昔渡し編※お試し版   作:赤いUFO

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前話で、罪滅ぼし編のレナが生存してる感じに書いてましたが、やはり、校舎が爆発して死亡したバッドエンド準じに直しました。


到着、雛見沢村

「なぁ博士ぇ、まだ着かねぇのかよぉ……」

 

「仕方ないじゃろ。ここら辺は道が整備されとらんし、この山道はのぉ」

 

 日がくれて夕焼けの空になった頃、小型のキャンピングカーを運転する阿笠博士の後ろで元太が文句を言っている。

 あまり人通りのない道な為、車が通れる道もろくに整備もされておらず、視界も悪いことから速度を落として移動していた。

 そこで歩美が本を読んでいるコナンに話しかける。

 

「何読んでるの? コナンくん」

 

「雛見沢の事件を調べてた刑事さんが出版した告発本だよ」

 

 父である工藤優作の部屋で見つけた雛見沢の資料本。

 個人出版だったらしく、発行数は少なかったようだが、優作の書斎に置いてあった。

 

 題名は"ひぐらしのなく頃に"。

 雛見沢で起きた事件が風化しないように纏められた一冊は、著者が刑事ということもあってコナンにとっては解りやすかった。

 大災害以前から1年置きに続いている謎の怪死事件。

 

(これだけの事件が毎年同じ時期に起きるわけがねぇ。絶対に何かある筈だ)

 

 好奇心で口元が緩んでいると、光彦がこの近くにある興宮の住民の反応を思い出す。

 

「それにしても、あそこの人達は良い顔しませんでしたね」

 

「ま、興宮には元々雛見沢に住んでいた人も多かったみたいだし。当時の記憶がある人達には余所者に触れてほしくないのは当然でしょうね」

 

「だからってよー。怒鳴られたりもしたんだぜ?」

 

「それだけ、当時は混乱は相当だったんじゃろうな。元住民も近づきたくなくなるほど」

 

 阿笠博士の言葉に元太が不満そうに唇を尖らせる。

 そこで窓の外を見ていた歩美があれ? と呟いた。

 

「どうしたの?」

 

「今、向こうに誰か居た気がして」

 

「歩美ちゃん、本当ですか?」

 

「一瞬だったから、自信はないけど……」

 

 自信無さげに言う歩美に阿笠博士が車を止める。

 

「もしかしたら、何かトラブルかもしれんのぉ。そうだったら大変じゃ。少し見てこよう」

 

 少し車を後ろに移動させてから降りる。

 歩美が見た方角に移動しようとしたが、その前に向こうから人がやって来た。

 

「あ~、よかった~! 気付いてくれて!」

 

 現れたのは茶髪のショートカットの髪型の20代半ばくらいの女性だった。

 

「すみません。乗ってきた車がトラブっちゃって。少し、手を貸してくれませんか?」

 

 阿笠博士に申し訳無さそうに頼む女性。

 その頼みを断れずに少し女性の車を見てみる。

 

「こりゃタイヤが完全にパンクしとるのぉ。何か、鋭くて硬い金属でも刺さってしまったようじゃ」

 

「あ~、やっぱり。事故らなかったのは不幸中の幸いだけど。前回といい、ついてないなぁ……」

 

 トホホと肩を落とす女性。

 そんな女性に阿笠が提案した。

 

「もしよければ、わしらの車に乗るかね? わしらはこれから雛見沢村という廃村に行く予定なんじゃが……」

 

 雛見沢と聞いて、女性が身を乗り出した。

 

「本当ですか? わー! 助かります! 実は、私も雛見沢を目指してたので!」

 

 子供のようにはしゃいでいる女性は車から最低限の荷物を取り出した。

 

「あ、申し遅れました。私、反町美雪と言います。雛見沢まで、よろしくお願いします」

 

 深々と頭を下げる美雪にコナンが質問する。

 

「ねーねー、お姉さん」

 

「ん? どうしたの? えーと……」

 

 コナンの背丈に合わせて膝を曲げる美雪。名前を訊かれる前にコナンが自分で名乗る。

 

「僕、江戸川コナン! それで、訊きたい事があるんだけど。さっき、前回って言ってたでしょ? もしかして前に雛見沢に来たことがあるの?」

 

「うん。あるわよ。2年くらい前かな? ただ、その時は色々あって、ゆっくり村を見ている余裕がなかったから。今回は時間をかけてちゃんと回りたいと思って」

 

「女性が1人、こんな廃村に何の用かしら?」

 

 少し警戒した様子で質問する灰原に気分を害した様子もなく美雪は答えた。

 しかしそれはやや歯切れがわるい。

 

「うーん。強いて言うなら、約束、かなぁ……」

 

 どこか遠いところを見つめる美雪。

 そこで阿笠が車に乗るように促した。

 

「とにかく、今は雛見沢村へ急ごう。ここで立ち止まっていたら、夜中になってしまうわい」

 

「あ、そうですね。お願いします。車は、帰りに興宮で業者に来てもらうしかないかなぁ」

 

 そんな事を言いながら子供達の後に車に乗る。

 道中で他の面々も自己紹介し、美雪は子供達の話を聞いていた。

 しばらくすると最早荒れ果てた田んぼが見えてくる。

 雛見沢に到着したのだ。

 既に暗くなっていることもあり、人の居ない廃村は薄気味悪い雰囲気を醸し出していた。

 

「本当にだれもいねぇんだな……」

 

「この村がガス災害に遭ったのは、20年以上前の話ですからね」

 

「ちょっと、怖いね……」

 

 元太、光彦、歩美がそれぞれ感想を述べていると、辺りを見渡していた光彦が、ん? と視線を細める。

 

「どうした、光彦?」

 

「いえ。今、僕達より少し歳上の女の子が見えたような気がして」

 

「こんな廃村に? どんな子だったの?」

 

 灰原の質問に光彦は腕を組んで答える。

 

「髪の長い女の子です。ワンピースを着た……」

 

 しかし、自信なさげの光彦に美雪が首をかしげた。

 

「ここには子供は住んでない筈だけどなぁ」

 

 そこで思い出したように美雪が阿笠に告げる。

 

「すみません。先ずはここから真っ直ぐ進んだところにある。園崎という大きな屋敷に向かってもらえませんか? そこなら、最低限電気や水道が通ってるらしいので」

 

「本当かの?」

 

「えぇ。あ、家の関係者には許可は取ってあるので。今は雇い入れた人が管理しているらしいです」

 

 雛見沢大災害で誰も居なくなった土地で、まだ電気や水道が通っている場所があるのはありがたい。

 再び車に乗り、美雪の案内で移動していると、大きな日本屋敷が見えてきた。

 呼び鈴を鳴らすと、中から50代くらいの女性が現れる。

 

「反町さん、ですね。話は聞いてます。そちらの方々は?」

 

「道中で車がトラブルに遭ってしまって。この人達が連れてきてくれたんです。その、この人誰もお世話になっても構いませんか?」

 

 美雪が申し訳無さそうに訊くと、女性は上品な笑みを浮かべる。

 

「構いませんよ。むしろ、そうした人達を招き入れる為にこの屋敷があるような物ですから」

 

「子供の大人数で押し掛けて申し訳ない」

 

 阿笠が頭を下げると女性はいえいえと気にしないで良いと言う。

 そして女性は頭をお辞儀をした。

 

「私、半年程前からこの園崎邸の管理を任されております、田無美代子です。どうぞよろしくお願いします」

 

 笑みを浮かべたまま自己紹介をした。

 

 

 

 

 


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