本編ではなく、佐倉の独白を投稿した理由は活動報告の方で説明しているので、その確認とアンケートへのご協力をお願いします。
独白って意外と書くの難しいですね
私にとって元々貝沼君はただのクラスメイトだった。
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6月末
私は自撮りの為に特別棟にいて、暴力事件の現場に居合わせてしまった。ただのちょっとした言い合いが数十秒経つだけで殴り合いに発展してしまった。いや、殴り【合い】は正確ではない。3人組が赤髪の生徒によって蹂躙された一方的な戦いだった。
一方的に蹂躙していた赤髪の生徒の手には血がついていた。そこからも小学生がやるような喧嘩とはわけが違うことが簡単に分かった。私は早くこの場から立ち去りたかった。
だけど、私の体は何故かデジカメで何かを撮るように動いていた。しかも、自撮りまでして。パニックの最中なのは分かるけど、なぜこんな行動をとってしまったのか疑問に思う。脳が正常に機能していなかったとしてもこんな行動は取らないだろうと何度も考えた。
「ビビりやがって。人数がいれば勝てるとでも思ったかよ」
そう言った後、加害者である須藤君がこちらに近づいてきた。私は脈拍数が上がるのを確かに感じた。足を動かして逃げようと試みるも脳が機能していないせいでまるで動けなかった。私が苦戦している間にも須藤君はこちらに近づいてくる。
「……後で後悔するのはお前だぜ、須藤」
3人組の1人がそんな言葉を言ったのが聞こえた。須藤君はその言葉に反応して3人組の方を振り向いた。私は逃げれるのはこのタイミングしかない。そう思った。
もうすぐ7月になることから蒸し暑く、熱中症で倒れる人間が現れるかもしれないこの空間で私は首筋に汗をかきながらも冷静にそして静かにその場を立ち去った。
「誰かいるのか……?」
須藤君がこちらの様子を見に来たらしい。だけど、私には自分の後ろ姿を見られたかを確認するほど余裕は無かった。
私は焦って逃げたばかりにメモリーカードを落としてしまっていた。私たちDクラスは現在プライベートポイントが9千ポイントしか貰えないのだ。だから、新しい物を買うだけの余裕は無かった。私は本当は戻りたくなかったが、落としたメモリーカードを取りに特別棟に戻った。
私が特別棟に入ろうとした時、意外な人物があの3人組と一緒にいた所を目撃した。その意外な人物とは貝沼君だった。私と同じようにあまりみんなに関わろうとしない人が須藤君に殴られていた3人組といたことに私は驚愕したのと同時に希望を感じた。
──―彼が私の代わりになってくれないかな?
そう思った。あんなことが起これば犯人探しが始まるという事がなんとなく分かっていた私は巻き込まれたくなかった。この騒動に巻き込まれたら私の平穏な学校生活に暗雲が立ち込める可能性が高かったからだ。私は彼に確認しておきたかった。あの現場を見ていたかについて。
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7月1日 昼
今日はポイントが支払われる日だ。それにも関わらずポイントが昨日と全く変わっていない。私は昨日のことが原因だと簡単に分かった。彼はどうしているのだろうか? 私は貝沼君がこのことについてどう思っているのかがとても気になっていた。
昼休みになって私は目立つようなことはあまりしたくなかったが、貝沼君にちょっと話さないかと聞いた。初めて目も合わせたこともない人からの問いにただ断るか、了承するだけだと思っていた。しかし、返ってきた答えは私にとって意外なものだった。
「悪いな。これから食堂に行く予定でな。知り合いを待たせているんだ。何かあるならまた今度にしてくれ」
そう言って、彼は食堂に行ってしまった。私の心の中にちょっとした嫉妬と焦りが生じた気がした。まずは嫉妬。同じクラスで私と同じような立場の彼がどうやって会うことになるほどの知り合いを作れたのか。私は孤独でも大丈夫だったはずなのに何故か彼に嫉妬してしまっていた。また、焦りは彼からあの暴力事件の現場にいたかという事を聞けなかったことだ。
私は貝沼君のことがよく分からないでいた。他のクラスに知り合いを作れるならこのクラスでも仲良くなれる人を作ればいいのに。少なくともこの時、私はそう思っていた。
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放課後
今度は逆に貝沼君の方から私に話さないかと誘った。昼のことを覚えてくれていたのだろうか? 私としても昨日のことが聞けるチャンスだったのでカフェに誘われるがまま付いて行った。
席について貝沼君がこう言ってきた。
「それで、今まで話したことも顔を合わしたこともない俺に何か用か?」
せっかく貝沼君が問いかけてくれたのに私は用件を話すことがなかなか出来なかった。自分から話しかけたことすら初めてなのだ。少しぐらい許して欲しいと心の中で勝手に思っていた。
私が話し出すまで貝沼君は何か携帯を触ったりなど別の事をするわけでもなく、ずっと待っていてくれた。貝沼君自身は誰かと話したりはしないけど、普通に喋れるから小言の一つや二つは言われるのを覚悟していたからとても意外だった。
そして5分ぐらい経ってやっと私は聞きたかった事を話すことに成功した。
「その……貝沼君は須藤君の事件現場にいませんでしたか?」
彼はこの言葉にとても驚いたようで飛び上がりそうな顔でこう言ってきた。
「まあ、いたが、何で知っているんだ?」
「良かった……間違っていたらどうしようと思ったから……」
先に言葉が出てしまったけど、まずは貝沼君があの事件を見ていたという事実が私をとても安心させた。私以外にも見ていた人がいたという事実に。私は安心感を得たがその後の貝沼君の言葉でまた緊張感が戻ってきた。
「何で俺があの時特別棟にいたことが分かったんだ? お前も特別棟にいたのか?」
私はその言葉を聞いてどう誤魔化そうか必死に悩んだ。私は自分がグラビアアイドル雫だということ。そして、仮面をかぶっている女だと暴かれたく無かった。私がまた答えられずにいると、貝沼君は私を気遣ってくれたのか質問内容を変更してくれた。私は貝沼君のことを他人を思いやれる人なんだなと思った。
「答えにくいならお前がいた理由は答えなくてもいい。だが、俺がいたことを知っている理由は絶対に教えてもらう。これは妥協できない」
貝沼君の表情が険しいものになった気がした。そして強めの口調で言ってきた。さっきまで優しいと思っていた彼が急に怖く感じて思わず涙が少し出た。やっぱり男の人はみんなこうなのだろうか? 私は体を震わせながらもどうにか彼が求めている答えをひねり出す事が出来た。
「そ、その……須藤君に殴られてた3人組と貝沼君が一緒に外に出てくるのが見えたから……」
こう答えると続けて彼はこう質問してきた。
「他にも聞きたいことがある。はっきりと言ってお前って、臆病だからその現場を見た後逃げ出してそのままその場所に近づくイメージが湧かないんだがなんで特別棟の近くに居たんだ?」
どうやら貝沼君には私が臆病に見えるらしい。いや、実際臆病なのだろう。仮面をかぶることでしか私は人との関わりを持てない。今ここにいる私は人と関わりたくない臆病者なのだろう。苦手でもいつかは克服しなければならない。そう理解はしているはずなのに何も怖くてできない臆病者が私なのだ。
私は自分が臆病者だと改めて実感させられたが今はそんなことよりも彼の質問に答える方が先だと私は質問への返答をした。
「え、えっと……その……私逃げる時に落とし物しちゃって。それを取りに戻るときに貝沼君の姿が見えて……」
答えた時私は落とし物をした時のことを考えてしまい、少し恥ずかしくなった。いくら見つからない為に一生懸命逃げたからとはいえ、この年で落とし物なんて恥ずかしいと思っていたからだ。
だが、彼は私が恥ずかしがっていたのを特に気にしている様子もなかった。それよりも切羽詰まった顔で私に質問を続けてした。
「じゃあ、お前が探しに行った場所にペンは落ちてなかったか?」
私にとってのカメラのように彼にとって大切な物はペンだといわんばかりの気迫で私に迫ってきた。一体彼はそのペンにどれだけの思いが詰まっているのだろうか。私はそれが少し気になったがペンは見ていないので普通に答えた。だけど、彼の気迫に圧されていたからか、普通に答えていたつもりが少し声が震えていた。
「ごめん……見てない」
私はこう答えた。しかし、彼はそのペンが無くなったことが認められないようで私にもっと色々と聞こうとしているのか詰め寄って来ている。
「誰か俺たちが出てきた後に出てきた奴はいなかったか? どんな特徴でもいいからいるなら教えて欲しい。何なら性別だけでもいい」
彼はどうしてもそのペンを探し出したいのだろう。必死になって私から何かの手がかりを探そうとしていたのがよく分かった。だけど、私はもう耐えきれなかった。人とのコミュニケーションを全く取ってこなかった私にはこれ以上頼られるのは限界だった。私はいつもの定型文でここから立ち去ろうとした。
「ごめんなさい……用事があるので帰ります」
私は彼に悪感情を持っているわけでは無かった。むしろ仮面をかぶっていない私みたいな人間でも頼ってくれた。集団による圧力ではなく、個人で真摯に対応して頼ってくれた事がとても嬉しかった。ただ、疲れたというワガママな理由で帰る私の方が彼に申し訳なかった。
そして、彼は私に情報を提供するのを強制はせずに、私にとっても答えやすい方法まで提案してくれた。
「分かった。じゃあ、俺の連絡先を渡しておく。話すのが苦手ならメールで良いから寄こしてくれ」
彼の連絡先と私の連絡先が交換された。私はまだ一日しかまともに話していないにも関わらず、彼の連絡先がもらえた時、嬉しい気持ちになった。私自身なぜそんな気持ちになったのか分からなかったが、その気持ちは寮に帰り着くまで続いた。
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夜
まただ。
どこから来たのか分からない手紙がポストの中に入っていた。今回も内容は同じだとは思うけど、私は内容を確認しておくことにした。
僕はただのファンじゃないよ。運命って信じる? 僕は信じるよ。だって僕と雫ちゃんは同じ空気を吸っている。僕の吐いた空気の一部を雫ちゃんが吸っているんだよ。雫ちゃんも僕の事を愛しているよね? 僕たちは結ばれる運命にあるんだ。だから僕は、こんなに君を近くに感じている。
ここまではいつもと同じ内容だった。しかし、ここからは違った。私は本格的に恐怖を抱いた。
ところであの男は誰だい、雫ちゃん? 僕たちは結ばれる運命にあるのにそれを邪魔しようとしているあの男は。雫ちゃんも嫌だったよね? 既に僕と結ばれる事が確定しているのにあんな男に近づかれて。必要ならすぐに言って。僕があんな男殺してあげるから。
私が貝沼君と会った事がすでに知られていた。しかも、毎日こんな手紙を送りつけられて……
もう嫌! 誰か助けて! 私は誰かに助けて欲しかった。でも、私は常に独りぼっち。
助けてくれそうな人を探してみるが、誰も信用できない。みんな本当の自分を見せているの? 私みたいに仮面をかぶって生きているの? 分からない、誰か教えて欲しい!
そんなことを思っていた時に何故か貝沼君の事が浮かび上がったけど、彼も仮面を持って生きているのかどうかも分からないから、心の底から信頼することが出来なかった。
私はこの日、涙で枕を濡らした。本当はとても苦しんでいるのに、誰にも相談できない。私はこの後に及んで誰とも仲良くできない自分を恨んだ。
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7月2日
今日、茶柱先生からホームルームで須藤君の暴力事件について何か知っている者は挙手しろと言われた時、私は手を挙げることが出来なかった。私は平穏な学校生活が壊れるのが嫌だった。ただでさえ、ストーカーに壊されているのだから他のことで壊されたくなかった。
貝沼君は手を挙げるのかな? そう思い貝沼君の方を何回か見たけど貝沼君が手を挙げることは無かった。私には何故彼が手を挙げなかったのかこの時は理解できなかった。
その後、貝沼君は教室から出ていこうとしていたところを平田君に見つかって協力を呼びかけられていた。
貝沼君も協力するのかな? そう思っていたら彼は予想外の行動を引き起こした。
「悪いが、俺は協力してやるつもりはない。今回の事件、訴えられた原因が須藤の過剰防衛の可能性があるからな。現に須藤は怪我をしないでcクラスの生徒だけが怪我を負っているらしいな。理由がどうであれ、須藤が暴走した可能性の方が高いと思っている。また再発する可能性があるものを解決するぐらいなら1回バツを受けて反省してもらった方がいいと、俺は考えたからだ。お前たちが無実を証明するために行動することに関しては何も言わないが、協力はしない」
はっきり言って凄いと思った。集団に対して自分の思ったことを言うというのはかなり難しいことだからだ。私なら間違いなくそこに意志があるないにしても協力していただろう。そして、自分が正しいと思ったことを実行に移すところも凄いと思った。私は表面上は協力する意思を示しておいて協力したことなど一度も無かったからだ。協力すると言ったらする。しないと言ったらしない。それを実行できていてとても羨ましかった。
私は彼に憧れをこの時抱いた。どうやったら彼みたいになれるのか、彼は本当に仮面をかぶって生きているのか。彼の色々なことが知りたくなった。
彼はそう言い終わった後でスッキリとした様子で教室から出て行った。この時、須藤君が貝沼君が協力しないことに腹を立てて貝沼君の机を蹴り飛ばしていた。
私も協力しなかったらああやって暴力を振るわれてしまうのだろうか。そう考えると体の震えが止まらなかった。
この時点で私が彼のようになるには無理だろうと思った。でも、どうして彼があんなに堂々と自分の意見を述べれるのか聞いてみたいとも思った。彼に再び会ってもいいかもしれない。私はそう思った。
ストーカーの手紙が気持ち悪すぎると思った人へ
これ前半部分アニメで全く同じようなことがブログに書いてあったので、ブログか手紙かの違いだけで原作準拠です。(白目)
ヒロイン誰がいいか
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佐倉
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神室
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誰でもいい