人柱達   作:小豆 涼

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お久しぶりです。
ここ数か月、仕事がバタついて投稿できませんでした。

これからぼちぼち再開していきます…。
お待たせしました!


ワシは、今を斬るのだ。

吉原・遊郭。

 

そこは言わずと知れた、色欲の街。

しかし、そこで暮らす女たちは、希望を胸に働く。

身売りされ、それでもなお己を磨く。

美貌に教養、そして芸事。

それらすべてを兼ね備えられたものは、花魁となり皆の羨望を独り占めできる。

 

傾城、太夫、花魁。

そうして呼び名が変わってきたが、その至るところは変わらず。

花街で育ったならば、一度はそこからの景色を見たいと思う。

 

花魁道中でその三枚歯の黒い高下駄をみれば。

その八文字で歩くさまを見れば。

一度はそこを自分で歩きたいと思えた。

 

「きれい…」

 

荻本屋で振袖新造として働く凛は、ときと屋の鯉夏花魁の姿に見とれていた。

凛はまだ15歳の少女。

禿から荻本屋で働いてきた。

様々な花魁を見て、その姿に羨望の眼差しを隠し切れない。

 

「まきをさんもとってもきれいだったな…体調は大丈夫かしら…」

 

ここ最近荻本屋に入ったまきを花魁も、それはそれは素敵な女性だった。

気の強い女性だったが、とても面倒見がよくて姉御肌。

しかし、ここ数日間は体調が芳しくなく、部屋にだれも入らないように言いつけられている。

 

「お凛!新入りが入ったから、ちょいと手伝っておくれよ」

 

「はーい!」

 

女将に呼ばれた凛は、二階の部屋から恋夏花魁を見るのをやめ下へと降りた。

そして女将の所へ行くと、白粉と頬紅を塗りたくられた少女の姿が。

 

「お、女将さん…?この子は…?」

 

「信じられないくらい粗末な化粧をされてるけど、あたしの目には分かる。この子はなかなかの上玉だよ!」

 

凛がさすがに聞き出すと、なにやら化粧をし直すとの事だった。

女将は綺麗に少女の化粧を落とすと、驚くことに見事な美形だった。

手慣れた手つきで女将はせっせと化粧を直す。

 

「お凛、あんたはこの子に屋敷の案内をしてやっておくれ」

 

「は、はいわかりました!」

 

化粧の終わった伊之助を連れて凛は屋敷を歩いた。

 

立ち止まったのは、まきを花魁の部屋の前。

 

「まきを花魁は最近体調が優れないみたいで、部屋から出てきて無いの。心配なんだけど、流行病だといけないからって部屋に入るのは禁止されてるの…」

 

ここで天元の嫁の名前を聞いた伊之助は、声を出しそうになる。

しかし、天元より声を出すなと言いつけられたことを思い出し、声を押し殺す。

 

「…あなた、話せないの?」

 

凛が心配そうに尋ねるが、伊之助は返答ができずに固まる。

 

「…そうよね、急に売り飛ばされてびっくりしてるよね」

 

その時、伊之助はまきをの部屋の襖を勢いよく開けた。

 

「ちょ、あなた何を…何この部屋!?」

 

「おいコラ!バレてんぞ!」

 

部屋はいくつもの大きな傷がついていて、そこにまきをの姿はなかった。

伊之助は走り出す。

そして通りすがりの客を殴り倒した。

 

ぱたぱたと追いかけてくる凛は、伊之助の野太い声に驚愕していた。

 

「はぁっはあっ!き、君…おっ男の子!?それに、さっきの音は!?」

 

「おい女!いいか、俺のこととあの部屋のことは誰にも言うなよ!いいな!」

 

急にそんなことを言われた凛は、もう何が何だかといった様子だった。

さらには女将に大目玉を食らった凛は、ぐったりと疲れていた。

 

その夜。

凛は伊之助の部屋を訪れていた。

 

「伊之ちゃん、起きてる?ちょっと話が…」

 

禿と雑用の子供たちが雑魚寝している部屋に、凛は伊之助を呼びに来ていた。

 

「…」

 

「ひゃあ!?」

 

凛が気配を感じて振り向くと、そこには伊之助が立っていた。

 

「えっと…聞きたいことが…」

 

「…ついて来い」

 

そうして、中庭の岩に腰掛ける二人。

 

「伊之ちゃん…まきを花魁について、何か知ってるの?」

 

「知ってる。だが、お前には関係ねぇ。死にたくなきゃ変に嗅ぎまわるんじゃねえ」

 

凛が顔を少し伏せる。

 

「なんだか、とっても嫌な感じがするの。私の両親が殺されたときみたいに…」

 

「…お前、親がいないのか」

 

「そうなの…。それで、気が付いたら身売りされてて。でも、荻本屋の皆は大好きなの。まきを花魁も、とってもいい人で…優しくて…」

 

だんだんと尻すぼみになっていくその声に、伊之助は怒気を孕ませていた。

 

「ねえ…伊之ちゃん。まきをさん…無事なのかなぁ?不自然な足抜けの人たちって…みんな…食べられちゃったのかなぁ?」

 

凛の大粒の涙は、月明りに照らされて光る。

 

「私、やだよ…。大好きな人たちが、いなくなっちゃうなんて…。私、本当は見たの…お父さんとお母さんが食べられるところ…」

 

鬼がいなければ。

この少女は、こんなにも恐ろしい思いをしなくてもよかったのではないか。

 

伊之助はそう思わずにはいられなかった。

 

「俺が倒す!なぜなら俺は鬼よりも強いからだ!山の神として、弱ぇ奴らは護らないといけねえんだ!だから安心しろ!」

 

凛は、あの時走り出した伊之助を見たときから、常人ではないと気が付いていたが、自分と歳がそう変わらない子があんなに恐ろしいものと戦うのだと思うと、いたたまれない気持ちになった。

 

「伊之ちゃん…絶対、死なないでね…」

 

「当たり前だ!俺は死なねえ!」

 

凛は少しだけ安心できた。

 

 

 

ーーー

 

 

 

翌日、炭治郎と伊之助は鬼についての現状報告をしていた。

 

声を荒げる伊之助を、炭治郎がなだめていると急に天元が現れた。

 

「善逸は来ない」

 

告げられたことに、炭治郎は聞き返す。

そして、今回の標的が上弦だと告げると二人には吉原を出るように言い放ち、音もなく天元は立ち去る。

 

それでも炭治郎は、みんながまだ無事であるということを信じて動くことを伊之助に告げる。

 

「お前が言ったことは全部な」

 

にやりと笑みを浮かべる伊之助。

 

「今俺が全部言おうとしてたことだぜ!」

 

炭治郎は、鯉夏の元へ。

伊之助は荻本屋へ。

それぞれが決意を胸に行動を起こす。

 

そして、夕暮れ時。

 

「遅いぜ!もう日が暮れるのに来やしねぇぜ!惣一朗の馬鹿野郎が!俺は動き出す!猪突猛進をこの胸に!」

 

叫ぶ伊之助。

そして跳躍。

頭は天井を突き破った。

 

「ねずみ共!刀だ!」

 

そういうと、屋根裏の奥から天元のねずみ達が刀を携えて歩いてくる。

二足歩行で。

 

伊之助はいつもの上裸になり、頭には猪の頭を被る。

 

「行くぜ鬼退治!猪突猛進!」

 

そこへ、凛がやってくる。

 

「伊之ちゃん…いくのね」

 

「おう!俺が鬼を倒すからもう安心しろ!」

 

「うん…伊之ちゃん、無事を祈ってるわ…」

 

心配を隠し切れない凛の視線を背に、伊之助は飛び出した。

 

そして、炭治郎はというと。

 

「鬼狩りの子?来たのね、そう。何人いるの?」

 

上弦の陸、堕姫。

その姿は実に美しく。

しかし、まとう雰囲気は冷酷。

帯の中に入れられている恋夏花魁を見た炭治郎は、離せと叫ぶ。

 

だが次の瞬間には吹き飛ばされ、向かいの建物の瓦屋根にいた。

 

跳ねる心臓、乱れる呼吸。

突然の攻撃に身体が驚いた。

 

木箱をその場に置き、禰豆子に出てくるなと言いつけた炭治郎は、次の攻撃に備える。

 

迫る帯の連撃。

それをうまくいなしながら、鯉夏花魁の見える場所を的確に切り離す。

 

「可愛いね、不細工だけど。なんだか愛着が湧くな。お前は死にかけの鼠のようだ」

 

そこで堕姫は、どこかで爆発音がしたことに気が付く。

何人で来たのか炭治郎に尋ねると、口を閉ざされ、刃こぼれから刀鍛冶を馬鹿にする。

 

炭治郎は、己の身体が水の呼吸に適していないと考えを巡らせ、そして。

 

心を燃やす。

 

─ヒノカミ神楽 烈日紅鏡─

 

すさまじい呼吸音と、変わる太刀筋。

竈門家に伝えられてきたヒノカミ神楽を、炭治郎は振るう。

 

そして見えた隙の糸。

 

─ヒノカミ神楽 火車─

 

「遅いわね。欠伸が出るわ」

 

堕姫が吐き捨てると、糸はぷつりと音を立てて切れた。

呼吸の切り替えで、炭治郎の身体の筋肉は強張る。

 

それでも何とか身をひるがえすと、寸のところで帯を躱す。

 

二度と、哀しい思いを誰にもさせない。

歯を食いしばり、息を大きく吸って。

炭治郎は立ちはだかる。

 

その時、どこからともなく帯が堕姫の身体をめがけて集まってくる。

それを吸って、堕姫の身体には模様が浮かび、その頭髪は白く染まる。

 

「やっぱり柱が来てたのね。良かった。あの方に喜んで戴けるわ…」

 

禍々しい姿と気配を感じた炭次郎だったが、伊之助のもとに天元がいることを察すると安心する。

 

「おい、何をしているんだお前たち!」

 

炭治郎の気が緩んだ瞬間、騒ぎを聞きつけた男がそこに現れた。

 

「うるさいわね」

 

炭治郎が叫ぶも、すでに堕姫の攻撃は始まっていた。

 

紙切れのように斬れる建屋。

そして血を流す人々。

 

その炭治郎も、胸に大きな傷を受けていた。

後ろの男に気をしっかり持つように声をかけていると、満足げな堕姫は立ち去ろうとする。

 

「待て。許さ…ないぞ。こんなことをしておいて」

 

堕姫は何か言った。

ものすごく酷いことを、平気な顔で言い放った。

 

泣き叫ぶ住人。

息をしなくなった亡骸。

そこで、炭治郎の堪忍袋の緒が音を立てて千切れた。

 

いうが早いか、炭治郎は堕姫の足を掴んでいた。

 

「失われた命は回帰しない。二度と戻らない」

 

堕姫の中にある、無惨の細胞が縁壱の幻影を見た。

 

炭治郎の頭は冴えわたっていた。

堕姫の帯はその眼に容易に捉えることができた。

 

迫る刃。

肉薄。

 

ついに堕姫の首に炭治郎の刃が届いた。

が、堕姫の首はしなやかに伸び、あと一歩のところで斬ることができない。

それでも炭治郎の表情は変わらない。

淡々と、冷静に。

堕姫はとにかく猛攻を繰り出すが、それでも炭治郎の日輪刀は首に迫る。

 

斬った。

炭治郎がそう確信したところで、頭の中に片時も忘れたことはない妹の姿が。

 

「お兄ちゃん息をして!お願い!」

 

妹の花子が、炭治郎に息をするように叫ぶ。

 

そこでやっと炭治郎は正気に戻った。

命の限界に片足を突っ込んでいたせいで、炭治郎はもう視界がぼやけていた。

次にやってくるのは筋肉の疲労。

呼吸さえもままならない。

しかし堕姫は待ってくれない。

 

死が迫る。

それを救ったのは、禰豆子の蹴り。

 

堕姫の顔面は吹き飛んだが、全く健在だった。

そして、禰豆子の胴体は両断される。

だがすでにこの時、禰豆子の再生速度は上弦の鬼に匹敵していた。

 

そうして禰豆子は、鬼へと近づいた。

 

「炭治郎…炭治郎や。起きぬか」

 

遠い意識の中、炭治郎の頭に聞き覚えのある声が響く。

 

「命を賭して守ると誓ったのだろうて。起きぬか、竈門炭治郎!」

 

「はぁっ!!」

 

「目を覚ましたか。禰豆子のことは任せたぞ、ワシは鬼を斬る」

 

堕姫は背筋が凍り付いた。

禰豆子に角が生えたと思ったら知らない男が目の前に立っていたのだから。

 

「ヌシ、上弦の陸か。その身体にもう一体隠れておるのか。どうやら恥ずかしがり屋のようだの」

 

この男、なぜわかる。

堕姫は疑問を覚える。

 

そして思い出した。

上弦の弐を打ち取った男のことを。

 

「お前まさか…童磨を斬った鬼狩り!?」

 

「童磨とな?上弦の弐の事かの?なれば左様。ワシが斬った。そしてヌシの首もだ」

 

堕姫の視界は反転した。

首が落ちた。

そしてその首を堕姫は受け止める。

 

「…え?」

 

「げっ!もう来たのかよ天羽!」

 

そこへ天元が現れた。

 

「天元か。ご苦労だった、嫁は無事かの?」

 

「何とか。だが、住人が何人か殺されちまった…もっと早く応援の文を出してりゃ…」

 

意気消沈する二人。

すると、どんっと何かが壁にぶつかる音が響く。

 

禰豆子を抑える炭治郎だった。

 

「おい竈門炭治郎!ぐずりだす馬鹿ガキは戦いの場にはいらねえ。地味に子守唄でも歌ってやれ」

 

「これ天元。後輩にひどいことを言うもんではないぞ」

 

炭治郎は子守唄といわれ、昔母に歌ってもらった子守唄を禰豆子に歌って聞かせる。

ようやっと禰豆子が泣きだして落ち着いたころ、後ろの堕姫も泣き出した。

 

「なんだ此奴!ギャン泣きじゃねえか!ってかなんで消えねえんだ!」

 

「お兄ちゃああああん!」

 

「構えろ天元。来るぞ」

 

参座がそう言った瞬間、剣戟が響き渡る。

 

「…お前はまずいなぁ。強すぎるなぁ。妬ましいなぁ」

 

もう一人の上弦の陸、妓夫太郎の鎌と参座の日輪刀が鍔迫り合いをしていた。

 

「天元よ、あの鬼とこの鬼の首、同時に斬る必要がありそうだの。こっちはワシが斬る」

 

「了解だぁ。俺は待ってやらねえぞ」

 

天元は音もなくその場を立ち去り、堕姫の首を取りに行く。

 

「お前はいいなぁ。生まれてこのかた、取り立てられたことがねぇんだろう。俺は奪われてばかりだぁよ。ああ妬ましいなぁ。すべてが思い通りに進むんだろうなぁ」

 

参座の眉がぴくりと動く。

 

「ワシは生まれてこのかた、失ってばかりじゃ。とにかく間に合わんのだ。今回もそうだの、戦いに全く関係ない者の命が失われておる。これ以上はワシの命にかけて、させるわけにはいかんのだ」

 

「全部守れるだけの力を持ってるんだろうなぁ。俺は妹さえも守れなかったんだぁ。目の前で焼けこげる妹を見たんだぁ、お前にこの気持ちが理解できるかぁ?」

 

妓夫太郎は、目の前で生きたまま焼かれる妹を見た。

何も与えられなかった自分たちが、自分が。

最後の大切なものである妹までも取り立てられた。

 

何よりも大切だった。

自分を投げ捨ててでも救いたかった。

それでも、平気と奪っていく。

奪われていく。

 

そんな世界。

 

「…ワシにしてやれることは、斬ることのみ。その大切な妹を輪廻転生させるためにも、此処で斬ってやろうの」

 

次の瞬間には、もう妓夫太郎の首は繋がってなかった。

知覚できない斬撃。

全く気を抜いていなかったにも関わらず、首が斬れた。

 

「せめて、最期くらいは妹のところへ連れて行ってやろうの」

 

妓夫太郎は、皮肉の一つでも投げつけてやろうと口を開こうとした。

しかし、あんまり参座が優しく頭を抱き上げるものだから、毒気を抜かれてしまった。

 

「…俺は何度生まれ変わっても、鬼になる。幸せそうなやつを、俺は許さねぇ」

 

「なに、次はヌシもその幸せそうなやつになるのだ。ワシが保証しよう」

 

そうして、堕姫の首を斬った天元の元へ着いた。

 

「おい天羽、お前何して…」

 

「お兄ちゃん!なんで鬼狩りなんかに首を斬られちゃってるの!なんで勝てないの!私たちは上弦の陸なのに!」

 

堕姫は首だけになったその口で、まくしたてる。

 

「ねえ!これからもっともっと強くなって、あのお方に褒められる予定だったのに!お兄ちゃんの役立たず!」

 

「うるせえ!てめぇがこの化け物が来る前に雑魚を片付けられねぇからだろうが!」

 

「強いだけしか取り柄がないのに!負けたら何の価値もないわ!この出来損ない!なんて醜いの!」

 

売り言葉に買い言葉。

参座も天元も、いたたまれない気持ちになる。

そこへ、禰豆子を連れた炭治郎が歩いてきた。

そして、参座に抱えられている妓夫太郎の口を手のひらで塞いだ。

 

「君たちのしたことは、絶対に許してもらえない。味方してくれる人なんていない。だからせめて二人だけは、お互いを罵りあったらだめだ」

 

堕姫は炭治郎にうるさい、黙れと声を荒げる。

参座は何も言わず、妓夫太郎の頭を堕姫の向い側にそっと置く。

 

「妹がぐずったら子守唄を謳ってやるものだ」

 

妓夫太郎は一瞬面くらった顔をするが、堕姫の顔を見るなり兄の顔になり、子守唄を口ずさむ。

二人の顔は、さらさらと崩れ始めていた。

 

そして、先に堕姫の顔が消えそうになると。

 

「…お兄ちゃん」

 

そう言い残して、堕姫の顔は消える。

 

「…うめ…梅っ」

 

涙を流しながら、妓夫太郎の顔も消えていった。

 

「哀しき生き物よのう、鬼というのは」

 

「はい。だからこそ、俺達で終わらせましょう、参座さん」

 

「ひよっこがデカい口叩くようになったもんだぜ竈門炭治郎」

 

「さて、ワシは街の様子を見てくるでの」

 

参座は倒壊した街を歩いていた。

そこで、泣き崩れる人々を見て、心を軋める。

 

もっと早く来ていれば。

自分の足が、もっともっと速ければ。

そう思うが、それでも起きてしまったことは覆すことができない。

 

ふと見上げると、まきをが誰かと話していた。

 

「まきをさぁん!ご無事で、よかっ…た!」

 

「お凛、心配かけてごめんなさいね。心配してくれてありがとう」

 

どうやら宇髄嫁たちが、それぞれ世話になった店に挨拶をしているようだった。

 

「もう、そんなに泣いてたらきれいな顔が台無しじゃないか」

 

「ぐす…。そ、そういえば伊之ちゃんは!?無事なんですか?」

 

「伊之助のことかい?ぴんぴんしてるよ」

 

「よかった…本当に、よかったぁ」

 

心底安心した凛の姿を見て、まきをは頭を撫でた。

 

「これから吉原は大変だと思うけど、きっと大丈夫。あんたもしっかりするんだよ、お凛」

 

「はい!がんばります!」

 

こうして、吉原の夜は明けた。

数名ばかりの犠牲者を出したが、この街はたくましく再興すると誰もが信じて疑わない。

 

強かに生きる女たちは伊達ではないのだ。

鬼の脅威がなくなったこの街が賑わうその日は、そう遠くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は刀鍛冶の里ですかねえ。
構想もすこししかできてません…!

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