転生者と鬼の戦い   作:雷電風雨

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第拾漆話 鷹と蝶と狐

「うーん…」

 

虎咲は寝返りを打つ。

が、普段は布団であるためにそこにある何かに気付かず寝返りを打ったため

頭を何かにぶつける。

 

「うぐっ……ファ!?」

 

驚くもそのはず、起きて右を見れば

ただでさえ狭い寝台にしのぶが寝ているではないか。

サヨナラ翼柱!こんにちは性犯罪者!

 

(は?は?は?訳がわからん、何故しのぶが俺がいる寝台に寝ているんだ、

いや、落ち着け。しのぶは昔っから寝てる時は色々おかしい。

今回もそうだろう、そうだよな!?)

 

そんな疑問に答えられる人間などおらず、虎咲は次に起きる事で更に顔を青くする。

左を御覧下さい!何という事でしょう!

しのぶが追加され更に狭くなった寝台に真菰が寝ておるではありませんか!

 

「…うわあああああ!!!」

 

「いやああああ!!??」

 

しのぶが普段なら絶対に上げない悲鳴のような何かを叫ぶ。

 

「あ!と、虎咲…今日は早い…ですね…」

 

しのぶは言葉を途切れ途切れに発した、

虎咲は笑顔のまま顔に青筋を浮かべている。

 

「うん、しのぶ?俺聞きたいことがあるんだわ」

 

「な、何ですか?」

 

「オイ、これは一体どういう状態だ?」

 

しのぶはこうなった経緯を虎咲に説明する。

 

ーーーー虎咲が寝てからすぐーーーー

 

「ねぇねぇしのぶ」

 

「何ですか?真菰」

 

しのぶは真菰を見る、彼女の顔はすっごい悪い顔だった。

 

「虎咲と寝れば?」

 

「…え?」

 

しのぶはいきなり言われた言葉に反応できず、

素っ頓狂な声を出してしまった。

 

「じゃなかったら私が寝込みを襲おうかな〜」

 

「な、何言ってるんですか?真菰。

虎咲は鈍感なんですよ?そんなんで何かに気付くわけ」

 

「簡単だよ?理性を焼き切って溶かせばいいの」

 

そうすれば私は…ぐへへと真菰は気持ち悪い笑みを浮かべ

しのぶを見る。

 

「自分の幼馴染を寝取られたくないよね?」

 

「うー…わかりました」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「とまぁこういうことがあったんですよ」

 

「ふーん…とりあえずこの馬鹿狐を起こせば解決か?」

 

しのぶは頷く、虎咲は了承したように真菰のそばに寄る。

 

「おらぁ!!用があるからさっさと起きろ!」

 

「え!?今何時!?」

 

「夜中の三時だ!何故俺がこんなにキレてるのかわかってるな!?」

 

「えーいいじゃん〜最終選別の時も一緒に寝たでしょ〜?」

 

「あれは仕方ないだろ!状況が状況だ!」

 

「えーじゃあ私の純潔で許してー」

 

「体で許すつもりはない!あとお前は何言ってるんだ!」

 

しのぶはこれを後に痴話喧嘩と称した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「任務に行きたい」

 

あの深夜騒動から五、六時間が経過した頃、虎咲が愚痴を零す。

しのぶは顔に青筋を浮かべて怒鳴り散らす。

 

「虎咲?何言ってるんですか?貴方は左腕、肋骨を折っているんですよ?

それなのに任務に行こうなど……」

 

目の前の寝台には、確かに虎咲が寝ていたはずだった。今は何もいない。

 

「虎咲!!!」

 

「げ、バレた」

 

そこには立体機動装置をぶら下げて玄関を出ようとした虎咲がいた。

 

「ほら!戻りますよ!治るまで三週間、絶対安静にしやがれくださいね?」

 

「こりゃ拉致だよしのぶ!」

 

「そんな冗談言う暇あったらとっととその骨を治して下さい!」

 

虎咲はしのぶによって寝台に投げ飛ばされ縄で寝台に固定される。

 

「あっ、呼吸で縄を解こうなんてバカなこと考えないでくださいね?

最悪、肺が破裂しますよ?」

 

「……」

 

(やっと大人しくなりました…真菰に監視を頼みますか…)

 

しのぶは処置室の扉を勢いよく閉めた。

 

(ダメか、全翼無連はそこまで器用じゃない。

人を避ける”避人“はこの屋敷ごと吹き飛ばすだろう。

かと言って任務に行ってはいけないなんて…あんまりすぎないか…)

 

虎咲は思考を張り巡らせ、この拘束を消す…もとい解く方法を模索したが、

自分の技ではこの拘束を解くことが出来ないことに気付く。

 

「あーあーあー」

 

暇している虎咲の脳内に、二文字の単語が現れた。

 

(寝・ろ!!)

 

脳は正直だった。寝るという言葉を考えただけで虎咲は眠りについた。

 

そこに一人の少女がやって来る。

そう、監視担当の真菰だ。

 

「虎咲〜!大人しくしないとおはぎ奪うぞ〜!」

 

彼女の言葉は虎咲に届かなかった。彼はすでに眠りについていた。

 

「…寝ちゃってたか…」

 

真菰は残念そうな表情を浮かべるが、

それよりも先にある物に気付く。

 

「…これ…修君からの手紙?」

 

そこにはこう書かれていた。

 

『拝啓、翼柱森岡虎咲様。

 

僕の師匠である鉄穴森がお会いしたいと存じております。

近く、どうか刀鍛冶の里まで来ていただけると幸いです。

修 』

 

「綺麗な字…男の子の字とは思えないけど…」

 

真菰は修の手紙を虎咲の部屋の机の上に置きに行き、虎咲の顔を見る。

 

「同い年なのに…ここまで死戦を繰り広げて…」

 

彼女は虎咲から為虎傅翼の制限時間を超えると暴走するという話は聞いていた。

暴走の危険性を捨ててまで、必死に親の仇を殺す事だけを考えていた。

真菰はそっと虎咲の顔に触れる。

 

「これからも守り合おうね?虎咲」

 

彼女の呟きは、虚しく処置室に響いただけだった。

ー翌朝ー

 

虎咲は辺りを見渡す、

と言っても縄で拘束されている今そこまで見える物はない。

ただし横にいる二人の少女には気付いた。

 

「またかよ…しのぶ、真菰…」

 

昨日と同じように彼女達は虎咲の横で寝息を立てながら寝ていたのだった。

 

(本当に懲りないな…この二人は…)

 

しかも昨日とは違うのが、

縄で拘束されているのでしのぶを起こせない。

つまり状況の収束が不可能という点だった。

 

「…はぁー…」

 

虎咲の溜息は、処置室の壁に吸い込まれていった。

 

「二度寝するか…」

 

虎咲はまた深い眠りについたが、

度重なる疲労により彼が次に目覚めるのは一週間後のことであった。

 

〜一週間後〜

 

「ふぁーあ…よく寝た…んあ?夜?」

 

辺りはすっかり暗くなっており、朝では無かった。

 

「一週間後の夜ですよ、虎咲」

 

当たり前のようにそこに座っているしのぶは言う。

 

「ふーん、一週間後ねぇ…は?」

 

虎咲は困惑する、しのぶはこと細やかに事を説明する。

 

まず虎咲は今まで蓄積されていた疲労を一気に解放した結果

一週間も寝たきりになってしまったこと。

蝶屋敷の全員が、虎咲が死んだのかと一瞬だけ思ってしまったこと。

 

「えぇ…」

 

虎咲は困惑した顔でしのぶを見る。

 

「でもですよ?骨が繋がっていたなんて誰も思ってなかったんですから!」

 

(骨が繋がったのか…ん?)

 

虎咲の顔がどんどんあり得ないと言いたげな顔になる。

 

「嘘だろ?三週間かかるんだろ?」

 

「それが…一週間もの間完全に動いていなかったものですから。

すぐに骨がくっついたんでしょう」

 

私だってびっくりですよとしのぶは続ける。

 

「でもまだ完治はしてないのでそこまで激しく動かないで下さいね」

 

しのぶは虎咲の縄を解く、彼はすでにやる気満々だ。

 

「ちゃんと安静にしていてくださいね?」

 

しのぶは念を押す、今の虎咲ならどこまでも走っていきそうだから。

 

「わかってるって!心配すんな!」

 

しのぶは彼の頭に一瞬だけ旗が見えたが、気のせいだと見逃した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

蝶屋敷の廊下をドタドタ走る人が一人。

 

「ったく誰ですか?朝っぱらから走ってるのは…虎咲様!?」

 

アオイは起きていた完全武装の虎咲を見て驚く。

 

「骨折は!?大丈夫なんですか!?」

 

「あぁなんかしのぶがもうくっついてるからいいよって」

 

「えぇ…」

 

アオイは結構長く蝶屋敷で看護師をしているが、

治りがこれほどまでに早い人は今まで一人もいなかった。

 

「ちょっと自主訓練行ってくるからしのぶに言っておいて!」

 

「わ、わかりました」

 

そう言い虎咲は靴を履いて屋外鍛練場へ向かった。

 

〜屋外鍛練場〜

 

(試したいことが色々あるからな…まずは…)

 

ー似の呼吸、弐ノ型 破壊殺・滅式改ー

 

新たに設置されたであろう正面の藁人形は、

彼から乱射された波動で崩壊した。

 

「ひゅー。いいな、この威力」

 

ー翼の呼吸、参ノ型 真・為虎傅翼ー

ー似の呼吸、肆ノ型 真・圧縮窒素ー

 

蝶屋敷から相当離れた場所で発動する。

ここは空き地、草が生い茂っていたので

土地の持ち主が一掃して欲しいと言っていた。

刃を草地の中心であろう地点に突き刺す。

絶対領域を発動し、虎咲は自分の身を守る。

 

「…点火」

 

虎咲は引き金を引き、刃は大爆発を起こす。

 

「…うっ」

 

絶対領域が守っているにも関わらず、体中が熱くなる

しばらくすると爆煙が晴れる。

 

「わーお」

 

虎咲はその威力を目の当たりにしたとき、

これさえあれば無惨も粉々だろうと確信した。

爆煙が晴れたその草地だった場所は、

綺麗さっぱり焼けただれ草があったなんて感じさせないようなものだった。

鴉の上空観察によると、キノコ雲が高度1000mまで登っていたそうだ。

依頼主から報酬を受け取った虎咲は蝶屋敷に戻る。

玄関には顔に青筋を浮かべたしのぶが立っていた。

 

「虎咲!あの爆発は貴方ですよね!?説明してくれません!?」

 

「圧縮窒素の改良型だ。しのぶ、頼みたい事がある」

 

「なんですか?その案は…なるほど…」

 

この作戦が最終決戦に活きるなど誰が考えたであろうか。




まもなく終着、新潟です…なんつって。
次はまぁみんなが”多分”知ってる駅名から始まります〜。
投稿時刻の開きが大きいのは気にしないで…。
この信越線で二時間半も時間差が開いた訳で…。
次のヤツも相当開きそうで頭が痛い…。
しかも停車駅が少ないとかめっちゃタチが悪い…w

前回のアンケートで無惨戦を書くべきかのアンケートを取りましたが、『童磨がボッコボコにされるだけでいい』と『無惨戦を書いてほしい』が同率だったので、もっかいアンケートします。

  • 童磨が死んでくれればそれでいい
  • 無惨もまとめて死んでくれ

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