RASのマネージャーにされた件【完結】   作:TrueLight

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15.打ち上げパーリー

「えー、それでは……たえちゃんのラストライブ&朝日さんの加入ライブ成功を祝して! 乾杯!!」

 

Cheers(かんぱい)!」

「乾杯っす!」

「「かんぱーい」」

「乾杯ですぅ☆」

 

 レイヤとたえちゃん息ピッタリだね! チュチュに至っては何て言ったか分からん!!

 

 主催ライブを大成功で終わらせた俺たちは、チュチュのプライベートスタジオに集って打ち上げパーリー(チュチュ談)を行っていた。

 

 音頭はチュチュがとるもんかと思ったが、マネージャーなんだからやれと言われた。マネージャーってそういうもんじゃなくない? いや知らんけど。

 

 ちなみに全員俺が車に乗せて帰って来た。ハイ〇ースワ〇ンでな! 今までは四人乗りの軽自動車に乗ってたんだが、たえちゃんダブルブッキング事件の詳細をチュチュに伝えたら数日後に用意されていたのだ。意味わからん。

 

 普通免許でもギリ運転できる10人乗りなんだが、当然軽自動車と同じ感覚で運転なんぞできん。人の出入りがまばらな公共施設の駐車場で何べん練習したことか……。(遠い目)

 

 まぁその甲斐あって、たえちゃんと朝日さんを加えたRAS全員での打ち上げとなったのだ。文句は言うまい。

 

「しかし、チュチュも粋なことするよな。あそこで朝日さんを認めるなんて」

Yeah(ええ)! あの場に立つってことは、私の目に適ったってことだもの!」

 

 せやろなぁ。ライブまでの練習で、当然ながら朝日さんは何度も躓いた。というのも、演奏に入り込む(・・・・)と出てしまうのだ、一発芸(・・・)が。他のメンバーが奏でる音に重なってしまう。それはチュチュが求めていない、必要のない音(・・・・・・)だ。

 

 しかし朝日さんは挫けず、何度もセッションを重ねて完成させた。あのライブの場に立つことは即ち、朝日六花というギタリストを認めることと同義だったのだ。

 

「……どういうことですか?」

 朝日さんが首を傾げてチュチュと俺に視線を向ける。

 

「朝日さんのギター担当が、(仮)じゃなくなったってことさ」

Yes(そう)! ロッカ・アサヒ。あなたは今日から……L・O・C・K――Lock(ロック)! RASのロックよ!!」

 

「名前を……♪」

「それって……!」

 

 ライブの演出である程度は察していたんだろう。おもくそ『ロック』って紹介したしな。レイヤとパレオちゃん、そして口角を上げたマスキングが顔を見合わせた。

 

 朝日さんは気付いて無かったっぽい。緊張も集中もしてたろうし、さもありなん。

 

「ロック! 今日からあなたを、RAISE A SUILEN(レイズ ア スイレン)の正式メンバーとして迎える!!」

 

 チュチュが珍しく喜色満面で言い放つと、じわじわと実感が伴ってきたのか、徐々に笑みを浮かべて朝日さん……ロックは頭を下げた。

 

「――ありがとうございます!」

「おめでとうございます☆ おめでとうございまぁす!☆」

 

 ロックの正式加入に、メンバーはみな顔をほころばせる。特にパレオちゃんなどは、バンザイしながら喜びを露わにした。うむ、カワイイぞ。

 

「改めて、よろしくね」

「はいっ!!」

 

「良かったな、ロック」

「……はい!」

 

 レイヤとマスキングの言葉に、ロックは感極まったように頷いた。特に、マスキングに対しては瞳が潤んでいる。……ロックはバイト先がマスキングの親父さんが経営するライブハウスだったな。俺の知らないところで友情が芽生えていたようだ。青春やなぁ……。(オッサン)

 

「おめでとう、ロック」

「……たえせんぱぁい」

 

 おや、ついに泣き出してしまった。もともとポピパのファンだったロックの事、憧れのギタリストから後を任されたとなれば、涙腺崩壊は仕方なかろうね。青春(ry。

 

「ハナゾノもお疲れ様。しっかり有終の美を奏でてくれたわね」

「……こちらこそ、本当にお世話になりました」

 

 ぐすぐすと鼻をすするロックを抱きしめつつ、たえちゃんが透き通るような微笑で会釈する。以前言い争ってた(一方的)二人とは思えない、尊い(てぇてぇ)空間が出来上がっている。

 

 これにはパレオちゃんも、『有終の美は飾るものですよぉ?☆』とはツッコまなかった。空気、読めるんやな……。

 

「成長したいんでしょ? 暇なときはまた来なさい。レイヤも喜ぶわ」

「ありがとうございます!」

「ありがと、チュチュ」

 

 おぉ……チュチュさん今日はどうしたんすか? めっちゃ良いひとじゃん!(失礼) あとで熱測ったろ。(超失礼)

 

「それじゃあ音無さん。またギター教えてくださいね」

「ああ。歓迎するよ」

 

 たえちゃんの言葉に、俺もにこやかに応じる。彼女と練習するのは俺もいい刺激になるからな。こう……ゆっくりだが確実に、技術が追い付いて来てる感じがして。負けてられん、そう思える相手は大事だ。

 

What(はぁ)? なんでソースに教わる必要が?」

 

 ……あの、チュチュさん。会話の流れ的に自然ですよ?

 

「RASが集まる時は当然五人セッションがメインの練習だし。たえちゃん余るじゃん。常に余ってる俺と練習すんのが普通じゃん?」

 

「ソースは黙ってなさい!」

 

 はーい☆ チュチュのワケ分からん癇癪は今に始まったことじゃ無いし、大事にはならなさそうだからスルーしよっと。パレオちゃんも何故かニマニマしながらチュチュを眺めてるし。

 

 という訳で。

 

「ヘイマスキング。俺にもチャーハンちょうだい」

「っす」

 

 一緒に今日の料理を担当したマスキングに、彼女特製のチャーハンをよそってもらう。黄金色の飯に紅ショウガが映えて美味そうだ。

 

 しかし、俺に対するマスキングの態度も変わらんなぁ。加入したばかりの頃に敬語は止めるよう言ったんだが、どうしても無理らしい。パレオちゃんなんかは全員に敬語だし気にならないんだが、マスキングは俺にだけそうだからな。もうちょいフランクに話したいよお兄さん。

 

 まっ、言うほど恭しい訳じゃないから良いか。どっちかっつーと運動部の先輩後輩ノリだ。そこまで毛嫌いしたもんじゃない。

 

 あー、このチャーハンおいちー。(退化)

 

「ソースは私のモンなんだから!」

「そういういい方は良くないと思います」

 

「ほらほらソースさん、渦中の人ですがご感想は?♪」

 ちょっとパレオちゃん、僕チャーハン食ってんだけども。っつーかまだやってるの? あの不毛っぽい言い争い。

 

 どういう状況か分かんないけど、とりあえず肯定しときゃええやろ。(適当)

 

「ごくん。その通りですご主人様ー☆(裏声)」

「ちょっとパレオ! もっとちゃんと加勢しなさい!」

 

「ええっ? 今のパレオじゃないですよぉー! に、似てませんよねーっ!?」

 

「案外似てるかも……? 凄いね、ソース」

「フッ。だろ? レイヤ」

 

 いつの間にか隣に座っていたレイヤにドヤ顔を向けつつ、ギャアギャアうるさいラウンジで腹を満たした。この日は結局、マスキングが満を持して披露したイチゴのホールケーキが登場するまで騒ぎは続き。

 

 ケーキを食い終わった後は、ライブの感想や反省に花を咲かせるのであった。

 


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