東方神獣荘   作:夜祢亜

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魔界編
9話「Welcome to the Magic world」


私達はいくつかの山や谷を超えて手形が出す魔力を頼りにその道へ進んだ。

 

「あの……まだ、なんですか?」

「この、魔力線が指す場所がわかるまではな」

 

……はぁ、溜め息しか出ない、ここ2、3日同じ場所をぐるぐる回っている気がしてしょうがないからだ。

 

「それなら、空から大体の場所を見ればいいじゃないでしょうか?私にはその魔力線は見えないので、なんとも言えないんですけど」

「その手があった!!」

 

ただちに荷物をその場に置き空へ。

 

「あそこかな?」

 

その光は、これから向かう山の中腹を差していた。

そこを念頭に置き、単車に跨った。

 

「また、洞窟か」

わざとか?……この世界に来て大抵の者は穴の中にある事を理解した。

 

「行ってみるか……」

「暗いですね」

よっ……蒼火はいつかの日のように指先に火をともし先頭を行く。

私も周囲の安全に気を付けて後を追った。

 

ー数十分後ー

 

「さ、寒い」

深く潜ったからだろう、徐々に吐く息が白く濁り、夏服の性かよけい肌を撫でるように寒さが襲う。

 

「主様?」

「気にしなくていい……ほら、ここで終点みたいだ」

と、広い場所に出たみたいだがそこには目立った物は何もなかった。

 

「なにも、ないな」

「そうですね」

隠し扉でもあるのかと石壁を叩いてみるが何も起きることは無い。

 

「光はここで途切れてるんだけど……」

「お困りのようで?(ニッコリ)」

「そうそう、魔界に行きたいんだけ……はっ、はぁ?!」

 

ここまで、周囲の確認は怠らなかった……って事はだ、こいつは

『初めからここにいた!!』

 

反射的に間合いと武器をとり戦闘態勢に入る。

 

「ちょっと、落ち着いて……私はエイミー。門番さ」

「門番?門なんてないぞ?」

「それは、ここさ」

 

この世では初めて聞く言葉を口にし、タクトのようなものを振りかざすとその辺の岩を起点として、次元が歪み始める。

 

「おぉ、これが魔法ですか?」

「いい目だね、青い人。残念だけど、これは魔導具のお陰だよ」

「すごいだろ?これが魔術だよ」

「どうも、ありがとう。」

そう、いいかけ門を潜ろうとした所……右頭部を杖で指された。

 

 

「おっと、そこを動くなよ?悪いが人殺しはしたくは無いのでね」

門から距離を置くと、ありがとう……とそういい杖を降ろす。

 

「なんで、ダメなんだ?」

「パスポートってご存知?入国には審査がいるのさ」

「パスポートって……あ、ちょっと待って」

バックの中から同封されていた、黒い布地に金の刺繍がされた小物を見せる。

 

「えっ……それは、神殿の……貴方は!?」

「どうかしたんですか?」

「いや、私もまだまだですね。どうぞ、亜響さま」

お気をつけて、エイミーはそう道を譲ってくれた。

ほんのり冷や汗をかいている様に見えたが彼女は深々とお辞儀をして見送ってくれた。

 

 

そういえば、私は名を名乗ってなかった様な……

―――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――

 

―魔界―

 

アーチ型の鳥居に見立てられたオブジェクトの周りに石碑が輪をかいて6つ配置されている広場にあらわれた。

 

 

 

「ここが魔界か」

「暗いし、空気も淀んで不気味ですね」

空は、夜のように暗く3つの月が輝いていた。

 

「とりあえず、魔界に着いたけど……魔力線は見えなくなったし、道のりに進むか」

そう言って、一歩踏み出すと袖を引かれた。

 

「どうした?」

振り返るとそこには少しきつそうな蒼火

 

「あ、あの。申し訳ないのですけど神力が切れそうで」

「わかった。お疲れ、蒼火」

と、彼女が私の身体に戻ることにより瞳や髪に青色が交じる。

 

そして、道なりに歩いている時だった……

 

「きゃあ!!!」

 

少女の悲鳴が耳に届いた。

 

…………

 

「ベアー!!」

「だっ、誰か!!」

現場が見えてくると白ずくめの少女が紫色の獣に襲われていた。

 

「待て!!(とうっ)」

「ベア?」

高く跳躍した私は空中で右足を突き出し、

蒼火の神獣力で落下に対しバーニアを吹かし、更に加速する。

 

「べ、べあああぁ!?」

私の蹴りは獣を貫き、地面に余波を残す。

 

「やり過ぎたか……」

「大丈夫ですか?お怪我は?」

蒼火が私の身体を離れ少女に声をかけた。

 

「えぇ、大丈夫。えっと、アナタは」

そこで、蒼火はわずかにない胸を張りこう言った。

 

「私たちは通りすがりの旅人です」

「双子?」

「いえ、私は主さまのお姿を借りているだけなので」

と、一瞬だけ姿を鳥に変え、亜響の身体に返る。

 

「私の名前は亜響。さっきのは蒼火だ」

「亜響さんに、蒼火さん、ご丁寧に有難う。

私の名はルイズ。しがない下級魔法使いよ」

お辞儀をし、離れたところに落ちている白い帽子を手に取る。

 

「ルイズさんは何故、こんな所に」

「えっと、薬草を取りに来てたの」

そっと、籠の中をそっと見せてくれた。

緑や赤いハーブ、見たことの無い草花だらけだった。

 

「これで、ポーションを作るのが私の日課なの」

「そうなんですね。これから、街へ?」

「えぇ……そうです」

私は少し考える。

 

「一緒について行っても?道が分からなくて」

「んー、いいですよ。そうだ、私行き着けの喫茶店があるんです」

そこでゆっくり、珈琲でも飲みながら話でもしましょう……そういって、彼女は私の手を引いた。

 

「お気遣い有難いんですけど、私たちココの通貨を持ってなくって」

「お気になさらず、今回は私が出します。お礼です」

「ルイズさま、申し訳ない」

「あ、お二人は外の人なんですよね。聞きたいです……外の事とか」

 

そう、3人は談笑をしながら街へ向かった。

 

 

 

 

 

 

……続く


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