バカテスポケット   作:野木雄大

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【登場人物紹介】

室町 しのぶ(むろまち )

 二年Eクラス所属で生徒会会計を務めている女子生徒。親を早くに亡くし、現在は学園近くの親戚の家で暮らしている(関係は良好)。学費と自立の為にバイトをいくつか掛け持ちしており、ここ最近(清涼祭の時点で)は着ぐるみのバイトを始めたらしい。

 神条紫杏とは一年の時に同じクラスであり、その縁もあって生徒会に勧誘された。ちなみに会計になった理由はお金の計算が出来るから。

 学力はFクラスレベルで、振り分け試験は鉛筆を転がした結果Eクラスとなった。同じ手段でEクラスに入った辻井悟志とはそれで意気投合した。

 気を許した相手を『ちゃん』付けで呼んでおり、生徒会メンバーは名前で呼んでいる。ただし、悟志に関しては名前呼びを断られてしまい苗字で呼んでいる。


素直※

明久視点

 

 

「はあ…まさか三回戦の相手が貴方達になるなんてね」

 

「ははは。そういうわけだから勝ちは貰ったよ、小山さん?」

 

「まだよ! 相方の黒崎があなた達二人を倒せば私達の勝ち!」

 

「それはそうなんだけどさ。黒崎君…だっけ? 彼もう虫の息なんだけど。ほら」

 

 

 僕の指差す方には、雄二の召喚獣によってフィールドの端へ追い詰められ、さらに点数もあと僅かとなった黒崎君の召喚獣がいた。

 

 

「くそっ」

 

 

 そんな状況でも諦めず召喚獣に武器を構えさせる黒崎君。見上げた根性だ。

 

 僕達の三回戦の相手はまさかのCクラス代表の小山さんと同じCクラスの黒崎君、前のCクラス戦以来の対戦だ。とは言っても僕も雄二も二人と戦ったことはないけどね。

 

 ちなみに小山さんは既に僕が戦死させた。あとは黒崎君だけなんだけど雄二が一対一(タイマン)を望んだ為、邪魔にならない場所で小山さんと雑談している。

 

 

「それで吉井君? なんで貴方はまた女装しているのよ? しかも今度はチャイナ」

 

「…Fクラスだから仕方がないんだ…!」

 

 

 悔し涙を流しながらも答える。クラスの皆が僕を捕らえて無理矢理…。しかも今回は秀吉まで敵に回るとは…………解せぬ!

 

 

「…可哀想にね。今後もそういった事をされそうになったらCクラスに逃げていいわよ? 匿ってあげるわ」

 

「うう…ありがとう、小山さん」

 

 

 君はなんていい人なんだ…!

 

 

「ぐあっ」

 

 

 そして今、雄二の召喚獣が黒崎君の召喚獣にトドメを刺した。

 

 

【現代社会】

 

Fクラス 坂本雄二 184点

VS

Cクラス 黒崎トオル DEAD

 

 

《勝者Fクラス吉井、坂本ペア! 素晴らしい戦いでした。いや~正直な話私としては自分のクラスの代表に勝ってほしかったので少し悔しいところです。皆さん、四回戦に進んだFクラスペアに大きな拍手を!》

 

 

 司会を務める女子生徒はCクラスの新野 すみれ(にいの )さん。若干身内贔屓なところはあったけど最後に観客の拍手で締めてくれた。

 

 

「ふう…なんとか勝てたぜ」

 

「お疲れ様、雄二」

 

 

 戦いを終えてこっちに来る相棒に労いの言葉をかける。

 

 

「吉井君、坂本君。こうなったらなにがなんでも優勝してよね。影ながら応援するわ」

 

「もちろんだよ。そしてありがとう、頑張るよ」

 

 

 小山さん達と別れて喫茶店に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美波視点

 

 

 召喚大会三回戦。ウチは今、最悪な状況に陥っている。科目が現代社会というのもあるけどそれよりもっとヤバいことが…

 

 

【現代社会】

 

Fクラス 姫路瑞希 344点

Fクラス 島田美波 17点

VS

Dクラス 清水美春 96点

Dクラス 玉野美紀 83点

 

 

「なんでアンタが参加してるのよおおおおおっ!!」

 

「お姉様が行くところなら、美春はどこにでもいますわ!」

「うるさいこのストーカー!」

 

「愛のストーカーですわ」

 

 

 対戦相手の清水美春は去年からの知り合い。ウチの事を結婚したい意味で愛しているかなり危険な娘。

 

 ここ最近距離を置いていたせいか鼻息荒く暴走気味な彼女を見て鳥肌が止まらない。

 

 

「み、美波ちゃん。私は玉野さんの相手をしますから清水さんの相手はお願いしますね?」

 

「ちょっと瑞希!? 友達を即売り飛ばすってアンタどういう神経してるのよ!」

 

 

 非常な行動を取るクラスメートを批難する中、瑞希はウチにしか聞こえない声でボソッと

 

 

(大丈夫です。素早く玉野さんを倒してそちらに加勢しますから、美波ちゃんはなんとかして粘ってください)

 

(瑞希…。わかったわ)

 

 

 話し合いを終え、瑞希は玉野さんの召喚獣に突っ込んでいく。玉野さんは遠距離から弓を放ってくるため、なかなか近づけないでいる。頑張れ瑞希…! そしてウチは…

 

 

「さあお姉様。大人しく美春に敗れて保健室へ参りましょう」

 

 

 前にも同じような事があった気がする。負けたら保健室に連れていかれる。そうなったら…

 

「お断りよっ!」

 

 

 サーベルを片手に美春の召喚獣に斬りかかる。向こうはサーベルよりも丈夫な片手剣。簡単に受け止められる。だからといってそれで負けるわけじゃない。例え点数が一点でも攻撃を避け続ければ負けないわ。

 

 

「お姉様。随分と操作が上手になりましたね」

 

「ふっふ~ん、だてに試召戦争を重ねた訳じゃないわ」

 

 

 戦果を挙げられたかどうかは別として、これが今のウチの実力よ? というように鼻で笑う。

 

 

 

「なぜですのお姉様! 大人しく負けてくだされば美春が新しい世界に連れていって差し上げるというのにっ!」

 

「余計なお世話よ! ウチには心に決めた人がいるって去年話したでしょ!」

 

「ぐぬぬ……やはりお姉様は吉井明久が良いのですか!? あの男のどこがいいのです!? 複数の女と関係を持つ女の敵のどこがーー」

 

「アキの事を悪く言わないで! とにかくウチはもう決めたのよ! 後悔しないために自分の気持ちに素直になるって! だからーー」

 

 

 ズバアアンッ

 

 

 ウチの邪魔はしないで、と言おうとした瞬間、美春の召喚獣の上半身と下半身が分断された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 瑞希の召喚獣によって。

 

 

《勝者、姫路&島田ペア》

 

 

 客席からの歓声が体育館に響く。ウチは隣に立つ瑞希に問いかける。

 

 

「玉野さんに勝つの早くない?」

 

「間に合って良かったです」

 

 

 そう…ありがとね、とだけ言ってウチは美春に近づく。玉野さんだけでなく美春も負けたショックからか、座りこんでいる。

 

 

「美春。アンタが男嫌いなのは知ってるわ。でも、だからといって男が全員美春が思ってるような連中とは限らないでしょ?」

 

「お姉様…」

 

 

「だから美春。アキがどういう人なのか、美春自身の目でしっかり確認しなさい」

 

「……はい」

 

 

 ステージを去っていく美春の背中を見ながら願う。どうか美春の過剰なまでの同性愛が少しでもマシになりますように…と。

 

 しかしウチは後々に後悔することになる。親切心で言った美春へのこの言動がとんでもない事態を招く事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても美波ちゃんは凄いですね」

 

「き、急にどーしたのよ瑞希」

 

「だって周りに人が大勢いる中で好きな人がいる宣言したんですよ?」

 

「………へ?」

 

「観客のほとんどがニヤニヤしてましたよ? 明久君は既に会場を去ったから聞いてないと思いますけど」

 

「………」

 

「召喚大会の映像は清涼祭終了後に映研(映画研究部)の皆さんが編集して欲しい人に売るそうですよ。

 

 …さっきの映像と声、残るといいですね?」

 

 

 …そうだったわ。三回戦からは一般客も見ている。とはいっても満員というわけじゃない。それでもステージの上であんな事を…。

 

 想像したら

 

 

「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」

 

 

 ばたんっ

 

 

 恥ずかしさと動揺で気がついたらウチは気を失っていた。

 

 

 そして誓った。目か覚めたらすぐに映画研究部に行こう。映像を削除してもらわなきゃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三者視点

 

 

 誰もいない通路で清水美春は呟く。

 

 

「知っていますわ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの男が悪い人じゃないなんて…

 

 

 

 

 

 

 

 

知っているに決まってるじゃないですか…」




仕事が忙しくなってきました。

風邪は治りましたが、無理せず更新していきたいです。

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