東方世変物語 〜lay one's own path for the future〜   作:凱奏

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竹取物語・戦 其ノ三

 

 

 甲板から飛び降りた永琳と俺は、地面に叩きつけられてその場にころがる。

銃で撃たれた傷が擦り、激烈な痛みが全身を駆け巡った。

 

しかし幸運にも月人たちの死角に入った為、追撃が来ることはなかった。

 

 

 

 

 

「痛ッ、・・・お、おい、永琳、、!しっかりしろ、、!!」

 

 

あまり力を込めずに、俺を庇ってくれた永琳を揺さぶって呼びかける。

 

その直後、永琳が掠れた声で呟いた。

 

 

「・・・ふふっ、、初めて会った、時、から、、成長して、ないわね、、?」

 

「・・・え、永琳、、。」

 

 

が、次の瞬間、永琳は痛みに悶える呻き声を出す。

 

 

「ッ!ま、待ってろ!すぐ、回復させっから、、」

 

 

俺は自分の出血痕を手で止血しながら、永琳に手を翳して傷を癒そうとした。

 

しかしその手を、突然永琳は押し除けた。

 

 

「ちょ、な、何やってんだよ!」

 

「・・・私は、いいから、、貴方の傷を、治しなさい、、。」

 

「ハ、ハァ、、!?」

 

 

確かに見る限りでは、奇跡的に弾痕は急所を外れている。

 

だけど!出血量次第では死ぬ可能性だって!!

 

 

「お、おい、、いいから手を離せ!」

 

「・・・嫌よ、、まだ、貴方は戦わなくちゃ、ならないのよ、、?無駄な体力を、、消費することなんて、ないわ、、。」

 

「・・・え、永琳、、。」

 

 

次の瞬間、ドゴォォン!!と辺りに爆発音が響き渡った。

 

恐らく、輝夜が月人たちと交戦を、、

 

 

「隼、、恐れているのね、、?」

 

 

図星だった、、

 

兵士たちが装備していた銃は、少し形状が変わっていた為恐怖心を抑えられた。

しかし、最後に向けられたアレは、、

 

 

「・・・抑えてんだよ、、、でも抑えようとしても、、震えが、止まんねえんだ、、。」

 

 

永琳を回復させようと翳した時も、今こうして掴まれている時も、ひたすらに俺の身体は震えていた。

 

何度自分を鼓舞しても、どうやっても抑えることが出来なかった。

 

 

「俺が、このまま、戦いに戻っても、、ただ足手まといになるんじゃ、、」

 

 

また誰かを守れずに、過去のトラウマに怯えて足手まといになることが、とにかく怖かった、、。

輝夜には、一緒に戦うって宣言したのに、、

ただ自分の都合で逃げるなんて、、最低じゃないか、、

 

 

 

 

しかし直後、永琳は優しく微笑み、左手に握られていた弓を差し出してきた。

 

 

「ほら、いつかの約束、、。」

 

 

それは昔、俺が別れ際に永琳に渡した銀色の弓。

 

 

「・・・永琳、、今の俺に、それを受け取る資格なんて、、」

 

 

俺はその弓を受け取ることを拒んだ。

 

が、永琳はそれを引っ込めることなく、俺に差し出し続ける。

 

 

「隼、資格の有無なんて、、関係ないわ、、。ただ、多分この弓は、、今の貴方を、支えてくれる。だから、、受け取って、、?」

 

 

数秒の間、沈黙が流れた。

まるで時の流れる速度が落ちたかのように、その一瞬を長いものに感じた、、。

 

 

「・・・ふふっ、大丈夫よ。行って、、また貴方の、全力で戦う、姿を見せて?」

 

 

「・・・永琳、、ありがとう、、。」

 

 

俺はそれを、静かに受け取った。

次会った時返してくれと 約束したあの光景が蘇る。

 

 

 

 

「それと、、もう一つ、、。戦いが終わったら、、もう一度、私に返して、、?」

 

「・・・ああ、、分かった!!」

 

 

永琳の言葉を背に、

次の瞬間、俺は思いっきり地面を蹴って走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 禍々しく輝く月の光、その方向から降り注がれる矢の嵐。

月人の兵たちと輝夜が交戦しているその場所に、猛スピードで突き進む。

 

 

次の瞬間、輝夜の姿を確認した。

 

 

「ッ!輝夜ァァァーーー!!!」

 

 

 

瞬間!銀色の弓を構えて、輝夜に向かって叫んだ。

 

同時に、俺の方向にも矢の嵐が襲いかかる!

 

 

「邪魔だ、、退けッッ!!」

 

 

俺は銀色の弓の弦を引き、十分に矢を引きつける。

 

そして矢が、命中寸前まできた瞬間!

 

 

「・・・元は俺の弓、、俺が一番使いこなせる筈だッ!」

 

 

一直線に狙いを定めて、弦を離した。

その瞬間、弓から銀色に輝く光線のような矢が放たれた!

 

その矢は風を纏い、矢の嵐さえも消し飛ばしながら月人の兵士たちへと突き進む。

 

 

その矢に気付いた月人たちは、一斉にその場を退こうとするが、、

 

・・・時すでに遅し、逆に一斉に退いたのが仇となり、数人を一撃で貫いた。

 

 

それを確認した俺は、そのまま地を走り輝夜のもとへと移動する。

 

 

「隼、遅いわよ!」

 

「・・・すまない、輝夜。その、永琳が、、。」

 

「人の心配してる場合?ほら、まだまだ来るわよ!」

 

 

その刹那、俺と輝夜の間に矢が放たれた。

 

戦艦の方を見ると、まだまだ月人が大人数、、

 

 

「ッ、、!!」

 

 

更には、数人が銃を持っていた。

形状的にまだ我慢できるが、それでも少し震える、、

 

恐怖は心に有り続ける、だけど克服するしかねェ、、

無理やりにでも、押さえつけるしかッ、、!!!

 

 

 

 

 

 

『兵士たちよ!攻撃はするなッ!』

 

 

 

直後、あのリーダー格の男の声が響き渡った。

その声に反応して、月人たちは一旦退く。

 

 

「・・・どういうつもりかしら、、?」

 

 

が、その刹那!

ガシャァン!!と大きな音と共に、地上に振動が走った!!

 

 

「な、何だよありゃあ、、??」

 

 

その塊はすぐさま動きだし、徐々に形状を変えていく。

 

そして数秒後、その塊はまるで砲台のような姿に変わった、、

 

 

「な、何が相手だろうと倒すだけよ!さあ行くわよ隼!」

 

「ちょ、ちょっと待て輝夜!」

 

 

しかしその言葉が届くことはなく、輝夜はあの砲台に急接近していく。

 

 

「動き出して早々悪いけど、邪魔だからとっとと破壊させて貰うわ!」

 

 

次の瞬間、輝夜は至近距離から無数の弾幕を浴びせた!

 

弾幕が砲台にぶつかる度に土煙が上がり、その砲台と輝夜を包んだ、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・嘘、、。」

 

 

土煙が消え、輝夜が砲台を直視する。

 

そこで見た光景は、絶望的な光景だった、、!!

 

 

「そ、そんな!確かに最大威力で弾幕を、、!!」

 

 

直後、ガシャンと音を立ててその砲台が動き出した。

 

 

「ッ!輝夜ッ!一旦戻ってこいッ!!」

 generate command!!

 

 

叫んだと同時に、大量の剣や槍を具現化して砲台に浴びせる。

が、砲台には傷一つ付かない、、

 

しかしその攻撃の間に、無事に輝夜は戻って来れていた。

 

 

「助かったわ。・・・だけど、私の攻撃が、、。」

 

「・・・ああ、俺の攻撃も駄目だ、、。」

 

 

輝夜の弾幕の威力は、並大抵の妖怪ならば一撃で仕留められる程の威力を持っている筈、

 

それを、あの至近距離から放ったのに無傷なんて、、

 

 

「こうなったら、一瞬で存在ごと消して、、、あれ、あの砲台は、、?」

 

 

既にそこに砲台の姿は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間!腹に強烈な痛みが走った!!

 

同時に身体ごと後ろへと吹っ飛ばされ、屋敷の岩に叩きつけられる。

 

 

「あ゛、あがッッ!!!」

 

 

全身に、尋常じゃない痛みが駆け巡る!

あらゆる箇所から血が吹き出て、意識が朦朧とする、、

 

 

「・・・は、早く、、立ち上が、ら、ないと、、」

 

 

必死で意識を保ちながらその場を這う。

 

痛みを我慢しながら、足に力を入れて立ち上がり、

そして顔を上げて輝夜のいる方を見渡した、、

 

 

 

 

 

 

 

 

が、そこで最悪の光景が目に映った。

 

 

「・・・や、やめろ、、!」

 

 

砲台が輝夜に向かって大量の銃口を向けていた、、!

 

しかし輝夜は、睡眠薬を盛られたかのように、地べたに倒れて眠ってしまっている、、!

 

 

「ヤメロォォォーーー!!!!!」

 

 

刀を引き抜いて、必死に叫びながら走った。

 

しかし、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辺りに悍しい数の銃声が鳴り響いた、、

 

 





お久しぶりです。
暫く日にちを空けてしまって申し訳ないです。
忙しい日々を抜けたので、今後は投稿ペースを上げていけると思います。


次回、決着。

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