Persona5 side-Detective   作:核心

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UA増えるのを見るのってめっちゃ楽しいですね。
これがモチベーションってやつか…。
でもまだ出したいキャラも出せてないし、タグ詐欺も甚だしい。皆さんまだ見捨てないで…(懇願)

何故か事態はプロットに無かった方へ。水瀬探偵事務所の明日はどっちだ。


第三話 Serious, but Lonely

    小林大五郎。

 

彼から見せられた名前に対しての最初の感想は、「あ、これ偽名だわ」であった。

なんせ、その時彼が持っていたのは江戸川乱歩の小説。つまりは「少年探偵団と名探偵の捩り(そういうこと)」である。

問い詰めようとは思わなかったが、なぜすぐに偽名とわかる名前を使ったのかを、葉折は好奇心から聞いてみた。

 

 

彼は、どうやら記憶喪失らしいということだった。

なぜ渋谷の路地裏にいたのか、なぜ顔が無いのか、そして以前はどんな人物だったのか。それら全てに、彼は答えることができなかった。

覚えていたのは、以前は確かに顔があったはずだということと、自分が男性であるということだけ。

 

 

どう見ても怪しかった。こんな怪しい、しかも顔の無い人間を、誰も引き取ろうとはしないだろうし、どこも雇おうとすら思わないだろう。しかし、葉折はなぜか、この顔のない青年(ネコ)に言いようのない魅力を感じたのだ。

 

 

させてみれば、勉強もスポーツも完璧にこなし、探偵としての能力どころか、どんな職業になっても一流としてやっていけるほどの能力の持ち主。

最近はちょっと毒も吐くようになったが、独り身が寂しかった葉折からしてみれば、それすらも心地よい。葉折はその様子を、懐かないネコのようだと思っていた。

葉折からすれば、顔が無いだけの好物件を、雇わない理由はなかったのである。

 

こうして葉折は、事務所を持って数日にして、下手すれば探偵よりも優秀な探偵助手(あいぼう)を手に入れたのである。

 

 

 

それからかれこれ2年。

水瀬探偵事務所は、2人で数々の依頼をこなしてきた。

ペットの捜索から浮気調査、果てはインチキ宗教組織の壊滅まで(正確には壊滅が依頼ではなかったのだが)。ほとんど何でも屋状態だった。

 

 

仕事は確かにその多くを明智に取られはしたが、大五郎との2年間は充実していたし、その中で多くの人間関係(コネ)を得ることもできた。大五郎にも何度も助けられたし、彼も毒を吐きこそすれ、葉折を見限ったことは一度もなかった。

 

 

(うん、やっぱり。大五郎くんを拾って正解だったよねぇ)

 

 

大五郎を雇うことができた幸運に改めて感謝した葉折は、意気揚々と、彼の待つ事務所へと帰り始めた。

 

 

 

ポツ、ポツ

 

 

「ありゃ、雨降り始めた?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

コーヒー豆を片手に、事務所の前まで帰ってきた葉折。急に降り出した雨に、少しばかり濡れてしまった。

しかし、ドアを目の前にして、葉折は二の足を踏んでいた。

 

 

(あーやばい、仕事とって来るの忘れてた…)

 

 

「足で稼ぐ」という当初の目的を、少しばかりの情報を手に入れただけで完全に忘れてしまっていたのである。

 

 

(大五郎くん、怒るだろうなー)

 

 

まあ怒られるくらいは仕方ないか、と切り替えて、「ただいまー」と声をかけてドアを開ける。

 

 

 

 

そこで葉折の目に入ってきたのは、

鹿撃ち棒を目深に被った大五郎が、

銀髪の女性に取り押さえられ、

今まさにその鹿撃ち帽を剥がされようとしているところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……ごめんなさい、まさか助手さんだったなんて」

 

「いえいえ、あんまり気にしないでください。しょっちゅうなんで」

 

『気にしろ』

 

「まあ確かに、大五郎くん見た目不審者ですもんねー」

 

『はっ倒すぞ』

 

「えっと、そろそろいいかしら?」

 

 

どうやら依頼人であるらしい銀髪の女性は、事務所に入ったところ、鹿撃ち帽を深く被った大五郎を見て不審者だと思ったらしく、大五郎を警察に突き出してやろうと思っていたらしい。

誤解を解き、謝罪を受けた後、件の女性は本題を切り出した。

 

 

「私は新島と言います。仕事は検察官よ」

 

 

そう言って名刺を差し出して来る女性に、「あ、これはどうもご丁寧に」と受け取る葉折。名刺には、「検察庁検事 新島冴」と書かれている。

葉折も、「水瀬探偵事務所の所長、水瀬葉折です。こちらは助手の大五郎くん」と紹介を入れながら名刺を渡す。

 

 

「ほー、検事さんですか。失礼ですが、まだお若いようなのに中々のやり手なご様子で」

 

「お世辞は結構よ。早速本題に入りたいのだけど」

 

「ええ、ええ。構いませんとも。それで、検事さんがこんな場末の探偵事務所に何かご用で?」

 

 

葉折がそう言うと、冴は少し首を傾げて言った。

 

 

「場末?ここは東京では5本の指に入る事務所だって聞いたのだけれど」

 

 

それを聞くと葉折は目を丸くし、笑って言った。

 

 

「アッハッハ!そちらこそお世辞は結構ですよ、新島検事。ここは僕みたいな若造と助手一人だけの小さな事務所ですよ」

 

「多くの探偵事務所は、この2年の間で、明智くんに仕事と評判の大半を取られた。今なおこの東京の中心部で探偵事務所なんて続けていられるのは、古くからの老舗か、人々に必要とされている『本当に有能な探偵事務所』だけよ」

 

 

それに、と冴は続けて言う。

 

 

「若さと人数は、その組織の能力の指標にはならないわ。大切なのは実績よ」

 

 

「私が言うのもなんだけどね」と言うと、冴はいくつかの資料を取り出して葉折たちに見せた。

 

 

「貴方たち、水瀬探偵事務所が解決してきた依頼を調べさせてもらったわ。素行調査にストーカーの撃退、浮気調査、探し物など…。どれも後腐れのない綺麗な解決を見ているわ。丁寧な仕事をしている証拠ね。

そしてこれ。宗教組織の調査業務の結果だけど、これが一番目立っていたわ。まさか、資金の流れから不正を炙り出して、依頼人の身内である信者どころか、組織内部の占い師すら説得。挙げ句の果てには壊滅なんて。それ自体が依頼ではなかったのでしょうけど、貴方たちの調査能力の高さが見える結果よ。

……それに、明智くんには頼りたくなくってね。

これが、貴方たちを信におけると判断した理由よ」

 

 

そう結論付けると、冴は手元の資料を鞄に片付ける。

 

 

「……いやぁ、調査能力が高いのは新島さんの方だと思うんですがね」

 

 

葉折は「参った」とばかりに両手を挙げる。

それを納得と見做したのか、冴は本題を語り出した。

 

 

「それで、貴方たちに頼みたいことだけど……

この娘の、素行調査をお願いしたいの」

 

 

そう言って冴は、一人の女性の写真を取り出す。

秀尽学園の制服を着た少女だ。

 

 

「これは……秀尽の?娘さん…では無さそうですから、妹さんとかでしょうか?」

 

「ええ、そうよ。妹の新島真」

 

 

葉折と大五郎は写真をしげしげと眺める。

写っている少女は、とても素行が悪いようには見えない。

 

 

「よく知りもしない僕が言うのもなんですが、とても素行が悪そうには見えませんね。なぜ素行調査を?」

 

 

そう聞くと、冴は頭を抱えた。

 

 

「私もそう思っているけど……私、この頃まともに家に帰れていないの。だから真ともまともに話せていないし、電話越しに話しても、いつも同じことしか言わないし……。今年が受験だから、ちゃんと勉強してるのかとか、変なところに遊びに行ってないかとか、いろいろ気になって」

 

「なるほど…」

 

 

どうやらこの冴さん(エリートキャリアウーマン)は、よほど妹さんのことが大切らしい。口には出していないが、心配で心配でたまらないのだろう。

 

 

「期間はどれくらいにしましょうか?」

 

 

葉折がそう聞くと、冴は顎に手を当てて少し考えた。

 

 

「そうね……取り敢えず、3週間。それで素行に異常が無いようなら、そこで依頼は終了にしましょう。

それで依頼料なのだけど、成功報酬込みでこれくらいでどうかしら?前金として、この半額払うわ」

 

 

そう言って冴は電卓を取り出し、数字を葉折たちに見せた。

それを見た葉折は、目を見開く。

 

 

「ひゃ!?こ、こんなにですか?少し多いのでは…」

 

「長めの依頼になるし、これくらいが相場じゃないかしら?他の探偵事務所の同じような事例を調べたら、その倍額くらい取ってるところもあったわよ。

それに私、あまりお金の使い道を思いつかないの」

 

「そ、そうっすか…」

 

 

葉折は少しだけ頭を抱えた後、顔を上げて答えた。

 

 

「わかりました。お受けしましょう」

 

「そう、ありがとう。これは前金よ」

 

「あ、ああ、どうも。大五郎くん、お願い」

 

 

即現金で出て来ると思っていなかった葉折は少し面食らうも、大五郎に封筒を渡した。

大五郎が封筒を持って机に向かっていくのを見ると、冴は「用事は終わった」とばかりに立ち上がる。

 

 

「じゃあ、よろしくね」

 

「ええ…では、3週間後に」

 

「ええ」

 

 

そう答えると、冴は銀髪を靡かせて帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

そんなわけで素行調査が始まって、3日目。

葉折と大五郎は、揃って同じ結論を出していた。

 

『新島真は、素行になんの問題もない真面目ちゃんである』と。

 

 

 

[うちの生徒会長、頼りになるよなー]

 

[生徒会長、今日も生徒会のあとに図書室で勉強してたよ]

 

[あ、この前スーパーで生徒会長見たよ。食材とか買ってた]

 

[いやぁ、本当に新島さんは優秀ですね。おかげで私たちは楽できますよ]

 

 

噂を聞いたり学校の掲示板、SNSを見れば、「生徒会長・新島真」は優等生の塊だった。

放課後は生徒会の業務、それが終わったら図書室で勉強。その後18時30分頃に学校を出て、スーパーで食料品を買い込んだ後、そのまま帰宅。

絵に描いたような真面目学生である。

ここまで真面目ちゃんだと逆に心配になってくるくらいに。

 

 

教員や生徒たちには頼りにされているようだが、友達がいるような様子も無ければ学校や家以外に外出しているようにも見えない。

 

 

依頼者である冴さんが心配しているようなことは何一つ無い。高校生くらいの年頃なら、もう少し何かあってもいいだろうに。

 

 

「あ、そこの学生さん。ちょっといいかな?アンケートを取ってるんだけどさ    

 

 

少し秀尽の学生に「学校のアンケート」という体で生徒会長のことを聞いてみたが、同じような話しか聞けなかった。

やはり、友達がいる様子もなければ、どこかで遊んでいる感じでも無い。全く面白味のない生活だ。

葉折たちは、調査3日目となる放課後の学校横で、調査の限界を感じていた。

 

 

とは言え、約束された日数は3週間だ。一応気は抜かずに見ておかなければならない。

そう思い直して、ふと学校横の路地裏を見ると、如何にも不良っぽい、学校指定ではない服を身につけた金髪の学生と、眼鏡をかけた学生、そしてそれを少し遠目に見るブロンドヘアーの女学生を見つけた。

 

 

「ああいう不良っぽい学生からなら、ちょっと違う話が聞けるかもね…どう思う?大五郎くん」

 

『行ってみる価値アリ』

 

「だよねぇ」

 

 

生徒会長の違った話を聞けるかもしれない、そう思った葉折たちは、彼らに声をかけることにした。

 

 

「おーい、ちょっといいかい?君たちに聞きたいことが    

 

 

しかし、その声が彼らに届く前に    

 

 

 

 

 

 

 

     彼ら3人は、葉折たちの目の前から消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    え?」

 

 

 

 




・冴さん
どうなのおばさんおねえさん。おばさんって歳じゃないんだけど、ちょっとほら…ケバ

・まこちゃん
鉄  拳  制  裁  !
まだただの真面目ちゃん。だが奴は…弾けた

・パツキンモンキー、地味眼鏡、ブロンド女豹
仲良し2年生3人組。この組み合わせ好き。

・明智
side-Detectiveというタイトルをつけた時点で皆様が期待するのが彼だということをもっと早く理解すべきだった。
出番はもうちょっと先なんじゃよ。
大丈夫!ちゃんと主役級の活躍するから!どっちとは言わないけど

失踪が終わるまで失踪します。

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