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〈視点:
僕は光が収まったのを感じ目を開けるとまず目に飛び込んできたのは巨大な壁画、そして辺りを見渡すとうやら僕達は巨大な広間にいると言うことがわかった。まるで大聖堂のような。
周りには呆然と周囲を見渡すクラスメイト達がいた。
どうやら、あの時、教室にいた生徒は全員この状況に巻き込まれてしまったようだ。
だけどみんな怪我はないようだった。
そして、おそらくこの状況を説明できるであろう台座の周囲を取り囲む者達への観察に移った。
そう、この広間にいるのは僕やクラスメート達だけではない。少なくとも三十人近い聖職者の様な格好をした人々が、僕達の乗っている台座の前にいたのだ。まるで祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好で。
その内の一人、法衣集団の中でも特に豪華な衣装の七十代くらいの老人二人が進み出てきた。
もっとも、左の人は老人と表現するには纏う覇気が強すぎる。顔に刻まれた皺しわや老熟した目がなければ五十代と言っても通るかもしれない。
が、右側の老人は100行ってんじゃ無いの?ってレベルの見た目だが杖すら使ってないので肉体年齢は若い可能性がある。
それが否定できない理由としてここが異世界の可能性があるからだ。
左の彼は手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、外見によく合う深みのある落ち着いた声音でハジメ達に話しかけた。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
「そして私はこの神殿の管理者で教皇と言う天職のネスト・クデューエンと申します。今から皆さんには『ステータスプレート』と言う物を配ります。ステータスプレートが分けられたら『ステータスオープン』と言ってください。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるアーティファクトと言う物です。身分証にもなるので失くさないでください。ちなみに一般人のレベル1のステータスはだいたい10です。そしてレベルは100が人間の限界とされています。天職は私より詳しい者がいるのでその者に後ほど聞いてください。……と、説明は見ていただいた方が早いので先に配らせていただきます。」
そして何処からか現れたメイド達によってステータスプレートが配られた。
クラスの男子のほとんどの顔がにやけていた。
僕はさっそく「ステータスオープン」と言う。
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宇美矢 晴兎 17歳 男 トータス(レベル:1) 地球(レベル1)
天職:
筋力:1
体力:1
耐性:1
敏捷:1
魔力:1
魔耐:1
罪力:0
状態:記憶封印・全能力封印(地球)
技能:言語理解・特異点[+因果律干渉無効][+時系列干渉無効]・永久機関・タキオン粒子取り込み[+超光速移動][+残像][+衝撃波]・閾値上昇・図鑑[+図鑑観覧]・絶対空間・輪廻・錬金術
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色々凄い事になってるけど……一つもスキルの名前が異世界要素が異世界ファンタジー感が足りない気がする。
錬金術はって?
錬金術はそもそも地球でかつて中世ヨーロッパであった技術だったから多分これも異世界要素じゃないんじゃないかな?
と、言うか僕弱すぎない!?
他のクラスメートは最低でも10倍、最大で100倍の差があったよ!?
そのあとイシュタルと名乗った老人はだいたいこんな事を語った。
まず、この世界はトータスと呼ばれている。そして、トータスには大きく分けて三つの種族がある。人間族、魔人族、亜人族である。
人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、亜人族は東の巨大な樹海の中でひっそりと生きているらしい。
この内、人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。
魔人族は、数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差に人間族は数で対抗していたそうだ。戦力は拮抗し大規模な戦争はここ数十年起きていないらしいが、最近、異常事態が多発しているという。
それが、魔人族による魔物の使役だ。
魔物とは、通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだ、と言われている。この世界の人々も正確な魔物の生体は分かっていないらしい。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣とのことだ。
今まで本能のままに活動する彼等を使役できる者はほとんど居なかった。使役できても、せいぜい一、二匹程度だという。その常識が覆されたのである。
これの意味するところは、人間族側の〝数〟というアドバンテージが崩れたということ。つまり、人間族は滅びの危機を迎えているのだ。
「あなた方を召喚したのは〝神エヒト様と女神エターナル様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神とあらゆる次元を司る神です。おそらく、神様方は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という〝救い〟を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、〝エヒト様〟の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい。」
イシュタルはどこか恍惚こうこつとした表情を浮かべている。正直言ってキモい。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。
イシュタルによれば人間族の九割以上が創世神エヒトを崇める聖教教会の信徒らしく、度々降りる神託を聞いた者は例外なく聖教教会の高位の地位につくらしい。
女神エターナルはここ数年で現れた新たな神らしい。
僕が〝神の意思〟を疑いなく、それどころか嬉々として従うのであろうこの世界の歪さに言い知れぬ危機感を覚えていると、突然立ち上がり猛然と抗議する人が現れた。
愛子先生、通称愛ちゃん先生だ。
「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」
彼女は今年二十五歳になる社会科の教師で非常に人気がある。百五十センチ程の低身長に童顔、ボブカットの髪を跳ねさせながら、生徒のためにとあくせく走り回る姿はなんとも微笑ましく、そのいつでも一生懸命な姿と大抵空回ってしまう残念さのギャップに庇護欲を掻き立てられる生徒は少なくない。
先程も言った様に〝愛ちゃん〟と愛称で呼ばれ親しまれているのだが、本人はそう呼ばれると直ぐに怒る。なんでも威厳ある教師を目指しているのだとか。
今回も理不尽な召喚理由に怒り、ウガーと立ち上がったのだ。「ああ、また愛ちゃんが頑張ってる……」と、ほんわかした気持ちでイシュタルに食ってかかる愛子先生を眺めていた生徒達だったが、次のイシュタルの言葉に凍りついた。
「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」
場に静寂が満ちる。重く冷たい空気が全身に押しかかっているようだ。誰もが何を言われたのか分からないという表情でイシュタルを見やる。
「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」
愛子先生が叫ぶ。
「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様とエターナル様の御意思次第ということですな」
「そ、そんな……」
愛子先生が脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。
「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」
「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」
「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」
「なんで、なんで、なんで……」
パニックになる生徒達。
ハジメも平気ではなかった。しかし、オタクであるが故にこういう展開の創作物は何度も読んでいる。それ故、予想していた幾つかのパターンの内、最悪のパターンではなかったので他の生徒達よりは平静を保てていた。
ちなみに、最悪なのは召喚者を奴隷扱いするパターンだったりする。
誰もが狼狽える中、イシュタルは特に口を挟むでもなく静かにその様子を眺めていた。
未だパニックが収まらない中、光輝が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり注目する生徒達。光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」
「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
ギュッと握り拳を作りそう宣言する光輝。無駄に歯がキラリと光る。
「僕もやります!放っておけません!力があるなら力を貸します。」と霧乃星也も。
そして同時に二人の勇者のカリスマは遺憾なく効果を発揮した。絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。そして光輝を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。女子生徒の半数の半数以上は熱っぽい視線を送っている。
「「「「「俺も!」」」」」
「「「「「私も!」」」」」
クラスのだいたい3分の2が賛成した。
あまりの勢いに愛ちゃん先生は押されてしまった。
と、言うか愛子先生はオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えているが光輝の作った流れの前では無力だった。
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