花と黄金の旅路   作:よっしゅん

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リリィ出ました(小声


交差する出逢い
花と黄金と王


 

 

 

 

 

 『剣』を失った。

 掛け替えのない大切な剣を、失った。

 民を、国を守る為に、『王として』全力を出さねばと、『彼』の光を私は振るった。

 その結果、彼は私の目の前で『砕けた』。

 

 彼は最後まで私に声を掛けた。

 そんな彼に、私も最後まで叫んだ。

 毎日のように聞いていた彼の声が、聞こえなくなるまで。

 

 魔術師の言う通り、かき集めた彼の破片を湖に捧げた。

 そうして私は再び、剣を手にした。

 しかし彼は、戻ってこなかった———

 

 今日、遠征から帰還したケイ兄さんに彼の事を話した。

 ケイ兄さんは、『そらみたことか、やっぱりナマクラだったじゃねぇか』と言って、私の頭を久しぶりに撫でてくれた。

 もう何も知らない少女の頃の私ではないのに、不思議と落ち着いた。

 

 彼を失ってから、どうにも違和感を感じてしまう。

 当然、悲しみや喪失感もあったが、それ以上に……私の中の何かが、足りないような———

 

 新しい剣は、不思議とすぐに手に馴染んだ。

 その宿す力も申し分無い。

 だが、剣を振るうたびに、もう忘れようとしていた彼の柄の感触や、声が頭で響く———

 

 人の心がわからない王。

 最近その言葉を耳にする。

 そんなつもりはないが、私に不満を持つ騎士も大勢いる。

 そう言われてしまう心当たりもあるにはある。

 仕方のない事だ。

 ———けれど、こんな時彼なら何と言うだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

「———私は、どうすれば良かったのですか……■■■■■」

 

 血と臓物と、死臭にまみれた丘の上で、失われた彼の名を呟く。

 国の為、民の為に私は王であり続けた。

 その結果が、これだ。

 血に濡れた戦場が、私の最後だった———

 

 ……全て、間違いだったのだろうか。

 私が王になった事が。

 彼を私が引き抜いた事が。

 私が王にならなければ、こんな結末にはならなかったのか。

 もし彼が居たのなら、今の私を見て何と言うのだろうか———

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———サーヴァントとなった私には、当然彼ではなく、エクスカリバーという聖剣を手にしていた。

 アーサー王の象徴といえば、エクスカリバーだと言わんばかりに。

 

 とはいえ、この剣を嫌っているわけではない。

 彼ではなくとも、彼の声がしなくとも。

 これは彼が遺してくれた剣だ。

 

「———喚ばれましたか」

 

 生前死ぬ間際に、奇蹟を求め、死後を明け渡した。

 そして様々な出来事を通して、私は奇蹟を手にし、それを振り払い、自らの過ちを認めた。

 英霊となった私は、私を喚ぶ者の声を聞き、それに応じるだけ。

 

「……成る程、人理を救う旅ですか。これを拒否する理由は私にはない」

 

 サーヴァントとして召喚される前、基本的な知識が流れ込んでくる。

 どうやら何処かの世界で、焼却された人理を救おうと、時代を駆け抜け、数多の英雄を求めているらしい。

 ……つまりこれは、世界を救う為の戦い。

 私は全力でそれに挑もう———

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「———問おう、あなたが私の……マスターか」

 

 召喚の際に口上は必須ではないが、不思議とこの台詞が毎回頭をよぎるので、決め台詞のようなものになっている。

 

(———彼が人理を救うマスター。人類最後の……)

 

 パスを通じて、ガラス越しの黒髪の少年が自身と契約を結ぼうとしているマスターというのはすぐに分かった。

 まだ若い少年だ。

 経緯は分からないが、おそらく相当な困難と苦痛に満ちた道のりがあり、運命が彼を選んでしまったのだろう。

 

「———あ、アーサー……王?」

 

「そ、そんな……わ、私ちょっと———さんに伝えてきます!」

 

 どうやら私の真名は知っているようだ。

 もしかしたら私ではない私が、人理を救う旅の中彼と何かしらの縁を結んだのかもしれない。

 黒髪の少年はひどく困惑し、その隣にいた少女が慌てて部屋を飛び出していった。

 

「……私の事は知っているようですが、一応自己紹介を。セイバーのサーヴァント、真名を『アルトリア・ペンドラゴン』と言います」

 

「あ……ち、ちょっと待っててください! 今そっちに———あだっ!」

 

[おいおい、気持ちはわかるが少し落ち着きたまえ、立香君]

 

 ガラス越しの部屋で、彼がこちらの部屋に来ようとした瞬間、派手に転けた。

 何故か興奮を抑えきれない様子のようだ。

 

「はぁ、はぁ……えっと、は、初めまして! 俺、藤丸立香といって、その、気軽に名前で呼んでも……あ、人理修復の為にマスターをやってまして!」

 

「———ではリツカ、少し落ち着いて。私は何処にも逃げたりしませんので、先ずは呼吸を整えて」

 

「あ、す、すいません……テンションが舞い上がっちゃって———えっと、あなたはアーサー王……何ですよね?」

 

「えぇ、その通りです———その反応からするに、別の私を知っているのでしょうか?」

 

「…………その、4通りくらい、知ってます」

 

 ……4通り?

 4回も別の私に出逢ったという事だろうか?

 確かにそれだけの回数なら、縁が結ばれてもおかしくはない。

 

「あ、XさんとかヒロインZとかも含めたら6通り……? でもあの人達は何か違う気がするし……」

 

「? ———ともかく、私たちは不思議な運命のもとにあるようですね。リツカ、貴方にその意思があれば、私は喜んで貴方の剣となりましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「———そう、ですか。特異点とやらで、別の私が何度も立ち塞がったようですね」

 

 カルデアという施設、人類最後の砦でもある場所を案内してもらいながら、大まかに事情を教えてもらった。

 

「……でも、だからって俺はアーサー王を恨んだりはしない。きっとあの人達にも、事情があって、偶々俺たちと進む道が違っていただけなんだから」

 

 複雑といえば、そんな気持ちだった。

 確かに別側面の私が居てもおかしくはないが……

 そして、一つ疑問があった。

 

「……獅子王、でしたか。その私は、聖剣ではなく聖槍を?」

 

「うん、最後には———最後まで獅子王に忠義を果たした、忠節の騎士が聖剣を還したんだけどね」

 

「…………」

 

 その私は、聖剣ではなく聖槍を。

 おそらく、そこが『分岐点』だったのだろう。

 

(———彼の意志を、遺してくれた覚悟を自ら手離したのか……)

 

 辛かったのだろうか。

 彼の想いを手にしているのが。

 嫌でも思い出して、その度に心を押し込める事が。

 だから聖剣ではなく、聖槍を握ったのか。

 それとも———

 

「……あの、実は一つ言っておかなきゃいけない事があるんだけど……」

 

「———はい、何でしょうか?」

 

 思考を一旦止め、リツカの言葉に耳を傾けた。

 

「えっと……ちょっと会わせたい人がいるような、いないような———」

 

 

 

 

 

 

 

『———アルトリア?』

 

 声が、した。

 もう失った筈の、声が。

 

「……■■■■■———?」

 

 そんなわけがないと、言い聞かせながらも、私は彼の名を呟き、背後に振り返った。

 

『……マジか、本当に召喚してたとは———』

 

「———この方が、アーサー王。私の可能性……」

 

 そこには……

 懐かしい装いをした『私』とその手に抱かれた『彼』が、あの頃のままの『私達』が居た———

 

「あ……」

 

 不意に手が伸びる。

 永遠に失われた、私の剣。

 王を選定する私だけの剣。

 それが、手を伸ばせば掴める。

 もう叶う事はないと思っていたものが、私の目の前に———

 

 

 

 

 








リリィ出ました!(大声

違うんや、信勝君宝具5にしようと、ボックスとかで貯めたフレポで回してたら、急に来てくれたんや。
とりあえずありがとう、全てにありがとう。
このタイミングでフレポガチャにスポットライト当ててくれたぐだぐだイベントに感謝。

夜中なのに変な声あげちゃったじゃないか最高!





「あの……マスター? 何故私にそんな大量の種火とやらを? え? フォウ君も食べろ? 聖杯も取り込め? イベント周回について来てくれ? ど、どうして新参者の私にそんな……な、なんですかその赤色とか青色の鍵は? 私には鍵穴なんてありま———」

多分リリィはこんな気持ちだったと思う(レベル100ファウマコマンドコードぶち込み済み

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