FGORTA逸般人ルート   作:レベルを上げて物理で殴る(強制)

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RTAパートが無いので初投稿です。


狂戦士

 薄暗い森の中、泥に犯された漆黒の巨躯がカルデアの一行に影を落とす。

 その身体はただそこにあるだけで月を隠し、その吐息一つ一つが死の予兆を彼らに与え続ける。

 

「な、によ、このサーヴァント……!?」

 

 詰まる呼吸を無理矢理押し出して、オルガマリーは自身に理解させるように零す。

 確かにその身は呪いに晒され、理性すらも溶かし尽くして消滅への道を進んでいる。……だが、それを認める事すら出来ないほどにその身に宿した霊基は強大すぎた。

 

「久しいなバーサーカー、いや――ヘラクレスッ!!」

 

 英雄の代名詞、十二の試練を踏破せし者、ギガントマキアを終わらせし半人――万夫不当の体現者が今、顕現した。

 

「■■■■■ーー!」

 

 咆哮をあげ、風を切り、唸りを上げてヘラクレスはその手の斧剣を振り上げる。その巨躯から繰り出される一撃は、容易く目の前の命を刈り取る事を確信させた。

 だが、その一撃を易々と通すのならばこの男はここには居ない。

 

「ハガル!」

 

 腕を振るい、宙に一つの文字が浮かぶ。それは瞬く間に一つの氷塊となって振り上げた腕に直撃し、砕け散る。

 たかが魔術一つ、かの大英雄の肉体に傷をつけることは無い。しかし、僅かとはいえ振り上げていた腕はまるで空間ごと凍った様に動きを止める。

 

 ヘゲル、ハガラズ、ハガル。そう呼ばれるルーンが宿す意味は雹。転じて発祥の地であるヨーロッパの災害の意味を持ち、自然の力や計画の失敗などの意味も持ち合わせている。故にこそ、シャドウバーサーカーの一撃は失敗の因果を付与され、僅かな時間とはいえ停止という行為を強制される。

 

「長くは持たねぇ、離れろ!」

 

「は、はい!」

 

 すぐさま全員がその場から離れる。その数瞬後、解かれた腕が叩きつけられて爆音と共に大地が飛散し、その姿を隠すほどの土煙が上がる。

 もしクーフーリンが反応できていなかったら、それを想像するのは容易い事だった。

 

「な、なんて威力……」

 

「呆けてんじゃねえ、テメエらはさっさと城へ向かって走れ! 今のオレじゃこいつを倒すには火力が足り――っらぁ!」

 

「ヒィ!?」

 

 クーフーリンのすぐ後方、粉煙の内より硬直しているオルガマリー目掛けて放たれた巨岩を本人が認識するよりも早く杖で打ち砕く。そしてそのままクーフーリンは腰を落とし、槍のように杖を構えた。

 

(クソッ、ランサークラスで現界できてりゃこの状態のバーサーカーの奴は何とかなるんだが……)

 

 キャスタークラスで現界した彼はケルトの魔術師(ドルイド)としての側面が強く出ている。故に代名詞とも言える呪いの朱槍は失われ、また要とも言える宝具も一つは諸事情によって使用出来なくなっている。

 もう一つの方の宝具を完全に発動さえすれば撃破の可能性はあるが、発動までに若干の時間が必要であり、尚且つ一般人の出の仮マスターである藤丸立花への負担が窺い知れない。

 

 このままでは全力を出しても時間稼ぎが精一杯、最悪では消滅する。それが彼の下した結論だった

 

「■■■■■■■ーー!」

 

「させるかよ!」

 

 爆発したような音と共に飛び出したシャドウバーサーカーがその勢いを乗せた横に構えた斧剣で薙ぎ払おうとするが、それを同じく庇うように前に出たクーフーリンが杖を用いて上空へと軌道をずらす。筋力Eの非力なキャスター、だがルーンで強化されたその肉体は確かにその一撃を彼方へと動かした。

 しかし、かの大英雄の攻撃が一撃で終わるはずが無い。

 

 外された勢いを殺さず放たれる振り下ろし。

 地面を削り取るほど深い斬り上げ。

 大地を砕く程の踏み込みによる高速の突き。

 

 挙げればキリが無いほどに、その巨躯を十全に使用された嵐の如き高速の猛攻が繰り出される。劣化しているというのに一撃一撃が周囲の樹木を切り倒し、大地を抉り取っていく。

 

「音速じゃねえだけマシだが……それでもキツイぜこりゃ……!」

 

 途切れる事のない攻撃を捌き続けながら、クーフーリンは打開できない現状を吐き捨てる。

 否、状況の打開だけを言うなら彼は今すぐにでも行う事ができるだろう。それが出来なければ英霊として今この場には立っていない。

 

 それを行う事が出来ないのは偏に攻撃を完全に防ぐ事に重きを置いているからである。

 

「いやあああああああ! 死ぬ死ぬ、死んじゃううううううう!!」

 

「所長、うるさいのでちょっと黙って下さい!」

 

 目の前に居る英霊は正真正銘の大英雄、それは劣化していても変わらない。そして、そんな相手の攻撃を生半可に防いだとしたら自分の後ろにいる者達はどうなるか、考えなくても理解できた。

 

 故に杖が軋み、身体が傷つき悲鳴を上げようとクーフーリンはただひたすらに攻撃を往なし続ける。

 

「っ、クーフーリンさん、わたしも……!」

 

 初撃の視認と同時に盾を構え、荒れ狂う剣圧から皆を守っていたマシュも手助けしようと勇気を持って一歩を踏み出す。

 

 戦闘経験が乏しいとはいえ彼女はデミサーヴァント。今の状況なら守りに長けた彼女は確実に戦闘に貢献できるだろう。

 

「邪魔だ引っ込んでろ!!」

 

 だがそれは他でもないクーフーリン本人によって拒絶される。

 

「嬢ちゃんは剣じゃなくて盾だろうが! 盾が守るべきもんを間違えてんじゃねえ!!」

 

 彼女は戦う者ではなく守る者。恐れを隠す事無く身を晒す優しき盾。出会って僅かではありながら彼はその本質を見抜いていた。

 

 一歩。力強く、クーフーリンは踏み出す。

 

「それにな……」

 

 シャドウバーサーカーが攻撃を終えて次の一撃に移ろうとした瞬間、ボロボロになった杖が斧剣の持ち手に差し込まれる。高速の動きを停止させた事で嫌な音が響くがそれでも杖は折れる事は無い。

 本来の彼であれば生まれるべくも無い僅かな隙、しかしそれを見逃す事無く即座に対応したのだ。

 

「シャドウサーヴァント相手に遅れを取るようじゃクーフーリン(クランの猛犬)の名が廃るってなぁっ!!」

 

 シャドウバーサーカーにも劣らぬ熱を持った咆哮が木霊する。

 悲鳴を上げる杖を巧みに操る事で斧剣の手元で絡めとり、そして――

 

「等価交換だオラァ!」

 

 ――杖と引き換えに、高く上空へと弾き飛ばす。

 

 その瞬間、シャドウバーサーカーが僅かだが斧剣へと視線を移す。跳躍し手にするか、それともその身体で押しつぶすか。

 結論から言えば選び取ったのは後者の方であり、それを実行するために視線を元に戻して。

 

「イェーラ!」

 

「■■■!?」

 

 ルーンを乗せた拳によって、その巨躯を吹き飛ばされた。

 

 ゲル、イェーラ。そのルーンは大地を意味し、豊作の祈りを籠めて農耕などでも使用されていたと言われる。厳しい自然を乗り越えて苦労を実りに変えるこのルーンは有利な結果を呼び込む力も持っており、だからこそクーフーリンは力や突破の意味を持つウルズやダガズなどではなく、結果を呼び込むイェーラを選択した。

 

「今だ、令呪を切れマスター!」

 

 全てはこの瞬間の為。

 莫大な魔力リソースである令呪を使用して即座に自身の宝具である『灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』を発動し、倒せなくとも確実にシャドウバーサーカーの脅威から彼らを逃す。

 

 シャドウバーサーカーは宙を舞い、此方を狙う脅威は無し。想定できる中でも最善に近い状況。

 

「や、ぁ……ぁっ……」

 

 だが、そこまでだった。

 

「っ、姉さん!?」

 

 驚愕と心配、その感情が入り混じった声が響く。

 

 胸を押さえ、激しい呼吸は止まらない。涙を流すその瞳は見開かれ、焦点定まらないまま目の前の光景を写し続ける。その口は声にならない音を発し、蹲ってただ只管に身体を震わせるその姿は彼女が異常をきたしている事は明白だった。

 

 クーフーリンは視線を後方に移し、その姿を見て顔を歪める。頭の片隅に存在していた憂慮が現実になっていた。

 

「クソッ! 少しは呑まれる可能性は考えてたが本当に――」

 

「クーフーリンさん!」

 

 一瞬、ほんの確認した一瞬の内にマシュが叫ぶ。そして、その意味を分からない者はここにはいない。

 

「■■■■■■■ーー!」

 

 月光を遮る地表の影。顔を上げればその手に斧剣を持ち直し、振りかざしたシャドウバーサーカーの姿。

 

 防御――いかにマシュの盾が堅牢だとしてもあの一撃を受け止める事などできない。

 逃走――立花は動けず、仮に動けたとしても回避が間に合わない事は明白だ。

 迎撃――既に杖は無く、ルーン魔術による迎撃も二度目という事もあり意味を成さないだろう。

 

「――キャスターッ!」

 

 故に、その行動を彼が取ったのは必然だった。

 

 まるで予期していた様に、知っていたかの様に誰より早く動き出す。収まっていた鞘から解き放たれたその剣身が、白銀とも言える焔を放つ。

 

「っ、任せたぞ坊主! 所長さんを持て嬢ちゃん!」

 

「えっ、でも……」

 

「早くしろ!!」

 

 前に出たその背中を力強く叩き、クーフーリンは二人のマスターを抱えてマシュと共に離脱を開始する。

 

 そこで、ついに彼らへシャドウバーサーカーの一撃が到達する。

 

「■■■■■ーー!」

 

 圧倒的な質量と加速によって振り下ろされる一撃。それを迎え撃つは伝説に謳われた、しかしながらたったの一本の輝剣。

 

 刃が交わい、瞬間的に発生した閃光と破壊音が周囲を満たす。

 

「がっ……ぁ……!?」

 

 苦悶の声も上げる事もできない衝撃、それが勇の身体を通して大地を捲れ上がるほど破壊する。しかし、その肉体は今だ四散する事無く姿を保たれていた。

 

 肉が裂け、骨が砕け続けるのを勇は身体に満ち足りた気で治し続ける。押し負けると感じて咄嗟に片刃に添えた左腕は既に刃が骨にまで達し、今も尚のしかかる圧力で傷口を深め焼き続けている。

 その余りの一撃に耐え切れず膝を突き、その頭を垂れた様に俯けた。

 

 だが、それでも彼はその一撃を受け止めた。今もその力で押しつぶされようとしていても、何もかもを粉砕する鉄槌を止めたのだ。

 

「我往く道は外れ道、獣は人道歩むに叶わず……」

 

 終わらぬ苦痛の中、零した言葉は祖父より賜った言葉。己が身体に刻んだ技を縛る戒めの言伝。

 

 勇の身体を両断せんとする剣斧の先端が上がる――否、上げさせられる。

 力が失われていくはずだった肉体に力が満ちる、全身の傷が先程よりも素早く癒えていく。まるで()()()()()へ戻ろうとするように。

 同時。その背、クーフーリンが叩いた場所に一つの、傘のような上を向く矢印のような光る印が現れる。

 

 そのルーンの名はトゥール。戦いの神であり、勇気の神を称える勝利のルーン。渾身の魔力によって打ち付けられたそれが、祝福するように煌々と輝いていた。

 

「飢狼っ、辿るは武の極地……!」

 

 地表に触れた膝が上がる。食い込む刃が肉を焼き焦がし続けようと、口から湯水の如く血が溢れようと苦悶の声一つ出さずその身体は動きはじめる。

 

 偶然、頭が上がり始めた勇とシャドウバーサーカーの視線が宙でぶつかる。

 

「全てを喰らいて糧と成せっ……!!」

 

 ――髪の下より覗く獣は、目の前の怪物すら喰らおうとしていた。

 

「■■■■■■■ーー!!!」

 

 瞬間的に、失われた理性の残滓とも呼べる部分がシャドウバーサーカーを動かした。目の前の危険分子、その排除のために全ての力を剣に注ぎ込む。

 

 そう、残滓だけで下した判断。それが大きな仇となった。

 

「誤ったか、大英雄」

 

 彼が祖父より受け継いだ技は本元流合戦()()。自らの力を与える剛ではなく相手の力を自らの技に変える柔の術。

 

 シャドウバーサーカーが力を籠めると同時、身体と剣を合わせる様に動かす事でその一撃を強力にさせ、滑稽に見えるほどの隙へとその体制を変化させる。

 そのまま、身体の右へ剣斧を流して生まれた加速を殺す事無く身体を回して……。

 

「漸く、一太刀」

 

 その全てを持って、白炎の魔剣を首筋へと叩き込んだ。

 

「■■■■■■--!?」

 

 幸か不幸か、その一閃がシャドウバーサーカーの首を両断する事はなかった。

 

 クラウソラスはその手から抜け落ち、シャドウバーサーカーの喉元で留まった。それが理由か、シャドウバーサーカーは空を仰ぎ、天を衝くほどの咆哮を上げる。

 そしてそんな隙を逃すほど甘い者はこの場には居ない。

 

 シャドウバーサーカーの脇腹に気を纏った拳が叩き込まれる。

 その一撃は内部からの破壊ではなく外部からの破壊、物理的な破壊を目的とした一撃。だがそれでも内部には自身の気が、魔力が送り込まれシャドウバーサーカーの動きを妨害する。

 そうなれば、完全に倒すための最後の一押しは容易い。

 

「頼んだぞ、キャスター!」

 

「ハッ、ここまでお膳立てされたら誰だって出来らぁ!!」

 

 勇が後方に大きく跳躍、同時にシャドウバーサーカーに影が落ちる。

 その構図は奇しくも勇が剣を手に取った時の立場を反転させたかのようだった。

 

「■■■■■■■ーー!!」

 

 クーフーリンの手がクラウソラスを掴む。その炎刃は伝わる力に逆らう事無く滑り――

 

「――終いだ、ヘラクレス」

 

 静かに、その残滓を焼き尽くした。




相変わらず戦闘描写が難しいので失踪します。

これからの小説パートとRTAパートの割合について

  • ああ~(今の割合が丁度)いいっすね~
  • 小説パート増やして、ホラホラホラホラ
  • RTAパート増やすんだよ、あくしろよ
  • 更新までまーだ時間掛かりそうですかね~?

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