ランプの魔人と騙され転生者   作:ククク...

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取り合えず間に合った。

今回はハードル走の部分から棒倒しの途中まで。独自展開は今回少し入ってます。

斜め上の展開はもうちょっと先になりそうです。




うるせえやつら

 2つ目の競技はハードル走。2回連続で走る競技だが、今回は跳ぶという動作が加わるし、尚且つハードルに接触した場合はペナルティとしてゴールしたタイムに0.3秒、倒した場合には0.5秒加算されるという失敗が許されない競技でもある。

 

 いくら他学年も走っていたから休憩できるだけの時間があったとはいえ、こうまで競技に求められるレベルが上がるとなるときつい。ついさっき、外村がサボろうとした時は行けと言ってやった。

 

 外村は練習でもハードルを跳べなかったことから逃げようとしていたのだが、俺がここで逃げたらどうなるかというのを説明してやるとすぐに定位置についた。まあ、原作では須藤に怒られるだけで済んだが、この世界線では俺というある意味独裁者がCクラスに誕生しているため、俺の機嫌を損ねたら退学になりかねないというのは理解していたのだろう。

 

 結局結果としては1個を除いて全てのハードルを倒してしまい大幅にタイムに加算されて最下位だった。外村程度の走力ではハードルを倒そうが倒さまいが最下位になるのは間違いないため、誤差の範囲でしかないが。

 

 しかし、参加することこそに意味がある。誰か1人でもサボれば怠け者や舐めた奴が多いCクラスのことだ。山内辺りはサボりだすかもしれない。それに最下位でも一点は貰えるんだ。高円寺がサボっているならまだしも、今回はサボっていないのだから絶対に誰にも理由無しで危険なんてことはさせない。

 

「貝沼、今日がお前の命日だ! 覚悟しろ!」

 

「やかましいわ。そもそも、俺に恨まれる筋合いなんてないんだが? 完全にお前らのミスだろ」

 

 8組目。俺に突っかかってくるのはAクラスの戸塚だ。またの名を葛城の腰巾着。正直言ってこいつには全く興味が無いんだけどな。むしろ、気になるのはCクラスだ。

 

 俺を潰す気があるなら堀北と同じようにそれなりに早い奴をぶつけてくるはずなのだが、今のところは体型がデブの奴など俺に勝たせる気満々のメンツだ。……龍園が俺を潰しに来るのは間違いないので、警戒すべきは赤白対向型の競技だろう。特に騎馬戦、棒倒し辺りは注意が必要だな。

 

 そんなこんなで始まるハードル走。俺は当然、スタートの合図が鳴るタイミングを把握しており、自分でもかなり良いスタートダッシュを切れたと思う。

 

 だが、ここで想定外の出来事が1つあった。戸塚が俺に並走しているのだ。これには正直言って度肝を抜かれた。原作のステータスにて戸塚の運動能力はDとかそこらだったはずだ。しかし、今の戸塚は少なくとも俺と同等か以下。B近くの運動能力があるということになる。

 

 あいつがやけに勝つ気満々で啖呵を切ってきたなと思っていたが、これが理由なのだろう。こうなっている理由は予想が着いた。佐倉と同じ例の薬を飲んだのだろう。……ドーピングアイテムを使って俺TUEEEやってる馬鹿だな。

 

 そんな馬鹿に負けるのも癪だったので少しスピードを上げて最終的に俺が1位を取った。戸塚が2位。名も知らぬBクラスの生徒が3位だった。

 

「命日ね……。体育祭如きで大袈裟だな。少なくともそんな生命に関わるようなことが起これば学校側が黙ってないだろうさ。無人島試験の時もそうだが、口を慎むんだな、腰巾着。それか坂柳あたりに二度と喋れないように縫い付けて貰ったらどうだ。あのドSのことだ。喜んでやってくれるだろうよ」

 

 敢えて煽る。坂柳が聞いたら、そこまではしませんよと言ってきそうだが別に本人が聞いている訳もなく、聞かれたところで特に問題も無い。

 

 例のドーピングアイテムを使用している以上、殴られたらこちらも洒落にならない怪我を負うかもしれないが、坂柳が率いるBクラスなんてものはいくら損害を与えても足りないほど強い勢力なのだ。

 

 特に今は葛城の影響力は全くと言ってないのがBクラス。こいつが取った行動の損害は当然、クラスの責任者として坂柳が取ることになる。ならば、狙うこと自体は何も問題は無いのだ。坂柳のことだから戸塚に対して何かしらの対策ぐらいは用意していそうだが、その対策よりも殴られるという実害の方が処分としては大変なことになるだろう。俺の挑発は精々厳重注意くらいだろうしね、狙うしかない。

 

「ちっ、覚えてろ」

 

 戸塚は典型的な捨て台詞を吐いてから帰っていった。流石に坂柳に言いくるめられているか。……まあ、普通に考えて今後損害を出しかねない人間を放置するなんて有り得ないわな。少し残念だ。

 

 その例の薬を飲んでいた佐倉は調子が良いのか、最下位になることはなく、4位という今までの佐倉に比べれば遥かに良い成績を叩き出していた。……正直言って大丈夫なのだろうか。学校側から最低の運動能力だと評価を受けている佐倉がこんな成績を出していたら学校側も不信に思うに決まっているのだが。

 

 その場合、ドーピングをしていることぐらいバレそうだから佐倉は切り捨てるしかない。

 

 個人的に佐倉を失ったところであまり過失はない。というのも、扱いやすい駒かと言われると怪しくなってきたからだ。ヤンデレ化したことで俺の行動を束縛して妨害してくるし、何なら逆レイプされたし……。

 

 それにどういうカラクリなのかは知らないが、俺の幼い頃の写真……撮られたことのある写真が何故か佐倉の部屋に貼られていた。佐倉とはこの学校で始めて会ったと間違いなく断言出来る。つまり、佐倉が学校から出て場所も知らない俺の家に行くことは不可能。

 

 尚更謎が深まっていて、むしろ真の敵は彼女なのでは……魔人の協力者でこちらを嘲笑っているのではないのかとまで思っている。現にひよりと俺の関係は佐倉のせいで悪くなっている。

 

 取り合えず、ひよりは佐倉と話し合いをしたと言っていた。体育祭が終わった後、どうにか仲直りして聞いてみる必要がありそうだ。

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~

 

 次の競技は『棒倒し』。早速懸念していた競技が来た。3つ目の競技ということでここで負傷してしまえば今後の競技で苦戦するのは間違いない。選手変更のポイントを払わなくて済むように絶対に競技に出れない程の負傷は避けなければならない。

 

 ……別に負傷自体は問題ない。最下位を取りさえしなければ最悪な目には合わなくて済むだろう。問題は競技に出れないような負傷を負ってしまった場合だ。

 

 俺は健康体の状態で競技に出ている。絶対参加出来ない坂柳とは違う。つまり、早い段階でそのような負傷を負ってしまうと採点基準が分からない以上、最下位になる確率は上がってしまう。

 

 それにその俺の出場枠を埋めるためにはポイントを払う必要がある。その隙を逃さずに堀北は俺に全額払わせるつもりだろう。最悪、俺の分だけで済むなら良いだろう。しかし、他の人間の分まで余計に払うつもりはない。

 

 だが、堀北が他の人間の分まで払えと言った場合、自分の意志が無いCクラスのアホ共はそれに便乗し、俺に払わせようとするだろう。その時に断れば俺の独裁は壊れてしまう。だが、払うとなると稼いだポイントを大幅に失うことになる。

 

 要するに怪我をするな。したとしてもどんな怪我でも意地でも出ろという訳だ。

 

「おまえら絶対勝つぜ。気合い入れろよ!」

 

 須藤のこの鼓舞も一応高円寺がこの場にいることでまともな物になった。まあ、本来の世界線ではそうなる理由となる人間は気にせずに髪を弄っていたのだが。流石に棒倒しのような競技で櫛を持っていくのは駄目なのか手で弄ってた。

 

 まあ、高円寺が何をしているかなんてのはどうでも良いんだ。今回の戦略は原作と変わらない。オフェンスとディフェンスをクラス毎で交互に行うという物だ。こちらとしては勘弁して欲しいものだが、会議には参加しないようにしていたし、仮にそうして欲しくないと言っても、理屈で説明出来る自信が無い。

 

 ……いやまあ、Cクラスが2連続で仕掛けてきた時について話し合わせることぐらいは出来ただろうが、後の祭りだ。俺がやるべき事は怪我をしないことだからな。

 

「心配すんなよ。俺が1人でも多くぶっ倒してやるからよ」

 

 須藤の機嫌は原作と比べるとかなり良い。良い成績を取っているし、高円寺は体育祭をボイコットしていない。須藤のストレスとなり得るのは運動が出来ないクラスの人間が負けた時ぐらいだろう。

 

 少なくとも原作程頭に血が昇っていないとはいえ、念のために忠告はしておく。

 

「一応言っとくが、やり過ぎるなよ?」

 

「保証は出来ねえが……気を付ける」

 

 ……期待出来そうにないな。須藤がAクラスを引き付けてくれるのは間違いないので俺はそこから隙を伺うことにするか。

 

 開始のホイッスルが鳴った瞬間、須藤が飛び出す。物騒な言葉を発しながら。

 

「殺されたいヤツからかかってこいや!」

 

 ……本当に大丈夫なんだよな? 須藤がやり過ぎと判断されて失格にされたら、今後のCクラスに影響が出そうだけど。Aクラスが抑えてくれることを祈っておこう。

 

 現在、俺は綾小路や池と同じペースで敵陣地に向かっている。この棒倒し。攻撃陣同士はすれ違うだけで妨害してはいけないというルールがきちんとあった。

 

 つまり、この段階で怪我させられるというのは無い。もっとも、足を誰かが引っかけようとしたのなら話は別だが。実は敵陣地の近くに辿り着くまでにDクラスから2,3回は足を引っかけられた。この場で転ぶのはかなり恥ずかしい黒歴史になりかねないのでなんとか堪え、無事とは言い難いが全体像を見れる場所に着いた。

 

「止めろ! 須藤を止めろ!」

 

 Aクラスの誰かがそう叫ぶ。砂埃が舞う中、所々からリアルな喧騒が聞こえてくるあたり、この競技の危険さが分かる。

 

 改めて周りを確認してみるが、Cクラスはかなり攻めかねているようだ。綾小路は本気を出す気は無いし、高円寺は競技には出ているが砂埃で汚れるのが嫌なのかグラウンドの真ん中あたりで筋肉を見せつけるようにポーズを取っていた。

 

 ……そんなに悪い意味で目立って何が良いのか知らないが、高円寺はそもそも宛てにしていないので放っておこう。積極的に攻撃を仕掛ける奴にしても、そうでない奴にしてもAクラスは平均的な能力が高いということもあって、1人だけで対応されていた。

 

 むしろ、3~5人程度が対応する必要がある須藤が異常だと評価すべきか。始まってすぐ、俺にも3人ほどマークが付いていたが、俺が全く動く気がないと勘違いしたのかマークが誰一人付いていない状況だ。仕掛けるとすればAクラスが油断している今だろう。

 

 須藤が馬鹿正直に真っすぐ行ったこと、Aクラスが外村などの実力が無い人間たちまで丁寧に対応していたことでサイドががら空きだった。

 

「貝沼だ。貝沼が動いたぞ! 誰か対応しろ!」

 

 サイドを抜けて棒近くに近づいた所で神崎が叫ぶ。この時、俺は神崎って意外とこういう行事ごとには熱くなるタイプだったんだなとしょうもないことを考えていた。Aクラスのモブ生徒の実力は良く分かっていないが、どうにでもなるだろうと。

 

 俺のせいで注意が逸れたのか須藤があの3~5人の防壁を崩していたのが見えたからだ。そう遅くない内に棒を倒せるだろう。

 

「ふふん。流石に甘いぜ」

 

「……このゲームはこちらの敗けのようだな」

 

 俺を1人のモブ生徒と一緒に対応していた神崎だったが、棒が倒れたことで負けを認めた。俺を抑えられたのは良かったが、一瞬の隙を突かれたことで須藤が棒に接近。それに便乗したかの如く、Cクラスに流れが来た。アルベルトがBクラスが守っている棒を倒しかけたそのタイミングで陥落したのだった。

 

 ……かなりギリギリだった。流石に余裕を持って待ち過ぎたか? ……いや、これから龍園が守備を担当する可能性があるし、そうで無くてもAクラスには同じ作戦は通じないだろう。恐らく次のゲームは負ける。

 

 神崎に余裕があるようなコメントを残しては来たが、実際は棒倒しでは勝てない可能性の方が高そうだ。

 

 次の試合。どうやら勢いを損ねないために攻撃と防御は変えずにそのままで行くようだ。つまり、Cクラスが再び攻撃をすることになるようだ。

 

 向こうはDクラスが防衛することになるのは間違いないだろうし、俺は遠くから様子を見守っておくか。……一番の問題は次の試合だからな。

 

 次の試合も俺たちCクラスはDクラスと殺り合うことになるし、攻撃ではなく防衛。つまり、遠慮なくボコボコにしに来るだろう。特に龍園たちは。

 

 ということで今回の試合は思いっきりサボった。何もせずただ周りをウロチョロしているだけだ。龍園も流石に砂埃が全く舞っていない外側で殺り合う気は無いようでただ睨まれ、そして挑発をしてくる程度に2試合目は収めることが出来た。

 

「おいおい、ちゃんと真面目にしてくれよ、貝沼?」

 

「そういうお前も大真面目にはしてないだろ? 俺は後々のために体力を温存しとかないといけないんだ」

 

「そうだな。怪我はしたくないもんな」

 

「ちっ、分かってるならわざわざ聞くな。面倒臭い」

 

 Bクラスと攻守交替ですれ違うタイミングで橋本とそんな会話を繰り広げた。まあ、露骨過ぎたかもな。橋本にはきちんと俺の意図が理解出来ているらしい。……というか俺が自己中心的な考えを持つということを知っている人間からすれば分かりやす過ぎる行動だったし。

 

「ちっ……絶対に守り通すからな、おまえらいいな!?」

 

 須藤が声を挙げ、Cクラスを鼓舞する。……まあ、Dクラスの恐ろしさを知っている人間が殆どである都合上あまり意味のない行為だとは思うのだが、須藤の機嫌が悪くなると面倒なので一応合わせておきたい……ところなんだが、それで怪我をされまくっても困るな。

 

 ここは俺自身の逃げ道を作るつもりで一応発言しておこう。

 

「一応言っておく。最悪怪我するのが怖いなら逃げても構わん。これが最後のあたりの競技ならまだしもこれはまだ3つ目の競技。ここで怪我をさせられれば色々と支障が出る。Dクラスの狙いは間違いなくラフプレーによって出場出来る人間を減らすことだ」

 

「おい、貝沼! 最初から勝つのを諦めるってことかよ!」

 

 須藤が俺の胸倉を掴む。……やはり、少し熱が入り過ぎているようだ。俺が2試合目をサボっている間にDクラスの人間に挑発でもされたか? 

 

「落ち着け。俺は先を見据えて進言したんだ。この競技で怪我したらこの先の競技に支障が出る。その場合、俺たちみたいに先の2競技で1位を取れている人間ならまだしも、運動が出来ないが学力面で優秀な幸村あたりはお陀仏だ。そういう奴らが生き残る可能性を増やすためにそう言っている」

 

「だから何だ! 勝負を捨てるなんてお前らしくねえぞ」

 

「じゃあ、言うぞ。仮に2人組を作り、テストを解くとする。そして、2人の合計を足し、教科数で割った平均点が一定の基準を超えなければ退学処分を受けるテストがあったとしよう。その時、勉強出来ない奴ばっかだったらどうする? その時点でCクラスは壊滅するだろうな」

 

 俺のこの発言を聞いたタイミングで注意の放送が聞こえた。

 

「須藤健君。手を放すように。失格になりますよ」

 

「ちっ、取り合えず話は後だ。おまえら! ぜってえ逃げるんじゃねえぞ!」

 

 注意は受けたが、失格にはならなくて済んだようだ。……須藤が言いたいことも理解出来るけどねぇ……。あの無人島試験の件以来、リスクをあんまり犯したくないし、何よりも今頑張ったところで旨みが少ない。むしろ、デメリットしか殆どない。これに尽きるんだよね。

 

 勘違いしないで欲しいが、俺はあくまでも良い結果が欲しいのであって、負けず嫌いって訳じゃないんだよ。まぁ、須藤に理解しろという方が難しいか。

 

 敵陣地を見てみると、攻撃は勿論Dクラス。俺からすればここからが正念場だ。しっかり気を引き締めていくとしよう。

 

 




次も1週間後に投稿予定です。

こちらの小説ではまだ言ってませんでしたが、リクエスト募集してます。

活動報告にてよう実以外の原作で書いて欲しい内容があるなら書いておいてください。

作者が見てみて書けそうだという物は余裕がある時に構想を練って書きます。(二次創作は読むけど、原作読んだことない作品は時間かかるのに関しては許して)

3巻編にて赤文字は必要ないと思ったか否か

  • 全然使ってもいいと思う
  • 要らなくね
  • 別に太字とかそういうの全部要らない

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