獪岳くんの鬼退治【新版】   作:めりお

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桑島慈悟郎の墓参り・我妻善逸の仇討ち

遠くで目を覚ました鶏が鳴く。

不朽不滅の太陽が登る。

 

どこかの場所で。

早起きした少年が顔を洗いに駆け出した。

母親が朝食の準備で野菜を水洗いしている。

父親は新聞の朝刊を取りに行った。

腰の曲がった老人が乳母車を押して散歩をしている。

恋人たちは布団の中でまだ微睡んでいた。

襲われたところを助けられた子供が鬼殺隊に入ろうかと考えている。

どちらが早起きできるか競い合っていたきょうだいが、自分が先だったと言い争って、どちらともなく笑い出した。

今日も明日がやってきた。

獪岳が鬼から守った人々が、今日という日を生きている。

 

 

 

どこかの街の通りには、頭と身体が泣き別れになった黒髪の少年の死体と、折れた刀と、真っ二つになった鴉の死骸が転がっている。

 

 

墓の前には、隻脚の老人が杖をついて立っている。

桑島慈悟郎は鬼殺隊の人間が葬られる墓地を訪れていた。

墓石には、獪岳と名前が彫られている。

 

金髪の少年は、柱稽古の最中に届いた手紙に目を通している。

我妻善逸はその場に倒れるようにしゃがみ込んだ。

兄弟子の死亡を伝える文面は何度読み返しても変わらない。

 

獪岳を殺したのは、刀を持って髪をくくった侍のような鬼だという。

鬼でありながら呼吸を使う、上弦の壱。

二つに裂けた鎹鴉の腹の中から、特徴を記した紙が出てきた。

咄嗟に記録して呑み込ませたのだろうと推測されている。

まるで急いで書き殴られたように見えるわざとらしいまでに乱雑な文字は、一字一句が万金に値する。

上弦の、それも壱の情報。鬼殺隊への大きな貢献だった。

 

二人の顔がくしゃりと歪んだ。

 

「獪岳」

 

「兄貴」

 

「お前は儂の誇りじゃ」

 

「アンタの仇は俺が討つ」

 

 

 

 

獪岳と鎹鴉は出発する。

 

仇を討たれるような人生か。

孤児の俺も成り上がったもんだ。

そうは思わないか?

おい、黙ってないで、何か話せよ。

 

肩にとまる鴉は、こんなときに限って何も言わない。

 

後悔してんのか。

上弦の鬼、それも壱相手に、退かずに戦ったのは、すごいだろ。

お前とは違う。

 

鴉は阿呆、と一声鳴いて、獪岳の頭をつついた。

痛い。

 

誰もいない峠を越えて谷を越えて。

真っ暗な空を円い月が冴え冴えと照らしている。

親不孝の子供の、地蔵和讃の歌声が響く三途の川をざぶざぶ越えて。

遠くに見える死出の山を目指して前に進む。

地獄への道は一人で行くもの。

しかし、鴉は人でないので、一人と一羽で共に行く。

 

生まれ変わったら、もしかしたら、今度は平和な世界で、普通に暮らす人間かもしれない。




なんかすっきりしないので消すかもしれない
そういう風に書いておいてなんだけど逆恨みがきつい

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