ランプの魔人と騙され転生者   作:ククク...

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3巻編始まります。

無人島は大まかな流れは変わらないと思います。

・・・変わらなければ・・・いいなあ・・・。


3巻
ふざけるな!ふざけるな!馬鹿野郎!


 7月14日

 

 俺たちは豪華客船に乗っていた。普通の人間なら心から楽しみにしていた行事だろう。だが、この後試験が2つあることを知っている俺からすれば彼らの姿は同じクラスとしては馬鹿丸出しで恥ずかしかった。

 

 まあ、その姿を見せているのは自己責任だとして俺は今途轍もなく胃が痛い。何故なら原作との差異で既に2つある事が判明したからだ。

 

 まず1つ目、須藤はこの豪華客船に乗っていない。これは俺が原因で起こった事だ。須藤は暴力事件の件と俺への強打未遂のせいで今は停学処分中だ。そのタイミングでこの旅行だからな。当然停学処分を受けている須藤はこの船に乗ることは出来なかったというわけだ。

 

 これが原因で俺たちDクラスは無人島専用ポイントを30ポイント失った状態でのスタートになるだろう。だが、原作よりもポイントを節約しようという意思がクラス全体で高まりそうではあるからまだいいかもしれない。

 

 次に2つ目、俺的にはこちらの方が大問題だ。坂柳が何故か船に乗っていた。原作において坂柳は無人島試験があるという理由で船に乗っていなかったはずだ。だからこそ、俺はあの契約を結んだ。期限はずっとでは無く、この旅行中だけだったからだ。

 

 船にいないならば彼女とは携帯でしか話せないことになる。ならその対応の仕方は簡単だ。最初から彼女に質問させなければいい。携帯の電源をずっと切っておいたり、4巻で綾小路がやっていたSIMカードを抜く方法でもいい。SIMカードが無ければ坂柳が俺に連絡してきても繋がらないからな。

 

 そう……考えていたのだが、見積もりが甘かったとしか言いようがない。完敗だ。

 

 勿論、坂柳が船に乗るだけならば問題なかった。俺が逃げればいいだけだからな。だが、一番最悪なのは坂柳がこの船に乗るための条件だった……

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 数時間前……

 

 船に乗ってからすぐに俺は茶柱と真嶋先生に呼び出された。茶柱だけならまだしも真嶋先生が先生が呼んでいるとなると無視する訳にはいかなかった俺は呼び出しに応じた。

 

 船内で教員たちの待機場所、つまり船内の職員室にあたる場所についた俺は早速用件を聞いた。

 

「それで何か用でしょうか、真嶋先生。石崎たちが契約違反でも犯しましたか?」

 

 俺が真嶋先生に呼ばれる可能性があるとすればそれぐらいしかないと思っていたからだ。だが、実際は予想の斜め上をいっていた。

 

「来たか貝沼。お前に理事長自身が直々に話があるそうだ。今から10分後にこの携帯に電話がかかってくるはずだ。私たちも何故お前に話があるのかは分からないからな、理由は理事長本人から聞いてくれ」

 

 うん? 理事長からの直々のお願い? 嫌な予感がした俺は真嶋先生に聞いてみた。

 

「……先生。一応聞いておきますが拒否権は?」

 

「あるわけがないだろう? お前は社会に出たとして働いている会社の社長が直々に電話をかけてきたら取らないのか? それと一緒だ」

 

 茶柱が口を挟んできた。お前に聞いてはいないが……要するにお偉いさんには逆らうなってことか。まあ、言い分としては間違ってはいないな。確かにそれが普通に考えて正しいのだろう。しかし、その待ち時間10分の間俺は何故か胸のざわめきが止まらなかった。

 

 

 

 

 

 10分後……

 

《やあ、貝沼君。元気にしているかい?》

 

「ええ、理事長。何とかギリギリで退院できて良かったと思えるいい景色ですよ、ありがとうございます」

 

 俺は理事長のことが嫌いではない。最初は坂柳の父親という事であまり信頼はしていなかったのだが、謝罪がしっかりしていたし、本当に生徒のことを思っていてくれているのが容易に分かるほど優しい素晴らしい人間だった。逆になんでこの父親から坂柳のようなドSが生まれたのかが知りたいぐらいだ。

 

《私も仕事があるからね。あまり時間が取れないんだ。早速だけど本題に入ってもいいかい?》

 

「はい、こちらも待たせている人がいるので早めに用件を教えてくださると助かります」

 

 それで、何だ? 流石にギャンブルのことで咎められるとかじゃないよな? 今はまだ毎月25万プライベートポイントを必ず手に入れる算段がついてないからな。ギャンブルを禁止にするのだけはやめて欲しいのだが……俺がそう思っていると、理事長は用件を話し始めた。

 

《さて、用件というのは私の娘である有栖のことだ。本来有栖には学校で留守番するように言っていて、それを彼女も了承していたんだ》

 

「そうなんですか。坂柳さんは何かその……足が不自由そうでしたからやはりこの旅行は厳しかったのでしょうか?」

 

 ここまでは原作から分かりきっていることだ。何故理事長がわざわざ俺に直々に話をしたかったのか……それが重要だ。

 

《娘は先天性心疾患を患っていてね……私としては心配だったから旅行は諦めてもらうつもりだったんだけどね……娘が急に行きたいと言ってきてね》

 

「は……はあ」

 

 結局理事長は何が言いたいんだ? ただ、坂柳が行きたいと言ったのは意外だな。そういうキャラでは無かったはずだが……

 

《危険だから駄目だと言ったんだけど……娘からかなりおねだりされてしまってね……ハハッ。つい条件付きならば旅行に行ってもいいって言ってしまったよ》

 

 ……今……なんて言った!? 

 

「えっと、つまり……坂柳さんは今船に乗っていてその条件に何か俺が関わっているということでいいのでしょうか?」

 

《理解が早くて助かるよ。君には有栖の付き添いをして欲しくて教員に呼んでもらったんだ》

 

 よりにもよってあんたが面倒事を運んでくるのかよ、理事長!? 

 

 いや、待て。まだ橋本や神室あたりに押し付けれるかもしれない。俺は理事長にこう進言した。

 

「なるほど……理事長が言いたいことは理解できました。しかし、付き添いは俺ではなく、同じクラスで坂柳と仲良くしている橋本と神室という生徒の方が適任だと思いますよ」

 

 実際理事長も理解しているはずだ。別のクラスである俺と同じクラスである橋本と神室、どっちの方が穏便に済ませることが出来るのかを。何故俺を指定してきたのかは知らないが、まだ説得は可能なはずだ。

 

「俺と坂柳さんは別クラスです。理事長なら分かってくれると思いますが、別クラスとの関わりがあれば自分のクラスから邪険にされる可能性が高まります。この学校はいじめに厳しいとは聞いていますが、この付き添いが原因で監視カメラが無い所でいじめが行われるかもしれません。娘さんのことが大切なら俺に頼むべきではないと思います」

 

 いや、本当に頼むわ。マジで! 俺にこれ以上面倒事を増やさないでくれ。

 

《私とて理解しているよ。しかしだね、これは娘の頼みでもあるのだよ》

 

 坂柳が……だと……

 

《彼女が君で無ければ嫌だというものだからね。普通なら娘のことを特定の誰かに任せるなんてことはしたくないんだけどね……娘の頼みだし、何よりも君ならば信頼できると思ったからね》

 

 マジで坂柳は何故俺に付きまとうんだ? あまりにもしつこいようなら綾小路の情報を売ることも考えた方がいいかもしれない。綾小路には悪いが、スケープゴートにさせてもらおう。勝手にな! 

 

「俺はそんなに信頼されるようなことをしたつもりはありませんよ理事長。俺なんかに頼るよりかはSPでも用意した方がよっぽど安心できると思います」

 

 考え直せ! (坂柳を守るのに)相応しいのは誰か、もう一度よく考えろ! 彼女を守るのに相応しい存在は誰か! 

 

《でも君、ポイントをを払わなくたって真摯に対応していただろう? SPは命の危険がある仕事だからこそ高い値段がつくものだよ。だけど、君は佐倉さんのストーカー被害に対して見返りを貰う約束もしていないのにあそこまでしていただろう? 武術を習っていたわけでもないのにだ》

 

 理事長! 彼女の付き添いは貧弱なものでは務まらない! 

 

《無論、大した実力がない人間が誰かを守るというのは無謀だろう。だからこそ、君もストーカーにお腹を刺されて怪我をしてしまったのだから。だけど、私は君が優しい人間だということを知っているからこそ君に頼みたいんだ。引き受けてくれるね、貝沼君》

 

 そう言ったやり取りをしていると、背後から声が聞こえてきた。

 

「貝沼君、理事長と話はつきましたか?」

 

 声がした方向を振り向いてみると、そこにはいい笑顔の坂柳がいた。

 

 この野郎……嵌めやがったな……。俺の見積もりが甘かったとはいえ、ここまで手玉に取られるとムカつく。……仕方ない、頼みを聞くしかないか。ここで頼みを断りでもすれば近くに居る坂柳が嘘泣きか何かをするだけで親バカの理事長から報復を受けるのは俺だ……

 

《答えを聞きたいのだが? 貝沼君。私ももう少しで仕事が始まってしまうからね。早くしてくれたまえ》

 

「……いいですよ。その頼み事、引き受けましょう」

 

《ありがとう。これで私も安心して仕事に取り組めるというものだ。では、貝沼君。君のこれからの活躍に期待しているよ》

 

 なんで理事長からの評価もこんなに高いんだ? 俺ってむしろ須藤を停学に追い込んでて評価低い方が正しいはずなんだけど? 

 

「俺はそんなに優秀な人間ではないんですがね……。まあ、頑張りますよ。応援ありがとうございます」

 

 俺のこの言葉を最後に通話は切れた。

 

「さて、貝沼君。これから2週間の間、エスコートよろしくお願いしますね」

 

「はいはい、お嬢様。まずはどこに向かいますか?」

 

 もう自棄だ。こうなったらエスコートをする回数を減らしたり、出来るだけ周りにバレないように立ち回るしかない。

 

「貝沼君。はいは1回ですよ? あと、行き先は遊技場でお願いします。あなたとのチェスを楽しみにしていたので、失望させないでくださいね?」

 

 お嬢様弄りに特に反応はないか。高円寺がリトルガールって言った時にそれなりにムカついていたから何かしらの反応はあると思ったが……

 

「言っておくが、俺はそこまで強くないからな。そんな勝手に期待されると困るんだが」

 

 俺はそう言いながら携帯で椎名たちに用事が出来たことを伝えようとしたが、坂柳に携帯を取られた。

 

「貝沼君。今は私のエスコートをしていますよね? 他の女の子と連絡なんて取らないでください」

 

 こいつは俺を社会的に殺したいのだろうか? 今は職員室から出てすぐの場所だったため、特に誰もいなかったから良かったが、客観的に見れば俺が浮気しているみたいに聞こえただろう。

 

「いや、お前のエスコートさえなければ本来船で一緒に過ごすはずだった友人に用事が出来たと送るだけだ。だから早く携帯返せ」

 

 坂柳は何故か残念そうな顔をしながら俺に携帯を返してきた。本当にどういうつもりだ? こいつなんかが俺に注目していること自体がおかしいことなはずだ。俺は坂柳の目的が全く読めずにいた。

 

 取り合えず3人に坂柳のことはぼかして伝えるとしよう。

 

 ────────────────────────────────────────────

 

< 椎名探偵グループ(4)

 

すまん。少し用事が出来て一緒にまわれそうにない。

 

どんな用事? 

 

また何かトラブルに巻き込まれたのでしょうか? 

 

まあ、ちょっと面倒なことになってな。

 

最低でも暴力に発展することは無いから安心してくれ。

 

嘘じゃないよね? 

 

そうだよ! もう友達があんな怪我をするところなんて見たくないからね! 

 

嘘じゃないから安心しろ。

 

教師直々の依頼だから口外出来ないんだ。

 

だから、悪いな。3人でまわっておいてくれ。

 

……分かりました。

 

何かあったら遠慮なく頼って下さい。

 

貝沼さんは何かと無理しがちですから。

 

私も協力するから。何でも言ってね! 

 

ありがとう。その心遣いだけで嬉しい。

 

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「貝沼君、随分と楽しそうですがそんなに彼女たちとのやり取りが正しいですか?」

 

 俺がグループチャットで椎名、佐倉、王とやり取りをしていると坂柳がいつの間にか俺の目の前に立って俺の顔を覗き込んできていた。

 

「っ!? 何のつもりだ、坂柳」

 

「私はあなたにエスコートを頼んだはずですよね? 時間は有限なのですから早くお願いします」

 

 ちっ、俺は目立たないでAクラスにあがってやろうと思ったのに本当にどうしてこうなった。本当に……ふざけるな! ふざけるな!! 馬鹿野郎!!! 

 

 俺はこの2週間、胃が持つかとても心配だった。

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 というわけで俺はこの2週間、坂柳とある程度の時間を一緒に過ごす羽目になってしまった。そして今は遊技場でチェスを打っていた。

 

「それで坂柳、お前が船に乗るための条件って何だったんだ?」

 

 理事長から条件付きで乗ることを許可したと言っていたが、具体的なことは言われなかったからな。

 

「おや、お父様から聞いていなかったのですか?」

 

 坂柳は意外そうな顔をしていた。父親が説明に時間をかけていたのが予想外だったのだろうか? まあ、十中八九お前のせいだろうがな。

 

「ああ、お前を心配するあまり俺に対してかなり念を押すほどだ。随分と愛されているんだな、坂柳?」

 

 俺がこう言うと坂柳の顔が少し赤くなった気がした。よし! いじるネタ発見。

 

 俺がそんなくだらないことを考えていると坂柳は落ち着いたのか平静を取り戻していた。そして船に乗るための条件について話し始めた。

 

「では、お父様の代わりに私が話すとしましょう。この船に乗るための条件は2つありました。1つ目は今回行われる試験には参加しないこと。そして2つ目は移動の際、付き添いを必ず1人は付けることです」

 

 なるほど、試験に坂柳は参加しないのか……それはいいことを聞いた。今回の試験で俺はかなり動くからな。坂柳がいた場合、船内試験で俺がやる事を妨害される可能性が高いからな。

 

「なるほど……1つ質問だ。お前が試験に参加できないのは、本来お前は旅行に来る予定が無かったからか?」

 

 俺がそう言うと、坂柳は不服そうな顔でこう言った。

 

「お父様曰はく、本来参加できない試験なのだから試験に参加することは許されないようです。協力することもダメなようです」

 

 よし、坂柳が協力することも不可能ならば神室と橋本に邪魔はされないな。つまり、この2つの試験で俺が最も気を付けるべきなのは龍園だという事が分かった。

 

「そうか。なら、契約通りに葛城派を潰すという意思は変わらないということでいいんだな?」

 

 まあ、彼女の中で答えは決まっているだろうがな、念のための確認だ。

 

「はい。契約通りにお願いしますよ、貝沼君。あと、チェックメイトです」

 

「強いな。全く歯が立たなかった。俺の完全敗北だ」

 

 素直にすごかった。そしてチェスをやってみて分かった。確かに俺は原作知識を持っている。だから、坂柳を驚かせることぐらいは出来るかもしれない。だが、真の意味で勝てる日など一生訪れることは無いだろう。そう思わせるほど彼女は強かった。

 

「……想像以上に弱いですね……。やはり、私の勘違いでしょうか? いえ、まだ1日目ですからまだ決めつけるには早いですね」

 

 坂柳が小さな声で何か言っていたが聞かないことにした。多分今、ろくでもないことを考えているのが容易に想像できたからだ。何故自分からさらに憂鬱な気分にならなければならないのか……

 

 俺は1日目から嫌な気分でこの旅行に挑むことになってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 




書いてたらいつの間にか理事長が親バカになってしまった。

本当に毎回書いていると1人はキャラが暴走するのは何故なのか・・・

あと、グループチャットでの枠の色の意味

緑:貝沼 水色;椎名 ピンク:佐倉 紺;王

という感じで誰の発言か分かりやすいようにしたつもりです。

あと、グループチャットのモデルはラ〇ンです。

3巻編にて赤文字は必要ないと思ったか否か

  • 全然使ってもいいと思う
  • 要らなくね
  • 別に太字とかそういうの全部要らない

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