魔法少女マギカ☆クロス   作:ろっひー

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プロローグ後編

「……」

 

見滝原中学校のHRが始まる時刻、転校生の暁美ほむらは、担任の早乙女先生に呼ばれて、担当のクラスに入る。

 

いつもの光景、いつものクラスメイト、幾度となく繰り返してきた時間軸によって感覚も麻痺してくる転校の時のシチュエーション。

 

早乙女先生の紹介で電子黒板に自分の名前を書いてお辞儀する。

 

身体を起こし、ふと目に止まる桃色の髪の少女、鹿目まどか、突然睨まれたせいもあってか、まどかはあたふたしながら目を背ける。

 

(……まどか……今度こそ、あなたを救ってみせる……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後のクラスメイト達の注目は暁美ほむら……彼女で持ち切りであった。

数学の授業では、証明問題をつまずくこともなく、矛盾なくスラスラと解いてみたり、体育の授業では、走り高跳びで県内記録を出す勢いの実力の持ち主であったり……

 

良い意味で印象に残り、何処かミステリアスな雰囲気を醸し出す、暁美ほむらの話題は昼休みになっても、彼女の周りには女子のクラスメイトがつきっきりであった。

 

「いやー人気者だねー転校生」

 

「本当に。それに不思議な雰囲気の人ですよね。暁美さん」

 

そんな暁美ほむらの人気を遠目で観察している、鹿目まどかの親友、美樹さやかと志筑仁美も彼女の人気に圧倒されている。昼休みも始まった直後もつきっきりで昼食を食べられないのは可哀想であるが。

 

「ごめんなさい……ちょっと気分が……保健室に行かせてもらえるかしら?」

 

クラスメイトに付きっ切りな状態からようやく解放された、ほむらはまどかの方へと向かっていく。

 

まどかはHRに睨まれたこともあり、ほむらに対して少し引きつった笑顔を見せる。

 

「鹿目まどかさん……あなたがこのクラスの保健係よね?連れてってもらえる?保健室」

 

「えっ……えっと……」

 

あたふたするまどかに、さやかが助け舟を出す。

 

「あー! まどか。それなら時間的にも来る頃だし、あいつにも一緒に付き添って貰えば?」

 

「あ、そ、そうだね。」

 

(……?)

 

さやかとまどかが電子黒板の頭上の電子時計を見ながらそう答える。

 

 

なんだろう……? こんな事今までの時間軸ではなかった事だ。

誰かを待っている……? 誰を……?

 

私が知らない誰か……?

 

 

その時、

 

 

「おはようございまーす」

 

誰かが教室に入ってきた。もう朝の授業も一通り終わった、昼過ぎに出席した人物に、さやかが手を振りながらその者に近づいていく。

 

「おっはよー速人! ってもうおはようの時間じゃないでしょー」

 

「いつもの絡みありがとうございます。さやかさん」

 

はぁーと深い溜息を付きながら、速人と呼ばれた人物は、自分の机に向かって、椅子にドガッと大きな音を立てながら座り込む。

 

「おはようございます。鳴海さん、お身体の具合はいかがでした?」

 

「以前と変わらずっすよ志筑さん。だからこその、こんな溜息ですよもう……」

 

深々と椅子に腰掛け、突飛したフックに持ってきた鞄を引っ掛けながら、愚痴の一つをこぼす。が、周囲の空気が少し重苦しくなったのを感じたのか、速人と呼ばれた人物は、二人に苦笑いをし、鞄の中をごそごそと探し出す。

 

「……すみません、ちょっと変な夢見てブルーになっていただけなんで。まぁ、こういう栄養のあるものを取れば、いつかは元に戻ると思うんで」

 

彼がそう言って、鞄から取り出したのは紙パックのトマトジュースであった。ストローを差込口に差し、静かに飲みこんだ途端、彼の顔が徐々に苦々しくなっていく。

 

「うぇー……まっず……」

 

「あんた、トマト嫌いなのに何で飲むのよ?」

 

「これも健康のための試練ですよ」

 

「嫌いなトマトジュースを健康のためと言いつつ、そんなおじいちゃんみたいな顔して飲む中学生、世界中であんただけよ!」

 

さやかと速人の漫才が始まる。あははとクラスメイトも笑い、教室の少し重苦しかった空気が徐々に明るくなった。

まどかも小さく笑いながら、暁美ほむらの手を取り、彼の元へと迫っていく。

 

「ッ……まどか?」

 

思わず手を取られたことに一瞬、保っていた自我が崩れそうになったが、なんとかほむらは持ちこたえることができた。まどかのことを名前で読んだのも、声のボリュームを大分絞れたので、彼女には気づかれていない様子だ。

 

「おはよう速人くん」

 

「ん? あぁ……おはようございます。まどかさん」

 

「そのトマトジュース飲み終えたら、ちょっと保健室に一緒に付き添いしてくれるかな? ちょっと体調崩しちゃった子がいてね。一緒に来てくれると嬉しいな」

 

「んー?」

 

紙パックのトマトジュースを未だに苦々しい顔で、だが徐々に中の容量が空に近づき始めた安堵感からか、少し余裕を取り戻した速人が顔だけ、まどかとほむらの方に方向を向ける。

 

「「……えっ?」」

 

速人と呼ばれた男の子はまどかの手を握りしめている一人の女の子の顔を見て、絶句している。

 

暁美ほむらも紙パックのトマトジュースを右手で抱えながら、口にストローを咥える彼の右目の眼帯を見て、絶句している。

 

 

(この人……どこかで……)

 

(右目が……ない……?)

 

 

この出会いが……後に、彼(彼女)らの運命を大きく変える最初のピースとなった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




すみません、ちょっと時間的に昼休みにほむらが保健室に行くように誘導してしまいました。


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