月下美人   作:月ノ輪球磨《ʕ•ᴥ•ʔ》

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最終夜 七転八倒

響が手紙を読み終わってからしばらくして、ヲ級から通信が入る。

 

『呼んだ』

『遅かったね』

『集めてからの時間かかった』

 

そんなに時間かかるものかな?

 

響は外に出てヲ級の所に行く。

そこには相当数の深海棲艦が集まっていた。

 

「アホか!誰が近海の深海棲艦集めて来てって言った!」

「鎮守府内とは言われてない」

「子供か!」

 

こんなにいっぱい必要無いんだけど

 

「まあ良い、次やる事は決まった。全員で大本営を襲撃する」

「凄い事になりますね」

「君達には大本営の正面から艦娘達と戦ってもらう」

「……お前は艦娘贔屓かと思っていたんだが」

「私は深海棲艦だよ。艦娘と戦うのは当然だろう?まあ、私は君達とは別行動で大本営を直接叩くけどね」

「なるほど、私達は陽動か。姫級が9隻も投入されていれば本隊だと思うだろうな」

「何なら大本営事倒してしまっても良い」

「9隻もいれば出来る」

「それじゃあ、出撃だよ」

 

響達は大本営に向けて進撃を開始し、響は直ぐにそこから分かれて陸路から大本営を目指す。

 

私は艤装解除していれば両手を失っている子供だから、民間人にもバレない

司令官と街に遊びに行った時に分かったことだよ

 

そうして大本営の近くまで来てから、テレパシーで攻撃開始を指示する。

 

大本営も体験した事ないんじゃないかい?

姫クラス9隻+ヲ級&ネ級改の連合艦隊と無数の深海棲艦の大艦隊が一気に攻めて来る事は

 

それからすぐに大本営は慌ただしくなり、艦娘達が出撃して行く。

 

『泊地棲姫、大本営に1発でも良いから爆撃を落としてくれないかい』

『分かった』

 

大本営から見たら貴重な艦載機を失って、大本営の建物に小規模のダメージを与えた愚策に見える事だろう

 

それからすぐに大本営に爆撃が1発だけ落ちて建物に小規模のダメージが入る。

響はそのタイミングで堀に囲まれた大本営に裏から侵入する。

 

地図によればこの辺に……あった

 

響は司令室以外誰もいなくなった大本営の地下施設を見つけ出し、鍵を使って侵入する。

そこには大量の水槽に大小様々な真っ白な女の子が入っていた。

 

……ここまで人間に憎悪を抱いたのは初めてだよ

 

響は実験施設の機械を起動し、データを見る。

 

実験体A-9の戦闘データにより、以降の人工艦娘の培養が簡略化。

これにより人工艦娘の研究は一気に進み、あと3日もすれば実用段階に移れるだろう。

実験体F-7の成長に抑制作用を検知。

実験体G-6の成長は停止を検知。

他にも数々の実験体の成長が一定で停滞を検知。

どうやら思考メモリーが現状ではこれでは不足している模様。

 

……ふざけているのか

何が実験体A-9だ

司令官は道具じゃないんだぞ

……しかし、この子達を殺して良いものか

どうやらこの実験体G-6以前の物は既に廃棄されているらしい

廃棄か……そういえば、司令官も深海棲艦を処分する時は処刑とか始末って言わずに廃棄って言ってたっけ……

 

予算を削減する為、以降の実験体には必要な思考メモリーが判明するまで思考メモリーはダウンロードせずに、可能性の高い思考メモリーを考案し、一体にダウンロードし実験を再開。

 

なるほど、ここにある個体にはまだ思考メモリーとか言うものが入っていないのか……

つまり、全て司令官とは別人の赤ちゃん状態

この子達の寿命はどのくらいなんだろうか

 

響はさらに実験データを閲覧し、そこにある実験体の寿命に関して探す。

 

あった

 

実験体に使われている細胞は全て万能細胞が使われている為、寿命は人間と比較しても長く、培養水槽に入れておけば劣化せず、成長を促進させることが出来る。

訂正—現状では実験体A-9程の完成度に満たない為、成長は停止中。

 

なるほど……つまり、この子達は今も生きていて、人間よりも長生きして、更に頑丈だと

 

響は実験データを別の媒体に記録し、本体のデータを消去する。

そして、水槽の水を抜き、全ての個体を起動する。

 

全員で……7人か

そして、全員が大体4歳くらい

司令官が亡くなったくらいの歳か

 

響は眠っているその実験達に病人服の様なものを着せて艤装を展開して全員を運び、大本営から脱出し、住民が退避した街の物陰にその子供達を隠し、目覚めても何処かに行かないように置き手紙をして大本営に戻る。

 

さて、あの実験施設を破壊しようか

データの復元なんて出来ないように粉々に

 

響は実験施設の中で主砲や甲標的を放ち施設を破壊する。

その騒ぎを聞きつけて人が集まってくる。

 

「なに!?いつ侵入したのだ!」

「研究員……」

 

響はその研究員の首を切断し、主砲で吹き飛ばす。

 

「あと9人」

 

そうして大本営に上がり、建物を中から主砲で破壊して行く。

そして、研究員を見つけては直接砲撃して消し炭にする。

響はそうして大本営を破壊して行き、元帥室に入る。

 

「予想出来なかったよ。まさか深海棲艦が陸路から攻めてくるとはね」

「夜神元帥」

「おや、名前を知ってるのかい」

「……」

「まあ良い。殺したまえ。妻子も守れず、己の我城すらも守れない無力な男だが、海軍のトップだ」

「……夜神月音」

「!……娘の名だ。どこで知った」

 

本当に知らなかったんだね

 

「最近まで佐世保で司令官をしていた。そして中枢棲姫と相討ちになった。……クローンだったらしいけどね」

「なに!?そんな事書いてないぞ!……そうか、娘の細胞を悪用されたか……父として、完全に終わっているな……」

「……」

 

響は振り返って元帥室から出ようとする。

 

「どこに行く」

「元帥は殺さない。貴方は純粋な悪ではないから」

 

そう言って元帥室を出る。

 

————————————————————————————————

 

響は研究員のリストを確認し、最後の1人まで追い詰める。

 

「くっ、我々には為さねばならない大義があるのだ!」

「その大義が司令官を殺したらしい。なら、君達はその報いとして死んでもらうよ」

「報いだと?むざけるな!貴様等とて死体を改造して兵器転用してるではないか!」

「悪いけど、死体じゃない。君達と一緒にしないでくれるかな」

 

響は最後の1人を斬り殺してから主砲で吹き飛ばして大本営を出る。

 

『ヲ級、戦況は』

『優勢』

『そうか、じゃあ今から行くよ』

 

————————————————————————————————

 

響は全速力で戦線に向かい、迎撃をしている呉鎮守府の艦娘達を後ろから襲撃する。

 

「なっ!?後ろから敵!?」

「大本営は落ちたよ。後は呉鎮守府だけだ」

「大本営が!?」

「……いや、全軍撤退」

「なんで!」

「悪いけど、私も忙しいんだ」

 

響は全深海棲艦に撤退を指示し、自分は街の方に行く。

艦娘は深海棲艦の残党と対峙しており、響を追う事が出来ず、姫クラス達も直ぐに撤退する。

 

 

あの子達を置いて戦闘をするのもね……それに、長引かせると佐世保鎮守府も応援に来ちゃうし

今の吹雪は正直、近接戦闘や超速戦闘に慣れてない姫クラスが9隻いても勝てないからね

だから、吹雪とまともにやり合えるのは多分私だけ

弱点を知ってないと勝てないから、仕方ないね

それにしても、あの子達どうしよう

 

7人もいるとなぁ……

 

響がその場に戻ると、全員が起きていた。

 

「えっと……」

「誰?」

「私は響だよ」

「響ちゃん?」

 

言語能力はあるのか

それに、なんか凄い雰囲気人懐っこいと言うか

警戒心をまるで感じない

これが司令官の本来の状態なんだろうか

まあそうか

この子達は司令官の記憶を持たないだけで司令官と同じな訳だからね

 

「お母さん?」

「いや違う」

 

雛鳥か……

こう見るとまだあの狂気部分が出てない……と言うかあれも付け加えられた部分なのだろうか

それは後々わかる事か

今は、この子達のことをどうにかしないとね

普通の4歳児くらいの知能があるみたいだから、少し楽だけど、結局何も考えてなかったからなぁ……

 

「名前、覚えてる?」

「うんん、分かんない」

 

敬語じゃない司令官って新鮮だなぁ

 

「じゃあ、名前が必要だね」

「同じ顔だからね」

 

不思議に思わないのだろうか……

そう言うところ司令官らしいよ

それはそうと、名前か

私はネーミングセンスが無いんだよ

……暁を頼るか

 

「ちょっと結構遠いけど、ついてきてくれるかな」

「うん!」

 

響は艤装展開し、主砲と艦載機を出して全員を運んで佐世保を目指す。

 

主砲が大きくて浮遊する謎技術で助かったよ

あとは艦載機が意外に浮遊性能あるところか

まあそれでも足りないから1人だけ私が背負ってるんだけど、軽いなぁ

 

響が佐世保に到着し、ドッグから中に入ると、暁が仁王立ちで待っていた。

 

「あっ……」

「どこに行っての」

「えっと……」

「どうせ大本営でしょ」

「そうだね」

「そんな事だろうと思ったわ。手紙、机に出しっぱなしだったわよ」

 

あっ……忘れてた

 

「それで、その子達は?」

「拾って来た」

「犬や猫じゃないんだから」

「暁に名前を考えてもらいたくてね」

「名前ねぇ……まあ響がつけるよりはマシか」

「そうなんだよね……」

 

私が名前を考えるとどうしてもカタカナになるし、刀の名前とかになっちゃってね……

女の子に村雨とか頭おかしいだろう?

……ん?いるなコレ

 

響と暁は鎮守府に入って行き、月音のクローン達もその後ろを列になって付いてくる。

 

……カルガモの親子を思い出したよ

何で綺麗に列になるんだろうか

 

そうして、応接室に暁達は入り、全員を座らせる。

 

「そう言えば名前を付けるにしても見た目が同じだから分からなくないかい?」

「響……本気で言ってるの?」

「え?」

「全員、目の色若干違うじゃない」

「え?」

 

……あ、ほんとだ

全員赤系ではあるけど、違う

朱色、マゼンタ、ワインレッド、クリムゾンレッド、バラ色、えんじ色、ライトマゼンタ

……1人ピンクじゃないか

て言う事は、これ……アルビノじゃないじゃないか!!

なるほど……司令官はアルビノになる代わりに全ての性能が高かったのか

 

「じゃあまず、朱色の子からね。そこの子よ」

「うん」

「夜神一葉《やがみ かずは》」

「一葉、わかった!」

 

暁……よく直ぐに思いつくね

 

「次は君、マゼンタの子。夜神二葉《ふたば》」

「うん」

「次はワインレッドの子。夜神三保《みほ》」

「うん」

 

葉つながりじゃなかったんだね……

私が覚えられなさそうなんだけど……あまり難解な名前はやめて欲しいな

 

「次、クリムゾンレッドの子。夜神四音《しおん》」

「うん」

 

みんな反応が同じで可愛いな

……司令官の可愛いと言われる一面、見てみたかったな

 

「次、バラ色の子。夜神五澄《いずみ》」

「うん」

「次、えんじ色の子。夜神六花《りっか》」

「うん」

「最後、ライトマゼンタの子。夜神七鳳《なお》」

「うん」

「……なんとか覚えられそうな気がするよ」

「響が間違えたらダメよ?」

「善処するよ……」

 

一葉、二葉、三保、四音、五澄、立花、七鳳……

全部葉だったら覚えやすかったのに……

でも、仕方ない

私が連れて来てしまったんだから、親代わりとしてこの子達を育てて行かないとね

親の気持ちか……元帥の気持ち、分かるかもしれない

これは戦わせたくないな


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