ヒーローに憧れた1人の少女   作:月の少女

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いまだかつてないほど短いですが書く時間がないんですよ。っていう言い訳です


エスパーは気づいていた~ボロス戦③~

ガビが焦っているその頃、タツマキはもう現状を理解していた。ガビは確かに自分を遥かに上回る戦闘能力があることをタツマキは認めていた。だが、彼女が相手にできるのはせいぜい人や生き物である場合であり、今回のようにとんでもなくでかいものが何百個も落ちてくる場合の対応は苦手だということは理解していた。だからこそ、ここはタツマキの出番である。

 

タツマキもこの砲弾には気付いていなかった。だが、すべてのことを気付いていなかったわけではない。ガビが必死に化け物の弱点を見つけようとしている時から彼女は空気を静かに揺らすほど集中していた。その時の空気の揺れはしっかりタツマキも理解していた。だからその空気の揺れに乱れが生じたとき、あぁ何かあったんだと悟り、この砲弾に気づくことができた。つまり、ガビが集中していなければこのまま砲弾が落ちていたことだろう。

 

残念ながら、この砲弾のことには彼女も一切予想をしていなかった為、タツマキ自身も少し驚いていた。しかしそれ以上にガビが砲弾に気づいてくれたことに感謝していた。やるじゃない、ガビ、と。プライドが高いタツマキは本人の前でそんなこと言わないだろうがしっかり心の中でガビのことを褒めていた。タツマキはまだ中学生の彼女が人を守ろうと行動する勇気があることをすごく感心している。その上、彼女が殺し屋という立場であったとしてもなにか迷いを見せるわけではなくなんなら誰よりも早く行動を起こす姿を見てこいつは次世代のヒーロー界を担う人材になるだろうと思っていた。だからタツマキは今日のガビの力を再確認して確信した。彼女は、誰よりも優れたヒーローだ。まさに戦神の申し子だろう。たとえブラストがいなくたって、この子と私がいればヒーロー協会はやっていけるはずだ。だから...今、ガビはこんなところでやられてはいけない。こんなところで、ガビを死なせてなるものか。私たちが生き残るためにも、人類を守るためにも、彼女は必要とされる人材ということに間違いない。だから私は彼女を守る。

 

タツマキはすぐに地上へ降下してガビのもとへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あー、本当にどうしよう。考える時間なんてもう残ってない。真空拳使ったところで全部弾き返すのは無理だ...でもなにもしなかったらここは全滅。どうせあの化け物は復活するだろうしなぁ...でも、今できるのって真空拳ぐらいなんだよなぁ。どうしよう。てか、考えてる今この時間すら無駄なんだよなぁ...だからって他にいい案があるわけじゃないけどさぁ。あー、ヤバイ。今回こそ死ぬって。やっぱり私は死ぬ運命なのかな。なら仕方ないか。でもなぁ...あと少し早く気づいてたらタツマキさん呼ぶなりなんなりできたかもしれないのに。てかそうじゃん。タツマキさんいれば砲弾絶対弾き返せるじゃん。え、名案。タツマキさん呼べばいいじゃん。いやいや、今からじゃあ間に合わないのは明らか。でも...でもタツマキさんいたら絶対勝てるし...どうしよう。

 

「あー...助けて、タツマキさん」

 

空を仰ぐと見えたのは、晴天。空がとてもキレイだ。清々しいほどの広い空に絵の具を溶かしたような薄い青。なんだろ、絵に書いたような青空だ。なんかもう心が浄化されるような空だ。スッキリした気がする。

 

別に私は負けたっていいんだ。私が死んでも、他の人たちはきっと負けないから。ヒーローはこの世に一人じゃない。何人も、何十人も、何百人もいるんだ。私だけじゃない。だから...大丈夫。

 

そして覚悟を決めた。もうこれはどうしようもないから当たって砕けろだ。ダメ元で、あそこに突っ込む。死ぬかもしれないけど今度こそ仕方がない。なにもしないで死ぬよりはマシだと思うしね。だから私は諦めて真空拳の構えをした。そして壁を蹴り上空へ向かう。幸い、砲弾はまだ発射されていなかったけどそろそろ来る。何も気づいていない4人は驚いて

 

「なにやってんだ、ガビ!?」

 

と叫んでいる。私は地上に向かって

 

「お願い、伏せて!危ないです!」

 

と叫び返して、真空拳を発動させた。その瞬間だった。船が光った。砲弾が発射されて轟音が響く。数が多い。こりゃ無理だなって思ったけどとりあえず私がいるところから半径10メートルの砲弾はすぐに打ち返せた。が、それ以外のところを全く打ち返せなかった。下の4人はもちろんA市付近の町も消し飛ぶかもしれない。それぐらいの量が降り注いでいた。たぶんこのままだと爆風で私も上空も地上も全員吹き飛ぶ。あぁ、死ぬか。くそう。そう思いながらも私は方向を急転回させて残りの砲弾に向かった。そしてとにかく砲弾を止めようとした。このままじゃ終われない。負けるとしても、最善の策を尽くさなきゃ。まだ止めれる!だから早く…早く止める!止めてみせるっ!そう思っていた。

 

…なのにだ。なぜかピタリと体が止まってしまった。そのまま急降下するのかと思ったらそうでもなく体が空中で止まっている。深海王の時を思い出す。この前も確かこんな感じで止まったんだっけ。いや、今回はこの前のときみたいに意識がプツプツ切れたりする前ぶれがあるわけではなく突然に止まってしまった。だからこの前とは違うんだろうけど…また神様らしきおじさんが止めてるのかな?また体が動かないんだけど。てかのんきに考えてるけどヤバい、砲弾落ちる。そう思って焦りが止まらなくなった。が、私の目が正しければなぜか砲弾も一緒に止まっている。ピタリとも動かずキレイなプラモデルのようにずらりと並んでいるのだ。不自然に思ったその時だろうか、上空から大きな声が聞こえた。

 

「他のS級4人は何してんのよ。まさか下から傍観してるだけなの?頼りないわね!」

 

フヨフヨと浮く小さな体。緑色のクルクルした髪の毛。そして、黒色のワンピース。私はその人にゆっくりと地上に向かって体を連れて行かれる。この声の主を私は一瞬で理解した。S級のタツマキさんの声。危機一髪のところでようやく希望の光が現れてくれたのだ。

 

「全く…私がいないと何もできないんだから。まぁいいわ。砲弾、お返しするわ。」

 

タツマキさんが手のひらをクイッと上に向けると空中で止まっていた砲弾は宇宙船に向かって発射され、船が揺れるほどの大爆発を引き起こした。エスパーである彼女にとってこんなことは朝飯前なんだろうけど私にはあんなことできない。本当に一瞬だった。私が苦労したことを来た瞬間に解決してしまった。タツマキさんが来てくれたおかげで助かった。これであとは地上いるバケモノを倒すだけだ。そう思って体を動かそうとしたその時だった。タツマキさんは私を呼び止めた。

 

「ガビ、あんたのおかげで飽和に気付けたわ。感謝するわ、さすがね。あとね、あんたの戦闘能力ならあんなバケモノ一瞬で片付くはずよ。弱点とかそんなもの気にしなくても勝てるんじゃないの?早く始末して。」

 

そういって彼女は私を睨みつけた。おおぉ、視線が怖いけどなんだか期待されてるっぽいな。これは戦うしかないね。そう思い、私は小さくうなずいた。そして深く深呼吸をする。

 

...ただ深呼吸とともに考えたくもないことまで頭を過った。もう一人の自分がこう言っている。

 

『タツマキさんがいなかったら私は何もできてないけどね。それでよく戦おうとなんて思うよね。』

 

リベリオンは太陽の光を浴びて輝いていた。その光が、私の目を眩ませる。そして不安が襲う。このまま死んでたら、私はどうするつもりだったんだろう。私はぎゅっと握りしめて怪物に向かって走り出す。ナーバスに考えるな、ここで勝負を終わらせる。サイタマさんだって今頃きっと戦ってる。不安になってどうする。タツマキさんになんか頼らなくたっていけるはずだ。だから...

 

「こんなところで、私はもたもたできないんですよ、怪物さん...早く死んでください」

 

 

 

 

 

 

 




ごめん、次はちゃんと6000文字ぐらい書くから許して

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