花と黄金の旅路   作:よっしゅん

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アンケートにご協力ありがとうございました。
取り敢えず執筆はしたものの、正直言って満足に書ききる事が出来ませんでした……
何か元のストーリーが良すぎて、そこに二次創作要素を私が入れようとすると、何もかも蛇足になってる気がしてしまう……


六章 Last battle
獅子王と忠節の騎士


 

 

 

 

『————。』

 

 声が、する。

 

『————? ———。』

 

 懐かしい、声だ。

 

『———……! ———。』

 

 多分、この声は私に向けられている。

 そして私は、その声に応じている。

 

 今日の天気はどうだ、今日の朝食は何だろうか。

 調子はどうだ、これからどうするか。

 今日はこんな事があった。

 明日はこんな事をしよう。

 そんな、何の変哲も無い日常的な会話。

 それがどうしようもなく、『心地良い』。

 

 ———だけど、私はその声を『知らない』。

 懐かしいと思えるのに、どうしてもその声が誰のものだったのか、分からない。

 

『——————』

 

 わからない、わからない。

 けれども、わたしはおもいださなくちゃ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負傷者は直ぐに治療を受けろ! 霊基に損傷は受けてる者はいないか!?」

 

 カルデアのサーヴァント達が集う、出撃待機部屋。

 そこには数多くの英霊達が、慌しく動き回っていた。

 

「よし、次は私が出よう。汝は休んでおけ」

 

「悪いね、どうにも鎧をしてる連中には僕の銃弾が通り難くて……後は君の矢に賭けるとしよう」

 

「任せておけ。それと、銃というものはよく分からないが、早撃ちというものは見事だった」

 

「やれやれ、まさか神話の狩人様に褒められる日がくるなんてね」

 

 現在、カルデアは第六特異点を攻略中だ。

 集ったサーヴァント達は、バックアップに回る者もいれば、マスターである藤丸立香の指揮のもと、戦場へと赴く者もいる。

 そんな中でアルトリアとカリバーンは、今回は全体的なサポートに徹していた。

 

「ふー……ったく。サーヴァントってのも楽じゃないねぇ」

 

「大丈夫ですか、『ロビンフッド』さん。今傷を治します———カリバーン」

 

『あいよ———本当はマスター以外の傷なんか治したくないけど、是非もなしってやつか』

 

 聖剣カリバーンには、持ち主を不老にする力に加えて、治癒能力も備えている。

 治癒能力に限ってだが、それは持ち主だけでなく他者も癒せる為、今回はその力をフル活用して傷付いたサーヴァント達をサポートしていた。

 

「悪いね、オタクらも本当は現地に行きたいんだろ?」

 

「……いえ、私達は今回はカルデアで待機していた方が良いでしょう」

 

『…………まぁ、行っても問題はないだろう。けれど、相性の問題だな。余計な波乱を起こしかねないし、お互い「逢わない」のが一番だろうさ』

 

 第六特異点。

 その舞台はエルサレム王国が地上から姿を消した時代。

 かの聖地にその面影はなく、代わりに聳え立っていたのは、白亜の宮殿だった。

 そして宮殿の主人、即ち今回の特異点における最大の障壁。

 それは———

 

「———『獅子王』、でしたか」

 

『あぁ……マスターがいずれ成る『アーサー王』の行く末———いや、正確には可能性の一つか? 確かロンドンでも似たような輩が現れたらしいが』

 

「因果なもんだねぇ。これでアーサー王は三度もカルデアの前に立ち塞がったってわけだ」

 

 特異点F。

 第四特異点。

 そして今回の特異点。

 全てがアーサー王から歪に変異した様子だったが、確かにどれも元は同じだ。

 厳密には違う存在とはいえ、アルトリアは少し心苦しさを感じてしまった。

 

「……あー、変な言い方しちまったかな? なんていうか、あまり気にしない方が良いと思うぜ? オタクの責任ってわけでもないでしょ」

 

「そう……ですね」

 

「それよか、何か弱点とか知らないわけ? あの粛清騎士とかいう連中、妙に硬いわサーヴァント並の強さで、足止めするのも精一杯なんよ」

 

「いえ……私はアーサー王としての記憶はありませんし、あの騎士達を従えていたわけでもありませんので」

 

 現在、藤丸立香とマシュ、それにダ・ヴィンチ。

 更には、アーサー王に仕えた最高峰の騎士達。

 『円卓の騎士』の一人である、サー・ベディヴィエールが獅子王を打倒すべく、宮殿の中を進み続けている。

 カルデアの英霊達は、そんな彼らの邪魔をさせない為、獅子王の配下である騎士達を、現地の協力者達の力を借りつつ足止めしている状況だ。

 

『……ベディヴィエール、か』

 

「カリバーン? もしや円卓の騎士達の記憶が? 私は彼等のことを全く知らないので……」

 

『……いや、曖昧だな。そういえばそんな連中居たような、居ないような』

 

「もう、真面目に答えてください!」

 

『大真面目だよ、アルトリア。なに、ちょっとあいつの『右腕』が気になっただけさ』

 

 マスターである藤丸立香を介して、その行動や見ている景色、情報は全てモニターを通してカルデアに伝わっている。

 故に、カリバーンはベディヴィエールの銀の右腕に妙な違和感を感じていた。

 しかしそれが何であるか、よく分からないのだ。

 

 そんな時だった。

 モニターを見ていたサーヴァント達に、どよめきが走った。

 それに釣られて、カリバーン等含めた、モニターから視線を外していた者達も、モニターに視線を移す。

 どうやら藤丸立香が、最終目的地に到着したようだった。

 

「……あれが、獅子王」

 

『———あぁ、くそ。確かにあれは、紛れも無くアルトリア(マスター)だ』

 

 モニター越しでも、その威圧と神秘さが伝わってくる。

 もはやあれは、人外の域だ。

 だが、その美しい金の髪に、少女らしい面影を残すその顔付きは、紛れも無いアルトリアだった。

 

『……何でだ』

 

「カリバーン……?」

 

『マスター……何でそんなんになってまで、お前は———』

 

 アルトリアは察した。

 今のカリバーンの言葉は、自分に向けられたものではないと。

 では誰に?

 それはきっと、モニターの向こうにいる獅子王()にだろう———

 

「うぉ! 映像が途切れちまったぞ!?」

 

「お、おそらく獅子王の魔力の波がこちらにまで影響を届かせたのかと思います」

 

「バケモンかよ! マスター達は大丈夫なのか!?」

 

「落ち着きなさい、パスはちゃんと繋がってる。だから、いつマスターに呼ばれても良いように、各自準備を整えておきなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベディヴィエール……?」

 

 獅子王との戦いは熾烈を極めた———いや、言葉では語れない程、壮絶だった。

 現に今も、獅子王の聖槍の一撃を、マシュが今回の旅で得た、幻想の白亜の城(宝具)が懸命に防いでいてくれた。

 それを一緒に支えようと、駆け寄ろうとした瞬間、ベディヴィエールに止められた。

 

「お気持ちは分かります、立香。しかしあの聖槍は人の身ではとても耐えられません。どうかここで待機を」

 

 そう言って、ベディヴィエールはゆっくりとマシュの元へ歩いて行った。

 何でだろう、今彼を止めなければ、いけない気がするのに、それを邪魔をしてはいけないと感じる。

 

「ベディヴィエール卿……? ……待った、待ちなさい。キミのその体は———」

 

 ダ・ヴィンチが自分の代わりに言った。

 しかし彼は止まらない。

 

「どうか力まないで、『サー・キリエライト』。貴女の盾は決して崩れない、貴女の心が乱れぬ限り」

 

「ベディヴィエール、さん……? あ……こ、こうですか?」

 

「そうです、たいへん筋がよろしい。どうかお忘れなきよう———白亜の城は持ち主の心によって変化する。その心に一点の迷いもなければ、正門は決して崩れる事はありません」

 

 ベディヴィエールがマシュに語り掛ける。

 それだけで、マシュの()はより強固になった。

 

「……何者だ? 見たところ、貴様も騎士のようだが———」

 

 ここで初めて、獅子王が彼に注目した。

 

「っ……知らない筈がありません! この方は『ベディヴィエール卿』! 円卓の騎士です!」

 

 マシュが微かな怒りを感じているのか、何時もより迫力のある声で獅子王に言った。

 

「———何を、言っている……そのような名前の騎士を私は知らない———」

 

 獅子王が困惑している。

 その表情は、何かを取り戻そうとしているが、阻まれてしまっているような、様子だった。

 

「……そうでしょうとも。ですが、『これ』を見ればその記憶も晴れましょう」

 

 ベディヴィエールが、銀の右腕を掲げる———

 

「『剣を摂れ、銀色の腕(スイッチオン・アガートラム)』。今こそ、裁きの光を切り裂きたまえ……」

 

 彼の右腕から発せられた光によって、何と獅子王の聖槍の一撃を消し去った。

 

「っ……? 今の光、俺は何処かで……」

 

 その時、違和感を感じた。

 デジャヴのような、違和感を。

 しかし戦いの緊張で、記憶が上手く作動しない。

 あの光を、自分は知っている筈なのに、思い出せない……

 

「———今の、輝きは———知っている……それを、私は知っている……」

 

 獅子王が自分と似たような感覚を口に出す。

 自分だけではなく、獅子王にも覚えがある光、その輝き……

 何となく答えは出ているのに、どうしても言語化できない。

 

「貴様、何者だ。私は何故……ぐっ!」

 

 獅子王が片手で頭を抱える。

 

「立香、ここまで来られたのは貴方のおかげです」

 

 ———いつの間にか隣に居た彼が、そう語り掛ける。

 そして、隠し事をしていたと謝罪もされた。

 それはまるで、最後のお別れを告げているようだった。

 

「———ベディヴィエール? その、体は……何で、どうして、崩れて———」

 

 そこで気が付いた。

 彼の体が、土塊のように、文字通り崩壊している事に。

 

『嘘だろ、どうなってるんだ。どうして今までこんな誤作動をしていたんだ……!?』

 

 ここで、今まで通信が途絶えていたドクターの声がした。

 

『藤丸君! そこにいるベディヴィエール卿は『本物』かい!?』

 

「ドクター……何を———」

 

「観測結果が異常なんだ! 霊基反応が『全く無い』! 魔術回路も人間なみ……というか、これは、これは『ただの人間』だ! 藤丸君と同じ、人間なんだ! 彼はサーヴァントなんかじゃない!」

 

「えっ———」

 

 ベディヴィエールが、人間?

 でも、彼は……彼は。

 

「嘘……だよね、ベディヴィエール」

 

「いえ、ドクターの解析は正しい。私はサーヴァントではありませんから……『マーリン』の魔術で皆さんを騙していたのです。このアガートラムも同じ。これは……」

 

 ベディヴィエールの右腕が輝く。

 すると、彼の銀の右腕は何処かへ消え去り、彼の左手には———

 

「……『エクスカリバー』。その腕は、その『剣』は、聖剣エクスカリバーだ」

 

 ダ・ヴィンチが確信を待って答えを出した。

 エクスカリバー……特異点Fでその聖剣を見た。

 けれど、さっきの輝きは……もっと違う何かだと、思う———

 

「———エクスカリバー……ベディヴィエール。その名前は、確か———」

 

 獅子王は痛む頭を抑えるかのように、その表情を曇らせた。

 

「……まさか、貴卿は———」

 

「……そう、私は王を失いたくないという思いで、あまりにも愚かな罪を犯しました」

 

 ベディヴィエールは贖罪するかのように、語り出した。

 

「あの時、あの森で私は貴方の命に躊躇った。この聖剣を湖に返しては、貴方は本当に死んでしまう。それが怖くて、私は『三度目』ですら、聖剣の返還が出来なかった」

 

 アーサー王伝説。

 アーサー王の物語の結末。

 自分が知っているその内容と、彼の言っている事は一部違っていた。

 彼は、サー・ベディヴィエールは、三度目でやっと聖剣を湖に返した筈なのだ。

 

「そうして森に戻った時、王の姿は消えていた……その後に知ったのです。聖剣を返還したかった事で、王は死ぬ事さえできなくなった。王は手元に残った聖槍を携え、彷徨える亡霊になってしまったと」

 

 ……そして彼は、その罪を償おうと、かの王の亡霊を探し続けたのだと、語った。

 それが本当だとしたら、彼は———

 

『馬鹿な、それが本当だとしたら1500年間だぞ!? 1500年近く、アーサー王を探し続けたというのか!? あり得ない、人間がそんなに生き続けられるわけが……あぁ、確かにエクスカリバーには不老の力はある。だけどそれはあくまで肉体だけの話だ! 精神は違う!』

 

 そんな気の遠くなるような旅を、彼はひとりで、続けた。

 きっと、想像すらできないくらい、辛いものだったのではないか……

 

『そんな、惨い話があってたまるものか……』

 

「ありがとう、ドクター・ロマン。ですが、それほど辛いものではありませんでしたよ。それに……こうして最後の『機会』を、立香……貴方のおかげで与えられました」

 

「ベディヴィエール……!」

 

 彼がこれから何をするか、何となく分かる。

 その『結末』も。

 

「……思い出せない。ベディヴィエールという名前は分かる。だが、貴卿との記憶が何一つ———貴卿は本当にベディヴィエール卿なのか?」

 

「えぇ、私は紛れ間なく、ベディヴィエールです」

 

「……いいだろう、ならば私の元に戻れ。その剣を……捨てよ。それは、私には不要のものだ。我が騎士ならば、我が声に従え。我が円卓に戻れ、ベディヴィエール!」

 

 獅子王はベディヴィエールと、彼の左手に収まった聖剣から目を離さず言った。

 

「いいえ、それは叶いません。獅子王、聖槍の化身よ。貴方は私に復讐しなくてはいけない、討つべき敵です。そして、私には貴方を止める義務がある! 獅子王ではなく、『騎士王』の円卓、その一員として貴方に告げる!」

 

 ベディヴィエールの持つ聖剣が、再び輝き、彼の右腕となった。

 

「私は円卓の騎士、ベディヴィエール! 善なる者として、悪である貴方を討つ者だ!」

 

「違う……何を言うベディヴィエール。貴卿は私の……私だったものの———」

 

「さぁ、立香。『最後の指示(Final order)』を。どうか私に、四度目の機会をお与えください」

 

 ……歯を食いしばって、文句だけを押し留める。

 今言うべき言葉は、それじゃない。

 自分は彼に、こう言うのだ。

 

「……あぁ、行くぞベディヴィエール! 貴方の望みを叶える為に!」

 

 

 

 

 




カーマちゃん欲しい……欲しくない?
でも石の貯蔵が充分ではない……あとフレポも枯渇気味。
やはりガチャは悪い文明……?

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