ランプの魔人と騙され転生者   作:ククク...

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佐倉の独白取り合えず終了です。次回から本編2巻幕間に入ります。

ところで書いてはみましたけど、独白って需要ありましたか?ちょっと分からないので感想くれる方は教えてくれると嬉しいです。

あと、アンケートは今日で締め切りです。


佐倉の独白1-3

 7月4日放課後

 

 今日私を見送ってくれるのは椎名さんだ。教室で待ち合わせをするから待っていた私は教室の騒動に巻き込まれていた。櫛田さんが貝沼君に近づいてこう聞いていた。

 

「貝沼君! ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな? 須藤君の件で話があるんだけど……」

 

「悪いな。この後用事があるから早く行かせてくれ」

 

 貝沼君はすぐに断っていた。

 

「須藤君の暴力事件の現場にいたんだよね! 堀北さんから聞いたよ! それで……証人になってくれないかなっ?」

 

 櫛田さんがこう言っても彼は特に驚いてもいなかった。彼は最初からこうなることが分かっていたのだろうか? そう見えるほど反応が薄かった。

 

「なんですぐに名乗り出てくれなかったの~? すぐに名乗り出てくれればみんなこんなに一生懸命に探さなくても良かったのに」

 

 軽井沢さんが貝沼君に対してこう言った。彼は予定を崩されそうになっているからだろうか? とても不機嫌そうにしながらこう答えた。

 

「断る。それに俺が今から証人になっても意味がないしな」

 

 彼が証人になっても意味がないのは私のデジカメのような須藤君の無実を証明できる可能性がある証拠を持っていないからだろう。彼に須藤君の裁判に関して話を聞いていたからよく理解できた。

 

「何で! あなたが証人になれば解決するんだから証人になりなさいよ!」

 

 軽井沢さんの近くにいた女子の1人が貝沼君に強気でこう言った。彼はイラついたのだろうか。少し口調が強くなっていた。

 

「理由も話してないのに喧しい奴だ。いいか、俺は確かにあの場にいたが証拠は持っていない。証拠を持っていない証人なんて信頼されるわけがない。それに、これがAクラスやBクラスなら良かったかもしれないが、俺はお前たちと同じDクラスだ。そんな人間が証人になったら裁判に有利になるどころか不利になるだけだぞ」

 

「わけわかんねえこと言ってないで俺の無実を証明しろ!」

 

 須藤君が貝沼君の胸倉を掴んだ。私は須藤君を見るたびにあの事件を思い出して体の震えが止まらなくなっていた。貝沼君があの時の3人組みたいに血が出るまで殴られるかもしれない。そう思うと怖さで足が震えた。

 

「そういうところだぞ、須藤。大体お前は自分が原因でこんなことが起こっているという自覚があるのか? 確か前、お前と櫛田達が食堂で集まっているのを見たが、お前はその時何をしていた? 少なくとも責任を感じているなら動けないにしてもそれなりの態度ってもんがあるはずだ。だが、お前は何だ? スマホゲームなんてして、自分が原因なのに反省している様子もなくむしろ助けてもらえるのが当たり前、自分は一切悪くないと言っているような態度。はっきり言って誰もお前のことを助けたくなるとは思えない行動ばかりだった」

 

 彼はこんな状況でも自分の意志を貫くつもりのようだ。はっきりと言って、正論だったが須藤君は自分に非があることを認めることが出来ないのだろう。今にも貝沼君を殴りそうだった。

 

「まあ、落ち着いて。2人とも。貝沼君もそのあたりで須藤君への文句はやめてあげてくれないかな?」

 

 平田君が2人の間に立って、説得しに行った。貝沼君は一回は断っていた。それで断っていた理由も彼のことだから須藤君のことを思って言ったんだと思う。だけど、何故か平田君の顔が恐怖に染まっていたことから彼は須藤君に特に何も言う事は無くなった。だけど、須藤君だけは納得できなかったようだ。

 

「使えねえ奴だな! 俺の無罪を証明できない奴なんてどうでもいい。堀北が言ってた朝倉だか小倉とか奴に聞いた方がいい」

 

 もしかして私の事を言ったのだろうか? 貝沼君は堀北さんから私の事を聞いたと言っていたから、彼らも堀北さんから私の事を聞いたのかもしれない。私は須藤君に怯えってしまって声が出せるかとても心配だった。もし、声が出なかったら私も須藤君に暴力を振るわれるのだろうか? そう思った時、貝沼君がこちらを見たような気がした。そして彼は須藤君に挑発した。

 

「お前は子供のままだな。精神年齢が小学生から進んでいない子供のようだ。自分が悪いという非を認めることもせずに何かあったらすぐに暴力。我慢という概念もなさそうな残念な頭の持ち主のようだな、お前。運動が出来ても今のまま成長しないお前なんて誰からも必要とされないだろう。一回停学になって頭を冷やしたらどうだ? 暴走ゴリラ」

 

 その後は悲惨だった。須藤君が平田君を押し飛ばして、貝沼君の事を殴ろうとした。私は自分が今名乗り出れば彼は助かるのでは? と思った。しかし、声が出なかった。私は須藤君に心の底から恐怖を抱いていた。だから、彼の代わりに私が暴力を受けるかもしれない。そう思うと怖くて行動できなかった。私が心の中で貝沼君に謝罪していると突然教室のドアが開く音がした。

 

「ちょっと、ちょっと。暴力沙汰は不味いんじゃないかな?」

 

「すみません。佐倉さんはいらっしゃいますか?」

 

 2人組の方は全然知らない人たちだった。だけど、椎名さんがタイミング良く来てくれた。教室は時が止まったかのように静かになり、その間に貝沼君も須藤君から逃げることに成功したようでとても安心した。だけど、同時に私は自分自身の不甲斐なさを実感した。椎名さんが来ていなければ彼は怪我をしていただろうから……

 

 結局この後、堀北さんから監視カメラの話があって、須藤君は裁判関係なしに停学になるようだ。私は不謹慎にも良かったと思ってしまった。私で人生で初めて作った友達を怪我させようとした彼を救う気にはなれなかったからだ。勿論、彼も何故か須藤君を挑発していたから悪いとは思ったけど、それでも私は須藤君を一生好きになれそうに無かった。

 

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 7月6日 昼休み

 

 私は椎名探偵グループのみんなと食堂にいた。前までは食堂になんて全く行かなかったから新鮮な気分だった。

 

「それで、なんで貝沼君は須藤君に自分を殴らせようとしたの?」

 

 王さんからそんな言葉が聞こえた。彼女の言う通りなら彼は須藤君に自分を殴らせる為にわざと挑発したらしい。私はその意図を理解できなかった。

 

「あいつは恐らくあの発言から佐倉に聞こうとしたんだろう。佐倉もあの暴力事件の現場にいたからな。だが、俺が正論を言っただけであいつは暴れだしただろ。佐倉は見たところ怯えていたからな。須藤に対してまともな返答ができたかも怪しい状態であの状態の須藤を近づけたらどうなると思う?」

 

「つまり、あれは佐倉さんを守る為だったの?」

 

 彼は私の事を少なくとも少しは思ってくれてあんな事をしたらしい。自分が傷つくような事を。私は少し照れ臭かったが、もし彼が重傷でも負ったらその時、耐えることが出来るだろうか? 今回は須藤君に殴られずに済んだけど、何か別の要因でそうなったら私は彼に対して何が出来るのだろうか? そう思ったが、まさかその日に味わうことになるとはこの時の私は全く思っていなかった。

 

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 7月6日 放課後

 

 私と貝沼君と王さんで家電販売店付近に来ていた。貝沼君は何に使うのかは分からないけど、ボイスレコーダーを買いたいらしいから別行動していた。

 

 貝沼君からカメラコーナーに行くことを薦められたけど、あそこにはあまり行きたくなかった。あそこの店員の私を見る目がやけに気持ち悪かったからだ。気持ち悪いと感じ始めたのは2回目にここに来た時。大体4月の中間辺りだった気がする。この店に入るとどこからか視線を感じ始めたのは。そんな嫌な思い出があることを彼は知らなかったのだろう。私が好きなカメラがある所に行っておいてとと言ったのは出来るだけ待ち時間を退屈させないためだろうか。その気遣いは嬉しかったけど、今は逆効果だ。

 

「どうしたの? 入らないの?」

 

 私が色々と考えていた間、王さんが既に店の中に入っていた。たとえ気持ち悪い視線があっても私が耐えればいいかなと思った私は王さんにこう返答した。

 

「い……いえ。すみません……今行きます」

 

 私は死地に飛び込む気持ちで店の中に入った。

 

 

 店内に入るとあの店員がいた。私を見るとすごく嬉しそな顔をしていた。大方、彼がストーカーなのだろうと予測がついた。今日は王さんと来ていたが、彼は王さんのこともいやらしい目で見ていた。私は覚悟を決めていた。もし、王さんや椎名さん、貝沼君があのストーカーに襲われるぐらいなら私が彼を説得してみせると。

 

 

 

 私はストーカーの男と話をつけることにした。

 

 私は王さんがカメラに夢中になっている間に店から出た。あのストーカーもそのことに気付いたようで私の後をつけてきていた。

 

 

 

 

 

 

 家電量販店の搬入口近くに来た私は開幕早々こう言った。

 

「もう……手紙を送ってきたり、ストーキングしてくるのをやめてくれませんか?」

 

 この言葉の意味を理解できなかったのだろうか? 男はこう言ってきた。

 

「どうしてそんなことを言うんだい? 僕は君のことが本当に大切なんだ……。雑誌で君を初めて見た時から好きだった。ここで再開した時には運命だと感じたよ。好きなんだ……君を想う気持ちは止められない!」

 

「やめて……やめてください!」

 

 私は拒否の意を示した。彼の発言からはただ不快感しか感じなかった。貝沼君や椎名さん、王さんのような思いやりの精神は一欠片もない、ただ自分自身の欲求の為に言っているだけに過ぎない表面上だけの言葉。彼は本当に私の事を愛しているのだろうか? 彼が欲しいのは私という存在ではなく、雫という存在だけではないのか? そう思った。

 

 どちらの存在も認めてくれた貝沼君がいたからこそ、この男の存在、発する言葉、行動がただ不快だった。

 

「こんなもの一日に何回も送ってこられて迷惑してるんです! やめてください!」

 

 私はそう言って今までこの人が送ってきた手紙を全て地面に叩きつけた。そして踏んづけた。彼の想いを全て否定するために。

 

「どうして……どうしてこんなことをするんだよ……! 君を想って書いたのに!」

 

 彼は私に憤怒しながらも近づいて来てこう言った。

 

「やっぱり、あの男が君に何かしたんだね! あの男が君に僕を嫌うように洗脳したんだね! そうだ……そうに違いない! そうじゃなければ君が僕を嫌うことなんてありえないんだ! そうだよね? そうだと言えよ!」

 

「私は何もされてません! おかしいのは……あなただと思います!」

 

 私も憤怒した。何故こんな奴に私の初めての友達、大切な人を否定されなければならないのか。

 

「安心して、今君を正気に戻してあげるから! あんな男の洗脳を解いて僕だけを愛していた君に戻してあげるから! 今は嫌がっているけどきっと君も洗脳が解ければ僕に感謝するはずだよ……僕たちの愛こそが本物だって再び理解できるはずだから!」

 

「いや、離してください!」

 

 私は倉庫のシャッターに手を押し付けられた。確かに危機的な状況だった。だけど、私には謎の確信があった。こうやって私が困っている時、彼が毎回助けてくれたから。

 

「オッサン、女の子を襲うなんて勇気あるな。ここは国が運営している学校だぜ? そんな学校でストーカーとかの犯罪で捕まったらあんたの人生どうなるんだろうな?」

 

 案の定、彼は私の事を助けに来てくれた。私の心に不安はすでになかった。彼が来てくれたという事実だけで安心感の方が強くなった。ただ、普段の彼の口調と全然違ったのが少し気になったくらいだろうか? 

 

「動くな! 彼女がどうなってもいいのか!?」

 

 そんなことを思っていると、ストーカーが私の首に包丁を近づけてきて、彼を脅していた。この時私はこの男に失望した。あんなに愛してると言っておきながら今私たちから逃げるためかは分からないが包丁を突き付けている。このことから所詮口だけだったのだろう。この男からやられた行為自体は嫌だったが、私という存在に目を向けてくれた。そこだけはほんのちょっと嬉しかったが……もう彼には何も思う事は無かった。

 

「あんたが佐倉に並々ならぬ思いを持っているのは分かった。だが、そんなことして何になるんだ? さらに嫌われるだけだぞ?」

 

「うるさい! お前がいなければ! お前がいなければ僕と彼女は心を通じ合うことが出来ていたんだ! お前が死ねば彼女は僕の物なんだ!」

 

 だけど、私は油断していた。貝沼君は確かに今まで私のことを助けてくれた。でも、彼にだってできないことぐらいあるんだと実感させられた。彼のお腹あたりにストーカーが包丁を突き刺した時に……私は初めて彼が失敗した所を見た。今まで彼が失敗した所を見たことが無かったからこそ驚いた。彼のお腹からは須藤君が喧嘩していた時に手についていた血とは比べ物にならないぐらいの大量の血が出ていた。

 

「貝沼君!」

 

 彼はお腹から大量の血が出ているにも関わらず私の事を守ろうとしてくれた。ストーカーの手を離さないようにしていた。私に逃げろと言いたいのだろうか? 目くばせで私に意志を伝えようとしていた。

 

 私は彼が言いたいことは理解できた。だけど、彼をおいて逃げたくなかった。そう思っていると、背後から警察と王さんが来ていたのが見えた。私は早く来るように手招きした。そして、こちらに来た警察がすぐにあのストーカーを逮捕してくれた。だけど、そんなことを気にしている暇はなかった。

 

 私は貝沼君の元に近づいたが、息をしていないように感じられた。その後、貝沼君は救急車が来て病院に連れていかれた。私もついていきたかったが警察からの事情聴取を受けなければならなかったからついていけなかった。

 

 私が出来ることはただ彼の無事を祈ることだった。

 

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 後日、ホームルームで彼が怪我をして今入院している事が茶柱先生から伝えられた。最初はみんなただ驚いただけだったが、そのあとすぐにクラスでは彼への悪口が横行していた。

 

 私は貝沼君が怪我した理由を事情聴取の後、教員からも聞かれた時に答えたはずなのに何故茶柱先生はそのことを言ってくれないのだろうか? このまま言わない気なのだろうか。そう思っていたら急に茶柱先生がこう言いだした。

 

「全く、最後まで話は聞け。貝沼が怪我をした理由はとある生徒がストーカーに襲われそうになっていた所を防いだからだ。最後まで話を聞くこともできないのか? お前たちは。社会において最後まで話を聞くことなんて常識だろうに」

 

 この一言で周囲は完全に静まり返った。そしてホームルームが終わり茶柱先生が教室を出た後クラスからこんな会話が聞こえてきた。

 

「それにしても茶柱先生ももっと早く言ってくれれば良かったと思わない?」

 

「そうそう、ちゃんと理由があったなら私たちだって文句なんて言わなかったのにねー」

 

「というかストーカーから生徒を守るなんて貝沼君ってかっこよくない?」

 

「分かる―。一度は体験してみたいよねーそういうの」

 

 はっきりと言って吐き気がした。さっきまで散々彼のことを罵倒しておきながらこれだ。私は彼女たちの話を耳を塞いで聞かないようにした。これ以上聞くと頭がどうにかなりそうだったから。彼の事も何も知らないし、さっきまで愚弄していた癖にすぐ態度を変えるような人の話なんて聞きたくなかった。

 

 私はこのクラスを見限りかけている。勿論平田君のような優しい人もいるだろう。だけど、このクラスのほとんどと仲良くなることは永遠に無いだろう。いや、私から仲良くしようと言われても断るだろう。

 

 でも、貝沼君は優しいからこんな人たちでも助けるかもしれない。そう考えると何故か胸が苦しかった。

 

 私は今日の分の貝沼君の見舞いに行くまで理由は分からなかったがずっと心の中がモヤモヤしていた。

 

 

 





作者の考えの補足的何か

事実を言われる前と言われた後だと、感じ方が全然違うことってありますよね。意味が分かると怖い話みたいに。

Dクラスの彼らにとって理由を言われる前はただ”ざまぁ”としか思っていなかったのが、理由を説明されると”ヒーロー”と認識したみたいに。

そうして、すぐに手のひらを返してその人物を褒め称えたりだとか、その逆もしかり。

そういった人間の汚い所を人と全然関わってこなかった佐倉は認めることが出来なかったという作者の妄想を書いてみました。

課題が多少多くて処理が追い付いて無かったので少し投稿が遅くなりました。待ってた人がいたらすみませんでした。

ヒロイン誰がいいか

  • 佐倉 
  • 櫛田 
  • 椎名
  • 神室
  • 誰でもいい

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