まぁ特に話すことは無いですが近所の川が凄まじいほど増水していたやばいというぐらいですかね。見には行っていませんがライブカメラで見たら凄かったです。 皆さんも周りの様子をよく見て気をつけてくださいね!
それでは第四局始め!
俺はあいちゃんを道場に送り届けてから棋士室に向かう。
俺が部屋に入るとそこにいた若手棋士や奨励会員が少しざわつく。基本的に俺はあまりこの部屋に来る事は無い。研究会などを自身から誰かとやる事もないしなんなら1人でひたすら考えている事の方が多い。
そんな俺がこの部屋にやって来た理由はたった1つ。弟の将棋を見届ける為だ。来たる午前10時。ついに2人の対局が始まった。
先手、後手の決まっている戦いのため、どちらとも己の作戦通りの陣を作り出す。神鍋君の陣形は矢倉囲い。固めてくる気だ。
何やらいつも通り神鍋君が厨二発言をしている様だが淡々と記者の人がメモをしていく。八一も静かに駒を打っていく。すごいシュールだ。言い忘れていたが本日の対局は帝位戦の予選だ。ちなみに俺も出ている。神鍋君はここまで全勝。今日勝てば挑戦者決定戦への道が大きく開ける。俺は同じく全勝。ひょっとすれば決定戦で当たるかも知れないのだ。対して八一は完全なる消化戦。
しかしそれでも本気でぶつかる事に意味があるのだ。
対局開始からの30分で46手も進んだ。まぁ相矢倉なので当然と言えば当然なのだがな。
そこで神鍋君が囲いを穴熊に発展。固くなってきた。それに対して八一は様子見。しかし、神鍋君は攻撃を始める。
持ち上げた駒は香車。盤の右端から鋭く直進してきた香車は凄まじい。銀捨てしてまでの猛攻。八一もさぞ戦慄しているだろう。これが噂に聞く『神鍋流1五香車』だ。
ここで香車を取る事は簡単だがそれだとそれに対しての研究が発動する。それを厄介がって中々次の一手を決めれない。八一はだからこそ中々打てないのだろう。
最終的に打った手は香車を取らないと言う選択肢だった。
この局面で昼を迎え八一はあいちゃんと弁当を食べに行く。午後からは本当に私用がある為、一度棋士室を離脱する。
再び向かったのは理事長室。なんか2度目のお呼び出しを喰らいましたとさ。
もう一度同じ動作を踏み部屋に入る。そこには理事長と堂々とした風貌のお年寄りがいた。何かこう、優しさの中に覇気を感じる。
「理事長。そちらのお方は?」
「夜叉神 弘天さんです。先ほど話していた子のおじいさんです」
「夜叉神 弘天と申します。一ノ瀬先生、この度は孫の弟子入りの件。"引き受けてくださりありがとうございます"」
「いえいえ、そんな事..................ん?デシイリデスカヲヒキウケル?」
「はい。本当にありがとうございます。孫はとても気が強くてですね」
そこに追っかぶせるように会長が言った。
「一ノ瀬玉座もそろそろ"弟子が欲しい"と言っていて丁度良かったですからね」
「................................」嗚呼、お父様にお母様。師匠に桂香さん。愛する我が弟に妹。どうやら私は何処かで発言ミスをしていた様です。
「夜叉神さん。まぁひとまず席にお座りください。一ノ瀬玉座もどうぞ」
「ありがとうございます」「アリガトウゴザイマス」
「その孫というのがこの子なんですが。天衣と言います」
弘天さんが一枚の写真を取り出す。その写真に写っていたのはあいちゃんとたいして歳が変わらなさそうなロリ、もとい子供だった。
八一と同じ運命を辿れと会長は言ってるのか⁉︎死ねと?俺にはあのスーパーウルトラとんでもない記事(ガッツリ捏造記事)を作りやがる供御飯万智とかいうとんでもないのが付き纏っていたいるというのを知ってのことか⁉︎
「.....一ノ瀬先生?大丈夫ですか?」
あまりの衝撃で色々飛んでいたのを見兼ねたか夜叉神さんが声をかけてくれた。
「................あ、はい。少し仏を感じていたくらいで至って大丈夫です」
危ない危ない。あまりの衝撃に逝ってたらしい。人は極限まで思考回路を動かし、訳が分からなくなると仏を感じるとは本当だったのか。
その後はまぁなんだ。その子の事や現状、置かれた環境などを一通り聞き、後日改めて俺が天夜叉さん宅にお邪魔して天衣ちゃんと対面という形となった。
弘天さんがお帰りになった後、俺は月光会長と話しをした。
まずはだ
「会長!なんて事してくれてるんですか⁉︎あれ、確実に俺が弟子を取らなきゃいけないルートじゃないですか!!!!」
「はい。だって弟子欲しいって"言ってたじゃないですか"?」
「どこをどう聞いたらそうなるんですか!!一言もそんなこと言った覚えは無いです!!」
「まぁもう言ってしまった事ですから。ひとまず頑張ってくださいよ?"一ノ瀬玉座"」
「..........分かりました」
将棋界の先輩であり人生の先輩。そして尊敬する棋士の1人であり。将棋界の顔ともいえる会長を務めているこの人に逆らうことは出来ない。もう分かりきっている。そんな人が言ってしまった事だ。もう引き返せない。ここで俺が天衣ちゃんという子を弟子に取らなければ恐らく将棋界全体に多大な影響を及ぼしかねないのだ。
何故ならA級棋士を要求してそれが通るほどの資金援助による経済的影響力を持っているという事だ。ここで断るのは色々とまずい。
「それと。あの夜叉神さんのお父さん。昔、会長と対戦した事あったでしょ?アマ名人として」
「よく知っていますね」
「夜叉神なんて苗字中々みないですからね。まぁなんの縁か知らないですかどその記録係したの俺なんで少し気にはなります。なのでひとまず行って、弟子入りに値するのか、この世界で生きていけるかを見てきます」
「わかりました。改めてよろしくお願いします」
「はい」
その後、会長と色々な事(特に清滝師匠)のことについて長々と話し込んでしまい会長室を後にした頃にはもうどっぷり夜に浸かっていた。なんだかんだであの人も自身の弟弟子(清滝師匠)のことが心配なのだろう。同じ兄弟子としてめっちゃ分かる。
勝負はついていると思っていたがどうやらまだ終わっていなかった。なので棋士室に戻ると奨励会員の子が棋譜を取っていたので見してもらう。
「................っ!」
これは......もういつ投了していてもおかしくない状況だ。並みの精神力では到底耐えれない。そんなところだった。しかし八一はそれでも駒を打ち付ける。
その根元にあるのは『あいちゃん』の存在か?弟子を取って、タイトルを取ってその先に見たものは心だったのか?何を見出したかは兄にも分からない。
ただ分かるのは関西らしい。否、あいつらしい棋譜に囚われず争い続ける将棋を久しぶりに見れた。あいつが帰ってきた。それだけだ。
第60期 帝位戦 紅白リーグ
先 ▲ 六段 神鍋 歩夢 (三勝)
△ 竜王 九頭竜八一 (三敗)
将棋会館の一番神聖な場所『御上段の間』。ここで行われた戦いは数知れず。多くのドラマがあった。そんな所で今日、過去に類を見ないほど熱い戦いが行われた。
いつの間にか史上最長手を越え八一がノータイムで指せば神鍋君もノータイムで指す。その繰り返しがずっと続く。そんな時間になっていた。同世代として譲れないものがあるのだろう。お互いがお互いを倒す為、意地と意地のぶつかり合いが起きている。そんな戦いは
「まいりました」
神鍋君の宣言で幕を閉じた。
戦いから解放された八一を労いに行く。
「八一」
「兄弟子!」
「お疲れ様。よう諦めなかったな。一瞬、その様子が垣間見えたけどよう耐えた」
「........あの時、兄弟子が言ってた自分らしくやれって言うのが分かった気がします。どんなに泥臭くても酷い棋譜でも良いから諦めない。確かに大事でした」
「そう言ってくれてありがとう。でも、可愛い弟子がいるからだろ?行ってあげろよ、ずっと待ってたんだから」
「はい!」
こうして八一はあいちゃんの元にかけて行く。俺も.........まだ見ぬ天衣ちゃんとあんな風になれるのかな?そんな一筋の気持ちを胸に関西将棋会館を後にした。
ああ寒い。今日は大人しく帰るか。
感想戦
基本的に俺は棋士室には行かないがどーしても暇な時には行く。別に付き合う彼女もいなければ今のところ弟子もいない俺は何も無い日は暇なのだ。ぶっちゃけ棋士室行っても俺に叩き潰されると思って声をかけてくるやつ自体少ないのが。あれ、目から汗が出てきたよ?ナニコレ?しかしその暇な日を暇で無くする存在はいるのだ。
「玉座サン、ごきげんよろしおすぅ」「おう、一ノ瀬じゃねえか」
供御飯万智(捏造記事製造機)と月夜見坂燎(やべー奴)だ。
「なんだお前らか。暇つぶしになるかと思って来たが期待外れだったか」
「あ?私らじゃ暇つぶしならねぇって言いたいのか?」
「まぁお前らフツーに実力者だし将棋しても良いんだがなぁ。なんかそういう気分じゃ無い」
一応2人について解説。2人とも女流棋士であり燎は女流玉将を万智は山城桜花のタイトルを持ついずれも実力者なのだ。そして万智は鵠という名で将棋ライターもしている。その為将棋界の情報についてはとても詳しいのだ。だが俺は今、そんな2人と将棋をしたい気分ではないのだ。
ちなみに俺は女流だからとかそういうのでは区別しない。確かに歴史を重んじる将棋においてそういうのに煩いのは分かるが俺に取ってはどっちでも良い。強いやつが強くて、弱いやつが弱い。実力あるものが伸び無いものが無い。努力したものが伸び、努力しないものが伸びない。それだけだ。
「おいおい、玉座がそんな適当でいいのか?今年は永世位かかってんだろ?」
「まぁな。なんとかなる。それよりなんかネタないか?」
「なんとかって.....」
割と心配してくれるのは嬉しい。まぁ心配する気持ちは分かる。連続5期で取れるなら取りたいのだ。何故なら今期落とすとあと6期も取らなければならないのだ。まぁどうにかするから良いのだが。
と、ここで万智の方がいい感じのネタを出してくれた。
「ああ!そういえば玉座はん。弟はんが弟子を取られたらしいどすね」
「は?お前の弟って八一の事か?あいつ弟子取ったのか?」
2人も八一と交流あるから知ってると思ったのだが燎が知らないのは意外だった。
「ああ。あいつが弟子取ったのは事実だ」
「どんな人を弟子にしたんどすか?」「で?どんな奴なんだ?写真はねーのか?」
2人とも興味津々である。
「確か9歳の女の子だ」
「「................」」
「気持ちは同じさ。それではいっせーの!」
「「「ロリコン」」」
見事に声がかぶった。
「あいつ、そんな奴だったのか?お前は大丈夫なんだよな?」
「もちろんだ」
「玉座はん。その子の写真は無いんどすか?」
「そうだな....あれが毎日のように送ってきて最近兄である俺でも引き気味になるあいちゃん観察日記的なやつがあったな。これだ」
「「............」」
あ、これガチで引きにきてる奴だ。
「とりあえず鵠としてのお前にこの情報あげる。煮るなり焼くなりして好きに使え」
「わかりました。おおきにどした」
「なんだ。その、俺たち相当やばい奴と付き合ってたのかもな」
コクコクと無言で頷く万智。
この話しは盛りに盛った後、一度記事として完成したが中々のヤバさに一度は消されたもののどこからか流出し、一時期将棋関係者から八一が白い目で見られたのは言うまでもなく、それを悠斗が腹を抱えて笑ったのもまた言うまでもない事実だ。
後書き。
とまぁ京都弁翻訳にくそ疲れた主でした。評価やコメントなどお待ちしています!それでは次回もよろしくお願いします!
セリフの横に名前は...
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いる
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いらない