公園に子供が独り居た

ブランコに乗っている少女は漕ぎもせずに空を眺めている

その目には何も写っていない

嬉しさも、悲しみも、楽しさも、怒りも、何もなく空虚な瞳で虚空をさ迷わせている

何をすべきか迷っているかのように

 

一瞬の暗転の後に彼女は何処かの家のテーブルに座っていた

向かい側には少女とその両隣に父親と母親が並んでいる

皆もれなく笑みを浮かべていた

少女の前には5本の蝋燭が突き立てられているケーキがあった

少女は5本の蝋燭の火を一息で消し飛ばした

 

暗闇の中に土を蹴る音が聞こえる

雲が流れて月明かりが差し込んだ

街灯の無い山道を独りの少女が走っている

がむしゃらに、何かから逃げるように、何も考えないように

ただただ少女は走り続ける

月が雲に隠れた

 

明かりが灯る

少女は手に燭台を持ち蝋燭の火で暗い廊下を照らしている

少女が立ち止まった

視線の先には誰かが倒れているのが見受けられた

少女はその場から忽然と姿を消した

手離した燭台の火が館に燃え広がっていく

床が崩れ彼女は暗闇に落ちていく

 

薄暗い部屋に閃光が迸る

眩しい光と共にローブを纏った何者かが現れた

何者かはベットにうずくまる少女に手紙を手渡し妙な音と共に姿を消した

少女の空虚な瞳に光が灯った

彼女は瞼を閉じた

 

夢を見ている

そう彼女は認識した

これらは既に過ぎ去った彼女の過去だ

もう戻れないし戻りたくもない

やはりトラウマを見たせいだろう

幸せな夢の中に苦く辛い記憶が紛れている

 

しかし彼女はその光景から目を背けることはしなかった

彼女の中にあった記憶は思い出になった

辛いものも幸せなものも全ての記憶が

 

たった二日間の記憶だ

それらの記憶は今までとは比べ物になら無い程幸せな記憶だ

彼女を蝕んでいた記憶は過去のものとなった

その事実が彼女を喜ばせた

トラウマは克服出来なかったがそれも思い出になるのも時間の問題だろう

彼女の隣には彼が居るのだから

 

 

彼女は夢現の中誰かが手を強く握ったのを感じた

 

 

 

***

 

 

 

ベットに横たわる彼女は穏やかな寝息をたてている

 

彼の手を握って眠った彼女の頬には涙の痕がくっきりとついていた

放っておくと中々落ちないので彼は懐からハンカチを取り出し優しく拭き取った

涙で汚れていた彼女の顔は元の愛くるしい顔に戻った

 

これでよしと彼は満足げに息をこぼした

 

彼は椅子に座って彼女の寝顔を眺めている

無防備な姿を彼に見せている彼女は安心しきった表情をしている

少なくとも心は許してくれているようだ

彼はそのことを嬉しく思う

 

彼女が寝返りをした

彼女の髪が顔にかかった

鬱陶しそうであったので彼は身を乗り出して手で髪を払った

 

彼のすぐ近くに彼女の顔がある

髪を払った手をそのまま彼女の頬に当てた

柔らかい感触がする

親指で彼女の唇をなぞった

彼はここにキスしてみたいという劣情にかられた

だが眠っている相手にするのは流石に駄目だろう

数十分の思考の末彼は踏みとどまった

 

彼は彼女の頬から手を離して乗り出していた体を引っ込め元の姿勢に戻った

今は寝顔だけで我慢しようと彼は思った

 

彼は頬を指でつついたりして感触を楽しんだ

寝顔だけでは満足できない彼は強欲である

 

一時間程たった頃に彼女が目覚めた

 

「んぅ?あれ、ここは?」

 

身を起こして辺りを見渡している

そして彼を見て固まった

彼は彼女におはようと言った

 

「あ、え?おはようございます?」

 

どうやら彼女は寝惚けているらしい

先程のことが無かったかのようにケロッとしている

取り敢えず彼は気分はどうか彼女に尋ねた

 

「は、はい。気分はとてもいいんですけど、何で手を繋いで……あぁ、そっか私、また…」

 

ずっと繋いでいた手を見てなにやら呟いている

どうやら思い出したようだ

彼女は彼の手をにぎにぎして考えにふけっている

こそばゆいと彼は思ったが彼女の好きにさせた

彼女は満足したのかそっと手を離した

 

「もう、大丈夫です。落ち着きました。その、色々とありがとうございます」

 

気にすることはない友達は助けるものだと彼は言った

彼は彼女に対する恋慕の気持ちを自覚しているが彼女には黙っておくことにした

もっと仲良くなるまで

 

ホグワーツに鐘がなる

幾つも重なって聞こえてくるそれは昼を告げる報せだ

彼は腹が空いてきているので昼食を食べに大広間に行くことを彼女に伝えた

 

「もうお昼の時間ですか。私、結構寝ていたんですね」

 

彼女はベットから出て彼の前で身嗜みを整え始めた

目の前に彼が居るのだが気にならないのだろうか

彼には目福だったようだが

 

「それでは、大広間に行きましょうか。その、私まだ道を知らないので、案内してくれると助かります」

 

彼は椅子から立ち上がって彼女の手を取って歩きだした

彼女は嬉しそうにはにかんだがまだ恥ずかしさが強いようで顔を赤らめたさした

段々抵抗が少なくなっていることに彼は嬉しく思った

 

医務室から出るとき少し遠くで仕事をしている女医さんに頭を下げた

女医さんは手を振って返答した

 

彼は彼女と連れだって大広間に向かった

 

大広間に着いた

もう既に大勢の生徒が昼食を摂っている

彼と彼女はレイブンクローの机に着いた

 

お昼の献立は肉料理だ

大皿には様々な種類の料理がある

ローストビーフ、ラムチョップ、ステーキ、チキンナゲット、それらに添えられているサラダ、にんじん、トマトがあった

 

彼ど彼女が食べ進めていると利発そうな少女が彼女に話しかけてきた

ショートカットの赤髪は少女のボーイッシュな出で立ちと相まって少年のような雰囲気を醸し出している

少女と言うより少年の方が合っている

 

「やあ、朝振りだね。レイラちゃんだけっけ、「薬草学」の教科書を預かっていたから返すね」

 

少女は彼女に本を一冊手渡した

そういえば教科書を置き去りにしてしまったことを彼は思い出した

だが残念なことに少女は一冊しか持っていないようだ

彼は後でスプラウト教授に貰いに行くことにした

 

「は、はい。どうも、あ、ありがとうございます」

 

彼女は手渡された本をおずおずと受け取りびくつきながら感謝を伝えた

 

「いいのいいの、同じ寮のよしみだしね。仲良くやろうよ」

 

そう少女は言い彼には目もくれず踵を返し大広間から出ていった

まるで彼が居ないかのような振る舞いは見る人が見れば憤慨してしまうだろう

彼は全く気にしていない、というより気づいていないようだ

彼は彼女に知り合いか尋ねた

 

「はい、知り合です。といっても、寝ている部屋が同じなだけで名前は知りませんけど」

それは良いことだ同じ部屋であれば顔を合わせる機会が増え必然的に話し合う機会も増えるだろう

それに先程少女は「仲良くしよう」と言っていた

少女が彼女と友達になれそうだと彼は思った

 

「でも、私ああいう人が苦手で。これから仲良くできるか不安です」

 

友達になるのは厳しそうだ

彼は寝ている部屋が同じという彼女の発言に疑問を抱いた

彼の寝る部屋は彼以外誰も居ない

時間が合えば監督生の人に聞いてみることにした

 

知らないままにしておくのは後味が悪くなってしまう

ろくな理由は無さそうだが

 

 




今回で視点変更はあまりしないほうが良いと思いました
正直書きにくかった

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