鬼滅の刃~総大将の軌跡~   作:大筒木朱菜

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第1話:大改訂版(2022/04/15)

 

 

【視点:奴良リクオ】

 

 

 

鬼による冨岡家襲撃まで残り15分。俺が分かるのは正史鬼滅世界の主要メンバーに起こる出来事の日時のみなので、冨岡家が襲撃される前に他の一般人が襲われることも考慮して45分前から野方村を巡回しているんだが、惡鬼(おに)と遭遇する気配すらない。

 

最初に惡鬼(おに)に襲撃されるのが冨岡家だとするなら、冨岡蔦子を救済することができず、ネガティブ義勇を生み出すことになってしまう。

 

今の俺は阿朱羅丸の身体強化の影響で五感も強化されているんだが、かまぼこ隊+αほどではないので、超聴覚や超嗅覚、超触覚で広範囲索敵することもできない。

 

俺の最大索敵範囲は精々半径30mといった所だからな。血の臭いや人間らしくない音が聞こえるまで村を巡回し続けるしかないか。

 

そんなことを考えながら10分ほど巡回を続けていると鉄と腐った食べ物を混ぜた様な悪臭が臭ってきた。

 

音に変化がないことから臭いだけが先に流されてきたんだと判断した俺は、屋根の上なども走りながら最短距離で臭いの元へと向かう。

 

臭いの元へと近付くにつれて腐った魚の様な悪臭と、黒板を引っ掻く様な音が聴こえ始めた。今まで多くの惡鬼(おに)を滅殺してきたから分かることなんだが、雑魚特有の悪臭と悪音といった所だ。

 

冨岡家襲撃の2分前。俺が目的地に到着すると、そこには3体の惡鬼(おに)が一件の民家の前で言い争いの様なことをしていた。

 

惡鬼(おに)達はすぐに和解したのか、1体はその民家の前に留まり、残りの2体は別の民家へと向かい始める。

 

そして、民家の前に留まっていた鬼が玄関戸を壊そうとした瞬間、戸の方が先に開き始めた。開かれる戸の向こう側から見えた姿は冨岡蔦子と思われる10代後半から20代前半の女性だった。

 

それを目視した瞬間、惡鬼(おに)より早く行動する為、俺は雷電型(イカヅチノカタ) 二式・改〝霹靂一閃・神速〟を使って惡鬼(おに)に向かって突っ込み、抜刀術ではなくフライングヤクザキックを見舞ってやった。

 

 

「ぐべらぁッ!」

「………へ?」

 

 

フライングヤクザキックを喰らった惡鬼(おに)は、身体を鳩尾からくの字に折ると同時に無様な呻き声を上げ、後転で吹っ飛びながら地面に何度も頭を打ち付け、家から出てきた冨岡蔦子は目の前で起こった急な出来事に呆然としながら間抜けな声を上げていた。

 

横目で冨岡家の中を見てみると、正史では押入れか何かに隠れている筈の冨岡義勇の姿を確認することができた。これはこの世界が並行世界であるから起こった違いなんだろうか?

 

 

「えっ?えっ?い、一体何が?」

「こっちのことは気にする必要ねぇから、玄関戸を閉めて家の中でじっとしててくんねぇか?でねぇと、これから女子供には少しばかり刺激の強い光景を見ることになるぜ」

 

 

俺が冨岡蔦子とその後ろにいる冨岡義勇へ家の中に閉じ籠るよう告げていると、蹴り飛ばした惡鬼(おに)が凄い殺気を飛ばしながら叫んできた。

 

 

「テメェ、何者だ!?俺の飯の時間を邪魔してタダで済む思ってんのか!!?」

「ひっ!!」

 

 

惡鬼(おに)の殺気に中てられたのか、冨岡蔦子は小さな悲鳴を上げると同時にその場にへたり込んでしまった。姉の傍に近付いていた冨岡義勇も腰を抜かしてしまっている。こりゃあ動けそうにないな。

 

惡鬼(おに)の放った殺気と吹っ飛んだ時の物音が気になったのか、他の民家を襲撃しようとしていた惡鬼(おに)達も戻って来た。

 

再生力は中々のものみたいだが、血気術が使えない雑魚惡鬼(おに)だ。この程度なら10体いても問題ない。

 

だが、冨岡姉弟が腰を抜かして動けないことを考えると、念の為俺にヘイトを集中させ、冨岡姉弟に被害が及ばない様にしといた方がよさそうだな。

 

 

「おうおう、元気いいな。さっき蹴った感触だと右腕と一緒に右半身の内臓と肋骨も潰した筈なんだけどな。

それに頭を地面に何度も打ち付けた際に首の骨も折れた筈だろ。随分と再生速度が速いじゃねぇか。今まで何人喰って来たんだ?」

「テメェ、俺達の事を知ってるってことは鬼狩り――鬼殺隊って奴か?」

「はぁ?鬼殺隊?あんな政府非公認組織と一緒にすんな。俺は帝国軍元帥府直轄対惡鬼殲滅部隊――帝鬼軍の大佐だ」

「帝鬼軍だぁ?」

「あの惡鬼(おに)を1体相手するのに5人組で向かってくる噂のヘタレな軍の狗かよ!」

 

 

確かに鬼滅組は5人1組の班で行動しているが、雑魚惡鬼(おに)1体相手に複数人で相手取ることなど殆どない。

 

そういったことをするのは、組に入り立ての新人への実戦教育をする時のみな上、新人に付き添うのは班長だけだ。

 

副班長や他の2人の鬼殺隊員は自分達の担当地区に他の惡鬼(おに)が存在しないかの確認をすることが殆どだ。

 

5人で一斉に攻撃する相手なんて、十二鬼月の下弦や下弦級の厄介な血鬼術を持つ惡鬼(おに)くらいしかいない。

 

 

「見た所、10歳くらいの餓鬼じゃねぇか。仲間呼ばなくていいんでちゅか~?(笑)」

「そういうテメェ等も群れてんじゃねぇか。人間を自分達の食い物でしかない劣等種と見下してる割には、自分達に噛みつく存在が現れた途端に群れ始める。

どっちがビビりなんだ?ってか、そっちこそ仲間呼ばなくていいのか?まぁ、雑魚がどれだけ群れ様が雑魚でしかないけどな。

なんなら十二鬼月の上弦を呼んでもいいぞ?上弦の皆様、鬼狩り気取りの軍の狗が怖いんでお助け下さ~いってwwww」

 

 

正史鬼滅世界で感情を制御できないのは未熟者と胡蝶しのぶが言っていたが、どうやら俺は未熟者の様だ。

 

俺にとって帝鬼軍を馬鹿にする=鬼滅組を馬鹿にする=家族を馬鹿にすることだからな。

 

直接害された訳でも無いが、家族=〝特別〟で〝特別〟を馬鹿にされると、同じ様に相手を馬鹿にした上、最低でも半殺しにしたくなる。

 

今回は相手が惡鬼(おに)だから滅殺確定だ。それにしても、我ながら稚拙な煽り文句だ。もし、煽の呼吸を使う煽柱が存在するのならば、是非とも継子にして煽の呼吸の教授をして貰いたい。

 

だが、こんな稚拙な煽りでも雑魚には効果覿面だったみたいだ。惡鬼(おに)達は全員が額に青筋を立てていた。

 

パワハラキングと名高い鬼舞辻無惨によって生み出されたとは思えない煽り耐性の低さ。取り敢えず、もう少し稚拙な煽り文句を言っておこう。

 

 

「そういえば、お前ら雑魚からすれば殿上人ともいえる十二鬼月の上弦も、帝鬼軍の少将と大佐を相手に、戦いの途中で逃げ出す腰抜けだったな。

確か、上弦の壱から肆の4体が少将と3人の大佐と対峙して、全員を殺しきることもできず日の出にビビって逃げ出したんだったか?。

鬼舞辻無惨が選別した『ぼくのかんがえたさいきょうのはいか』がその程度の集団とか、抱腹絶倒もんだ。

っていうか、十二鬼月にすらなれんテメェらはどういった存在な訳?ビビりや腰抜け以下で最下層とか、ただの塵滓(ゴミカス)じゃね?」

 

 

俺が煽り文句を言い終えると、惡鬼(おに)達は額に青筋を浮かべたまま、何故か白目で突っ込んできた。しかも、何故か縦一列で。もしかして、ジェットストリームアタックか?

 

3体とも同じくらいの背丈なんで、〝霹靂一閃〟を使えば一気に片づけられるが、ここは敢えて悪ノリしてみよう。

 

俺は阿朱羅丸を抜刀すると全集中の呼吸術でヒュゥゥゥゥと息を吸い込み、惡鬼(おに)達に向かって駆け出す。そして―――

 

 

「死ねぇッ!!―――!?俺を踏み台にした!!?」

「……全集中、水龍型(ミズチノカタ) 五式・改〝打ち潮・流流〟

「「ガッ!!」」

 

 

俺は先頭の惡鬼(おに)を踏み台にした後、予想通り上に跳んできた2体目と3体目の頸を〝流流舞い〟の様な空中機動と〝打ち潮〟の斬撃を組み合わせた〝打ち潮・流流〟で斬り落とした。

 

俺が攻撃した勢いで地面へと滑るように着地した時、踏み台にした惡鬼(おに)は地面に四つん這いになりながら塵となっていく仲間(?)を呆然と見ていた。

 

 

「ま、真島(ましま)織照(おるてか)()られた?それも一瞬で……?」

 

 

あっ、今()った2体は名前も黒い三連星っぽかったのか。ってことは、こいつはガイアなのか?そう言われれば、そんな見た目な気もする。

 

まぁ、そんなことはどうでもいいか。残った惡鬼(おに)もさっさと()ってしまおう。そんなことを考えながら残った惡鬼(おに)に向かって歩を進めると、急に惡鬼(おに)は駆け出し始めた。

 

普通なら逃げ出したと思うだろう。だが、惡鬼(おに)が駆け出した先は冨岡家だった。恐らく、冨岡蔦子か冨岡義勇を人質にして逃亡しようとでも考えたのだろう。

 

俺は水龍型(ミズチノカタ)とは異なるシュフゥゥゥゥという呼吸音の全集中の呼吸術を使い、離れた距離にいる惡鬼(おに)目掛けて剣技を繰り出す。

 

 

「全集中、冥神型(イザナミノカタ) 九式・改〝八咫烏一閃・神速〟

 

 

冥神型(イザナミノカタ) 九式・改〝八咫烏一閃・神速〟とは「一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた」に登場するアレン=ロードルの我流剣術 八の太刀〝八咫烏(やたがらす)雷電型(イカヅチノカタ) 二式・改〝霹靂一閃・神速〟を組み合わせた複合剣技。

 

〝霹靂一閃・神速〟の神速移動と〝八咫烏〟の同時八連撃。るろうに剣心で例えるなら瞬天殺(しゅんてんさつ)(移動速度)+多重次元屈折現象まで昇華させた九頭龍閃(くずりゅうせん)(乱撃速度)の複合技といえば分かるだろうか?

 

ちなみに冥神型(イザナギノカタ)は別名が黄泉の呼吸で一応俺が編み出した新しい呼吸となっているけど、実際の所はアレン=ロードルの我流剣術+αで構成されている。

 

あと、冥神型(イザナギノカタ)には対の型式である天神型(イザナギノカタ)が存在するけど、こっちは基本的に黒鉄一輝の秘剣で構成されている。

 

まぁ、天神型(イザナギノカタ)は黒鉄一輝の秘剣以外に、刀藤流で構成した《b》藤ノ秘剣や、天霧辰明流で構成した霧ノ秘剣、飛天御剣流で構成した龍ノ秘剣などもあったりする。

 

例えば龍槌閃は、天神型(イザナギノカタ) 龍ノ秘剣一式〝龍槌閃〟となる。時雨蒼燕流は雨ノ秘剣、陸奥圓明流は修羅(しゅら)ノ秘拳といった感じで、それぞれの流派を現す様な言葉を使って表現している訳だ。

 

閑話休題。冨岡姉弟へと駆け出していた惡鬼(おに)は、姉弟の元に辿り着くことなく八つ裂きになり、その体が地面に着くより早く消滅した。

 

もし、鬼舞辻無惨が惡鬼(おに)越しに見ていたとしても、この複合秘剣なら何が起こったか知覚することすらできないだろう。何せ、気が付いた時には八つ裂きになっているのだから。

 

取り敢えず、これで俺の第1ミッションである冨岡姉弟の救済は成功した。姉が死ななかった以上、冨岡義勇は一般人として生きて行くことができるだろう。

 

まぁ、二度と惡鬼(おに)に襲われないという保証はないので、冨岡家へ藤の花の香炉を送ろうと思う。

 

正史的には冨岡義勇の離脱は戦力低下に繋がるだろうが、親父が死んで以降は帝鬼軍で戦力強化――主に1人の隊員が複数の呼吸術を使用可能とする能力強化が行われているので、10年も経たない内に下っ端隊員の地力が最低でも鬼殺隊の戊相当にはなるだろう。

 

悲鳴嶼行冥の冤罪事件は冨岡家襲撃事件とほぼ同時(1時間違い)に発生しているから青梅町担当の班に任せたんだが、大丈夫だろうか?

 

襲われる明確な日時や悲鳴嶼行冥の詳細な人物像などは話せてないからな。

 

 

「風の噂で鬼殺隊員になれそうな人物の話を耳にしたから、巡回ついでに帝鬼軍へと引き込めそうなら家族共々保護してくれ」

 

 

としか言えてないし。……まぁ、俺も全知全能って訳じゃないから、助けられなかった時は諦めよう。それよりも次の救済対象は1年後の胡蝶家だ。

 

今回の失敗を生かして、他の救済したい奴らの正確な住所を巡回ついでに調べる様にしておくか。

 

 

生存真菰の適性呼吸(日輪刀の色)

  • 水の呼吸(水龍型)しかないでしょう
  • 早さ重視の雷の呼吸(雷電型)
  • 女の子らしい花の呼吸(繚乱型)

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