「にゃぁぁぁぁぁあ!反則よ!反則!」
「お前の敗因は90%を引けなかった事だ!」
「タイムよ!タイム!!」
そして叫ぶ少女の画面に無慈悲に表示されるゲームオーバーの文字
「あんなのは認めないわ!なんで90%を引けないのよ!」
と少女、津島善子は言った。
それに対して少年
津島善子と俺は昔から家が近い事もあり、よく遊ぶ仲であった。
他にもいるが、まぁその時にでも。
「ほら、もう寝るぞ。明日も学校だろ。」
「うん……」
「心配しなくても、もうお前の黒歴史知ってる人いないだろ。内浦に来る奴なんていない」
大丈夫。といくら俺が言っても、中学生の頃中二病のせいで出来た傷は消えない様で今も憂鬱そうに俯いている。
それがとても痛々し気であった。
「ほら、早く寝るぞ。俺はもう帰る。」
その姿を見ていられなくて、目を逸らす為に自分の家に戻った。
∞∞∞
鳥が囀り、春の暖かな日差しが窓からこぼれている爽やかな朝。
むくりと布団から起き上がり、階段で下へと下っていく。
そして、朝食をテレビの天気予報やニュースを見ながら、もそもそと食べて善子の家へと向かう。
津島家と表札が掲げられた家の扉を開ける。
すると、パタパタとスリッパで廊下を歩く音が聞こえた。
「ごめんね。翔太君。まだ善子準備まだみたいで」
出てきたのは善子のお母さんだった。
いつ見ても若々しく美しいおばさんを家の母さんも見習ってほしい。
「いえ、全然大丈夫です。」
「ごめんね……善子の事よろしくね。あの子寂しがり屋だから、一緒に居てあげてね。せっかく同じ高校なんだし」
「わかりました。まぁ、幼馴染ですし。」
そうやっておばさんと話していると、そのさみしがり屋の準備が終わったみたいだ。
「ほら、行くわよ!」
「はいはい。じゃあ、おばさん行ってきますね。」
「はい、いってらっしゃい。」
∞∞∞
その後バスに乗り、揺られる中で俺は忠告をした。
「毎日言ってるが、学校でもその中二病やるなよ?」
「このヨハネに命令するとはリトルデーモンの癖に生意気ね……!」
「だから、それをやめろって言ってたんだよ!何のためにお前のお母さんが遠い学校にしてくれたと思ってるんだよ!」
「ぐっ……分かったわよ。このヨハネに任せなさい!」
「分かって無いじゃねえーか!」
グリグリと手を善子の頭に押し付ける。
そんな事をしながら、歩いていると校門が見え、他に自分以外のクラスメイトもチラホラ見えた。
「女子高なんだもんなぁ……」
はぁ…とため息をつく。
これから俺たちが通う学校、浦の星女学院。女子高である。
日本全国で少子高齢化が叫ばれる世の中、ここ内浦も例外では無く、学校が共学化するとかしないとか噂になっている。その女子高として維持が危うくなった為に男子を入れてみようというよく言えばテスト生、悪く言えば実験動物になってしまった。
なんとも哀れな子羊だろうか。
そんな感じで二人で歩いていき、校門をくぐりクラスが張り出されている正面玄関へと向かう。
その校門の入口に明るいブラウンの髪をしたゆるいウェーブがかかっているロングヘアの女の子と赤髪のツーサイドアップの女の子が上級生らしき人に絡まれていた。
ふと、隣を見ると善子がいつの間にか消え失せ、木の上に退避していた。
あいつめ………
「ピギャァァァァァァァァアアアア!」
そして、赤髪の子の手を触った時に、大音量の悲鳴が聞こえた。
そして、上からは善子が木から落ちてきた。
……絶対痛いだろ。涙出てるし。
その声で、赤髪の子とブラウン色の子、そしてその子達に絡んでいた人2人が善子の方を振り向いた。
「ふっふっふっ……ここはもしかして地上?
そしてあなた達は下劣で下等な人間という事ですか?」
「善子……ちゃん?」
「えっ……」
「あ、花丸ちゃんじゃん。久しぶり。」
「久しぶり!翔太君」
「私はヨハネなんだからねぇ~!」
そう言って、善子と花丸ちゃんと赤髪の子は走り去っていった。
「よし!絶対あの子達後で勧誘しにしこう!ってあれ?しょーくんじゃん。なんで居るの?」
さっきまで絡んでいた上級生がこちらに話しかける。
はて、知り合いだろうか。
じっくりとそちらを向くと、見慣れたオレンジ色の髪と灰色の髪色。
「あ、曜と千歌じゃん。入学式の時に言ってたはずなんだけど」
「あはは……寝ちゃって聞いてなかった……」
この2人は、善子と同じくらいの幼馴染、高海千歌と渡辺曜。
「2人は何やってたんだ?」
「良くぞ聞いてくれました!」
そして、千歌はバンと紙をこちらに向けて
「スクールアイドルをやろうと思って!」
「………は?」
「しょーちゃん知らない?スクールアイドル。
最近、大人気なんだよ!」
グイッと顔を近づいてそう言ってくる曜。
1歩後ろに引いてこう答えた。
「知らない。」
そんなのが流行ってるとか知らなかった。
あいつの中二病のに付き合わされている所為で。
「あなた達ですの?このチラシを配っていたのは。
いつスクールアイドル部なんて出来たのでしょうか」
その時に響いた凛とした声。
後ろを振り向くと、艶のある黒髪が美しく、切れ長の目をした大和撫子という言葉がこの人の為にある様なそんな人がいた。何とも真面目そうな雰囲気がする。
でも、前髪パッツン。多分俺が苦手なタイプ。
きっと学級委員とか生徒会長とかやってそうなタイプ
名前分からないからこれから前髪パッツン子って呼んだろ。
「あれ?貴方も新入生?」
千歌がそう、前髪パッツン子に問いかける。
それを曜が焦った様に、耳元に口を寄せコソコソと話しかけてた。
「え…生徒会長……?」
あ、予想当たってたんだ。
「あなた達こちらにいらっしゃい。」
そして、千歌の襟を掴みズルズルと引きづって行く。
呆気に取られ、見ていたらクルリと生徒会長は振り向き
「貴方もですよ。」
「え?関係無いんですが」
「グズグズ言わないで着いてきない。」
ついつい前髪パッツン子の威圧に負けて俺は着いて行った……
花丸ちゃんと善子と赤髪の子は無事に教室に着いただろうか…
ヒロインはまだ決めてないので自分の推しキャラをヒロインに!って人は推しでも書いていってくだせぇ