のび太君のSAO生活   作:女騎士

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3話 想いと会議

トールバーナについた僕達は、掲示板に示されていた場所へと向かった。

その場所へ着くと、古代ローマのコロッセオを思わせる様な、所々罅割れや欠損のある石柱に石造りの床、広場を囲む様に造られた階段があった。

まだ、会議が始まるまで時間に余裕があるのかそれとも来るつもりがないのか分からないが少数のプレイヤーが階段の所々に座っていた。

 

「あの辺で良いんじゃないか?」

 

僕達がどこに座ろうか辺りを見回していると、集団の先頭を歩いていたエギルさんが、周りに誰も座っていない場所を指差した。

エギルさんの提案に乗った僕達が各々、腰掛けて談笑していると、鎧を纏った青い長髪の男性プレイヤーが後からやって来て、広場の上に立った。

 

「んん!あー、今日はみんな俺の呼びかけに集まってくれてありがとう。俺はディアベル。気持ち的にナイトやってます!」

 

雑談していたプレイヤー達の意識を、咳払いで自身の方に向けさせたディアベルさんはボケをかました。

すると、ポカンと呆けていた僕達を他所に、彼と一緒に来たプレイヤー達が笑った。

まるで、笑わなければいけない雰囲気を作り出す様なその笑いに若干、嫌気が差した僕が顔を引きつらせると、隣にいたシノンに肩をポンポンと叩かれた。

 

「?」

 

シノンの方に顔を向けると、シノンは苦笑いしながら無言で自分の頬を指さした後、僕の頬を指差した。

彼女の言おうとしてる事が理解できた僕は、慌てて頬に手をやりむにむにと動かした。

 

「大丈夫?」

「ん」

「ありがと」

 

頬を動かし、元あった顔に戻した僕が口パクで「これで大丈夫?」と問うと、シノンはコクリと頷いた為、礼を言った。

すると、何故かシノンにそっぽを向かれてしまった。

・・ん?今、あからさまにシノンに顔背けられちゃったよ、ね...?

・・な、何かしたかな僕?

彼女の仕草に不安を抱いた僕がシノンの方を見ながら理由を考えていると、目元に手をやったシノンに「ごめん、目にゴミが入っただけだから」と謝られた。

何となく、はぐらかされた気もするがシノンがそういうならそうなのだろうと考え、前方に意識を向けたのだった。

 

ー○◇○ー

 

広場に立つディアベルさんのボケを笑う声が聞こえて、「そんなに面白かったかな?」と疑念を持った私がふと、ノビタの方を見ると、ノビタは顔を強張らせていた。まるで、嫌な物でも見たかの様に。

その表情が気になりノビタの視線の先にあるものを見て「確かに、ノビタが苦手な雰囲気だなぁ」と思った私はノビタの肩を軽く叩き、ポーカーフェイスを作る様ジェスチャーした。

すると、私のジェスチャーが伝わったのか、慌てて両手で頬をこねくり回した。

表情をいつもの調子に戻したノビタがちゃんと戻っているか口パクで聞いてきた為、コクリと頷くとノビタは優しい微笑みを浮かべた。

 

「ッ⁉︎」

 

微笑むノビタを見て、何故か顔が熱くなり、動悸が早くなった事を感じた私は、ノビタの顔が見てられなくなり、慌てて顔を背けたのだった。

あ、あれ...?私、何でこんな...。ノビタに顔なんか背けちゃって...一体、どうして...?

ノビタから顔を背けた私が理由を考えていると、ノビタからの視線を感じた。

あ、私のせいでノビタが不安になってる...。

ノビタの事だから概ね、私が顔を背けてしまった理由を考えているのだろうと結論づけた私は、指を目元にやり「ゴミが目に入った」と偽ってその場を凌いだ。

ノビタに嘘をつく事に罪悪感を覚えたが、自分でもよく分からないこの感情に彼を巻き込むわけにはいかないと考え、前方に顔を向けたノビタの横顔をチラッと見た。

すると、再びドクっと心臓が早くなり心拍数が多くなった。

・・も、もしかしたら......いや、違うか。

一瞬、頭の中に浮かんだ「好き」という言葉。しかし、私はすぐにその言葉を否定した。何故なら、ノビタは私のかけがえのない大切な親友の一人だから。それに、仮に私が好きだとしてもノビタは私の事を親友だと思っているだろう。そんな、私から「好き」だと告げられてもノビタは困るだけだろう。そう考えた私は、頭を振り、目の前で進行している会議に意識を集中させるのだった。

 

ー○◇○ー

 

ディアベルさんの進行である程度、会議が進んだ時、突然立ち上がる男性プレイヤーがいた。

 

「ちょぉ、待ってんか!」

 

突然の出来事にその場が静寂に包まれると、ディアベルさんの隣まで歩いた男性プレイヤーは自己紹介を行う。

 

「ワイはキバオウちゅうもんや。宜しゅうな」

 

キバオウという変わった髪型をした男性プレイヤーが自己紹介を行うと面を食らってその場で動けなくなっていたディアベルさんが再び動き出し、何故出てきたか理由を問う。

すると、キバオウさんは僕達、この場に集まっているプレイヤーを見渡して叫んだ。

 

「お前らの中に、詫び入れなあかんもんがおるやろ!出てきて土下座せんかい!」

「・・詫びを入れないといけない者...?」

「決まっとるやろ。あんのクソβテスター共の事や!・・アイツらホンマに...あの初日の始まりの街で皆がどうしようどうしようってなってる間に自分らは次々とモンスターを狩って経験値上げよってからに...!ほんで、ワイがどうしても許せんのが、アイツらβテスターがワイら新参者を見捨てて今でも知らんぷりしてるって事や」

 

ふぅ!ふぅ!と荒い息遣いをしながら叫ぶキバオウさんの話を聞き、僕が自分の事だと焦っていると、僕の一段前に座っていたエギルさんやクラインさん達が立ち上がり、エギルさんはアイテムストレージから一つの本を取り出した。

エギルさん達はそれを片手に、キバオウさんの意見は間違っていると主張し始めた。

・・あのアルゴがガイドブックをねぇ...。

エギルさんが持つ本を見てβテスト時に少し関わりを持った情報屋の事を思い出して、やはり人は見かけによらないなと考えさせられていると、エギルさん達の主張が効いたのかキバオウさんは「きょ、今日はここまでにしといたる!」と捨て台詞を吐いて自身が元いた場所へと戻って行った。

 

「ありがとうございます」

 

戻ってきたエギルさん達に礼を述べると、直接ではないが間接的にノビタの事をバカにされたから頭にきた。とキバオウさんの方を睨みながら返された。

エギルさん達の言葉に涙が出そうになった僕は必死に堪えた。

その後もディアベルさんの進行で会議は進み、複数のレイドを組むこととなった。

取り敢えず、クラインさん達のグループと僕、シノン、エギルさんの2チームを作ってみた。

しかし、周りを見渡すと、五、六人が一つのチームとして纏まっていた為、クラインさん達のチームから一人僕達のチームに入るよう提案しようとしたその時、視界の端に、僕と同じ歳くらいの男性プレイヤーとフードを被ったプレイヤーを見つけた。

次々と周りの人達がチームを組んでいく中、取り残される二人。

僕は、見ていられなくなりその場を離れた。

 

「あの...」

「?」

「良かったら、僕達のチームに入って貰えませんか?僕のチーム三人しかいなくて」

「! お、俺たちで良いのか?」

 

目の前にいる彼の視線がクラインさん達にいってる事から、僕らをずっと見ていたと分かる。

 

「はい、あなた方に入って頂ければ自分達のチームも、ディアベルさんが出したルールをクリア出来ますので...」

「ノビタ、どうしたの?」

 

彼に何故、誘ったのか説明していると背後から声を掛けられた。

 

「シノン。あ、断りもなく離れてごめん」

「ううん、大丈夫。・・で、その人達は?」

 

僕を挟んで向かい側にいる二人組のプレイヤーを見ながら僕に尋ねたシノンへ、人数が足りない自分たちのチームに入って貰えないか交渉していたと説明すると、「成る程」と呟き、元いた場所へと戻って行った。

どうやら彼女はエギルさん達に僕がその場を離れた理由を説明してくれるらしい。その後、二人組の方に顔を向けた僕は……

 

「入って頂けますか?」

「分かった。オレ達もチームに入れてもらうよ」

 

僕の問いに答えた彼は、隣にいるプレイヤーを連れて、僕と共にエギルさん達のもとにやってきた。

エギルさん達の元へ彼等を連れてきた後、自己紹介をしてない事を思い出した。

 

「あ、すみません。まだ、自己紹介をしていませんでしたね。僕は、ノビタという者です」

「俺はキリトだ」

「・・アスナ」

「キリトさんにアスナさんですね、分かりました」

 

僕と彼等の自己紹介を聞いていたのか、シノンとエギルさん、クラインさん達がそれぞれ自己紹介をし、二チームに分かれた。

周りを見渡して、この場所にいる全員がチームに分かれた事を確認したディアベルさんは再び、攻略についての会議を進め、三十分程経った頃に終了した。

会議が終わりプレイヤー各々、帰路につく中、僕は立ち上がろうとしていたシノン、アスナさん、既に立ち上がっていたエギルさん、キリトさんを呼び止め、「戦闘時にどの様に行動するか計画を立てておいた方が良いのではないか?」と提案した。

エギルさんとキリトさんは、ディアベルさんが話していたボス攻略前に何度か行われる予定の合同演習の時でいいのではないかと考えていたようだ。しかし、何か嫌な予感がした僕は二人に納得してもらえる様に話をして、モンスターが出てくる場所へと向かった。

すると、僕の嫌な予感は当たった。

アスナさんにSAOの知識が全くと言っていいほど無かったのだ。

僕とシノンは、一応βテスターであることを伏せた上で、必要不可欠な情報や技術、そして知っておいて損はない豆知識を教えた。

あ、危なかった。あの場で別れて帰ってたら合同演習の時、大変な事になってた...。

自分の予感が当たってしまった事に冷や汗をかいていると、いつの間に上手く連携が取れる様になったのか、キリトさんとエギルさんがポップしてくるモンスターを狩りまくっていた。

一先ず休憩するのか、得物をアイテムストレージに仕舞った二人は連携の密度をさらに高めるために戦闘時において自身はどの様な立ち回りをするか途中で雑談を挟みながら話し合っていた。

 

「よし、アスナさん。僕達ももう一回連携してモンスターを狩ってみましょう。・・あ、それと、動きにくくないですか、その外套?」

「え?」

「あ、すみません。出過ぎた事を言ってしまいました」

「あ、いえ。すみません、ノビタさんとシノンさんが教えてくれるSAOの知識が為になるものばかりで思わず聞き入ってしまいました。これ脱ぎますね」

 

アイテムストレージを操作して、外套を仕舞ったアスナさん。

すると、アスナさんの姿や容姿が露わになって...え⁉︎

栗色の長い髪に可愛いというより綺麗な容姿をしたアスナさんに驚いた僕は思わず訊ねた。

 

「ア、アスナさん、女性の方だったんですね」

「はい。あ、隠すつもりなんて全然、無かったんですけど...何だかすみません」

「いやいやいや!とんでもない!じょ、女性の方だったらシ、シノン!一緒にいてあげて」

「・・何か、アスナさんが女の子って分かったら慌ててない?ノビタ」

「へ⁉︎い、いやぁ、何の事か全然!ぼ、僕には分からないなぁ」

「・・・」

「すみません、嘘です...」

 

シノンの眼光に屈してすぐ謝る僕。

すると、その光景が面白かったのかアスナさん、エギルさん、キリトさん、他にも、近くで僕達と同じようにチームの連携の密度を高めていたクラインさん達に笑われてしまった。

ひと騒動あったその後もチームの連携の密度を高めた僕達はキリトさんとアスナさんの二人とフレンドになり解散した。

その後、何度か今日と同じようにチーム独自に練習を行なったり、あの会議に出ていた人達との合同演習を行なったり、再び会議をしたりしてボス攻略当日の朝を迎えた。




キバオウやらかしたので次の話は一階層ボスの討伐の話ができると思います。

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