盛大に何も始まらない、なろう風小説   作:それも私だ

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なろう主人公と同職キャラは出ない法則。
 ・後書きの充実化。設定などを追記(2024/3/7)。

 キーワード:冒険者 追放後 ハーレム 再追放 荷物持ち


深謀遠慮の短慮暴虐

「え……、値上げ?」

 

「ここ最近、≪荷物持ち≫の需要が高まっていてねぇ。仕入れが難しくなってきてるんだよ」

 

「強力な魔獣が出たって話は聞きませんけど?」

 

「違う違う。そうじゃない、そうじゃないんだよ。……あー、ここだけの話だよ? 実は──」

 

 

────────────────

 

 

「ナロームさん、パーティからあなたを追放します」

 

「え? ごめん、いまなんて言ったの?」

 

「ですから、私たちの前からどうか消えてください。あなたの存在は迷惑です」

 

「……どうしていきなりそんな事を言うのか分からないけど、このパーティは僕が(おこ)したパーティだよ。リーダーは僕だ。……ふつう、君たちが脱退するって言うのが自然じゃないかな?」

 

「ナロームさん1人を追放するのと、パーティメンバーが全員脱退するのは、どこがどう違うんですか? 過程は違っても結果は同じですよ」

 

「本気で言っているのか?」

 

「ええ。冗談でこんなこと言ったりしません」

 

「あぁ、あんたに付いていったアタシがバカだったよ」

 

「そうだよ。こんな人だとは思わなかったのに。うそつき」

 

「……また僕か! また追放か! いったい僕が何をしたって云うんだっ!? 僕の何が悪いッ!! なんでなんだよ! こんな、いつも、僕ばかりッ!」

 

「自覚ないの?」

 

「ナロームさんは元々はSランクパーティに所属していた≪荷物持ち≫で、パーティから追放されたあとに今のパーティを結成しましたよね。……どうして追放されたのか分からないほどの強力なちからを持っているというのに、なぜか」

 

「冷静に考えれば他人から見放されるような()()だったっていうのに、なんで付いていくことにしたんだか。アタシってほんとバカ」

 

「あぁ確かに僕は一度は追放されたさ! だから周りを見返すために底辺から這い上がってみせると決意した! そして僕はやってみせた!」

 

「じゃあなんで同性の……男の人の仲間がいないの? ナローム以外、全員女だよ」

 

「はっ、見返すことは出来たとしても認められはしなかったってか? こいつは傑作だな!」

 

「もしかしてボクたちの身体目当てだったりする? ……そんな気ないんだけど」

 

「云われてみれば……。どうして私たちだけがパーティに加わったんでしょうね?」

 

「それだけアタシたちも視野が狭かったってことさ。この分だと悪気がないというよりは、何も考えてないだけかもしれないね」

 

「……このパーティは僕のパーティだ。どうこうするっていうなら、それ相応の理由くらい聞かせろ」

 

「本当に何も知らないみたい」

 

「自分たちばかり知った顔して僕をバカにするな! そうやって僕で遊んで何が(たの)しい? 結局、君たちもあいつらと……前のパーティの奴らと同じなんだなっ!?」

 

「まさかとは思うが、≪荷物持ち≫は自分だけで、ひとりだけ底辺だったと勘違いしてないか?」

 

「えっと、同じ≪荷物持ち≫なのに、何も分からないんですか?」

 

「そんなに余裕がない人だったんだね。幻滅~!」

 

「は……? 何の話をしてるんだ? その目をやめろ! そんな目で僕を見るな! 僕とほかの≪荷物持ち≫に何の関係があるっていうんだ? 僕が誰かを殺したとか言うんじゃないだろうな? 僕は何もしてないのに、なんでもかんでも僕のせいにしないでくれ!」

 

「いや、()()はお前のせいだよ。お前が居たから起きたと言ってもいい」

 

「意図的に情報が遮断されていたといいますか……。気付けないほうがおかしいといいますか……」

 

「そりゃあ、ボクらも遠巻きにされるよね。自分が部外者だったら絶対に関わりたくないし」

 

「──短刀直入に言います。ナロームさん。あなたのせいで、多くの≪荷物持ち≫が身の丈の合わないことをして経済と流通を破壊しているんです。それも恐らく世界的な規模で」

 

「は? 身の丈に合わない? それって……僕は落ちこぼれのままでいるべきだったって言ってる?」

 

「そうですね。ナロームさんと行動を共にしてきた私たち3人が揃って首を縦に振るくらいには言ってます」

 

「僕の何が不満なんだよ?」

 

「不満も何も、後半の部分を聞き流すんじゃないよ」

 

「後半部分?」

 

「その、ぼくなにかしちゃいましたか、って態度が不満かな」

 

「……」

 

「睨むな、睨むな。≪荷物持ち≫の本分は流石に分かるよな?」

 

「荷物を持って、運ぶことだ。それは僕は雑用だけしていればいいって言いたいのか?」

 

「女相手にケンカ腰なのも不満だよ」

 

「僕を怒らせているのは君たちだろう!」

 

「ここまで話していて、どうしてまだ気付かないのか(はなは)だ疑問ですが……≪荷物持ち≫の冒険者は居ても、前衛ではありませんよね」

 

「≪荷物持ち≫が前衛になれたら、≪戦士≫や≪格闘家≫の存在意義がなくなるしな。ふつうは前に立つなんてありえない。でもナロームはアタシと同じで前衛をやってきたね。昨日まではすごいと思っていたが、今では異常だと思ってるよ」

 

「僕は≪荷物持ち≫でもやれるって示しただけだ!」

 

「それだよ。≪荷物持ち≫でもやれると示したせいで、ほかの≪荷物持ち≫が一斉に冒険者に転向しだした。おかげで輸送業は大打撃を受けているらしい。ここ最近の物価の値上がりもこれが原因なんだとよ。物が流れてこないんじゃ、そりゃ出し渋りもするわな」

 

「つまりですね、ひとりのやらかしのせいで、全体がダメになってるんです。ナロームという≪荷物持ち≫が活躍しているせいで、冒険者を諦めていた彼らに火が点いてしまったんです」

 

「そろそろ理解(わか)ったよね? 落ちこぼれの≪荷物持ち≫が成り上がった前例ができたせいで、自分もやれるって勘違いしたヤツがいっぱい出ちゃってるの! 第2第3のナロームが大量発生したの!」

 

「もしかすると、ナロームさんが以前所属していたパーティでの扱いも、この事態を見越(みこ)してのことだったのかもしれませんね。圧をかけて、自尊心を傷つけて、決して前に飛び出さないように……」

 

「最終的に事故に見せかけて殺そうとしたのも、そうまでしないといけないって思ったからだったんだね。きっと。……話を聞かされたときはひどいと思ったけど、事情が知れれば納得の結末だね」

 

「いい加減、理解できたか? こうも物分りが悪いんじゃ、べつの意味で嫌になってくるよ」

 

「意味が、わからない……、わかりたくない! なんで僕が責められるんだっ?! 僕の物語は僕が主役なのに! 僕の人生だから僕の好きに生きたっていいはずだろ!」

 

「知るか。ただ現実を教えてあげただけだ。責めてもないよ。前の人らみたいに命まで取ろうとは考えちゃいないよ」

 

「自分がどう思われているか分からないなら分かるまで聞いて回ってみたらどうですか? 私たちはもう、あなたには付き合いきれません」

 

「あっ、パーティの物資とか資金は要らないから。手切れ金だと思って持ってちゃっていいから。ボクたちこれからギルドに行ってパーティの手続きしてくるけど、付いて来ないでね」

 

「話はまだ終わってない!」

 

「終わりかどうかは私たちが決めることです。あなたはもう終わりなんですよ。これまでの関係も。……それでは、さようなら。町で見かけても近づいてこないでくださいね」

 

 




Q.要約しろ。
A.主人公に憧れた運送業者たち(荷物持ちクラス)が一斉に廃業したせいで大混乱が起きそう。店に商品が届かなくてヤバイ。

Q.人種って?
A.作中では「そういう性格や言動をする人」といった皮肉的な意味で使われている。精神的な人種ということ。毛並み。そういったカテゴリーで括られるような人間であると暗に言っている。

Q.最近のなろう系は男仲間の1人や2人くらい居るだろ。
A.格下ならともかく、同格で事情も無しに同行するのは珍しそう(主観的意見)。


以下、雑な設定。

ナローム:
 追放系主人公。男性。追放されるのは今回で2度目。すでに一度、前PTから追放処分を受けている。前PTでの扱いはテンプレの冷遇で、雑用として扱き使われ、最終的に事故死させられそうになるも生還している。その後の新PT結成もテンプレ展開で、特別に語れるようなものでもない。
 クラスは≪荷物持ち≫で非戦闘系なのだが、ナローム個人の特徴として高い前衛適正が備わっている。それなのに≪荷物持ち≫の隠された能力が発揮されたのだと、同一視されてしまったのが今回の件の真相。運送関係者が挙って冒険者に鞍替えしたおかげで、どこの店も品薄・物価高が続いている。ナロームが活躍したことで、≪荷物持ち≫なら無条件で成り上がれるのだと各地で勘違いと混乱が起きている。
 前PTでの冷遇はこれを回避するために行なわれていたが、結局起きてしまった。

ハーレムメンバーたち(私、アタシ、ボク):
 特に語ることのない面々。わざわざ話し合いの席を設けたのは、自分たちに累が及ばないように釘を刺すため。黙って距離を置いても、向こうから詰められたら意味がないから言って聞かせた。ナロームと交流を持ってしまった事実・汚点は消せないが、いま縁を切らなければならないと、後に起こる事態に薄らとだが感付いている。

商人:
 冒頭部分に登場したおっちゃん。地域の店から嫌われる前によくない男とは縁を切れと助言していた。


荷物持ち(クラス):
 荷運びに特化した非戦闘系クラス。個人用亜空間(インベントリ)に物品を格納・保管できる特殊能力が備わっているが、≪荷物≫であれば無条件で持てるということはない。物品を保管するための筋力が別途必要となる。
 戦闘に関する制約は特にないが、クラスはいわゆるギフトにあたり、基本的に≪荷物持ち≫は戦闘に不向きな人格に顕現する傾向にある。先天的才能、先天的能力の類い。クラスチェンジ不可。
 具体的なたとえとして、ランスシリーズの才能レベルと同じ。

戦士(クラス):
 武器に成り得るあらゆる物品を巧みに扱える戦闘系クラス。得意武器は剣から斧、槍から棒、果てには鈍器から盾までと多岐に渡り、感覚的に効率の良いもしくは正しい扱い方を理解できる。汎用・万能型。
 恩恵は心身の成長ボーナス(パッシブ)が主で、目立ったスキルこそ持たないが、まれに魔法によく似た攻撃手段(必殺技)を獲得する者もいる。
 具体的には、時たまスポーツ界に出現する大天才のようなもの。

格闘家(クラス):
 武器を使わずに己の肉体だけで戦う戦闘系クラス。装備に制約は無く、効率が格段に落ちるだけで、曲刀や長棒などの武器も普通に扱える。特化型。
 戦士と同じで特定分野に成長補正が掛かり、たまに魔法によく似た攻撃手段を獲得する人物が現れる。戦士よりもアクティブなクラス。

深謀遠慮の短慮暴虐(タイトル):
 ナロームの前PTでのことを示唆している。単なる暴挙に見える行動(追放劇)が、実は世界のために行なわれていた。


 今回のお話は前後編に別けて書いたうちの前編部分となります。というのも先に書いたものが割りとエグかったのでそれを後編とし、マイルドさを意識して追加で書き出したものがこの前編です。ヤバめの要素を出来るだけ抑えた急ごしらえなので全体的に完成度も低めです(もちろん本話でも研究を行ない精度を高めていくつもりではあります)。
 私個人の主観では後編は平常運転だなと思う程度の内容・舞台設定ですが、客観視したら「これは少しまずいな」となりまして、前編の作成および公開に至りました。
 手加減ほぼなしの後編は、来週3/13水曜日の午前3時投稿を予定しています。その際の落差をお楽しみいただければと思います。後編も公開しました。

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