飛天の剣は鬼を狩る   作:あーくわん

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たくさんの感想、誤字報告、評価ありがとうございます。
最後まで突っ走ります。


第漆拾陸話 絶望の中で

「啓・・・!」

 

 

 

啓の死を前に、悲しみにくれる義勇達。その中で、炭治郎がある異変に気付く。

 

 

 

(・・・!?なんだ、この匂い。まるで━━)

 

 

 

「義勇さん!!離れて!!」

 

 

 

「!?」

 

 

突然の炭治郎からの警告に、訳が分からないと言った様子で呆ける義勇。無防備な義勇に対して伸ばされる手があった。その手が義勇を捉えるより早く、近くまで来ていた獪岳が義勇に飛びつくようにして距離を開ける。

 

 

 

「獪岳!?何を━━」

 

 

 

「・・・・・・どうなってる。」

 

 

 

義勇が、獪岳の見ている方向に視点を合わせる。そこにあったのは、紛れもない絶望。

 

 

 

「━━━啓?」

 

 

 

心臓が止まり、死んだはずの啓がそこに立っていた。が、明らかに先程とは様子が違う。人間のそれとはかけ離れた鋭い爪、口元に覗かせる牙。極めつけは血走ったその眼。異変を感じさせるには十分すぎるほどの要素が揃っていた。

 

 

 

「━━━━━オオオオオオオ!!!」

 

 

 

猛々しい咆哮を上げる啓。その様はまるで━━

 

 

 

「━━鬼みたいじゃないか。」

 

 

 

義勇がそう口走る。飢えた獣のような目付きで義勇達を凝視する啓。誰よりも速く獪岳が動く。啓に刀を突き刺し、陽光の元に固定する。すると、啓は皮膚の表面から灼けていく。その事実が、啓が鬼になったという現実を非情に突き付ける。

 

 

 

「動ける者!!武器を持って集まれ!!」

 

 

 

啓の動きを抑えながら声を荒げる獪岳。

 

 

 

「啓が鬼にされた!太陽の下に固定して灼き殺す!人を殺す前に・・・啓を殺せ!」

 

 

 

そう叫ぶ獪岳の表情は悲痛に歪んでいた。柱たる自分がしっかりしなければ、という自覚はあるものの、鬼殺隊となる前からの仲である啓をその手にかけることに、抵抗が無いはずがなかった。その声を受けて、義勇も失われた利き手に変わり、左手で刀を構える。同じく炭治郎も構える。

 

 

 

(頼む、啓のまま死んでくれ・・・!)

 

 

 

刀を握る手に力を込める獪岳。悲鳴のような唸り声を上げながら、啓は日光に照らされもがき苦しむ。顔の半分が黒焦げになったであろう、その時だった。啓の陽光灼けが突如として止まり、みるみるうちに焦げた部分が再生していく。

 

 

 

(日光を━━━)

 

 

 

その瞬間、獪岳は大きく弾き飛ばされる。背中から壁に叩きつけられ、その衝撃で灰の中の空気が一気に吐き出される。

 

 

 

「がッ・・・・・・」

 

 

 

「獪岳!!」

 

 

 

義勇が獪岳の方に視線を移す、が。その視線はすぐさま引き戻されることになる。飛びかかってきた啓がそのままの勢いで腕を振り下ろす。義勇は間一髪のところで回避するが、先程まで義勇がいた地面は見るも無惨な姿に変貌する。

 

 

 

(なんという威力・・・鬼となって間もなくというのに。)

 

 

 

鬼となった啓の脅威を再認識しつつ、義勇はすぐさま臨戦態勢に移る。周りの一般隊士、隠を避難させ、啓と対峙する。

 

 

 

「炭治郎!!お前は援軍を呼んできてくれ!」

 

 

 

「分かりました、でも、どうするんですか!?」

 

 

 

数秒の沈黙の後に・・・

 

 

 

「━━いまこの場で、啓の頸を落とす。」

 

 

 

「━━━━━ッッ。」

 

 

 

炭治郎はどうしようもない絶望感に襲われながらも、自分と義勇二人ではどうにもならないと判断し、言われるがままに援軍を呼びに行く。義勇は一人啓と向き合う。

 

 

 

【水の呼吸 参ノ型 流流舞い】

 

 

 

流れるような動作で啓に斬り掛かる。途中で啓が拳を振るうも、全て避けた上で自身の攻撃のみ叩き込む。

 

 

 

(反応速度は本来のそれより大きく落ちている。これならば━━)

 

 

 

と、思ったその瞬間である。先程与えた傷は瞬きの内に再生する。まるで最初から攻撃を受けた事実などなかったかのように。

 

 

 

(━━そんな。)

 

 

 

油断している所に啓の拳が迫る。何の品もなく、ただただ獣のように無茶苦茶に振るわれたその拳を、義勇は避けようとはしなかった。否、避けることが出来なかった。

 

 

 

【雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃】

 

 

 

拳が叩き込まれようとしたその瞬間、獪岳が二人の間に割って入る。本来のそれより威力は劣るものの、義勇に迫る脅威を取り除くには十分なものだった。振るわれた右拳、もとい右腕を肩のあたりから斬り落とす。

 

 

 

「冨岡!!しっかりしろ!!」

 

 

 

「━━ッ、すまない!」

 

 

 

啓と間合いを開ける二人。啓は呆けたように自身の右腕を見つめている。義勇と獪岳が身構えると同時に、啓の腕が一瞬で再生する。

 

 

 

「日光も効かない、再生力も鬼舞辻に劣らない。どうする、この状況。」

 

 

 

「・・・・・・とにかく、他の柱達が到着するまで持ちこたえるしかないだろう。」

 

 

 

一呼吸置いて、義勇と獪岳は一糸乱れぬ連携で啓の動きを制限する。やがて、炭治郎からの報せを受けた者達が到着する。

 

 

 

「啓━━!?」

 

 

 

杏寿郎が絶句する。共に来た伊黒も言葉を失う。後から追いついた実弥も、啓の有様を見て絶望する。

 

 

 

「鬼舞辻ィ・・・・・・・・・!!」

 

 

 

実弥が憤怒に満ちた声で、既に滅んだはずの怨敵の名を呟く。啓は咆哮と共に、真っ先に実弥へと襲いかかる。当然大人しく襲われる訳もなく、真正面から攻撃を受け止める。

 

 

 

「散れェ!!取り囲んで啓を抑え込む!!」

 

 

 

実弥の叫び声を受けて、杏寿郎、伊黒も刀を抜いて啓を囲む。遅れてやってきた炭治郎も加わり、元々居た義勇、獪岳含めた六人で啓と相対する。

 

 

 

「炭治郎!」

 

 

 

「義勇さん、一度離脱して治療を受けてください!!」

 

 

 

「そうもいかない、啓の鬼としての素質は恐ろしいほどに高い。一人でも多いほうが良いだろう。」

 

 

 

「来るぞォ!!」

 

 

 

再び啓が襲いかかる。標的は炭治郎。鋭い拳、蹴りを標的を仕留めるために放つ。炭治郎は嗅覚で気配を感じ取り、全てを間一髪で回避する。

 

 

 

【蛇の呼吸 弐ノ型 狭頭の毒牙】

 

 

 

啓の死角から伊黒が攻撃を見舞う。が、どうやって感じ取ったのか。伊黒の攻撃を流れるように回避してしまう。

 

 

 

(反応速度が先程とは桁違いだ、この僅かな時間で鬼舞辻の細胞が定着しつつあるのか!?)

 

 

 

どうにかしなければ、と思いつつも有効策は一向に思いつかない。確実に鬼としての力が馴染みつつある啓に対し、焦りが湧いて止まらない。不意に、あることが義勇の頭を過ぎる。

 

 

 

(━━そうだ、人間に戻す薬!!)

 

 

 

「少し離れる!!」

 

 

 

「おい、冨岡ァ!?」

 

 

 

実弥が呼び止めるも、義勇は止まることなくその場を後にする。

 

 

 

(冨岡のやつ、何してンだァ!?とにかく、啓を何とかしねえと!)

 

 

 

【風の呼吸 玖ノ型 韋駄天台風】

 

 

 

宙に跳び、大小様々な攻撃を空中より浴びせる。そのうち幾つかが啓に当たるも、すぐさま傷は再生する。全員が代わる代わる攻撃を仕掛けるも、その全てが啓には通用しない。

 

 

 

(どうする、どうする━━!?)

 

 

 

答えは浮かばない。募るのは焦りばかり。既に限界を一つ二つ超えている中で、さらに疲労が蓄積していく。そんな中、さらに実弥達を追い込む出来事が。

 

 

 

「━━ァ?」

 

 

 

自身に襲いかかる技を避けているうちに、啓は足元に何かあることに気付き、拾い上げる。

 

 

 

(あれは━━)

 

 

 

それは啓の日輪刀。数秒見つめた後に、何も納められていないにも関わらず、自身の腰に携えられていた鞘に妙に慣れた手つきで納刀する。そのまま刀に手を添え、()()()

 

 

 

(━━━━まさか)

 

 

 

最悪の予想が頭を過ぎった瞬間、実弥は自身の持てる最速で身体を後退させる。すると、先程まで自分がいた所には啓が立っており、振り抜かれたその手には刀が握られている。

 

 

 

「冗談じゃねェぞ、オイ。」

 

 

 

鬼の首領から受け継いだ力と、人間として身につけた神業とも言うべき剣技。その二つを携えた存在が目の前にいることに、乾いた笑みすら零れる。先程までの獰猛極まりない立ち振る舞いから一転、啓は落ち着きを取り戻したように実弥達を見つめる。

 

 

 

「これは・・・不味いな。」

 

 

 

誰かがそう呟く。啓から放たれる圧倒的な威圧感。戦いは鮮烈を極めることは想像に難くない。その場にいた全員が、全身に悪寒が走るのを感じた。

 

 

 


 

 

 

「胡蝶━━━!!」

 

 

 

「冨岡さん?そんなに息を切らしてどうしたんです?」

 

 

 

一方、戦線から離脱した義勇は、隊員の治療に当たっていたしのぶを見つけ出す。

 

 

 

「薬、鬼を人間に戻す薬はまだあるか!?」

 

 

 

「ええ、ありますけど・・・」

 

 

 

義勇が安堵の息を漏らす。その様子を見てしのぶは一層首を傾げる。

 

 

 

「禰豆子さんには既に投与し、鬼舞辻も倒しました。何故、今この薬が必要なのですか?」

 

 

 

疑問を確かめる為、義勇に問いをなげかけるしのぶ。それに対して、義勇は隠す様子もなくありのままを伝える。

 

 

 

「━━━啓が、鬼にされた。今、動ける者達で対応している。」

 

 

 

「え━━━━?」

 

 

 

動揺から来る脱力感で、抱えていた治療器具を地面に落としてしまう。その衝撃で、注射器は音を立てて、粉々に砕け散る。

 

 

 

「何で・・・?もう全部、終わりでいいじゃないですか。」

 

 

 

しのぶは膝から崩れ落ち、絶望が口から声として溢れ出る。怨敵が残したあまりに大きすぎる爪痕、それは愛しき人を人ならざるものへと変えてしまった。安堵で一杯だったその心に突きつけられたその事実は、あまりに残酷なものだった。

 

 

 

「胡蝶、薬を。俺が啓を人間に戻してみせる。」

 

 

 

しのぶは数秒黙り込んだ後、静かに立ちあがる。

 

 

 

「━━いいえ、私がやります。冨岡さんにお任せしたら落としちゃいそうですし。」

 

 

 

義勇は「心外!」といった表情で、無言のまましのぶに抗議する。

 

 

 

「冨岡さんは治療を受けてくださいね。片腕失ってるのに動き回ってるなんて馬鹿なんですか?他の方を見習ってください。」

 

 

 

「・・・・・・そんな事を言える程度には、余裕があるようで安心した。」

 

 

 

「ええ、まあ。」

 

 

 

その言葉を皮切りに、しのぶはその場を離れ啓の元へと向かう。愛しき人を、取り戻すために。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

龍の呼吸 捌ノ型 逆鱗

 

 

 

啓が放った無数の斬撃が杏寿郎に襲いかかる。間一髪のところで回避する。凄まじい密度の斬撃で、背にしていた建物が粉々になった。

 

 

 

「む・・・?」

 

 

 

(何だ、何かが引っかかる。)

 

 

 

横から見ていた伊黒が、何か異変のようなものを感じ取る。その迷いを感じ取ったかのように、啓は伊黒に襲いかかる。

 

 

 

飛天御剣流 龍巻閃・旋

 

 

 

納刀し、錐揉み回転しつつ伊黒に迫る。すれ違いざまに抜刀するも、伊黒の羽織を僅かに掠るのみ。その攻撃から、伊黒の感じていた異変は確信に変わる。

 

 

 

(理解した。啓の身体能力は、鬼となったことで桁違いに飛躍した。が、それにも関わらずだ。技の速さ、威力は人間であった頃と大差ない。おかしい。本来なら威力も比例して強くなるはず。)

 

 

 

すぐさま切り返し、仕掛けてくる啓を捌きながら思考する。

 

 

 

(刀を握った時からか。何か、意図的なものを感じる。)

 

 

 

炭治郎に斬り掛かる啓を見て、再び疑問は確信に。

 

 

 

(お前も抗っているのか、啓。)

 

 

 

伊黒は再び気を引き締める。友を取り戻すために。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ここは何処だ?

俺は何をしている?

無惨は死んだのか、皆無事なのか?

 

 

 

「━━━━はっ。」

 

 

 

ふとした瞬間に意識を取り戻す。身体を起こそうとしたが、ビクともしてくれない。

 

 

 

「ここは━━」

 

 

 

辛うじて首だけを動かし、周囲を見渡す。すると、自分が得体の知れない、肉のような不気味な何かに包まれていることが分かった。再度、身体を動かそうとしたが、やはり微塵も動かない。どうしたものか、と目を閉じると、突如として景色と声が脳内に流れ込む。

 

 

 

━━━動ける者!!武器を持って集まれ!!

 

 

 

獪岳?どうしたんだそんなに声を荒らげて。

 

 

 

━━━啓が鬼にされた!

 

 

 

「━━━は?」

 

 

 

どういうことだ。一体何が起こっている。俺が、鬼にされた?意味が分からない。状況が飲み込めずにいると、獪岳が俺・・・?に蹴り飛ばされ、かなりの距離を吹き飛ばされるのが見える。

 

 

 

━━━炭治郎!!お前は援軍を呼んできてくれ!!

 

 

 

━━━分かりました。でも、どうするんですか!?

 

 

 

━━━今この場で、啓の頸を落とす。

 

 

 

ああ、本当に俺は鬼になってしまったんだな。恐らく、無惨を壁に押さえつけたいた時、炭治郎と義勇を逃がし、肥大化した無惨に取り込まれた時だろうか。俺に残っている最後の記憶はあそこだ。あのタイミングで、無惨の血を注ぎ込まれて鬼にされた。とみて間違いなさそうだ。

 

 

 

━━━啓!?

 

 

 

杏寿郎、小芭内に実弥。怪我をしているのは分かるが致命傷ではなかったようだ。既に限界を一つや二つ超えているというのに、俺が情けないばかりに・・・

 

 

 

いや、後悔などしても遅い。今こうして意識が鮮明になった以上、何か出来ることがあるはずだ。抗い続けろ。奴の好きにはさせない。

 

 

 

━━━少し離れる!!

 

 

 

義勇、何処へ?いやいい、とにかくこの肉の塊から抜け出さなければ。依然としてビクともしてくれないが。

 

 

 

何とか抜け出そうとあれこれしていると、手首から先が肉の塊の外に抜け出し、ふと、親しい感触が手に握られるのを感じる。これは━━━

 

 

 

「ふッ!!!」

 

 

 

手首の可動域を最大限に活かし、俺を押さえつける肉の塊に()()()()()を突き刺す。すると肉の塊の拘束力が弱まる。そこにつけ入り、拘束を無理やりに剥がす。立ち上がると、そこは真っ暗な場所だった。

 

 

 

脳内には依然として、恐らく外の、俺の身体が見ている景色が流れ込んでくる。刀を手に仲間達に襲いかかってる光景だ。鬼の力で振るわれるそれは、あまりに脅威。

 

 

 

肉の塊による拘束を外した今なら、身体に干渉することが可能かもしれない。目を閉じ、集中すると、身体が動いてるのを感じ取れる。その感触を少しでも抑えることが出来れば。

 

 

 

━━━む・・・?

 

 

 

成功したようだ。先程よりも技の威力が落ちている。続けざまに振るわれる小芭内への攻撃も、無理やりに威力を減衰させる。

 

 

 

「━━━ッ!?」

 

 

 

ふと、危険が迫るのを感じて回避をとる。俺の意識の中の世界でこんなことが・・・?いや、待てよ。一つ心当たりがある。先程まで俺が立っていた場所を見ると、触手のような何かが伸びている。

 

 

 

「・・・・・・・・・やはり、干渉してきたか。」

 

 

 

目の前にいたのは、滅んだはずの鬼舞辻無惨。最後に見た菅田と同じように、全身を異形に歪ませた姿だ。

 

 

 

「大人しくしていてもらおう。お前には私の願いを、想いを継いでもらうのだからな。」

 

 

 

「丁重にお断りする・・・一つ聞こう。」

 

 

 

「言ってみろ。」

 

 

 

「俺をこんなことにした主犯であるお前を、この俺の意識の世界とも言うべき場所で抑えることが出来れば、俺の身体の自由は戻る、と捉えても良いな?」

 

 

 

「さあどうだろうか。試してみてはどうだ?」

 

 

 

無惨が全身から触手を、管を出してくる。あれだけ消耗させたというのに、ここではそんなのお構い無しといった様子だ。

 

 

 

「そうしよう。ここでお前を倒し、俺は皆の元に戻る。」

 

 

 

 

 

「出来るといいな?」

 

 

 

刀を構え、痣を、赫刀を、透き通る世界を発現させる。俺の消耗もここでは関係ない。存分にやれる。

 

 

 

「覚悟しろ。」

 

 

 

俺も闘う。必ず戻る。だからそれまで、耐えてくれ、皆。

 

 

 

 

 


 

 

 

しのぶが啓の元に到着すると、腕などを失い治療していた柱達も啓と対峙していた。が、その場にいた全員がやはりと言うべきか、動かないはずの身体を無理やり動かして戦っているような状態だった。

 

 

 

「皆さん!啓さんを極力弱らせてください!ここに、私が作った鬼を人間に戻す薬があります!」

 

 

 

「本当か!!」

 

 

 

その場にいた全員に希望の光が射す。悲鳴をあげる身体を奮い立たせ、今一度啓に向き直る。

 

 

 

(啓さん。次は、私達が貴方を助ける番です。必ず、元に戻してみせますから。)

 

 

 

新しくその場に現れたしのぶに狙いを定め、遠距離から一気に間合いを詰め、突きを放つ啓。しのぶは余裕を持ってそれを回避、すれ違いざまに数度毒を見舞う。が、一瞬のうちに毒は分解され、刺傷も再生する。

 

 

 

「再生が遅くなる程度まで追い詰めてください!そこに私が薬を!!」

 

 

 

「了解ィ!!行くぞォ!!」

 

 

 

実弥が先陣切って斬り掛かる。啓はそれを刀で受け止める。その隙に杏寿郎と無一郎が攻撃を加える。

 

 

 

「時透!無理はするな!」

 

 

 

「無理してでも、助ける!!」

 

 

 

義勇同様、右腕が失われた無一郎だが、そんなのお構い無しに啓に仕掛ける。恩人が、仲間は必ず戻ってくると信じて。

 

 

 

「四肢が欠損している者は無理をするな!啓の攻撃を確実に回避、防御出来るタイミングで仕掛けろ!」

 

 

 

片脚を欠損したも、愈史郎が拵えた義足もどきで立ち上がった悲鳴嶼が全体に指示を出す。全員の意識が一つになる。大切な仲間を、取り戻すために。意識の内と外で、それぞれが奮闘する。




啓 VS 鬼殺隊

無惨 VS 啓

という対面ですね。
意識の中でとはいえ、再び無惨と一対一となった啓。そしてしのぶの持つ薬を使うため、啓を弱らせようとする鬼殺隊。正真正銘これが最後の闘いですね。

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