恒一君は思春期   作:九重 朱音

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エピローグ

 夏休みも今日で終わり、明日からは二学期が始まる。

 

 あまり休めなかった夏休みに、もう少し休めないかと思いつつも、皆(女子)の制服姿に思いを寄せる。

 こころがぴょんぴょんしながら目覚めて、一日を過ごす。

 

 ゆっくりとお風呂に浸かり、美味しく寂しく晩ご飯を食べた後に部屋に戻ってからゆっくりしていると、ふいにおばあちゃんが部屋に来た。

 

 どうしたのかと尋ねると「今までのことは忘れましょう」などと、意味の分からないことを言われる。

 

 そのまま部屋に取り残された自分は、呆然としながらその言葉の意味を考える。

 

 考える。

 

 何か、恐ろしい事が自分の知らぬ間に起きている気がする。

 

 逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。

 

 

 

 今までのことは忘れるとは?

 

 忘れる必要のあることとは?

 

 記憶は災厄のせいで多少こんがらがってはいるが、殆どは問題無い筈。

 

 記憶。

 

 記憶違い。

 

 災厄による記憶の改竄。

 

 改竄される記憶は、災厄に関わること。

 

 死者に関わること。

 

 もう一人の存在価値。

 

 怜子さんの存在。

 

 違和感を覚えないように、関係の薄い人物からゆっくりと記憶が変質していく。

 

 

 しばらくの間、

 怜子さんが不安定の間、

 自分は怜子さんと一緒に寝ていた。

 

 それが改竄される?

 

 自分は誰かと寝ていたという記憶は残るが、

 怜子さんと一緒に寝ていたという記憶は消える。

 

 消えてしまうので、辻褄が合うように、

 当然消えたところに誰かしらがあてがわれる。

 

 自分が一緒に寝ていても可笑しいが可笑しくない。

 

 改竄できる範囲で違和感の存在しづらい人間。

 

 

 

 もしや、

 

 もしや、自分が怜子さんと一緒に寝ていたという記憶は、

 

 自分がおばあちゃんと一緒に寝ていたという記憶にすり替わっている?

 

 

 自分は死者を殺した存在だから未だに強く記憶に干渉されてはいないが、

 

 おばあちゃんは既に怜子さんは亡くなっていたものとして、記憶が復元されている。

 

 誰が恒一と一緒に寝ていた?

 

 怜子さんが居なくなったその場所に、誰があてがわれた?

 

 恒一はおばあちゃんと一緒に寝ていた?

 

 

 記憶は改竄され、将来的には自分の記憶も同じように違和感無く改竄される?

 

 

 14の思春期まっ最中の少年が、60超えたおばあさんと同衾していただなんて。

 

 笑えない

 

 笑えなさすぎる。

 

 

 嘘だっ!

 

 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ

 

 嘘だっ!

 

 

 

ごめん」

さよなら。」

 

 

 

 

 

ぼくの十五歳の夏は終わった。

 




以上で完結です。
読了ありがとうございました。

恒一君自殺endです。

Another2001早く読みたいです。

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