妹がいつの間にか人気Vtuberになってて、挙句に俺のお嫁探しを始めた   作:はしびろこう

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二十一話「旭」終

「人の家で好き勝手暴れやがって、警察呼んだからな!」

 

 俺が旭さんの為にオムライスの材料を買って帰ってきたら、謎の男が勝手に家に入り込んでいました。

 もう本当に何を言ってるのか分からんと思うけど、俺もわからん。

 妹から連絡が来てるし、ヤベェと思って走って帰ってきた。

 強盗かとも思ったが、どうやら旭さん関連の人物だろう。

 恐らく、旭さんはこの男から逃げてきて……。

 

 と、男が殴りそうになっていたので取り敢えず止めたわけではあるが……こっから先はノープランだ。マジでどうしよう。

 

 俺は取り敢えず、旭さんから男を引き剥がす。

 

「不法侵入に暴行。あんた、軽い罪じゃ収まらんぞ」

「うるっせえよ! こいつが全部悪いんだ! 俺の人生滅茶苦茶にしやがって!」

 

 は? なんだ? 痴情のもつれか何か? だとしても女性を殴るのはダメだ。女性に対して不信感がある俺でも分かることである。

 

「旭さん……取り敢えず2階に……」

「兄貴です……! その人は私の兄で……」

 

 旭さんを2階に避難させようとしたら事実が発覚した。

 そうか……兄貴か……。なんで旭さんの兄貴が俺の家にいるんだろう……。

 まあともかくだ。家で暴れた以上、これ以上の狼藉は許さん。

 

「テメェ離せ! ……どいつもこいつも俺のこと馬鹿にしやがって……ふざけんな……! ふざけんなよ!」

 

 旭さんの兄貴が俺に向かって殴りかかってくる。

 クソ! 近すぎて避けられん! 

 俺はモロに顔面に拳を喰らってしまい、鼻から血が垂れる。しかし、俺は気合と根性で平常心を装い、真顔で男を睨んだ。

 

「は? ……なんで……避けねぇんだよ……」

 

 避けれなかったから。

 めちゃくちゃ痛い。

 だが、何故だろうか。ここで痛がるのは得策ではないと思った。

 まあ、ここに居る全員を守る為でもある。こいつも俺を殴ってスッキリするのであれば殴らせといてやる。俺からは一切手出しはしない。

 

「落ち着けよ、話くらい警察が来るまで聞いてやる」

 

 男は俺の言葉に観念したのか、力が抜けたように壁にもたれかかった。

 よかった、ナイフとか持ち出さなくて。

 

「俺は……俺は……何もかも上手くいかなくて……受験も失敗して……親から出来損ないって……意味わかんねぇ……俺は今まで頑張って来たのに……」

 

 男はポツリポツリとだが話しはじめた。

 どうやら、家から多大な期待を背負っていて、何か失敗するたびに親から出来損ないと罵られる日々が続いたのだそうだ。そしてストレスが溜まっていき、受験に失敗してしまったことで彼の中で大きく何かが崩れた。

 そこに煌びやかな世界で輝く妹の旭さんの配信を偶然目にしてしまい、旭さんが実の妹だと知って、憎悪が膨れ上がったのだそう。

 

 だから……暴行を働いたと……。

 

 俺は男の肩を持って項垂れている頭をこっちを向かせる。

 

「お前は兄貴失格だな」

「……」

 

 ドアの外からサイレンが聞こえて来る。どうやら警察が来たようだ。

 俺は思った事を手短に言うとした。

 

「お迎えが来たから手短に言っておくぞ。どんな理不尽や心が折れる事があろうとも、それでも妹だけは守ってやるのが兄貴ってもんじゃないのか」

「……」

「自分がむしゃくしゃしたからと言って、暴力で事を片すなんざクズのやる事だ」

 

 俺はどんな理不尽があっても妹を守ると言う建前を使い、無理やり乗り越えて来た。

 親が死んでもだ。

 立ち直れもせずに、ただひたすらに、がむしゃらに乗り越えた。

 

「ただ、人は違う。誰だって自身の性格というものがある。あんたは俺じゃない。だけど、自分のやり方で自分の周りを変える事だって出来たはずなんじゃないか?」

「……」

「まずは、他の人間と比較する事をやめろ。自分を労われ。そして他とどう接するのかはその後にゆっくり考えろ」

 

 警官が乗り込んでくる。

 俺が事情を話し、警官は男を取り押さえ連行して行く。

 パトカーに乗る前に俺はもう一回話しかけた。

 

「頭冷やせ、そしてなんかあったら相談しに来い、話くらい聞いてやる」

 

 男は項垂れたままパトカーに乗せられ、連行されていった。

 これでひとまず、一件落着か……まあ事情聴取あるから対応しないといけないんだけど……。

 

「あ、あの……」

「お兄ちゃん!」

 

 2階に隠れていた萌香が抱きついて来た。

 

「大丈夫!? 怪我とか……」

「ああ、無いよ大丈夫」

 

 心配そうに顔を覗き込んでくるので、頭を撫でてやる。

 どうやら、納得したようでホッとしたようだ。

 

「お兄さん、本当にごめんなさい!」

 

 旭さんが頭を深々と下げて来る。

 俺はなんとか笑顔を作り、旭さんのせいじゃないと言った。

 

「まあ、話くらいは詳しく聞かせてね。親御さんとも話がしたいしさ」

「は、はい……」

 

 そして俺は警官の人に呼ばれて、事情聴取を受けに行った。

 しかし……最後に一つだけ良いだろうか? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 怖かった……。

 




2話連続投稿です。
遅くなってごめんなさい。

文才なくて落ち込んでたけど、文才なんざ無くても良いやって吹っ切れました。
みんなも文才無くても大丈夫!

さて次の章は…うん、頑張ります…。


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