転生したらノイトラだった件   作:依怙地

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オーク戦は次の次くらいになりそうです。
オークとの初戦をハクロウに止められ、リムルとの遭遇戦をシュナに止められイライラしていたキトラですが、名付けで自分自身が強くなったこと及び強くなったハクロウやシオン達と模擬戦とはいえ毎日戦えてますから割と落ち着いた方ではあります。


Incontro

 偵察に出ていたソウエイが帰ったことで日が沈み暗くはなったがリムルは主だった者達で会議を開いていた。

 

 「二十万のオーク、その本隊が大河に沿って北上している。そして本隊と別動隊の動きから予想できる合流地点はここより東の湿地帯。」

 

 簡略化された地図上に置かれた豚を模した石を動かす。

 

 「つまりリザードマンの支配領域というわけですか。」

 

 「ええ。」

 

 「二十万か……実感が湧かないほど馬鹿げた数だな。」

 

 自身の予想より多かったオークの総数に辟易するリムルは今一度ここに集まった者たちの顔を見渡す。ほとんどの者は神妙な面持ちでリムルを見返す。

 

 「いいじゃねぇか誰が一番多く狩れるか競争ってことだろ?」

 

 あくまで二十万のオーク達を狩るものとして見ているキトラ。これを言ったのが他の者であれば何を言っているんだと冷たい半眼で見られることは避けられないであろうその言動だが、言ったのはキトラだ。鬼人に進化する以前からその力は頭一つ飛びぬけており進化してからはそれが更に顕著になった。戦いを生業としていなかった者達からすればリムル様よりも強いのでは?と勘違いするほどだった。だが、それは誤りでありあくまでリムルの戦いよりもキトラの戦いを多く見る機会があっただけなのだが。

 

 閑話休題、そんなキトラのいつも通りの発言に室内の緊張感が若干ではあるが軽いものになる。

 

 「う~ん。オークの目的って何なんだろうな。」

 

 「ふむ。オークはそもそもあまり知能が高い魔物じゃねぇ、この侵攻に本能以外の目的があるってんなら何かしらのバックの存在を疑うべきだろうな。」

 

 そもそもオークの侵攻の目的が分からないことをぼやくリムル。それにこたえるようにオークにどこかしらの後ろ盾があるのでは?と疑うカイジン。

 

 「例えば魔王……とかか?」

 

 魔王、それは文字通り魔物を統べる王。リムルにとっては殴らなければならない男であるレオンも魔王である。言ってしまえばリムルは魔王にあまりいい印象を持っていないのだ。そんなリムルの感情を読み取ってか、強大な魔王という存在に委縮したのか室内の空気が重いものになる。

 

 「お前たちの村に来てたとゲルミュッドとかいう魔族が絡んでたとしたら……。まあ今の所なんの根拠もないが。」

 

 「魔王が絡んでいるのか分かりません、だが、オークロードが出現した可能性は強まったとおもいます。」

 

 「オークロード…数百年毎に生まれるユニーク個体だっけ?」

 

 「はい、二十万のオークを普通のオークが統率できるとは思えませんから。」

 

 「ふむ。」

 

 「いないと楽観視するよりかはいると仮定し動くべきではありませんか?」

 

 「そうだな。」

 

「む!!」

 

 「どうした?」

 

 「偵察中の分身体に接触してきた者がいます。リムル様に取り次いでもらいたいとのこと、如何致しましょうか。」

 

 「誰だガビルでもうお腹いっぱいだし、変な奴だったら会いたくないんだけど。」

 

 妙に上から目線でどこか鼻につくリザードマンの顔を思い浮かべるリムル。

 

 「変ではありませんが、大変珍しい相手でして。その、ドライアドなのです。」

 

 「ドライアド!?」

 

 オークの総数を聞いた時以上に驚くリムル。それに及ばないまでも長年にわたり姿を見せなかったドライアドからの接触に驚く一同。ただその中でキトラだけは苦虫を嚙み潰したように顔を顰めるのだった。

 

 「か、構わん。お呼びして。」

 

 リムルの中ではドライアド≒エロい姉ちゃんなのだろう、動揺を隠しきれてない妙に上擦った声で返事をするのだった。

 

 「は。」

 

 リムルの眼前に一枚の青々とした木の葉が舞う。それと同時に机上に魔力の渦が出現し花開くようにドライアドが現れる。

 

 「魔物を統べる者。及びその従者たる皆様。突然の訪問相済みません。私はドライアドのトレイニーと申します。どうぞお見知りおきください。」

 

 トレイニーが自分の名を告げた瞬間キトラの顔は更に顰められた。

 

 「俺はリムル=テンペストです!ええっとトレイニーさん。いったい何のご用向きで?」

 

 「本日はお願いがあって罷り越しました。」

 

 「お願い?」

 

 「リムル=テンペスト、魔物を統べる者よ、貴方にオークロードの討伐を依頼したいのです。」

 

 「オークロードの討伐。ええっと俺がですか?」

 

 「ええ、そうです。」

 

 「いきなり現れて随分身勝手な物言いじゃないか。ドライアドのトレイニーとやら。何故この町へ来た。」

 

 突然現れたトレイニーに警戒心を露にするベニマル。

 

 「そうですね、オーガの里が健在でしたらそちらに出向いていたでしょう。まあ、たとえそうであったとしてもこの方の存在を無視することはできないのですけれど。」

 

 疑問符を浮かべるリムル。

 

 「我々の集落がオークロードに狙われればドライアドだけでは抵抗できませんの。ですからこうして強き者に助力を求めに来たのです。」

 

 そう言って室内を見渡すトレイニー。

 

 「オークロードの存在自体が俺たちの中では仮説だったんだけど。」

 

 「ドライアドはこの森で起きたことならばたいてい把握しておりますの。いますよオークロード。」

 

 オークロードの存在をドライアドであるトレイニーが確かに認めたことで動揺が広がる。

 

 「ふむ。返事はちょっと待ってくれ。鬼人達の助けはするが率先して藪をつつくつもりはないんだ。情報を整理してから答えさせてくれ。こう見えても俺はここの主なんでな!」

 

 「ええ。構いませんよ。」

 

 トレイニーの頼みを引き受けるかどうかはもう少し考えさせてくれと頼むリムルにそれを了承するトレイニー。そうして会議の続きを始めようとする面々だったが何故かトレイニーはそのまま居座りキトラの隣に座るのだった。

 

 「なんで俺の隣なんだ。てか帰れや。」

 

 他の者達が心の中で抱いた疑問を全て口にするキトラ。

 

 「あらあら、久し振りの再会ですのに、酷いこと。」

 

 「あれ?二人はあったことあるのか?」

 

 リグルドの話では数十年は姿を見せなかったというドライアドがキトラとまるで面識があるかのように話すところを見て疑問に思うリムル。

 

 「チッ、知るかこんな花オンナ。」

 

 「えぇ、この子がまだ子どもの頃にたまたま偶然。」

 

 「オイテメエ!」

 

 「これでも小さい頃はとてもかわいかったのですよ?小さな手と舌足らずな口調。それなのに私に戦いを挑んでくるのです。とても愛らしくなってしまってこの子が一人でいる時に会いに行ったりしてたんです。」

 

 あの暴虐無人なキトラにも子供の時分はあったんだなぁとほんわかする一同。ただベニマルだけは子供の頃からキトラはキトラだったぞと一人ツッコミを入れるのだった。

 

 恥というわけでもないが自身がまだまだ弱かったころの話をされ一気に不機嫌になるキトラ。これ以上トレイニー余計なことを言われぬように会議をさっさと再開しろと言わんばかりにリムルを睨む。

 

 「か、会議を続けるぞ~。何か他にオーク達の目的について意見がある奴はいるか?」

 

 「思い当たることが一つあります。」

 

 シュナが意見を口にする。

 

 「うんうん。」

 

 「ソウエイ…わたくし達の里は調査してきましたか?」

 

 「はい……。」 

 

 悲痛な顔つきで頷くソウエイ。

 

 「その様子ではやはり無かったのですね……。」

 

 「はい…同胞のものもオークのものも。ただの一つも。」

 

 「チッ、見境ねえ豚だぜ。」

 

 「ふむ……。」

 

 あからさまにイラつくキトラ、目を閉じ沈痛な面持ちをするハクロウ。

 

 「何が?」

 

 未だつかみきれてないリムルはソウエイに尋ねる。

 

 「…死体です。」

 

 「え!?」

 

 「二十万もの大群が食えるだけの食料をどうやって賄っているのか疑問だったが。」

 

 「それってまさか……。」

 

 ベニマルが言わんとすることを察したのだろう。

 

 「ユニークスキル【飢餓者】。この世界の災厄オークロードが生まれながらに持つスキルで支配下におく全てのオークに影響を及ぼし蝗のように全てを喰らい尽くす。喰らったものの力や能力までもを取り込み己の糧とするのですわ。」

 

 解説するトレイニー。オークロードの目的は上位種族を滅ぼすことではなく、上位種族を喰らいその力を我が物とすることだったのだ。現在オーク達はオーガを喰らった事で従来のオークでは考えられないほどの剛力と戦闘能力を有しているのである。

 

 二十万の大群とはいえその実それを構成するのはただの飢えたオーク達、という侮りが全員の脳裏から去った瞬間である。

 

 「それにオークロード誕生のきっかけとして魔人の存在を確認しております。」

 

 「魔人か……。」

 

 「いずれかの魔王の手の者ですからね、貴方様は放ってはおけないのでは。」

 

 リムルの因縁を指摘するトレイニー。

 

 信頼できるかを自身のユニークスキルの大賢者と検討する。

 

 「リムル=テンペスト様、改めてオークロードの討伐を依頼します。暴風竜ヴェルドラの加護を受け、牙狼族を下し、鬼人を庇護する貴方様ならオークロードに後れを取ることはないでしょう。」

 

 「当然です!!リムル様ならオークロードなど敵ではありません!!」

 

 リムルが悩んでいる中シオンが勝手にその依頼を受けてしまう 。

 

 「まあ!やはりそうですよね!」

 

 「ええ、当然です!」

 

 そんなシオンに呆れていたがそもそもシオンの性格分かってて言ってたんじゃね?と疑うリムルだった。

 

 「分かったよ。オークロードの件は俺が引き受ける。みんなもそのつもりでいてくれ!」

 

 若干の無理矢理感があったのは否めないがリムルはオークロード討伐の依頼を了承するのだった。

 

 「はい!勿論ですリムル様!」

 

 「どのみち最初からそのつもりでしたよ。」

 

 「御意!」

 

 「ハッ上等じゃねぇか。」

 

 「俺たちゃ旦那を信じて付いてくだけさ。」

 

 「その通り!!我らの力見せつけてやりましょう!!」

 

 「「「「おお!」」」」

 

 各々が意気込みを見せる中美しく微笑むトレイニー。そんな彼女をジト目で睨むキトラ。

 

 「あら?何ですか坊や?」

 

 「その呼び方いい加減やめろや。」

 

 「あらあらごめんなさい。今はキトラという名をつけてもらっていましたね。」

 

 「チッ、コレでテメエの思惑通りってワケだな花オンナ。」

 

 「あら一体何のことでしょうか?」

 

 「読めねえ奴だ、昔っから。」

 

 これ以上何も話す気はないのだろう、キトラは諦める。

 

 「オーク二十万の軍勢を相手取るとなるとリザードマンとの同盟を前向きに検討したいところではあるが、使者があれなんだよな~。」

 

 またもやガビルを思い浮かべ辟易するリムル。

 

 「リムル様。リザードマンの首領に直接話をつけてきてよろしいですか。」

 

 「ソウエイ、出来るのか?」

 

 「はい。」

 

 何の事なしに頷くソウエイに、やはりイケメンかと改めて感嘆するリムル。

 

 「よし!ではリザードマンと合流し、オークを叩く!!」

 

 「「「「は!」」」」

 

 「決戦はリザードマンの支配領域である湿地帯になるだろう、リザードマンとの共同戦線が前提条件だ。頼んだぞソウエイ。」

 

 「御意。」

 

 そう言い残しこの場から消えるソウエイ。

 

 リザードマンの首領がガビルのようにアホではない事を祈るリムルだった。

 

 「てかいつまで居るんだよ花オンナ。」

 

 「いいではありませんか。」

 

 「よくねえ帰れ。」

 

 「あらまあ。ではリムル=テンペスト様わたくしはこれでお暇致します。オークロードの件お願いしますね。」

 

 「あ、ああ、またなトレイニーさん。」

 

 こうしてリムル達の対オーク戦の作戦会議は終わるのだった。

 




上記以外のキャラクターにはトレイニーさんも含まれてたのだろうと考え今回トレイニーさんと絡ましてみました。溢れ出る親戚のお姉さん感。

あくまで参考に、ヒロインを誰にするべき?未登場キャラ含めて。

  • かかあ天下 シュナ
  • 喧嘩ップル シオン
  • 無邪気な暴力に襲われる ミリム
  • 殺し愛 ヒナタ
  • 上記以外のキャラクター

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