ヒーロー名"神(ゴッド)・エネル "   作:玉箒

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改訂版:2話:下見

 「それでは、少し下見に行ってくる。我が新天地のな」

 

 「まだ受かってもないのに、偉そうなこと言うねぇ」

 

 まぁ、落ちないだろうけど、と、彼の母親の声が背中から聞こえて来る。当然だと、それだけ言葉を残して一筋の雷光と化し、玄関先から消えていく。

 

 「……デカいな、雄英。流石、現代における日本の金字塔ではある、か」

 

 空中から一人、雄英の校舎を眺めるエネル。辺りには本教棟以外にも様々な施設が見られた。使用用途は分からないがだだっ広いグラウンドの数々、市街地を模したような建造物の立ち並ぶフィールド、実に金が掛かってそうだと考えながら、一通り眺め終えた後、人通りの少ない場所に降り立ち、受験票を片手に何食わぬ顔をして試験会場に入室するのであった。

 

 

 

 ◎

 

 

 

 

 「……遅いな」

 

 ボソッと、一言呟く。つい先程、偏差値79の筆記試験を終えて、実技試験の説明のために別室の講義堂のような場所に移された受験生一行。筆記試験が終わった段階で絶望的な顔をしていた生徒も数名。他でないエネル自身も流石にこれだけは個性で無双するわけにもいかず、今まで鍛え上げた全知全能をもってして純粋な学力で勝負したわけだが、そこは偏差値79、解けなかったわけではないが、やはり厳しい戦いであったことに違いは無い。

 

 『HEYッッ!!リスナー諸君ッッ!!まずは筆記試験お疲れ様、なんていう気はないぜお前らッッ!!全てはここからッッ!!すなわちッッ、実技試験!!この結果によっちゃあまだまだ勝負はわかんねぇッッ!!!リスナー共、耳かっぽじって俺のライブにしっかりと耳を傾けろよぉッッ!!OKーッッ!?』

 

 返ってくる返事もあるわけもないだろうに、一人だけテンションマックスで生徒達に問いかける。プロヒーロー兼雄英高校教職員であるプレゼントマイク。唐突にステージ上に現れたかと思えば流暢に実技試験の流れを説明する。事前に渡された説明用紙も用いて、試験説明というには少しテンションのおかしい彼の演説であったが、それでも頭にしっかりと入ってくるのはラジオのDJや実況解説を普段からこなす彼の実力の成す業だろうか。

 

 そんなことを考えていると、長々とした、それでいて聞き取りやすく退屈しない彼の、受験生への激励の意も込めた実技試験の説明が終わりを迎えようとしていた。

 

 『最後にリスナーへ我が校"校訓"をプレゼントしよう!!!

かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!!

"Plus Ultra(更に向こうへ!!)"!! それでは皆良い受難を!!』

 

 それだけ言うと、大部屋を仕切っていた扉が開き受験番号が読み上げられ、該当する生徒から順番順番に各試験会場へと試験監督官の指示の元、列になって歩いていく。

 

 「受験番号、1201Hから1369Dの生徒はこちらへ」

 

 自身の番号が該当する範囲が読み上げられ、周囲の生徒と共に立ち上がる。座った状態でも高かった彼の座高が、いざ立ってみると身長266cmの大男だとわかる。異形系とも見間違えそうな彼の図体に少しビクつく周りの生徒達。自身の姿を見て若干固まっている前の生徒に、早く列に並ばんかと声をかけて急かす。

 

 「(………まぁ、多分、()()()()()()())」

 

 先ほどのプレゼントマイクの説明を聞いて、歩きながら顎に手を当てて策を練るエネル。周りの生徒達は、しかしやはり雄英を志望するだけのことはある。その見た目にも気圧され……はしたが、俺が勝ってやる、こんな奴に負けるかと視線をぶつける、それに答えるように、ゴミを見るかのような視線で一瞥するエネル。

 

 可哀想としか言いようがなかった。まさか、1ポイントも稼ぐことができず彼らの試験が終わるとは、誰も予想できまい。そんなこと知る由もなく、エネルと進行方向を同じくして、試験会場Dへと向かうのであった。

 

 

 

どちらにしましょう。

  • 続行。
  • リメイク。

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