FGORTA逸般人ルート   作:レベルを上げて物理で殴る(強制)

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戦闘シーンで非戦闘員の存在感が薄くなるので初投稿です。

※タグを追加しました。


戦闘

「ランサーッ!!」

 

 僅かな逡巡も挟まず、クラウソラスを抜き放ち勇はアキレウスの下へ駆け出す。

 

「戦闘補助、支援型ルーンを起動!」

 

 追従するオルトリンデの周囲に複数のルーンが具現化する。次の瞬間には光の粒の様になって勇の身体に吸い込まれ、その身に力と神秘を滾らせた。

 

「退け、ライダー!!」

 

「はぁっ、アンタマスターだろうが!?」

 

 クラウソラスの剣先が地面を削りながら振り上げられる。剣身に宿った白銀の炎は圧縮され、その切っ先から空を焼く斬撃となって地面を抉りながら突き進む。

 

 驚きつつも逆らう事無くすぐさまアキレウスは回避の行動に移る。行っていた打ち合いで力を抜くことで不意を突き、アルトリアオルタの体幹を僅かであるが一瞬崩す。その隙を逃がさず、その手に握る宝具の槍、宙駆ける星の穂先(ディアトレコーン・アステール・ロンケーイ)を股下の地面に突き立て地面を砕く事によって彼女達の足場を完全に破壊し、跳躍する事でアキレウスは炎の斬撃の線上から逃れる。

 

「小癪な……!」

 

 地上で戦う者にとって足場の良し悪しは勝敗に直結する。そういう意味で言うならば、完全に崩れ去った地面の上に居る彼女達は敗北の道へと足を進めているだろう。

 

 踏ん張る事もままならない悲惨な状態、その中でアルトリアオルタは強引に身体を捻り、黒き聖剣から斬撃を撃ち放つ。

 

 黒の斬撃は加速し、炎の斬撃と激突する。その威力は全く互角であり、爆発と閃光を伴って両者は掻き消える。

 

「――――I am the bone of my sword.(我が骨子は捻れ狂う)

 

 余波によって生まれた粉煙、その中でシャドウアーチャーは弓を引く。

 

 番える矢はアルスターの名剣、今まさに敵対しているキャスターの叔父が振るいし虹霓の剣。

 

「偽・螺――」

 

「下がれ、アーチャー!」

 

 しかし、その矢は撃ちだされる直前に前へ出てきたアルトリアオルタによって遮られる。

 

 その数瞬後、煙を切り裂き先程までアーチャーが居た所に槍が飛来する。それをアルトリアオルタは天高く弾き飛ばした。だが――

 

「オオオオオオォォォォ!!!」

 

「っ、聖杯を持つ私を上回る暴れっぷりとは一周回って笑えてくるなっ!!」

 

 空中で槍を掴み取り、そのまま上空より強襲したアキレウスによってアルトリアは否応無しにその場へと縫い付けられる。

 

 聖杯を持った彼女は確かに強大だ。聖杯を有した事で得た無尽蔵ともいえる魔力に呆れるほどに優秀なステータス、一部の化物を除き真正面から打ち合う事は叶わないだろう。

 

 だが目の前の男は、アキレウスという英雄は、それを可能にする化物だ。魔力も、ステータスも、現時点ではどちらも彼女に劣っている。自慢の不死の肉体(アンドレアス・アマラントス)も神造兵装であるエクスカリバーによって意味を成さない。

 

 しかし、速度というその一点。唯一勝るそれだけで彼はその差を覆す。

 

 強化された彼女の反応速度ですら追いつかない神速の連撃、一撃一撃が致命傷になりえるそれを彼女が往なし続けられているのは培われた戦いの経験と直感、聖杯を使用した強力な持続再生があったからだった。

 

「セイバー!」

 

 距離を離したアーチャーがすぐさま矢を番える。

 

 神性を持たず、神造兵装でもない自身の矢がアキレウスにダメージを与えない事は先程までの戦闘で理解していた。だが、そうだとしても当たれば衝撃が生まれ、衝撃が生まれれば僅かでも身体のバランスは崩れる。それを理解していないほど戦い慣れていない訳ではなかった。

 

「攻撃型ルーン、行きます!」

 

 だが、その思惑は宙を奔った稲妻によって再び中断させられる。

 

「くっ、ランサーのサーヴァントか! 魔術も併用するとは厄介、っ!?」

 

「これを防がれるか……!」

 

 咄嗟に投影し、背後に回した干将と莫耶が多少押し込まれたもののクラウソラスの一撃をアーチャーは防ぎきる。 背後を取られた事実に驚愕しながらもすぐに瞬間的に力を入れクラウソラスを浮かし、振り向きながら両手の剣で切り裂くがそれは後ろに飛んでいた勇の身体を捕らえる事はなかった。

 

 オルトリンデも飛行を止め、距離を取った勇の横に立って構えた事で両者が睨み合う形となる。

 

「よく聞け本元の坊主!」

 

 そんな時、勇目掛けてクーフーリンの大声が響く。

 

「藤丸の坊主が不治の傷を負いやがった! その野郎を速い所ぶっ倒さねえと失血死するぞ!」

 

「そこの三流キャスターの言う通りだ、本命はもう一人の方だったのだがね……。フッ、全く私も運の無い、キャスターの事を笑えんな」

 

 肩を竦め、戯けた様にアーチャーはそう言い放つ。言外に立香の事などどうでもいいと。

 

「…………」

 

 その一言に勇は何も答えない。ただ、無言で構えたクラウソラスから立ち昇る炎が一回り強くなる。

 

「……ライダー!!」

 

「なんだ、ランサーのマスター!」

 

 激しい打ち合いの内から怒声にも近いアキレウスの声が響く。

 

「早々に片を付けろ。でなくば、主の仇討ちには間に合わないと思え」

 

「――ハハッ、まさかこの俺に間に合わないと言う奴が居るとはな。面白い、ならばどちらが先に敵を討ち果たすか勝負といこうじゃねえか!!」

 

「フンッ、そう簡単に私を討ち果たせると思うな!!」

 

 空間に響く剣戟の音が大きくなる。先程までが暴風の様だとするなら、嵐と言うのが相応しいほどに彼らの戦いは苛烈さを増していく。

 

「友人の命が掛かってるのに勝負とは……君も中な、っ!?」

 

 先程と同じように挑発を行うアーチャー、しかしその言葉は炸裂音と共に振り下ろされたクラウソラスによって中断させられる。劣化してもサーヴァント、その一撃は両の手に持つ愛用の短剣で防いだ。だが……

 

(馬鹿なっ……! 挑発目的で私は目を一瞬、確かに離した。だが、だとしてもその一瞬で現代を生きる人間があの距離を一息に詰められ、これほどの力で剣を振り下ろせるというのか!?)

 

 その内心は驚愕と動揺に満ち溢れていた。

 

 彼の過去にはそれを行える人間が居なかったわけではない。だが、その誰もが後ろ暗い道を歩んでおり、目の前に存在する青年の様に真っ当に生きていた人間では無かった。その事実がアーチャーの精神を揺さぶっていた。

 

「口数が多いぞ、アーチャー」

 

 上段からの一撃を両手の干将と莫耶で防いだとなれば必然的にその力は反発するために腕へ、負荷は全て足へと向かう。

 

 前触れ無くクラウソラスが勇の手を離れ空へと打ちあがる。アーチャーが弾いた? 否、()()()()()のだ。

 

 予期せぬタイミングで勇の手の力が抜かれた事でアーチャーの両腕はクラウソラスを宙へと弾き、大きく広げられる。そのせいでアーチャーの身体に掛かっていた力も負荷も解放され、力が入らぬ無防備なゼロの状態へと身体は戻る。

 

「なっ――がっ……!?」

 

 地面を撫でる様な足払いを受け、アーチャーの身体が空中で横になる。そして、それを認識する前に気を籠められた勇の拳がアーチャーの腹へと大きくめり込み、そのまま吹き飛ばした。

 

 拳の一撃と共に気を乱され、身体を硬直させたアーチャーは大地を二度ほど跳ねた所で状態を自身の理解する。故に、すぐさま手放してしまった干将莫耶を投影しようと顔を上げ……

 

「真名開放――」

 

「――投影(トレース)開始(オン)っ!」

 

 白衣のランサーに振り上げられた光槍を確認し、盾を投影する事を即座に判断した。

 

偽・大神宣言(グングニル)!!」

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」

 

 オルトリンデの右手から眩い輝きを放つ光槍が必中の運命を伴って放たれる。それに対するように大地を叩き、勢いを殺さず立ち上がったアーチャーの右手から光で出来た()()の花弁を模した盾が出現する。

 

 二つの宝具が激しい音と衝撃を発生させ衝突する。

 

 英霊の切り札である宝具。それに籠められた神秘と魔力は並大抵の物ではなく、激突によって発生した余波がこの薄暗い大空洞を照らし出す。

 

「……やはり、貫く事はできませんか」

 

 両者の宝具の決着は早くも見えていた。

 

 オルトリンデ――ワルキューレの使用した偽・大神宣言は真名開放した事によって威力も増し、投擲すればその名に恥じぬ必中の因果も伴うようになった。だが、それだけである。対してアーチャーが使用した宝具は熾天覆う七つの円環。アキレウスと同じトロイア戦争に登場する英雄アイアスの盾であり、その逸話から使()()()()()()()()()()()()()()()()という概念を持っている。

 

 以上の特性を考えれば自ずと勝敗は確定される。マスターを持つ万全のサーヴァントと劣化したシャドウサーヴァントとの戦いであってもだ。

 

「残念だったなランサー……いや、ワルキューレよ。この勝負は私の勝ちだ」

 

 揺らがぬ三枚の花弁に対して輝きを失いつつある光槍、それを見たアーチャーは不敵な笑みを浮かべる。

 

「はい……この勝負()貴方の勝ちです」

 

 同時に、オルトリンデも合わせ鏡の様に笑みを浮かべた。

 

「ですが、この戦いは私たちの勝利です。アーチャー」

 

 その瞳に、弓兵の背後に輝く焔を写して。

 

「っ、しま――」

 

「どうやら汚染というものは想像以上に英霊の能力を落とすらしいな、アーチャーよ」

 

 失策に気づいた言葉すら言い終える前に、アーチャーの胸元から燃え盛る剣身が生える。その一撃は確実に、彼の霊核を貫いていた。

 

「っ、あぁ……本当にっ、厄介だな、これは……。基本的……な、判断でさえ出来ないとは……」

 

 その言葉と共に三枚の花弁を持つ盾が霞の如く消失する。偶然にも、投槍を防ぐという役目は完遂されていた。

 

「……令呪を持って命ずる、アーチャーを解放せよランサー」

 

 勇の右手から一画の令呪が輝きと共に消失する。

 

 クラウソラスの柄頭を蹴り飛ばし、確実に霊核を破壊しながら勇は後方へ跳躍する。既に力を失いつつあるアーチャーの身体は揺らぎ、そのまま前へと倒れこんだ。

 

「わかりました、マスター。……同位体、顕現開始します」

 

 令呪によるブーストを受けたオルトリンデが紫の輝きを残して高く飛び上がる。高度が上昇するに連れて彼女の周囲に一人、また一人とかつての彼女と同じワルキューレが具現していく。そして高度が頂点に達する頃には彼女を含む七騎のワルキューレが空から地上を見下ろしていた。

 

「同期開始……照準完了」

 

 七騎が同時に偽・大神宣言を振りかぶる。真名開放と同じ様に槍は光を増すが、籠められているのは必中の加護では無い。

 

「――終末幻想・少女降臨(ラグナロク・リーヴスラシル)

 

 慈しむような声と共に、囲う様に狙って投げられた七本の光槍が地面に突き刺さる。

 

 この宝具で投げる槍がダメージを与えられないという訳ではない。ただ、今回この宝具を使用したのは結界の効果を求めたと、そう判断したオルトリンデが槍を外しただけだった。

 

「ああ、これは……」

 

 七本の光槍の輝きが解き放たれ、ワルキューレの権能を集めた結界が起動する。

 あらゆる清浄な魂を慈しみ、同時に正しき生命ならざる存在を否定するこの宝具はアーチャーの身を犯す呪いを浄化し、そしてサーヴァントである彼自身も退散させていく。

 

「宝具終了です、マスター」

 

 輝きが収まり、六騎のワルキューレが消えた後には地面に突きたてられたクラウソラスが残っているだけだった。

 

「だが、まだ戦闘は終わってない」

 

 勝利の余韻に浸る事も無く、クラウソラスを引き抜いた勇は身体を反転させる。その視線の先には止む事のない破砕音の発生源。

 

「……アーチャーはやられたか」

 

「クソッ、間に合わなかったかっ!!」

 

 理由は違えど、身体を止める事無く二騎のサーヴァントが悔やむ言葉を零す。

 

 トップサーヴァントである彼らの戦闘、その余波は凄まじいの一言に尽きた。

 周囲にはその身に宿る力を証明する様に直線に地面を抉った跡が何本も存在し、現在戦闘を行っている終着地点となったその場所は瞬く間に土塊を上へ飛ばしながら擂鉢状に大地を変化させていく。

 

「……ランサー、立香の元へ行くぞ。君とキャスターの魔術があれば傷もすぐに治るだろう」

 

 現状勇にとって最優先されるのは幼馴染である立香の生存その一点であり、聖杯を守るセイバーを倒したとしても彼が死ねば意味が無い。

 

「それに、アレに割り込むのは無謀がすぎる」

 

 だからこそ、オルトリンデにその目的と力量を省みた愕然たる事実を言って後退を始めた。

 

「さぁ、どうするよ騎士王様。従順な騎士様はやられちまったぜ」

 

 クラスはアーチャーだけどな、と言葉を続けてアキレウスは槍を叩きつける様に振り下ろす。振り下ろす際、踏み込んだ足が地面を踏み砕いた。

 

「……そうだな。言うのは癪だが私はもう貴様達には勝てないだろう」

 

 交わす剣戟とは対称的な静かな声が紡がれる。振り下ろされた槍は魔力を纏わせた聖剣で大地に叩きつける様に弾いた。

 

 必然、アキレウスは手元に槍を引き戻し、先程までの攻防と同じ様に繰り出される反撃に備えて身体を動かした。

 

「――故に、目的だけは果たさせてもらう」

 

 そう、身体を動かしてしまった。

 

「ぐっ!?」

 

 前兆無く、アルトリアオルタの両足から漆黒の魔力が噴出する。それは大地を激しく巻き上げ、アキレウスの視界を一時的とはいえ遮断する。

 

 逃走、その可能性をアキレウスは考えなかったわけではない。だが、今この瞬間、躊躇無く行動に移したのは完全に彼の想定外であった。

 

「っ、マスター!!」

 

「なん――」

 

 そして、魔力を放出した上で追撃も無い。それだけの隙があれば彼女が二人に追いつくのは当然だった。

 

「――死ね、本元勇」

 

 聖剣の剣身を飲み込むほどの莫大な魔力が集束され、黒い輝きを伴った一撃が勇に向かって振り下ろされる。

 

「させません!」

 

 それを黙ってみてる筈も無く、間に割り込んだオルトリンデが宙にルーンを描く。

 

 具現させしルーンはソーン、ウルズ、イス、トゥール。現代では失われた神代の魔術基盤より抽出された四文字の結界は強固な神秘を持って二人の前に展開する。その即席の結界はクーフーリンが使用する物に劣るも低級宝具をも防ぎかねない堅牢さを有していた。

 

「邪魔だっ!!」

 

 だが、それを歯牙にかける事無く黒き聖剣は容易く斬り裂いた。

 

 オルトリンデの顔が驚愕に染まる。彼女はその隙を逃がさず、莫大な魔力共にその身体を殴り飛ばす。

 白鳥礼装(スヴァンフヴィート)の防御を貫くその一撃は、瞬く間に魔力の奔流によってオルトリンデの身体を大地へと転がす。

 

 しかし、拳を振りぬいた事で必然的に彼女には隙が生まれる。その瞬間を逃がさず、勇はアルトリアオルタに向けてクラウソラスを振り抜こうとした。

 

「……っ!?」

 

 振るった剣の軌道の中程、そこまで来た瞬間に勇はクラウソラスを自身の左側へと強引に持っていく。

 

「これを読むか。だが……」

 

 その瞬間、剣から魔力放出を行う事で強引に身体を回して放たれた一撃がクラウソラスへと叩き付けられる。

 

「今の貴様では耐えられまい」

 

 弾丸、そう例えるのが相応しい速度で勇の身体は一直線に岩壁へと沈み込む。

 

「ガ、ハッ……!?」

 

 鮮血を散らしながら、勇は地面へと落下する。

 

 防御を挟んだ上で放たれた強引な一撃。その一撃ですら多くの骨は砕かれ、自らの身体を支える事ができない状態へと勇は持っていかれた。

 

「勇……そんな、なんで!?」

 

 血相を変えて立花が駆け寄り、その姿を見て身体を震わせる。森でのシャドウバーサーカーの一撃を耐えていただけに今の勇の状態が彼女には信じられずにいた。

 

「ちが、血が……ほ、ねもっ……!?」

 

「所長、クーフーリンさん、すぐに勇先輩の治療を!」

 

 立花の様子を見てすぐにマシュが叫ぶ。だが、彼女達にそんな事をしている時間は無い。

 

「卑王鉄槌。極光は反転する――」

 

 空虚な洞窟に底冷えする声が響く。遠方に佇むアルトリアオルタの元から空間を埋め尽くすほどの漆黒の魔力が吹き荒れる。

 

「所長さんは藤丸の坊主背負って立花の嬢ちゃんの近くに居ろ! 俺たちは前だ!!」

 

「は、はいっ!!」

 

「ああ、もう! 何でこんなに危険な目に遭わなきゃいけないのよっ!!」

 

 クーフーリンの一声で二人は立花達の前へと躍り出る。

 

 ()()()彼らにあの聖剣を防げる手段は存在しない。ランサーのクーフーリンであれば所有する全てのルーンを使用した結界によって防ぐ事も出来たかも知れないが、キャスターである今は同時複数使用の制限によって使用する事ができない。

 

 なら何故出てきたのか、その理由は一つ。

 

「俺を忘れるな、セイバァァァァァ!!」

 

「ぐ、ぁ……!」

 

 後方より放たれし神速の突きが、寸分違わず彼女の霊核を砕く。間を置かず、周囲の地面が鋭い棘となって彼女の下半身を無数に貫いた。

 

「クソッ、最速の英雄が聞いて呆れるぜ……あんな初歩的な目眩ましを喰らうなんてな」

 

「ですが……間に合いました」

 

「ライダーさん、ランサーさん!!」

 

 マシュの目が歓喜と共に見開かれる。

 

 視線の先には背後から貫いたアキレウスと地面に手を当て魔術を行使しているオルトリンデの姿があった。

 

「俺から目を離したのはお前だ、卑怯とは言うまいな」

 

 上空に昇った黒光が細くなっていく中でアキレウスは吐き捨てるようにそう言った。

 

 いくら聖杯と繋がった英霊といえど霊核を砕かれては現界を保つ事はできない。既にアルトリアオルタの身体からは崩壊を表す光が出始めていた。

 

「――光を呑め!」

 

「なっ……ぐぁっ!!」

 

「っ、ライダー!!」

 

 故にこそ、彼女はその身を焼き尽くすほどの魔力を行使する。

 

「クソッタレ、どうせ崩壊するならって訳かよ!!」

 

 あのアキレウスを吹き飛ばすほどの魔力、それだけ莫大な量を行使すれば如何にトップサーヴァントの霊基といえども耐えられる筈がない。だが、彼女の霊基は既に崩壊を始めている。

 

 細くなった黒光が元に、否、倍以上となってその剣に集まる。その熱量は既に限界を超え、空洞の上部を貫いていた。

 

「クーフーリンさん、援護を!!」

 

 そんな中で、誰よりも早くマシュは動いた。大盾を地面に突き立て、その身を屈めて衝撃へと備える。

 

「おう、全部持ってけ嬢ちゃん!!」

 

 クーフーリンは持てる全ての魔力を使用し、マシュの背中にアンサズを刻み込む。その瞬間――

 

「――約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)ッ!!!」

 

 全てを蒸発させる一撃が振り下ろされる。

 

「っ、あああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 接触した瞬間に想像を絶する衝撃がマシュを襲う。

 地面に突き刺した盾が容易く後方へ押し出される。その威力によって浮き上がる盾を必死にマシュは地面に向けて押さえ付ける。

 

「何よこれ……こんなの防ぎきれる訳が……」

 

「嬢ちゃんが頑張ってんのにトップが諦めてんじゃねえ!」

 

 オルガマリーが呆然とそう呟いたのをクーフーリンは叱りつける。だが、オルガマリーがそう零したのも仕方が無かった。

 マシュによって防がれた空間を除いて周囲は黒光によって蒸発している。そして、今残存している空間も弱まるどころか上がり続ける聖剣の一撃によって徐々に狭まっている。状況は絶望的と言う他無かった。

 

(やっぱり、私じゃ……)

 

 マシュの心にも諦観の影が現れる。

 クーフーリンの全力の補助を受けてもこの状態。出力が上がり続ける以上、霊基の崩壊まで耐え切る事など出来るはずが無いと、彼女は理解してしまった。

 

「皆さん――」

 

 ごめんなさい。その一言を言う為に彼女は口を開き

 

「大丈夫っ!!」

 

「先、ぱい……」

 

 マスターの声によって掻き消された。

 

「貴女、そんな適当な気休めを――」

 

「気休めなんかじゃありません!」

 

 遮るように、彼女は叫ぶ。

 

「確かに、マシュはこの場所に居るどのサーヴァントに負けてるかも知れない。宝具だって、使えないかもしれない」

 

 マシュはここで出会ったサーヴァントを思い出す。そして、その言葉を胸の内で肯定する。戦闘の経験すらない自分ではシャドウサーヴァントさえ倒せなかった、この戦いを含めた直近では攻撃すら行えていないと。

 

「だけど、私は、私たちはそんな状態のマシュにずっと助けてもらった!」

 

 だからこそ、その言葉にマシュは驚く。

 

「怖い筈なのに、今すぐに逃げ出したい筈なのに、守る為に戦ってくれた!」

 

 精一杯、喉を震わせ、恐怖を振り切る様に声を張り上げる。

 

「だから、そんなに優しくて強いマシュなら、絶対に大丈夫っ!!」

 

 保障も根拠も何も無い、意味不明な無茶苦茶な理論。あまつさえ、勝敗を保障しない大丈夫という明らかに選択を間違えている無責任とも取れる言葉。

 

 だが、そんな心から寄り添った言葉だからこそ。

 

「――はいっ!!」

 

 盾は再起する。

 

「真名、偽装登録」

 

 気づけば、マシュは無意識にその言葉を口にしていた。

 

 マスターの言葉を受けても彼女は変わらない、今もその身に宿った英霊も宝具の真名はわからない。

 

「令呪を持って我が友に願う!」

 

(だけど、そんな私を名も知らない貴方が認めてくれるなら――)

 

「頑張って、マシュッ!!」

 

「――私に、大切な人達を守る力を!!」

 

 真紅の輝きを伴って、白青の障壁は具現した。




原初の18のルーンがさっぱりわからんので失踪します。

これからの小説パートとRTAパートの割合について

  • ああ~(今の割合が丁度)いいっすね~
  • 小説パート増やして、ホラホラホラホラ
  • RTAパート増やすんだよ、あくしろよ
  • 更新までまーだ時間掛かりそうですかね~?

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