RASのマネージャーにされた件【完結】   作:TrueLight

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45.迸る情熱

「パレオっ」

「出しまぁす☆」

 

 ガールズバンドチャレンジも予選最終ライブを終え、ついに武道館進出を決定づけるランキングの更新時間を迎えた。ちゆの言葉にパレオちゃんが端末を操作し、スタジオ内のパネルに画面を表示させる。真っ先に映し出されたのは……。

 

【1st.RAISE A SUILEN】

 

 そして、

【2nd.Roselia】

 

「よぉしっ!!」

 

 正直確信はしていたんだが、改めて現実となったRASの武道館進出に、俺は声を上げてガッツポーズした。後半になるとRoseliaはもちろん、ポピパも凄い追い上げを見せていたから油断はできなかったのだ。特にポピパはdubにも乗り込んできたくらいだったしな。

 

「なんでソースが一番喜んでるのよ」

 やれやれと首を振るちゆも、声は高く頬は緩んでいた。他の面々も同じように喜色満面だ。

 

「そらお前、俺はRASの一番のファンだぞ? 嬉しいに決まってるだろ! ……今からでもちょん切れば俺もワンチャンステージに立てるか……?」

 

「なワケないでしょっ!? いい加減その下品なJoke(冗談)やめなさいよ!!」

 

 おかしなヤツだ、全裸で風呂に突撃してきたり、薄着でベッドに浸入するクセにチ〇コの話題はNGらしい。

 

「ふふ……。ソースには悪いけど、きっと優勝するから。応援よろしくね」

 

 透き通った微笑みで言ったのはレイヤだった。うーむ、俺の爆笑ギャグも通じなくなってきたな……躱されちまう。マスキングは苦笑するだけだし、標的にされないようにかパレオちゃんは聞こえませんアピール。真面目に狼狽えてくれるのなんてロックくらいだ、お兄さん切ないよ!

 

「そりゃもちろん、ずっと応援してるさ。ここまで来たら優勝あるのみ! だろ?」

「っす! 一緒に()れないのは仕方ないっすけど……絶対、ソースさんの期待に応えて見せるんでッ!」

 

「……ああ、観客席で楽しませてもらうよ。二人は、確か武道館の経験あったよな?」

 

「そうなんですかっ!?」

「はい☆ お二人ともサポートではありましたが、武道館での演奏経験がおありですよ♪」

 

 俺の言葉に驚愕したのはロック、次いで答えたのはパレオちゃんだった。当のレイヤとマスキングも、目を丸くしているロックに頷きで肯定している。

 

 ちゆは……と思って目を向けると、真面目な顔でこちらを見ていた彼女と視線がかち合った。こっちを見てた……? 偶然かな?

 

「チュチュ、どした?」

「っ……いえ、何でもないわ。……私、ガールズバンドチャレンジの運営にちょっと連絡してくる。ゲネプロ(リハーサル)のスケジュールも出さないといけないしね」

 

 そう言うと、ちゆはスタジオから出て行ってしまう。どしたの? と残された俺たちは顔を見合わせたが、互いに思い当たる節は無いらしく。しゃーないのでレイヤとマスキングの武道館体験談を聞きつつ、本番のイメージトレーニングに時間を費やした。

 

 それからちゆが戻ってきたのは30分ほど経ってからだ。スマホ片手にニンマリとしていたので、本人に言う気が無いなら無理に聞くこともないかと放置する。ただ、一つ気になったのは……。

 

「みんなっ、ぜっっっっったい優勝するわよ! ソース! 最前列でしっかり見てなさいっ!!」

 

 30分前の神妙な様子とは打って変わり、意気揚々と俺に指を向けるちゆの姿だった。電話でなに話してたんだってばよ……?

 ほんの少し不安を覚えたが、それからは六人。武道館ライブに向けて、改めて打ち合わせを始めた。

 

 予選ライブで一度勝利したとはいえ、相手はあのRoseliaだからな。余計なことに意識を向けてたら、それこそ惨敗しかねん。武道館のような大舞台じゃ俺もそこまで有用な意見は出せなかったが、男視点から相談に加わり。俺たちは日が落ちるまで、決勝ライブのことを話し合ったのだった。

 


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