目指せよヒーロー。叫べよペルソナ。   作:屋根裏部屋のキャベツ

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steam版のペルソナ4Gやってて突発的に思い付いたネタを五時間で書いた粗品です。もっとペルソナ二次創作増えろ。





【Ⅰ:魔術師】ルサンチマンを抱えたヒーローの卵
今日も今日とて俺はペルソナと叫ぶ


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────始まりの夢を見ている。

 

 

 

「ほう?ここにお客様とは…これは珍しい」

 

 

そこは薄暗い()()()

 

そこには俺ともう一人、執事服の様な格好をした変な鼻の老人しか居ない。老人のその立ち位置は法壇…裁判官が座っている場所と言えば伝わるだろうか。そして俺は、その老人に見下ろされるように証言台に立っている。俺をお客様と呼んだその老人は、どこか懐かしむような目で俺のことを見ている。

 

 

「私の名はイゴール。この部屋…夢と現実、精神と物質の狭間の場所…”ベルベットルーム”の主を致しております」

 

 

話慣れた定型文を語るように、その片手に大きな本を抱えながら老人は俺に語り始める。動揺している俺が老人に何か言ったようだが、果たしてあの時の俺は何を言っていただろうか。なにせ2年前の事だ、正直会話の全てを覚えているほどの記憶力はない。…これは夢だ。俺の人生を変えるきっかけになったあの日の夢。

 

 

 

「───?」

 

 

夢の中の俺の口が勝手に動く。この夢を見るときはいつもこんな感じだ、恐らく記憶の通りに動きをなぞっているのだろう。

 

 

「ええ。本来ここは何かしら契約をした方のみが訪れる場所…しかし貴方はどうやら意図せずここに来た様子」

「貴方風に言うのならこの部屋に繋がった、とでも言うべきなのでしょう」

 

 

契約、繋がった、当時はその言葉の訳が解らなくて相当混乱していた筈だ。挙げ句にこの状況を単なる夢だと思ってしまっても仕方がないだろう。

 

 

「いいえ、夢ではありません。それに貴方は確かに契約をなさっている。例え貴方にその時の記憶が無いとしても」

 

 

老人、イゴールはそう言っているが、本当に俺はいつその契約とやらをしたのだろうか。二年経過した今でも思い当たる節が全くない。

 

 

「─?」

「それは当然でしょう、何故なら貴方の意識はこのベルベットルームと繋がっているのですから」

 

 

何十回、何百回と聞いた話が続く。イゴール曰く、俺がこのベルベットルームに来てしまった理由は俺の個性にあるらしい。

 

俺の個性は『半径500m圏内の何処かと意識を繋げる』個性。簡単に言ってしまえばテレパシーみたいなものだ。

 

しかしこの『何処かと』という部分がネックで、俺自身が意識を繋げる対象を選ぶことが出来ない。完全にランダムなのだ、繋がった相手が複数の人間だった時もある。しかも意識を繋げていられる時間も短いときた。なんというか、微妙な個性といえるだろう。

 

俺のように中途半端な個性を持つ人間は、特にその個性を使うような場面がやってくる事はない。…今はこのベルベットルームに繋がるという唯一無二の利点を得ることが出来たが。

 

 

「…さて、お客様。貴方はこれから奇異な運命に身を委ねることになるでしょう。しかし心配は要りません。貴方は既に、運命を切り開く力に目覚めている」

 

 

…視界が揺らぎ始めた。そろそろ夢が覚めようとしているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───夢うつつの世界から現実に意識が急浮上する。そして第一に五感が感じ取ったのは異様なまでの空気抵抗。そして目の前には逆さまになって宙に浮いている頭皮の薄い中年のおじさん。…どうやら少しの間気絶していたらしい。流石にビル10階から飛び降りるのは無理があったようだ。

 

 

「な、なんで君まで飛び降りてるんだね!!!?」

「ははっ。おじさん、今から死ぬってのに元気だね」

「言ってる場合かね!!?」

 

 

正確には、おじさんは宙に浮いているのではなく現在進行形で落ちているのだ。逆さまなのは頭から落ちてるから、おじさんが逆さまに見えるのは俺が足から落下しているからである。なぜ俺がこのおじさんと一緒に地面に向かって落ちているのか、と問われれば、それはこのおじさんがビルの屋上から飛び降りたからだ。

 

事の発端は俺がこの見知らぬおじさんが自殺をしようとしているのを察知したことから始まる。

 

早朝、久々にベルベットルームに意識を繋げようとしたところ運悪く失敗、見知らぬ誰かの意識に繋がったのだが、それがこのおじさんだった訳だ。今日は折角の高校受験の日、そんな大事な日に人の死に関わるのは非常に嫌である、それも助けられる命となったらかなり嫌だ。なのでなんとかその自殺を止めようと躍起になって、居場所を突き止めたところまでは良かったのだが。

 

…残念ながら止められなかった。なんとか説得してこのおじさんの自殺を止めようとしていたがあえなく失敗、「未来ある若者に私の何がわかるのかね!?」と吐き捨てるように叫んでおじさんはそのままビルから飛び降りて。それを見て思わず俺も追いかけるように飛び降りた。当然助けるためである。

 

 

「…くっ、き、君はさっきからなんなんだね?!人が飛び降りようとしてるのに割り込んであーだこーだ言って!!やっと飛び降りて人生を振り返ってたら水を指すように!」

「いやさ。目の前で自殺しようとしてる人が居たら止めるでしょ、普通」

「止められてないがね!?君の方こそこれから死ぬのになんでそんなに余裕なんだね!!?」

 

 

そりゃ下で数人のヒーローが俺たちを受け止めようと準備してるからだ、というのは黙っておく。あらかじめ呼んでおいて正解だったみたいだ。これなら俺が飛び降りる必要は無かったかもしれない。

 

 

「───!!」

「───?──!」

 

 

…いや、本当に大丈夫か?声はよく聞こえないが、なんだか焦っているというか、口論しているように見える。

 

 

「もしかしてヒーローに期待しているのかね?それだったら無駄だね。この町のヒーローに高所からの落下をどうこうできる様な個性を持った者が居ないのはリサーチ済みでね!」

 

 

まあもし受け止められようと衝撃はどうしようもないからね!!!と叫ぶおじさん。なるほど、つまりヒーローたちは口論しているのではなく策を講じるために意見をぶつけ合っているのか。いやしかし、このままだと確実にヒーローが何か名案を出す前に俺たちがミンチになるな。ぶっちゃけあと5秒もせずにミンチコースだ。

 

…ヒーローたちがなんとか受け止める構えを取り始めた。とりあえず俺も、なんとかせねばなるまい。

 

ふんっ、と身体に力を入れる。すると、俺の前に半透明の薄いカードの様なものが出現する。それは物理法則に逆らい、俺の胸の前で佇んでいる。そのまま俺は浮かんだカードに慣れた動作で手を伸ばす。

 

 

「な、なんだね?それは」

「おじさんをこれから助ける力だよ」

 

 

 

 

 

──────それは個性に(あら)ず。

 

 

 

 

曰くそれは【困難に立ち向かうための人格の鎧】。

 

 

 

「ぺ」

 

 

 

曰く【死への恐怖に向き合い、乗り越えようとする心】。

 

 

 

「ル」

 

 

 

曰く、【目を背けてきた自分自身の一部】。

 

 

 

「ソ」

 

 

 

曰く。【不合理、理不尽への怒り、叛逆の意志】。

 

 

 

「ナ」

 

 

 

…つまりは、もう一人の自分自身だ。

 

ガラスの割れる音がする。違う、本当に割れた訳じゃない。それは俺が目の前のカードを握り潰した音だ。これが、力の顕現の合図。俺だけに許された、運命を切り開くための力。

 

 

「なっ、なんなんだね!?」

 

 

その音と同時に、俺とおじさんを3m以上ある大きな人影が包み込む。こいつに物理法則など通用しない、そもそも存在が個性よりも非科学的だ。気分が高揚する。身体が火照る、受験前の準備運動にはばっちりだ。さあ、高らかに叫んでやろう、コイツの名を。これから先、幾千も叫ぶ相棒の存在を。

 

 

 

 

 

「────イザナギッ!!」

 

 

 

 

 

鋭く俺自身を見透かすような黄色い眼に鎧のような硬質的な印象を受けるその相貌、そしてその身を黒い長ランとしか言えない何かで身を包んでいる、古い漫画で出てくるような番長という言葉がピッタリと当てはまる俺の写し身。イザナギ。俺が二年前ベルベットルームを訪れた事により覚醒した、ペルソナと呼ばれる力の具現である。

 

俺はイザナギの名を叫ぶと同時に俺とおじさんの身体にそれぞれ【ラクカジャ】という…なんというか、身体が頑丈になる魔法みたいなものを付与する。これでおじさんが落下の衝撃で死ぬことはないだろう。あと俺も。

 

 

「うわァー!!!?」

 

 

おじさんが物凄い声を出した、イザナギが勢いよく地面に両足つけて着地したのだ。その揺れに驚いているのだろう。だが驚いているだけでおじさんと俺は無傷、目の前ではトランポリンみたいなものを構えていたヒーローや集まっていた外野たちがポカンとしていた。

 

 

「…ふぅ」

 

 

なんとかなった、そう思った瞬間気が抜けて俺たちを抱えていたイザナギが消失する。当然抱えられていた俺とおじさんは落下、二人とも仲良く尻餅をついてしまった。おじさんはどうやら現状が上手く飲み込めていないらしい。…さて、色々身勝手にやらかしすぎた。とっとこずらかろう。痛む尻を抑えて立ち上がり、声をかけようとしているヒーローに一つ笑顔を向けて、俺は駅のある方向に走り出した。

 

 

「あ、ちょっと、君!!?」

 

 

もし捕まったら確実に受験には間に合わない。申し訳ないけど今日は俺の人生がかかってるんだ、と心の中で呟いて。思考を今日の受験、国立雄英高等学校の受験に向けたものへと切り替える。

 

…因みに、結局俺は雄英の受験の帰りに今さっきまで目の前に居たヒーローたちに取っ捕まって色々面倒なことになるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 





イザナギのデザインが好きすぎて夜しか眠れません。

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