ヒーロー名"神(ゴッド)・エネル "   作:玉箒

16 / 34
ちょっと今回は前々回、前回よりもかなり短めです
少し早いかとも思ったんですが区切りが良かったので切りました
戦闘訓練とは名ばかりの導入編となりますが、次回から戦闘訓練本番となりますので暫し待たれよ
それでは本編どうぞ


12話:ヒーロー基礎学【戦闘訓練】:前編

 「なんか楽しそうだな?エネル」

 

 そうエネルに語りかけるのはつい先程マイク先生の英語の授業を終えて疲れたようなそぶりを見せる上鳴。腕を椅子の後ろに回し首を斜めに傾けて、背もたれに体重をかけて重心を後ろに持ってきて、椅子の前足をうかせながらエネルのニヤつき顔に対して疑問を投げかける。

 

 「ん?まぁそうだな、楽しいというよりは期待か、これは」

 

 「やっぱあれか?というか今からだけども、()()()()()()():()()()()()

 

 そう、戦闘訓練。相澤から事前に生徒たちに配られている時間割編成によれば、本日の3時間目の授業のコマに確かにその字が入っていた。

 

 「まぁ普段から見るからに個性使えずに手持ち無沙汰って感じだったもんな、お前」

 

 「あー・・・別に今回に関しては戦闘の方に興味を寄せているわけではない。全くと言えば嘘になるが、まぁメインはそちらではない」

 

 あら?そうなの、っと上鳴が言葉を漏らす。その会話を周りで聞いていた人間も、てっきりエネルのことだから早くやり合いたくてウズウズしてると思った、だとか、戦うことしか眼中にないと思ってた、とか、半ば人のことを戦闘狂呼ばわりする失礼な言葉をエネルに投げかけるのだが、やはり彼の口元の口角は下がらない。

 

——————確信があるわけではない、だが、そう。もし入学前に申請した()()を使うとしたらこのタイミングだろう。であればもしかすると・・・

 

そんなことを考えていると授業開始のチャイムが鳴り、クラス委員長の飯田が、さぁ!授業がはじまるぞみんな、席に着きたまえ!っと、そんな仕事は別にクラス委員長の役割に含まれていないが、生き生きとした顔で自主的に呼びかけるのであった。

 そうして席について間もなく、教室に面した廊下の後方から中々にガタイの良い一人の男性の影がだんだんと入り口に近づいている。これを目を輝かせながら、あるいは心臓を高ならせて見るものが多数。

 ————時間割の欄には、その教科の担当教員の名前が書いてある。すなわち、今回の戦闘訓練における担当者とは、もはや彼らの眼差しを見れば説明するまでも無い。

 

 「わぁぁぁあたぁぁぁあしぃぃぃいがぁぁぁああ———」

 

 そう、すなわち———

 

 「普通にドアから来たッ!!」

 

 プロヒーローランキングNo.1、平和の象徴(オールマイト)である。

 やはり彼の登場にはみな喜びが隠しきれないようであり、上鳴も興奮を隠しきれない様子で次から次へすごいやらヤバイやらまくしたて、某ヒーローオタクは口に手を当ててぶつぶつぶつぶつ言っていた。エネルからすればNo.1ヒーローとの初の対面にも関わらず、緑谷の反応が薄いわけでは無いが、どこか興奮冷めやらぬといった雰囲気では無いために、どこかで会ったことでもあるのかとも考えたが、自分には関係ないことかと元の仏頂面に戻るのであった。

 それよりも彼にとっては爆豪の顔の方が思いの外新鮮であった。奴にもあんな顔ができるのかと、彼の方を向いてみれば、やはりオールマイトの影響というのは凄いらしく、いつもクラスメイトにキツく当たり散らしているあの爆豪でさえ今だけは少年のように目を輝かせながら憧れのNo.1ヒーローに視線を注いでいた。それを観察するA組暫定王者は対照的に冷めた顔をしいるのだが。

 

 誰が吹いたのかは分からないが、口笛を含む皆からの声援を受けながら軽快な足取りで教室前方の中央付近へと歩いていき、本日の授業の流れの説明を始めるオールマイト。

 

 「はい!てなわけでヒーロー基礎学は私、オールマイトが担当するからみんな!!一年間よろしく頼むぜ!アッハッハッハァ!っさて、ヒーロー基礎学!それはヒーローになるための下地を作る心技体、精神的にも肉体的にも全方面に君たちを伸ばす全方面応用演習!!と、い・う・こ・と・で、コイツッ!!」

 

 と言って、彼が背中からいつ作ったのかは分からないが、彼の手書きで『戦闘訓練』と書かれたフリップを出し、今から言わんとすることを視覚で伝えるのだった。

 

 「はい!ということで戦闘訓練ね!!初回でいきなりとも思うかもしれないけど、相澤くんからも言われてるだろう?時間は有限!!君たちにはヒーローになる道筋の最前線を走ってもらうぜ!そして———

 

————コイツだ!!」

 

 そう言ってオールマイトがいつのまにか取り出していたリモコンのボタンを押すと、SFチックな機械音と共にこれまた金をかけてそうな壁面収納スペースからロッカーだろうか、ボックスのようなものがせり上がってきた。

 

 「入学に即して君たちから受け取ったもの、その一つが【個性届】、そしてもう一つが—————各々の【要望】、それに沿った【戦闘服(コスチューム)】!!」

 

 先ほどのオールマイトとはまた別ベクトルの輝く視線が歓喜の声と共に注がれる。あるものは理想に一つ近づける喜びを胸に、あるものはコスチューム姿の自分を幻視して今か今かと戦闘訓練に心を寄せていた。そしてここにも一人、さっきまで何にも興味を示さなかった男が、獲物を見つけたかのように目を細めて自身のコスチュームが入っているであろう箱を見つめていた。

 

———————来たな。待ちわびたぞ。

 

 「有精卵共!それぞれのコスチュームに着替えたら、グラウンド・βに集合だ!!・・・・・更衣室分かる?・・・・あ、分かる?OKッ!んじゃそういうことで、なるべく早くな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ここが、グラウンド・β・・・?」

 

 そう呟く緑谷その他A組一行は、現在グラウンドβにつながる廊下を抜けて、これから演習を行うという建物の前に並んで、互いのコスチュームの話題であったり、初めての戦闘訓練に際しての話し合い等を行なっていた。特に上鳴と八百万は日頃の練習の成果を出そうと人一倍やる気に満ち溢れているのが目に取れ、それを見た飯田が勝手に感心して自分も意識がまだまだ低いな、負けていられないと奮起するのは当然のことなのかもしれない。

 

 そうこうする間に皆の会話の話題も潰えたところで、頃合いを測りオールマイトが戦闘訓練の解説を始めるために生徒たちに話しかけるのだが

 

 「さぁ!みんなそろそろいいかな!みんな揃っ・・・・・・てないね、一番目立つ子が」

 

 「あら?そう言われたらエネルさん、見当たりませんわね、どうしたのでしょう?」

 

 「あいつの個性柄遅れるなんてことねぇはずだけど、何やってんだあいつ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガンッッ

 

————ふむ。重さはざっと、100.......いや、120といったところか、流石に重いな。

 

 「ふふ、それにしても雄英もいい仕事をする。いや、これに関しては業者への発注か・・・?まぁどちらにせよ、やはり見栄えというのは重要だな、さて・・・」

 

 そう言いながら胡座を解き、地面に突き立てていた黄金に輝く金属棒を軽々しく肩にかけ、その百を超える素肌への負荷をものともせずに、膝に手を当てて、どこか気怠そうに、しかし力強く、ゆっくりと立ち上がる。

 彼は今、自身に酔っていた。やはり力はそうだ。実力はいる。それは大前提。だが・・・()()()もいる。見てくれというやつは重要だ。まだまだ完成形にはほど遠いが、やはりこれがしっくりくる。俺はこれだ。

 

 「ヤハハハハ・・・・では、行くとするか!!

—————神の初陣になぁッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おっせぇなアイツ、何してんだ」

 

 そう呟く瀬呂の言葉に同意を見せるA組の面々。オールマイトも顔はニコニコ、白い歯はしっかりと見えていたが、内心では時間がなくなるどうしようと、おおよそ外観からは想像がつかない弱気な口調で焦っていた。

 

————瞬間、閃光が走る。

 

 脳に電気信号が伝わりその現象を理解するよりも早く、雷光が目に飛び込んできた。そうして少し遅れてから、脳が"()()"と理解する頃に、遅れて音がやってくる。

 目が光に慣れてきた頃に、ゆっくりと目蓋を開くと、それに呼応するかのように、前屈みに膝を曲げる彼がゆっくりと面を上げる。

 

 腰に青と空色の布を携え、そこから覗くはモンペのような、膨らみを持つ黄色のズボン。上半身はただ彼の筋肉美が映るだけであり、そこには無駄な脂肪など一切ない、強靭な肉体の証拠が垣間見えるだけであった。手首と足首には黄金色(こんじきしょく)のリングが3つ重なり、手には彼の背丈をも越えんとする、これまた金の長い棒。背中に4つの和太鼓を連ね、胸元に垂れ下がる二つの長い耳たぶを辿っていけば、やはり彼のニヤついた、威風堂々と言うべきか、自信満々の顔が拝めるのであった。

 

 「さて・・・すまんなオールマイト先生、少々遅れた。では授業を再開してくれ、ヤァッハッハッハッハーーッッ!!!」

 

 沈黙。これには少しエネルも予想外。自分ではわりかし似合っていると思っているのだが、ここでも感覚のズレが起きてしまったのかと少し心配になる。

 

 「・・・なんだ貴様ら、そんなに俺の格好が変か?」

 

 「いや、変じゃないんやけど・・・凄い格好やな、エネルくん・・・」

 

 上裸のエネルにそう語りかけるのは、彼女も彼女で随分な格好をしている麗日であった。だからエネルも言い返す。

 

 「お前が言えた台詞ではないだろう。パッツンパッツンのタイツみたいなの着おって、緑谷を見てみろ、いかにも目のやり場に困るといった雰囲気ではないか」「エネルくん!!?」

 

 「あー・・・そ、そうなんや、そうやね、ごめんごめん!デクくん、あはは・・・」

 

 そう言いながらメットの中の頬をぽりぽりとコスチューム越しに掻く麗日が、返事に困ったかのように顔を赤らめて笑いながら緑谷に、その必要はないのだが謝罪をしていた。

 

 「い、いいいいや全然!!そんなことはないんです!はい!いや別に目のやり場に困ったとかではなくてですね!そ、そそそその個性柄そのコスチュームになるのは仕方ないといいますか、逆にそんな目を向けるのは失礼と言いますか、だからそのですね!!あの僕は別に!まったく!そんな目で見ては「ほう?つまり貴様は麗日のあの豊満な身体を見て女性としての価値を見出せないというわけか?酷いやつだな」

 

 「・・・・・・・・・・・」

 

 その言葉に対して羞恥を覚えるとともに、若干不機嫌そうに緑谷の方に無意識に目を向けてしまう麗日。別にこんなところで乗っからなくてもいいだろうに、ボソッと周りから聞こえてくる、緑谷漢らしくねぇ....という非難の声。

 

 「え、エネルくん!!!?あの!違うんですよ麗日さん!!!別に、その、その、その僕は麗日さんをそういう目で見てないのは見てないんですけど、別にそれは女性として見れないからではなく!!!やっぱコスチュームっていうのは理想像を体現した形であって!!それに不躾な視線を向けていいはずもなくてですね!!だから、その、ああああの、そういう理由でして、別に、麗日さんに魅力が無いってわけじゃ「緑谷ちゃん、無理しなくていいわ、言いたいことは分かったから。あとエネルちゃん、それ以上はセクハラよ」

 

 「おぉ、それはヒーロー関係無く一般常識で恥ずべきことであるな、梅雨ちゃんよ!ヤハハハ!!では俺も到着したことであるし、授業を始めるとしようではないか!」

 

 その一言に便乗して、ハッとした飯田がさぁ授業を始めようと仕切り始め、先ほどのやりとりを楽しそうに眺めていた芦戸がもう終わりかぁとぼやき、オールマイトが授業を再開できることにホッと息を漏らし、やはり峰田が緑谷にたいしてイラつき顔で、ペッと唾を吐き両の手の中指を立てるのであった。ついでに、いつのまにか蛙吹とちゃん付けで呼び合う関係になっていたエネルにも立てておいた。

 

 「さぁさぁ少年少女共!初めてのコスチュームにワクワクするのもいいけど、今日は戦闘訓練だぜ?気合入れて貰わなくちゃな!!はい!というわけでみんな!さっさくだけどこれ引いてね!」

 

 そう言ってオールマイトが差し出す右手には、彼の剛力からなる握力によってくたくたになったくじのようなものが握られていた。

 

 「くじ?」

 

 「そう、くじ!君たちにはこれから二人一組のペアになって、各々がヴィラン側、ヒーロー側になってこの建物内で戦闘を行なってもらう!まぁヒーロー目指してる君たちからしたらヴィラン役なんてやりたく無いだろうけど、与えられた役回りを担当するってのも立派な仕事の一つだからね!」

 

 「にしても、くじで決めるんすか?」

 

 「あぁそうだ!ヒーロー事務所に所属していれば他の事務所のヒーローと合同で事にあたることも珍しくないからね!そういったときに要求されるのが即興でのコンビネーション!そりゃあいつも一緒にやってる相棒の方が組みやすいだろうけど、今言ったように必ずしもそれが叶うわけじゃない、そういったことにも備えてのくじだ!・・・なにも私が組み合わせ考えるのサボったわけじゃないからね?」

 

 なるほどと、現役No.1プロヒーローの考えに納得して戦闘訓練に向け各々が士気を高めていく中、数名が様々な疑問を頭に思い浮かべ、オールマイトに質問を行う。

 

 「あのーすいません、ただの戦闘訓練ならウチらがヒーローとヴィランに分かれる必要ってあるんですか?」

 

 「お!そうそう!それそれ!私が今言おうとしてたこと!じゃ、早速その質問に答えていくけど、君たちにはただ戦闘を行ってもらうわけじゃない、というよりも戦闘訓練って言い方が悪かったね!戦闘も含んだ擬似演習ってのが正しいかな!」

 

 「擬似・・・?」

 

 A組一同の頭の中にはてなマークが浮かぶ。相対するのはヴィランとヒーロー、戦闘は免れないにしても、擬似とは何が擬似なのだろうか

 

 「君たちにはこれからペアに分かれたあと、それぞれの対戦カードを組んで建物内に入ってもらうんだけど、まずヴィラン側に先に入ってもらって、ヒーロー達を待ち伏せてもらう!立て篭り事件に近い形かな!」

 

 「立て篭りってことは、ヴィラン側は人質でもいるんですか?」

 

 「お!察しがいいな、芦戸少女!そう!ただの立て篭りではない、ヴィラン側にはある核兵器を死守しながら、制限時間内ヒーロー達と格闘してもらうぜ!そのために最初に言ったようにヴィラン側には先に屋内に入ってもらって、配置決めとか建物内の構造の把握とかしてもらうってわけ!あ、核兵器は君たちにも運べるくらい軽いから安心してくれ!」

 

「(ゴクン)か・・・核兵器・・・」「いやモノホンじゃねーから、そんな危機迫った顔しなくていいぜ切島……」

 

 おおよそ今回の訓練の内容を把握して、いよいよ始まる戦闘訓練に額に汗を垂らしながら少し緊張しつつ意気込む者もいれば、喜びを隠そうともせずに笑みを浮かべる者、何はともあれ、皆が皆訓練に対して意識を持てているようでオールマイトも一安心であった。

 

 「よし、じゃあ最後にもう一度確認ね!

 まずくじを引いてペアを作ったら対戦相手を確認する!次に一番最初のW(ダブル)ペアはここに残り、残りのみんなは私とともに別室にて試合観戦!

 そのあとはヴィラン側が先に屋内に入り事前の打ち合わせ、時間は無制限ってわけじゃないからあんまり悠長にしてたらヒーローが突っ込んでくるぞ!んで、ヴィラン側が屋内で準備している間はヒーロー達も気を抜かずにしっかりと作戦タイム!

 そして!ヴィラン側が屋内に入ってから数分後試合開始だ!ヒーロー側は核兵器の確保、もしくは全ヴィランの無力化で勝利!ヴィラン側は制限時間終了まで核兵器を保守できれば勝ちってわけ!まぁ試合開始や終了の合図、そのほか諸々は私がアナウンスで伝えるから、そんな心配しなくていいよ!まぁ以上かな、っと、そうだったそうだった!あと・・・これこれ!みんな、訓練のときはこれ持っていってね!」

 

 そう言って、さっきからリモコンやらフリップやらくじやら、四次元ポケットでも持っているのかと疑いたくなるオールマイトのポケットから、また新たに出てきた新品のテープがオールマイトの指に輪投げのように三つ重なり、フラフープのようにクルクルと指先で回っていた。

 

 「えーと、テープ?」

 

 「そう!さっきヴィランの無力化って言ったけど、何も相手ボコボコにしなくても、こいつを体に巻きつけたらその時点で相手の無力化成功ってことで!まぁ訓練って言ってもあまりに過激なことやって取り返しのつかないことになったら大変だからね!ヒーロー側は各自一つずつこれ持っていくように!差し詰め、捕縛テープって言ったところかな?

 

 さて!以上で説明終わり!何か質問はあるかな?」

 

 そう言った瞬間、オールマイトに質問の嵐が吹き荒れる。単純なルールに関する詳しい説明の要求だとか、ぶっ殺してもいいんですかと言ったヒーローあるまじき発言など。オールマイトが眉間にシワを寄せ困ったように、聖徳太子ぃ!っと叫ぶのも無理は無かった。

 そして、先ほどからつまらなそうにこの説明を傍観していたある男からも一つ、質問が放たれる。

 

 「オールマイトよ」

 

 「ん!?えーと、今のは、えー、エネル少年かな?なんだい?」

 

 「・・・・・・俺たちは21人だぞ?」

 

 「「「「「「あ」」」」」

 

 A組の声に混じり、一人のプロヒーローの声が混じる。みんなの視線が集まる彼の言ったことは

 

 「いやーごめんごめん!なーんかいい流れだったからさァ!いうの忘れてた、アーハッハッハッハッハ!!!うん、エネル少年の言う通りA組は21人!ペア作ったら一人あぶれちゃうんだよなぁ!というわけで、エネルくんには申し訳ないんだけど、今回はくじ引きから外れてもらっていいかな?というのも、エネルくんには少しやってほしいことがあるんだ!」

 

 「・・・・・今即興で考えませんでした?」

 

 「ち、違う違う!本当に言うの忘れてたんだって!事前の準備の段階で考えていたことなんだよ!エネルくんにはくじ引きから外れてもらうっていうのは!別にエネルくんに何もさせずに終わるわけじゃないからさ、そこは安心してくれ!!

 

 ・・・ど、どうしたんだいみんな?そ、そんな目で私を見ないでくれ少年少女達!!本当に嘘じゃないんだって!!」

 

 オールマイト...と、自分の師匠のやはり不器用なところを哀れんで声を漏らす緑谷。誠に失礼ながら、やはりオールマイトは教える側に立った途端にいきなりレベルが下がる。別にオールマイトのおかげでこの位置まで来れたし、オールマイトが師匠であることに不満なんかあるはずもないが、やはり彼には教職は向いていないのではないだろうか?

 

 「おい!オールマイト!どういうことだ!なんでアイツだけ参加しやがらねぇ!」

 

 臆すことなく、No1ヒーローにそう怒鳴り散らすのは爆豪。先ほどまでの歓喜に震えていた顔はどこへいったのか、獲物を失ったような飢えた顔つきで、オールマイトに詰め寄っていた。そんな爆豪の態度に、やっぱりかぁと少しバツが悪そうな顔つきで、返答に困るオールマイト。少し爆豪の言い方がキツいが、たしかにいくら力量差が離れているとはいえ、一人だけ別枠扱いというのはいかがなものか。なんと言おうか迷っていたオールマイトに他でもないエネル自身から助け舟が出される。

 

 「そう吠えるな爆豪、お前のわがままで授業の進行を止めるでない。そんなにやりたければこうしてコスチュームにも着替えたことだ、後で時間はとってやる」

 

 その言葉を理解するのに一瞬表情が固まったあと、元の不敵な笑みを浮かべる爆豪。

 

 「今の言葉、嘘じゃあねえだろうなぁ、耳長ァ!」

 

 「神に二言はない、まぁ戦闘許可が下りればの話だがな。もっとも?貴様がこの後の訓練で無様に敗北して、私の目にも(かな)わんほどの雑魚ということが証明されてしまうかもしれんがなぁ!ヤハハハハハ!!!」

 

 「ハッ!ほざいてろ!こんな訓練秒殺だ!カス!!」

 

 そうして、妙にハイテンションな二人を尻目に、なんだかんだ言って息が合うのか合わないのかと楽しそうな二人を見ながら、いよいよオールマイトが訓練開始の合図を告げる。

 

 「んじゃ!いいかなみんな!くじを引いてペアを組んだら、くじに書いてる番号を教えてくれ!そしたらさっそく訓練開始だ!気合入れていけよ!有精卵共!!」

 

 

 




というわけで、はい、ペアによる訓練は行うんですが、ただでさえ無理ゲーなのに誰かとエネルがペア組んじゃったら勝ち目なくなるので彼には欠席してもらいました、ただ戦闘を行わないわけではありません
彼にはある人とやりあってもらいます、ちなみに誰とやり合うかは既に決めています、案外みんな意外に思うんじゃないかな?
それではまた次の回で

どちらにしましょう。

  • 続行。
  • リメイク。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。