「......フッ‼︎........ふぅ」
3秒08、こんなものか。僕に限った話じゃないが中学生時に公に個性を使う、なんてことはあまり出来なかったからな、皆個性を使い慣れていないのも無理はないだろう。まだまだ発展途上ってところだろうな、兄さんとは比較にならないくらいに遅いし
「さて次は....エネルくんか」
ーーー全種目一位、でなければ除籍だーーー
「…………」
.....正直、僕にしてはらしく無いことではあるのだが、憤りを感じた。
確かに、彼の言葉には自信があった。生意気だとか、傲慢だとか、そういった言葉を投げかけるのが失礼な程には、彼の言葉には重みがあった。少なくとも試験に対して"
全種目一位、その言葉の意味を彼は理解して発言してるのか分からないが、これだけは言える。
彼のそれは、完全に後者だ。
......生憎だが僕の個性はこと今回の個性把握テストにおいては応用が利かせづらい、おそらく、個々のテストであれば、いくつかは上位に食い込めるものは存在するとは思うがトータルではどうなるか予測がつかない。
そう、予測がつかないのだ。
ーーー位置についてーーーーー
「…………」
全種目一位を条件とした除籍回避、この宣言を相澤先生が承認したあたり、彼の個性は本当に強個性なのだろう。少なくとも僕とは比較にならないくらいには。
無茶がすぎる。このクラス、金の卵の集団21名、そういった強個性から選抜された21名だ。自分とも引けを取らない、否、それ以上の個性を持った人がいても、全くおかしくない。......極論を言ってしまうなら、可能性が0ではない。ーーー
実際にいるかは分からないが、いるかいないかは問題では無い。そういった、自分にとって最悪の状況を想定することこそヒーローに必要な能力であると僕は考える。だから、それは無謀なんだエネルくん。
.....君の挑戦をバカになどはしない。ただ、他者を見下した、その態度はいただけない。負けるはずがないという楽観視はしてはいけない。
だが、覚悟は本物だった。僕にはそう見えた、だからーーー
ーーーーよーいーーーー
「………パチ…パチパチ………」
「見させてもらうぞ、エネルくん」
「バチバチ、バリバリバリバリ」
「君の個s【【ドン‼︎】】い......を...............」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーは?ーーーーーーーー
「........(パチパチ).....おい、相澤....(パチ).......タイムは?」
「....知るか、小数点第二位で測れないようなタイムを出すな」
「ふむ、では問題無く第一の関門は突破というわけだな、ヤハハ!!」
ーーー意外にも、このとき起こった現象について一番最初に理解したのが、先程からエネルに気を配っていた飯田でも、クラスメートの個性の把握に徹していた緑谷でも、ましてや八百万といった聡明な者たちでもなく、似通った個性のシンパシーとも言うべきか、上鳴電気であった。
そして
同時に理解していた。彼の自信に満ち満ちた発言の所以を。
ーーーそりゃあ、自信持つだろ。聞いたことねえよ。電気を帯電させるでも、電気を放出させるでも無く......
「
思わず漏れた上鳴の発言が聞こえたのか、それとも自身でその結論に至ったのかは分からないが、エネルが50m走を終えた数十秒後にはA組全員が彼の個性のーーーその全貌を理解したわけではないがーーー内実を把握した。
その場にいた者たちの中で、エネルの個性の意味する所を理解した、クラス上位勢達にもたらされた様々な感情、畏敬、驚嘆、困惑
ーー共通した一つの感情は「納得」であった。
数名はエネルのことを、ただの無鉄砲な自信家かそれともバカか、いずれにせよ彼は落ちる、一つ枠が空いたと楽観視していた。また数名は、エネル自身が、先の相澤先生の除籍処分発言を冗談と捉え、実力を測るために勝手に己に制約をかけているだけだと考えていた。
納得だ。強い。つまり彼は今
そして、こんな俗っぽい言い方をするのもあれだが、これ以外に形容できないだろう、雷速で動けるって、
「数名は」
「「「・・・・・・!!」」」
「厚顔無恥だとか、無鉄砲だとか、まぁ私のことをそういった風に評価し」
「また数名は、俺の発言に何かしらの意図を感じながらも」
「やはり言えることは一つ、お前達の私に対する共通認識」
「どうせ落ちる」
「「「・・・・・・ッッ!!!」」」
「この際だから、はっきり言ってやる」
「強いんだよ、私は」
「個性の応用?ハッ!!馬鹿馬鹿しい!何かしら色々探っていた奴もいるようだが、小細工なぞ何も用いない、俺の個性は強いからなぁ!!!」
「いいか?私は神だ、この個性も神たる私に天が授けたものだ、俺の個性は言わば最強の証!!!お前たちを舐めているのではない、勝負をしようとも思ってないのだよ」
「少なくとも、
「「「・・・・・・・・・・ッッ!!!!!」」」
「見せてみろ」
「俺の発言に怒りを感じたなら、お前たちヒーローを志す"高潔な精神"を俺に汚されたと感じたなら」
「見せてみろ、10位でいい、15位でいい、はたまた20位でいい、
ーーー本気で俺を落としに来い、有象無象共ーーー
ーーーなるほど、これが狙いか。
エネルの安っぽい挑発にものの見事にーーー今回に関しては乗った方が良いのだがーーー乗せられたA組20名を除き、ただ1人、当人であるエネルを除いてこの一部始終を傍観していた相澤消太のみが、エネルの思惑に気付いていた。
「(ふん、何が『勝負をしようとも思っていない』だ、無駄に焚きつけやがって、わざと走る順番を一番最後に持ってきてからの個性の使用、その後他生徒の不安を煽り、個性の全力使用を促す....か、全く、なんとも合理的ではない.......が)」
「「「・・・・・・・・・・・・・」」」
「(目つきが変わったな、俺の除籍処分という名の合理的虚偽で不安は十二分に煽られたと思っていたが、.........いい目つきだ、相手に乗せられて、というのはヒーローとしては失格だが、中々どうして、俺が前にクラス全員除籍させたあの馬鹿野郎共とは違う良い目をしてやがる)....ふん、こんなこと考えること自体も非合理的だな、俺が考えを巡らせたところで結果が変わるわけでもない、か.....」
「おい相澤、ぶつぶつ言ってないで次の種目に移るぞ、そういうのは、そう、お前風に言うと"合理的"ではないのだろう?」
「ああ、そうだな、実に合理的じゃない、お前の行動も、まどろっこしいたりゃ、ありゃしねえ、本当に合理的じゃない.....そして」
ーーー今のお前たちは、実に非合理的だーーーー
「「「・・・・・・・・・・・」」」
「・・・・もう一度言うが、雄英はこれから三年間、全力で君たちに苦難を与え続ける、そして、今回の個性把握テストがまさにそれだ、その度にお前達は最善を諦め、ギリギリ超えられるラインを探して、妥協し続けるのか?まぁ、合理性で言えばそっちの方が正しいかもしれんな」
「だが、合理的を突き詰めればただの惰性だ。事実、オールマイトにお前達は一度でも合理性を見出したことがあるか?妥協を求める平和の象徴を見たことがあるか?.....合理性に欠けるからここんとこで長話はやめとくが、最後に一つ、ヒーローになりたいなら」
ーーー
「「「「「はいッッ!!!!!」」」」」
「........いい返事だ、"妥協を捨てる"、俺好みの」
ーーーー非合理性だーーーー
ごめんなさい、前回からめちゃくちゃ空いちゃって
まぁ、不定期更新って書いてるしまぁ、まぁ、まぁ.....ダメですか?
ダメです、あああああぁぁああああああ!!!!
というより、1話進んだのに個性把握テスト終わってないのか(困惑)
今回はエネルみんなとちょっと対立しちゃったけど、基本は仲良くする方針ですので...
どちらにしましょう。
-
続行。
-
リメイク。