とある飛空士への召喚録+日本国   作:創作家ZERO零

7 / 10
閑話休題〜異文化交流〜

始まりは一枚の絵だった。とあるSNSをやっている名もなき絵師が、一枚の絵をそのSNS上にアップした。

 

 

【神聖レヴァーム皇国 飛空戦艦エル・バステルちゃん】

 

 

そう、紛れもなくそれは日本を訪問したレヴァームの戦艦『エル・バステル』を擬人化したイラストだった。

 

長く伸びた金髪をポニテでまとめ、スカートがついたレヴァーム空軍の制服を着込み、三枚の主翼と三連装砲4基が誇らしく向くメカメカしい機械を後ろに背負っている。

 

この何の変哲もないイラストは、描いた本人もそんなに反応が来るとは思っていなかった。軽い気持ちで描き、投稿したのだった。しかし、その反響は凄まじかった。

 

 

「すごい! 可愛い!!」

「凛々しくてカッコイイ!」

「ア○レンにいそうなくらい完璧」

 

 

などなど、いいね&リツイートは10万にまで上り、その後もこの『エル・バステルちゃん』の様々なイラストが投稿されていった。そして、とある会社の目に留まる。それは、かの有名な『アズールレー○』の日本運営だった。

 

 

「是非ともこの子をウチのゲームで使わせてください!」

 

 

『アズールレー○』は中国産のソーシャルゲームであったが、転移により大陸との通信が途絶えてしまった。そのためこの会社は、日本の独自路線でこのゲームを運営をする事にしたのだ。

 

そこで、目をつけられたのが中央海戦争に活躍した、神聖レヴァーム皇国と帝政天ツ上の艦艇達だった。彼女らを女性として擬人化する事で『アズールレー○』本編に出し、ゲームに実装したのだ。

 

『飛空戦艦エル・バステル』だけでなく、『重巡空艦ボル・デーモン』や『飛騨型飛空戦艦』なども次々と実装され、アズールレー○のレヴァーム天ツ上艦艇は賑わっていった。

 

何気ない一枚の絵が、ここまで反響を呼ぶとは絵師も思っていなかったらしい。

 

その後も『艦○これくしょん』や『ドール○・フロントライン』などの、様々な擬人化ゲームにてレヴァームと天ツ上の兵器が登場し、レヴァームと天ツ上の兵器や歴史が再現された。

 

日本人の性である擬人化には、余熱がないようだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「それではこれより! 各班に分かれて日本に関する用品を集める! 皆準備はいいな!?」

「「「「「応!!」」」」」

 

 

東京のど真ん中の秋葉原、秋葉原駅の前でレヴァームと天ツ上の軍人数十名が軒並み集まって集合していた。その中には、保護されていた立場から解放された狩乃シャルルの姿もあった。

 

 

「いよいよですね、シャルルさん!」

「うん、日本側が書類の購入を許可してくれてありがたいよ」

 

 

かなわらのメリエルがワクワクした表情でシャルルに話しかける。彼らの目的、それは日本に関する情報や、日本の世界での戦史の情報を集める事だった。

 

ここ秋葉原には、日本の電化製品や書店が多く集まっている……らしい。そのため、軍の高官や参謀、技術者、そして直接日本を見た飛空士として狩乃シャルルがこの活動に選ばれたのだ。

 

 

「それでは、それぞれの班に分かれて散策開始! 予算は日本円で一人8万円、集合は一八:○○とする! では解散!」

 

 

そうして、レヴァームと天ツ上による諜報活動が始まった。ある一行は、大規模な書店にまで行き、情報を集める。

 

 

「宝大陸社? 何々……『別冊宝大陸 特集!自衛隊と神聖レヴァーム皇国&帝政天ツ上が戦えばこうなる!?』……?」

 

 

参謀はその雑誌を読み始める。

 

 

「な!? こ……これは……!」

 

 

そこには、日本の自衛隊の兵器の性能とレヴァーム天ツ上の艦艇の性能が比べられていた。お互いの性能や戦い方、そして戦空機の採用予想が張られている。数値は全然違うが、それでも「日本が圧勝する」と記載されていた。

 

 

「こ……これは?『SSM-3』……?」

 

 

次のページには、日本が「開発中」と謳う兵器群が写真付きで紹介されていた。見出しの下には、『超音速艦対艦ミサイル』と言う分類が記載されている。

 

 

「つまりは空雷か!!」

 

 

レヴァームと天ツ上の間でも、誘導する空雷は存在する。しかし、この日本の空雷は重量660キロの爆弾が、時速3600キロ以上で、距離にして400キロ以上を飛翔し、動く敵であっても磁石が吸い付くように着弾すると言う。それが、飛空艦対策として空の目標も追尾できるように改造中だとの事。

 

 

「イージス艦?」

 

 

さらに読み進めると、更なる記載があった。それは演算処理システムにより同時に200以上の目標を追尾し、迎撃できる「最強の盾」と称されている。

 

 

「これはすごいぞ!!」

 

 

レヴァームの参謀は、自国が「負ける」と言われたことよりも、新たなる戦術の開発に勤しむきっかけを作るのであった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

一方のシャルル達は、書店が集まっているという外神田中央通りに出向いていた。目的はもちろん、日本の書店で戦史や技術についての本を集めるのだ。

 

 

「ここは凄いところだね……」

 

 

シャルル達が見上げる先は、一面カラフルな漫画? の登場人物や、その絵画で埋まっていた。中には「パーニラ! パニラ! パーニラ!」と大きな音を上げる宣伝車らしきものも行き交っている。どれもレヴァームと天ツ上では見なかった光景だ。

 

 

「「アニメイク?」」

 

 

そんなシャルル達が着いたのは、青い外壁を纏った一つのビルだった。看板には『アニメイク』と書かれている。

 

 

「どうやらここが日本の書店らしいですね」

 

 

傍のメリエルが語りかける。何かがおかしいと思っていたが、シャルルは数人の参謀を連れてその書店に入る。

 

 

「なんだここは!?」

「すごいです! これ漫画ですか!?」

 

 

中に入って2階に上がると、そこは漫画天国であった。様々な種類の漫画が売られており、そのどれもがレヴァームと天ツ上では見なかった絵柄だった。

 

 

「すごいぞ……設定も何もかもがレヴァームと天ツ上では見たことない……」

「見てくださいシャルルさん! この絵可愛くないですか?」

 

 

シャルルが手に取っているのは『鬼滅の○』、メリエルが見せたのは『ご注文はウ○ギですか?』の表紙だった。試し読みとして配られている中身を見ると、さらにのめり込む。

 

 

「こ……これは!? 鬼退治モノなのか? すごい面白いじゃないか!」

「なんか可愛い……ほのぼのしちゃう……」

 

 

すっかり日本の漫画にのめり込む二人であった。

 

 

「おい! こっちには小説もあるぞ!!」

「本当か!?」

 

 

シャルル、メリエルと参謀達が駆け足でその方向に向かう。

 

 

「おお! こっちも面白そうだぞ!」

「すごい! こんなにたくさん!!」

 

 

彼らはすっかり本来の目的を忘れてのめり込んでいた。まあ、本来の目的である「日本の世界の戦史に関する本」は別の班が入手するのだが。

 

 

「おい、アレ……」

「あれってレヴァームと天ツ上の軍人さんか?」

「ラノベ選んでる……」

 

 

その様子が物珍しいのか、日本人たちはスマホで写真を撮っていた。中には軍人とツーショットを撮っている者もいて、SNS上で話題になった。そして彼らはそれだけでは物足りず、さらに上の階へ歩みを進める。

 

 

「これは……!? 戦車モノじゃないか!」

「こっちは戦空機……おお! 海戦モノもあるぞ!!」

 

 

陸軍の参謀が手に取ったのは『ガール○&パンツァー』、海軍の参謀が手に取ったのは『荒野のコ○ブキ飛行隊』と『ハ○スクール・フリート』であった。彼らが手に取ったのは、どれも円盤。DVDであった。そのため、ある問題に直面する。

 

 

「あの……こちらは専用の再生機器がないと見れないのですが……」

 

 

そう、再生機器の問題である。DVDをなんたるか分かっていなかった彼らにとって、再生機器が必要なのは考え付かなかった。しかし、その問題はすぐに解決する。

 

 

「「「「「なら買います!!!」」」」」

 

 

そうして、彼らが向かったのは……

 

 

「「「「「ドドバシカメラ?」」」」」

 

 

日本の家電量販店、ドドバシカメラであった。彼らは店員に話を聞いて、DVD再生機器を売っている階層にまで辿り着く。

 

 

「これは……『平成30年度観艦式』……日本の自衛隊の映像じゃないか!」

「こっちは……『陸上自衛隊富士総合火力演習』……陸軍か!」

 

 

そこでアニメ以外の自衛隊に関するDVDをさらに集め、せっかくなので何人かの班に分かれてここの家電を買い漁ることにした。

 

 

「ゲームソフト?」

 

 

そんな中、シャルルが目をつけたのはテレビゲームであった。店員から操作方法を聞き、シャルルは生まれて初めてゲームをプレイする。

 

 

「!? これは……人工合成した映像を見せているのか!!」

 

 

シャルルがプレイしているのは、『エー○コンバット7』であった。出てくる戦空機は皆シャルルが見たことないジェット機である。

 

 

「これは日本のジェット機じゃないか!! そうか、これは飛空士が娯楽感覚で訓練するための機械なんだな……!」

 

 

シャルルは少しだけ勘違いをしながら、『エー○コンバット7』をプレイし続ける。僅かな間でシャルルは操作をマスターし、ステルス戦空機『F-22』を巧みに操って敵を撃破していく。

 

 

「こんな凄い機械が……家庭にも普及しているのか!? すごいぞ日本!!」

 

 

シャルルは興奮しっぱなしでゲームをプレイし続けていた。

 

 

「シャルルさん……?」

 

 

それを傍からメリエルが氷点下の目線で見つめている。

 

 

「あ……えっとこれは、その……」

「何遊んでいるんですか、買うもの買いましたか?」

「まだです……」

 

 

と、まくしたて上げられるシャルルであった。

 

 

「? おや〜メリエルだって何か買っているじゃないか?」

 

 

と、シャルルはメリエルの両腕に何かの箱が抱えられているのを見つけた。袋からは、『零式艦上戦闘機52型』と書かれているのが見えた。

 

 

「え!? こ、これは日本の世界の戦空機の模型です! 決して遊び道具じゃ……」

「日本では、それを『プラモデル』って言って娯楽商品扱いなんだよ?」

「うっ……」

 

 

その後、シャルルは『エー○コンバット7』とゲーム機『P○4』を買い占め、その日の諜報活動は終了したのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「なんなんですかこれ……」

 

 

神聖レヴァーム皇国の大使館(旧アメリカ大使館)にて、パーティーに呼ばれた天ツ上の皇族の聖天殿下はそう呆れていた。

 

 

「日本の最新の商品は国外に輸出できないので、大使館でしか出来ないのです……それで、両国の文化交流という名目でパーティーを開催したら……」

「大の軍人が漫画や遊び道具で遊び呆けている訳か……」

 

 

その様子には、外交官の朝田も思わず苦笑いだった。なぜならレヴァームと天ツ上の軍人達が、漫画やアニメ、ゲームにのめり込んでいるのだ。

 

 

「見ろ! 戦車に女子が!!」

「戦車道ですね、この世界では花道茶道に続く嗜みとして親しまれているようです」

「これだけ大きな空母、我が国でも作れないだろうか……」

 

 

『ガール○&パンツァー』にのめり込む陸軍参謀。彼らは戦車道を見て戦術の研究をしている。

 

 

「やったぞ! 大和が出たぞ!!」

「「おお!!」」

「建造280回……消費した資材は幾千万……ようやく我が鎮守府も大和型戦艦を持つことができましたね……グスン」

 

 

そして『艦○コレクション』にハマる海軍参謀たち。『大和』が出るのにかなり苦労を重ねたようだった。

 

 

「何で事だ! 東京が!!」

「何とかできないのか! 早くこいつを止めないと被害が……!」

「これは実写か? 一体どうやって撮影しているんだ……」

 

 

そして、日本の特撮『ゴ○ラ』にハマる軍人達まで。

 

 

「グワァ! またやられた! レールガン強すぎだ!」

「格闘戦の基本はジェット機でも変わらないみたいだね……ほら、また1機撃墜」

「ああ!?」

 

 

レヴァーム随一の秘宝であるシャルルでさえ、『エー○コンバット7』の対戦にのめり込んでいる。

 

 

「これね、日本で70年前に使われていた『零戦』って言う戦空機なの」

「へぇ、日本もプロペラ機があったんだな……」

「それからこの戦艦大和の素晴らしいディテールを!! 主砲も対空砲も動くんですよ!」

「本当だ! 素晴らしい精度だ!」

「こいつ……動くぞ!」

「そしてこれが四式戦闘機『疾風』、最上型重巡洋艦『最上』、宇宙戦艦ヤ○トのドレッドノート級宇宙戦艦、機動戦士ガ○ダムの『ザクⅡ』で、それから……」

「おい……なんか変なの混じってないか?」

「変なのとは何ですか!? 見てくださいこの『ザクⅡ』を……素晴らしいディティールのモノアイに120ミリマシンガン! この素晴らしいフォルム! それから……」

 

 

中にはプラモデルを手に取って色々やっている軍人もいる。と、パーティー会場に聖天の専属執事がいた為、聖天と朝田は声をかけた。

 

 

「おお、これはこれは聖天様……ようこそおいでくださいました」

「爺やまで……何をしているか?」

 

 

爺や呼ばれた執事は、テーブルにパソコンを広げて何かをプレイしていた。

 

 

「これは『月に○り添う乙女の作法』にございます」

「皇族の執事がエロゲって……」

 

 

朝田は少し知っているのか、少し呆れていた。

 

 

「エロゲとは?」

「いわば官能小説にございます。男女が恋愛をする話なのですが、こちらの絵をご覧ください」

 

 

聖天の執事が見せたのは、一枚のCGイラストだった。青い髪をした女の子が、恥ずかしがっている絵が書かれている。

 

 

「この女子、実は女装した男子なのでございます」

「え? そうなのか?」

「そうでございます、日本では『男の娘』と呼ぶ属性なのだとか。中々に良いストーリーでして、満足できました。しかし、主人公の男子が愛らしい見た目をしているのに、挿絵が女子に比べて少なかったのが唯一の不満ですかな……」

「皇族の執事がエロゲレビュー……」

「…………これは爺やの趣味だから」

 

 

その後もペラペラとエロゲの内容をレビューする執事を尻目に、朝田と聖天は日本の製品が置かれている場所にたどり着く。

 

 

「これは?」

「ウェアラブル機器ですね、それを装着すれば動きをコンピュータ上に投影することができるのです」

 

 

聖天の体にその端末をつけて、試しに踊ってみる。

 

 

「おお! これはすごい! 絵の中のおなごが私の動きに合わせて動いているぞ!!」

「ちなみに、これを使った『バーチャルYouTuber』と言われる職種が今日本で流行っておりまして……」

「バーチャル……何と?」

「『バーチャルYouTuber』です、なりたいキャラクターを自分で動かしながら、世の中で配信をすることができるのですよ」

「それは真か!?」

 

 

と、聖天が子供らしい目つきで目を輝かせている。

 

 

「あ、後でブラックボックス化した端末をあげましょうか……?」

「頼む!!」

 

 

その後、聖天は日本政府からバーチャルYouTuberのための機器を譲り受け、身分を偽って配信を開始した。こうして、天ツ上初のバーチャルYouTuber、『聖夜天使』が爆誕したのだった。

 




と、言うわけで今回は異文化交流となりました!
ちなみに、爺やの『月に寄り添う乙女の作法』の感想は私の個人的感想ですw
つり乙の二次創作も書いてみたいですねー

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。