ヒーローに憧れた1人の少女   作:月の少女

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…崩壊編、めんどくさくなってきた。本編とどうやってつなげよう?


断ち切り~崩壊編⑧~

さっきから結構走っているけど久々に来たからだろうか。昔は散々通ったはずのこの廊下さえ見慣れない景色に変わっていた。なんでだろう、なんか違う。静かで、冷たい。冷めきったような雰囲気が漂っている。すごく嫌な気分になる空気だ。はぁ、気分わりぃ。早く親父のところまで行きてぇのに。まぁ、気分なんかどうでもいいんだけど。それよりもだんだん悲鳴が聞こえなくなっている。カイトさんとジン兄ちゃんが頑張ってくれたのだろう。無事だといいけど…大丈夫か?大丈夫だよな。そう信じてとにかく親父の部屋に進む。

 

「おい、イブキが来たぞ…っておわぁ!」

 

「おい慌てんなよ…落ちつけぇ!」

 

「おい逃げんな!ドンに殺されるぞ!」

 

数は少なくなっているとはいえちらほら人はいる。あまり手を出したくはないが邪魔だ。殺さない程度に手を出して黙らせておく。そして進む。単純な作業に見えるかもしれないが割と疲れる。まだカポとは会ってないけどもそろそろ遭遇してもおかしくない。早めに倒しておきたいけど…どうするかなぁ。てかガビ大丈夫なのか?それが心配だ。簡単には死なないだろうけどそれでも心配だ。何とかしないといけない。…大丈夫だとは思うけどまぁ急ぐか。

 

「ごめんよ、先を急ぐんだ。少々乱暴するけど悪く思うなよ」

 

いつもなら何も感じずにすんなり倒すことができるのになぜだろう、すごく後ろめたい。いや、理由はわかってる。いくら今は敵だとしても結局は同じファミリーの仲間。手を出すこと自体本来ならするべきではない相手たちだ。だから、鈍い。今日の俺は鈍い。怪我をしているわけでもなんでもないけど反応がいつもよりも遅くなっている。それに疲労が半端ない。あの二人にもお願いしたが、カポ以外には殺さない程度に攻撃している。間違いなく、幹部でもないこいつらには何の非もない。こいつらは上に命令されて動いているだけ。何の非もないのに殺すなんて俺もそこまで鬼ではない。ただ邪魔だから戦闘不能程度にはしなければいけない。結構めんどくさいが手加減しつつ攻撃しなければならない。その手加減を俺はどれぐらいまでしていいのかわからない。だから時間がかかるし思い切って攻撃もできない。それが今日俺をてこずらせている一番の要因だ。ここにいる奴ら皆殺しにしていいなら話は別だがそうもいかない。だから疲れる。だから嫌。

 

とにかく親父を殺したい。そして早く、ガビに会いたい。だから俺は戦う。だから俺は進む。どうにかして助けたいから、どうにかして会いたいから。多少の犠牲が出てきてしまってもあいつは助けなきゃいけない。がんばって、俺が助けるんだ。ケンジョウがいない今、助けられるのは俺のみだ。ガビの為…と思えばいきなり体が多少楽になった。体の力が抜けて罪悪感はあるがさっきよりも鈍さは少なくなった。

 

「…イブキさん」

 

突然耳元でささやかれたその言葉に俺は身を強張らせる。が、反応できたからすぐさま右足で蹴りを入れる。カポレジームで一番臆病で気弱な男、スー。殺しのスキルはジン兄ちゃんに匹敵する。ジン兄ちゃんのことを慕っていたはずだ。ファミリーの戦力の要のはず。The、陰キャって感じの男だしこいつには波がある。良いときは良いし悪いときはとことんやる気がない。そんな男なのだ。話したこともあまりないけどとりあえず静かな男…のはず。けどなんか…元気なくね?どしたんこいつ。血まみれだし、泣いた跡あるし、服ボロボロだし。てか違う、現在進行系で泣いてるな、こいつ。そう思って蹴ったあとだけど申し訳ない気持ちを持ちつつ心配して話しかけた。

 

「スーさん…だよな?あれ、どしちゃった?なんで泣いてるんですかい?」

 

スーさんはヨロヨロと立ち上がり泣きながら口を開いた。

 

「イブキさん…だよね」

 

「え、あぁうん。ごめん、蹴ったのそんなに痛かった?悪気ないから許して?」

 

冗談交じりにそう言ってみたが反応がない。ただぽろぽろ涙を零して泣いていた。どうすることもできないまま俺は立っていた。なんかあったんだろうな、と思ってただ彼を見つめていた。数分、沈黙が続いた。静かな空間に嗚咽だけが響く。そしてスーさんはようやく口を開いた。

 

「ごめんなさい、イブキさん。僕は…、ジンさんを先程、この手で殺しました」

 

ヒュッと一瞬息が止まる。あぁ、なんでかな。めまいもする。やばい、ジンさんが死んだ。俺のせいで。大切な人を失ってしまった。あの人は殺されちゃダメな人なのに、殺されてしまった。俺が無茶言ったからだ。後悔が押し寄せて目の前が揺れて見える。めまいが止まらない。やってしまった。その言葉が頭の中をリピートしている。

 

けどすぐに切り替えた。ふーッと息を吐き足に力を入れる。飛び出した俺は泣いているスーさんを掴みナイフで切り裂く。あぁ、俺は今人を殺している。その感覚をなるべく感じないように機械的に刺しまくった。弱り果てているであろう心に加えて体まで傷つけてしまうのは申し訳ないな、と少し悲しくなった。最後に口をパクパク動かして何かを言っていたがわからない。けど、辛そうってことはしっかりわかった。同情はできないが俺は小さくゴメンな、と彼に言った。心臓をグサリと刺すのは好きじゃない。俺はそもそも他人に手を出すことが本当にない。人には、生きてほしい。仕事であろうとほとんど他のファミリーに殺すことを頼んでいる。だって死んでしまうのは嫌だし死んでほしくない。俺は死にたくないとずっと思ってる。それはきっと誰でもそうなんだろうと思う。だから俺はわざわざ人を殺して未来を奪いたくない。生きてほしい。ジンさんも、スーさんも、他の奴らも。生きていてほしい。けど、そんな綺麗事は今回は言えない。言ってたらきりがない。気持ち悪いがとにかく立て直す。数人…いや、数十、数百人死んでしまったとしても関係ない。申し訳ないが今優先すべきはガビの救出と親父の殺害。ここで俺が止まったらジンさんの死が無駄になってしまう。スーさんも本来なら何も悪くないはず。だけどスーさんはあの親父の仲間。カポなら特に容赦できない。だから申し訳ないがここで死んでもらわなければいけない。だって、今のスーさんは敵だから。

 

「…敵、だもんな」

 

ナイフが胸を貫通していた。殺しってのはスマートにするべきなんだろう。こんなに派手にしていいもんじゃないと思う。なるべく足跡を残さないように短期間で一瞬で殺すべきだと思う。だからスーさん、今痛かったんだろうなって思う。ぐちゃぐちゃになっている彼はまるで化け物の様だった。ごめん、仕方ないんだよと心の中で繰り返すけどそれでも気持ちは晴れない。

 

仕方ない。

 

仕方ない?

 

目的のためだったら人はいくらでも殺していいのか?

 

わからない。

 

頭の中がごちゃごちゃだ。たった1人目の前で倒れているだけでこんなに思考は狂ってしまうものだったか?と過去を思い出すが残念ながらそんなわけではなさそうだ。いくら目の前で人が殺されても今日みたいに罪悪感に襲われることはなかった。いやまぁ今までも罪悪感ゼロってわけじゃないけど。とにかくわからない、これはしていいことだったか?ガビを助けるためにこんなに犠牲を出していいのか?

 

ちょっと待て、あの少女一人のために俺はここまでやってきたのか?いや、親父を殺すためだ。でもガビを助けることも大切だった。ん、何のためにアメリカに来たのかわからなくなってきた。ガビのため?親父のため?何のため?何のために戦った?

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ、何が正しいんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

…わかんねぇな。

 

「…ねぇ、何が正しいと思う?俺さ、ぶっちゃけ早く帰ってガビと寝たいんだわ。でも、ガビ1人のためにここまで犠牲を払っちゃったことは本当に申し訳ないと思うんだよね。だから…いやもうよくわかんねぇわ。何が正しかったかもうわかんねぇ。人殺したことあんまりねぇからよくわからんけど人殺すのって辛いよな…ジョンソン」

 

「俺にもわかんねぇよ、イブキ」

 

後ろにいる男には答えを求めたつもりだったが残念、こいつも迷っていやがった。親父に誰よりも忠誠を尽くしてドンを誰よりも支えている男、ジョンソン。多分、親父の次に手強い相手である。こいつは命令に従わないことはない。私情を挟まないしド親父の為に常に行動している。だから俺を見つけてしまったから真っ先に俺を殺さなければならないといけないはずだし今こいつの前にいるのは危険だと思う。普通に殺されてもおかしくない。いつものあいつなら喋る隙も与えず敵を殺すはずだから。なのに今は、攻撃してこない。ていうかなんか声が疲れている。スーさんもジョンソンも精神的に疲れているらしい。俺も病みかけてるけど…なんかあったんか?そもそも俺が油断しているだけでもしかして殺されちゃうか?わっかんねぇ。今ここで殺すべきなんだろうけど…なんでだろう、今のあいつの声を聞く限りここで今すぐあいつを殺す気には全くなれない。目的があったとしても今はこいつに攻撃なんかできない気がする。よくわからない感覚だ。でもまぁとりあえず向こうが戦う気がないのならここで少しあいつとは話がしたい。

 

ナイフと持っていた銃を懐から出して床に置く。そして両手を挙げて後ろを振り向いた。

 

「あんたが何考えてんのか知らんけど今戦う気ないだろ。ならちょっと話したい。俺も今は攻撃する気にはなれない。本当なら今すぐにでもガビ助けるべきなんだろうけどそれより話したい。」

 

「…奇遇だね、俺もだ」

 

あいつも武器を下ろして胡坐をかいた。そして俺にも座るように合図をしてきたから俺も素直に床に座る。今のこいつは絶対に攻撃してこない。確信できる。だからちょっと話したい、ここで。こいつには聞きたいことがたくさんある。と、思ったがそれより先に向こうが苦しそうな顔で話し始めた。

 

「…お前はよくやってるよ、日本で。お前こそ今のドンにふさわしく見える。俺の目から見たらな」

 

重々しい口調だが明らかに心からそう思っているような声だった。敵であるはずの俺に言う言葉ではないしあいつは今しれっと親父を否定した。本当におかしい。昔のあいつとはかけ離れている態度と言動。心配になるほどおかしくなっている。何があった、アメリカで。何があってジョンソンは変わった?何があって今ファミリーはおかしくなっているんだ。

 

「なぁジョンソン。何があったのか聞きてぇ。何でいきなり日本を攻めたのか。何でいきなりケンジョウを殺したのか。何でいきなり変な行動を起こしてるのか。あと…親父は何した。明らかにおかしいだろ。あんたが親父に対してそんな意見言ってるところなんて今まで見たことねぇ」

 

「…話せば長くなるさ。だけど時間がない。今の俺はもう何をすればいいのかもよくわからん。けど、このファミリーを救えるのはイブキ、お前だけだ。」

 

床に置いてあった銃をあいつは壁に投げ捨てた。そしてはぁとため息をついてぐちゃぐちゃになった紙をポケットから取り出して俺に渡した。なんだこれ。不審なものではなさそうだな。そう思って俺は紙を受け取る。その紙を開いて俺が読み始める前にあいつはおい、と言ってこちらを向いた。が、そのあとはバツの悪そうな顔になってうつむいてしまった。何考えてんだ?としばらく見つめていた。そしてはぁ、とため息をつきながらこう言った。

 

「今回ばかりはドンが何を考えているのかわからない。このままだとファミリーは間違いなく崩壊する。さっきまでは指示に従っていたが…もうだめだ。頭が狂いそうだ。」

 

「く、狂うだぁ?なんだ地獄絵図でも見たか?それともなんだ、死にかけたか?まぁ死にかけにしては身なりが綺麗だけどよ」

 

心配と冗談を混ぜつつ言ってみたが向こうは顔を青ざめながらいや、違うんだ…と言った。そしてこの世の終わりのような深刻な顔をしてうつむいている。ジョンソンはしばらくこちらの瞳を見つめ続けていた。そして、こう言った。

 

「…さっきカイトが息を引き取ったんだ。その時にイブキもジンも殺さなければいけないって思ってたけどね…もうあの人が正義だとは思えない。」

 

さっきと同じ感覚でまた頭がフリーズした。カイトさんも死んじまったなぁ。と、胸が締め付けられた。ふたりとも、俺が巻き込んだせいで死んだ。それが辛くて、少し視線を落としてしまう。やばい、巻き込むんじゃなかった。あの人たちは死んだらいけなかったはずなのに、と後悔も襲う。けど仕方ない。その一言で終わらせるしかない。血も涙もない言葉だが今はつべこべ言ってられないんだ。深呼吸。今はそれよりもジョンソンだ。何が正義かわからない…どういうことだ。まさか親父のことをあいつは裏切るつもりか?あの忠誠はどこへ行った?

 

「お前親父は?別に殺してしまったことは仕方ねぇ。今の俺たちは敵同士だから。けど…お前親父を否定したか?」

 

「俺が尊敬したのは力に溺れるのではなく弱者にも手を差し伸べて弱者に未来を与えていたドンなんだ。けどもうドンは変わってしまった。俺にはどうにもできないんだよ…だからイブキ、助けてくれ…俺は、あの人をドンとして認めたくない。あの人は…いやあいつはただの怪人なんだ!俺はどうすればいいんだ、怪人の奴隷にならないといけないのか?違う、俺はカポでありファミリーの秩序を守るべき者だろう。だから俺はあの人を止めなければいけないのに…もう何が正しいのかわからない…!」

 

怪人

 

その言葉にふと、違和感を持つ。怪人はガビが倒すべき奴らのことだと理解していたつもりだった。その表現を親父に使っただと?ということは親父は相当壊れちまってるらしいな。あのジョンソンが親父を否定するなんて考えられない。それほどに危険なのか?今の親父は。

 

「…本当に教えてくれ。何があった?」

 

「まずその紙を見ろ。俺にもよくわからない、その文書はな」

 

そういえば紙持ってたな、とぐちゃぐちゃな紙を開いてみる。するとどういうことだろうか、にわかには信じられない内容がそこにはズラズラと書かれている。それは、大切な人の命…ケンジョウやガビに関わることまで。疑問ばかりが頭を埋め尽くす。

 

「…裏切り?俺が親父を殺す計画を立てた?んなことしてないぞ、俺。しかも内通者って…ケンジョウ?待て、どういうことだよ…」

 

「わからない、勝手に作られた文書だ。これをいきなり俺たちに押し付けてイブキたちを殺せと言われたんだ。ある日突然な。」

 

「…突然?お前じゃあ理由もよく知らずにみんなを戦わせてたってか?理由も知らずにカイトさんとジン兄ちゃんを殺したのか?」

 

「理由はあったさ、ドンの命令だった。ドンに言われたことを行動に移しただけ。でも…今は命令に従えない。従いたくない、あの人に」

 

すごくむかついた。命令?命令ならわかる。けど…その後の言葉が引っかかる。従えない?逃げ道のような言葉に腹が立った。あの人たちの命を奪っておいてなんでそんなこと言うんだこいつは?

 

「…従えない?そんなセリフは命を奪う前に言えよ。殺した後になって後悔するとか遅いんだよ。それじゃまずいケーキを食いかけて残すようなもんだぞお前ふざけてんのか」

 

そう言うとあいつは顔をまっ青にして俺の腕を掴んだ。いきなりの出来事に俺は体をビクリと揺らす。見ればジョンソンはブルブルと体と声を震えさせながらとにかく必死そうに違う、違うんだ…と呟いている。どういうことだよ…と、ため息をつく俺に対してジョンソンは必死そうにこう伝えた。

 

「違うんだイブキ、あの人は…本当におかしいんだ!多分死んでしまった二人もあの人に殺されるより他のカポに殺される方がマシなんだ!お前も出会ってしまえばきっと殺される…俺はもういい、耐えられない。俺の正義とあの人の正義はもう違うんだ…だから、ここで殺してくれっ、あの怪人にだけは殺されたくない…!」

 

「は、はぁ?何がイカれてんだ?」

 

「数ヶ月前いきなりだ。いきなりドンがファミリーの奴らを殺し始めた。無差別にだぞ…?それで数ヶ月の間に何百人も死んでる。そしたら身内も殺すだの何だの言い始めて日本のファミリーを潰す計画が練られ始めたんだよ。それで、それでお前もケンジョウもガビも狙われてたんだ…でも、でもケンジョウは本当はド」

 

ぐちゃり。

 

一瞬のことすぎて目の前で何が起きたかわからなかった。あれ、時間止まったか?いや、なわけない。手は動くから。景色も一瞬ぼやける。あれ、めまいするな。少しボーッとして深呼吸。落ち着いてきたから立ち上がろうとして床に手をつくと生ぬるい液体が手のひらについてしまった。慣れかけてしまいそうな感触。それを拭ったときに吐き気がする生臭い匂いにも気がついた。理解した。あぁ、血か…と。景色のピントが合って何が起きているのかわかった。そこには目を見開いたままのジョンソンの首が転がっていた。胡座をかいて座ったまま、首だけが転がっていた。別になんとも思わなかった。敵だし。こんな臆病者がカポのトップだなんてヘドが出るね。俺は唾を吐いて後ろを向いた。そしてあくびをした。…親父、壊れたんだな。改めてそう思うと少し悲しくなった。俺はため息をついてフロアをあとにした。その時にちょっとカタリと音がして後ろを振り向いた。不気味にも、ジョンソンの首がこちらを向いていた。

 

…結局ジョンソンは必要としていた情報を多くはくれなかった。偽造の報告書、親父の命令。そしてアメリカでも起きていた虐殺。わかっているのはこの3つだけだ。しかし俺が聞きたかったのはそれの原因。なぜそうなってしまったのか事の経緯を1から説明してほしかったんだよ。なのに、教えてくれなかった。そのまま死んじまった。アホみたいだな、と呟く。まぁ期待した俺が馬鹿だったか。てか、あそこまで人は追い詰められるんだな、笑える。みっともない死に方だよ。まぁ、あれの殺し方がスマートだから静かだった。そこだけは認めよう。

 

目の前の大柄な男の姿。ひたひたと音を立てずにこちらへやって来る男は外見だけ見れば前とは変わらない。

 

俺の親父、このファミリーのドンであるマサオノ。何を考えているかもわからない。ただ、不気味。何もされていないのに目の前に現れるだけで背筋が凍る。冷や汗まで出てきた。存在するだけで空気が凍てつく。あいつの周りはいつも、冷たい。そう思った。無言のまま、その男は俺のいる方向へ歩いてきた。俺はただ何もできずに立っていた。攻撃されるか?と思ったが彼は俺の横を通り過ぎたあと、ボソボソ何かを言っていきなりジョンソンの首を蹴った。それから残された体に火をつけた。何やってんのか理解できなかった。なんでいきなりそんな無残なことするんだ?と思った。ただ、燃えるときの匂いが臭かった。そして、熱かった。無機質な表情を俺はただ見つめる。その顔がイラつく。親父に対して俺はジョンソンの体を燃やし尽くす炎のように怒りが湧き上がる。

 

「…おい、何やってんだよ親父」

 

地面を踏みしめて親父に対して構える。最終決戦だ、こいつを殺してガビを救う。それを成すために俺は思いっきりマサオノに殴りかかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回含めて5回以内でガロウ編入りまーす。

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