妹がいつの間にか人気Vtuberになってて、挙句に俺のお嫁探しを始めた   作:はしびろこう

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二話『ゲームやったことないんですけど…』

 妹がVtuberになる事件から数日。俺は萌香の配信…まあ、秋風幽香の配信をよく見るようになった。

 まあ、妹が変な事をやっていないか、萌香には内緒で見ている。これでも結構心配なんだ。変な輩に付き纏われたりしていないか日々気が気でない。

 

『それでね、お兄ちゃんが……』

 

 秋風幽香は基本的に雑談メインの配信をやっている。たまにゲームもしているが腕前はお世辞にも上手とは言えないレベルらしい。

 しかし、透き通るような声に視聴者の全員はうっとりしている様子だった。

 

 しかし、毎日毎回のように俺の話題を出しているような気がする。

 画面の向こうで黒髪のボブの女の子が笑顔で動きながら俺の話をしていると、なんとも言えない気持ちになるな……。

 

『今日のお兄ちゃんの料理がね……えーと待ってて、写真……写真……あ! あった!』

 

 画面にパッと表示されたのは俺が晩飯に作ったオムライスの写真だった。

 オムライスの綺麗な黄色の卵の上に、ケチャップで秋風幽香の顔を描いた逸品である。

 喜んでくれるかな、とか思ってサプライズで作ってしまったのが、大層気に入った様子だった。

 

「食べるの勿体ないよ!」

 

 とか言っていたが、写真を撮れば事足りるだろと言ったら「それもそうか」と写真を撮ってバクバクと食べ始めたので、度肝を抜かれた。

 まあ、喜んでくれたので、描いた甲斐があったというものだ。

 

 コメントの方をチラッと見ると、概ね好評のようだった。

 

 ・すげえええええええ! 

 ・神絵師じゃん

 ・お兄さんは絵師なの? 

 ・家庭的所の話じゃねぇ……

 

『ううん、絵師でも何でもないよ。でも絵を描くのは好きみたい』

 

 ・一般人で凄すぎる……

 アマハルテルミ お兄さんを僕にください

 ・てるみんもようみとる

 ・草

 ・てるみん! お兄ちゃんは俺のだぞ!! 

 

 思わず、さっきまで飲んでいたコーヒーを吹き出した。

 ちょ! て、てるみんが俺の事認知してる!?!? 

 いや、まあ……妹がここまで毎日話題に出していたら流石に存在自体は知っているかとも思うが……。

 

 推しが俺の存在を知っているという、事実に対してかは知らないが、その日の夜は何故か目が冴えて眠れなかったのであった。

 

 ──ー

 

 日曜日。

 休みの日は家で家事とかをしており、今は妹の朝ごはんを作っている最中だった。

 いつもなら一緒に食べるのだが、この日に限っては部屋で食べると言っていた。何だろうか? 配信でもやっているのだろうか。

 

 取り敢えず、適当に作った朝ごはんを部屋の前まで持っていく。

 配信していると悪いので、取り敢えずドアをコンコンと二回ノックした。

 その瞬間、バンッとドアが勢い良く開かれる。ドアの角が丁度足の小指に当たり、声にならない声が出ながらその場に蹲った。

 

「あぁぁっぁぁあああ!!」

「あっ! ごめんお兄ちゃん! でも、それどころじゃないの! 早く入って!」

「えっええ?」

 

 理解が追いつかないまま、パソコンが置かれたデスクに座らされ、ゲーム機のコントローラーをしっかりと握らされた。

 

「え!? ちょ、何をしろと!?」

「お兄ちゃん! そいつぶっ倒して!」

 

 ゲームのスクリーンに映し出されたのは、大きな棍棒を持った巨大な怪物。

 所々グロテクスな箇所もあり、爽やかな日曜朝にやるゲームではないと思われる。

 しかし、妹の豹変っぷりと言ったら何とやら……お前、クール系では無かったのか? 

 

「ていうか……俺、ゲームやった事ないし……」

「大丈夫! 操作教えるから! 暗記して!」

「暗記って!?」

 

 そこからはてんやわんやだった。

 妹の口からコントローラーの操作方法など、その他もろもろの説明を口早に済まされ、いきなり実戦に放り込まれた。

 て、ていうかこれ、配信中じゃないのか!? 

 

「ちょ!? 待って! なんか来た! なんか来たよ!?」

「プレス攻撃だからローリングで回避!」

「おおおおお!? こ、これかぁ!?」

 

 俺の操作するキャラはいきなりその場で立ち止まり、座り始める。

 そして、怪物のプレス攻撃で難なく撃破されてしまった。

 

「違うよ! Bボタンだよ! なんで、ジェスチャーに入っちゃったの!?」

「え!? ジェスチャーって!?」

「それはもう良いよ! とにかくもう一回!」

「お、おお! やったらぁ!」

 

 そして勢いのまま何回も死んでは繰り返し挑み、死んでは繰り返し挑んだ。

 そして数時間たち、ようやく! 

 

「おおおおおおお!! やった! 倒したぞ!」

「わ──ー! やったぁ! お兄ちゃんやったぁ!」

 

 怪物は地にひれ伏し、光の粒子となってその場からアイテムらしき物を落として消える。

 俺たちは喜びのあまりハイタッチをかまし、その場で雄叫びを上げたのだった。

 

 ──ー

 

 はい、おもっくそ切り抜かれてました。

 俺がPCの前で頭を抱えて、もう一度表示されている文章を読む。

 

『お兄ちゃん乱入!? ゆうゆうのキャラ崩壊!』

 

 そして動画を再生する。

 すると、丁寧な編集に効果音を加えられ、自分でもなぜかクスリとしてしまうような動画に仕上がっている。

 

『ちょ!? 待って!? なんか来た! なんか来たよ!?』

『キャ────!!!!!!』

『おおおおお!? これかぁ!?』

 

 スワル

 

 ・座るなwwwww

 ・草

 ・お兄ちゃんうるさい! 

 ・↑妹さんかな? 

 ・アホほど死んでて草生える

 ・最初の敵なんだよなぁ……

 

『お兄ちゃん!? 違うよ! Bボタンだよ! なんで座っちゃうの!?』

『ええ……』

『あああああ!! お兄ちゃん死んじゃやだ──!』

 

 ・何回座るんだよwwww

 ・勝手に殺すなwwwww

 ・死んじゃやだ──! は草

 ・元はと言えばゆうゆうが昨日の夜からやってて一回も勝ててないからこうなったんだよなぁ……

 

『おおおお! やった! 倒したぞ!』

『わ──!! やったぁ! お兄ちゃんやったぁ!』

 

 ・NICE

 ・妹より先に倒してて草

 ・お兄ちゃん本当にゲーム初心者? 

 ・おおおおお! 

 ・お兄ちゃんガチ恋勢になりました

 

 などなど……、かなりの反響があったらしく、SNSではトレンド3位に秋風幽香の名が入り、1位にはお兄ちゃんというワードが入ったらしい。

 

「……お兄ちゃん……もう一回……」

「やりません!」

 




一話を投稿しただけなのに、思いの外反響があったので調子に乗って書きました。……ぺこ

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