戦姫絶唱シンフォギアZERO~戦姫と超人~   作:剣舘脇

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やっとまとまった…ツラヒ
他の作者様が羨ましいと思う今日この頃…()

後、もひとつ思いついて勢いで書いた新規小説の方もよろしくお願いいたしますね(´・ω・`)

少しだけ加筆修正しました。ガバがあって申し訳ございません…


#14 激闘の後、その裏側

 ───あの後、あたしはネフシュタンの鎧を纏ったまま、フィーネの元に帰ってきた。世間の人気者である彼奴(天羽奏)が謎のサングラスを目に当てたかと思えば赤と青のツートンカラーに銀のラインが入った肉体に銀のプロテクターを付け、蒼いマントを羽織った謎の存在へと姿を変えた。

 それだけじゃない。融合症例の傍に居た名も知らぬ男が突如姿を消したかと思えば、濃紺を基調とした肉体に複雑な形状の模様の鎧を纏ったつり目が目立つ謎の存在へと姿を変えていたのだ。

 

「───くそっ…一体なんなんだよ、彼奴ら…ッ!」

 

 苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、壁に拳を叩きつけてヒビを入れた後、あたしはネフシュタンの鎧を纏った姿から元の姿へと戻る。不思議と、ネフシュタンの鎧の侵食はまるで最初から無かったかのように自分の身体に侵食していなかった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()、そんな曖昧な説明になるが、それじゃないと到底不可能な出来事だ。それだけじゃない。あの謎の存在達は明らかにあたしより強かった。

 

「あんなの、フィーネからも聞いてねぇ…なんなんだよ…彼奴ら……」

 

 融合症例ですら苦戦していたノイズの大群を一つの技のみで一掃した、濃紺を基調とした肉体に複雑な形状の模様の鎧を纏ったつり目が目立つ謎の存在。

 自分と互角かそれ以上の戦闘力しかないと思っていたら、明らかに手加減されていた事を知った、赤と青のツートンカラーに銀のラインが入った肉体の上半身に銀のプロテクターを付け、蒼いマントを羽織った謎の存在。

 完全聖遺物(ネフシュタン)を纏っていても勝てない相手だと悟ったのはこれが初めてだろう。融合症例を連れて帰る事も、鏑木とかいう男を連れて帰る事も出来ずにおめおめと逃げ帰ってきた形となったあたしにフィーネは明らかに苛立ちを隠しきれていなかったようで、帰ってきて早々に装置へと拘束され、電流を流される罰を喰らった。

 電流が身体中を駆け巡る中、薄らとしか開けられない視界で見たフィーネは表向きでは苛立っていたものの、いつも引っかかっていた謎がやっと解けたような表情を浮かべていたように見えた気がした。

 

「……なぁ、フィーネ。何処か機嫌が良いように見えるけど、何かあったのか?」

 

「えぇ。永らく燻り続けていた謎が後一歩で解けそうなの。それ()()に関してはクリス、貴女が彼女達と戦ってくれていたおかげかしら」

 

「…………そうなのか。こんなあたしでもフィーネの役に、立てたんだな」

 

 やっとのことで罰から解放されたあたしは息を整えた後にフィーネにそう問う。フィーネの考えている事はあたしには難しい事ばかりだからそれ以上聞かないでおいたが、何処か見当はついていた。あたしが目撃した謎の存在二人。彼奴らがフィーネを悩ましていた原因で間違いないと。

 奴らとはいずれもう一度戦う事にはなるのだろうと考え、未だに痺れる身体を引き摺りながら、今日は食事を取ってすぐ眠りにつく事にした。あの忌々しい存在が脳裏に焼き付いて離れないが、それは一旦忘れる事にする。

 

 

 ◇

 

 

 ───ネフシュタンの鎧を纏う少女との戦いから一夜が明け、あれからずっと一言も発さずに沈黙を保ち続けていたウルトラマンゼロは今日の昼を過ぎた辺りにやっとアタシに声をかけた。

 最初に聞きたかったのは、何故あの時黙り込んだままだったのかという事。すると、ゼロは少しの沈黙の後にネフシュタンの少女との戦いの中で分かった事を一字一句間違える事なく話し始める。

 

『……彼奴は、完全聖遺物を纏っているとはいえ一人の人間には変わらない。彼奴も、俺が守るべき存在って分かった時には手加減しなきゃならなかった。それに、彼奴の心を動かす事が出来るのは俺じゃねぇ、ヒビキだと俺は思う』

 

「……え、アタシでも翼でもなく、響なの? ゼロ、それはなんでだ?」

 

『彼奴の心を動かすには彼奴と同じ人間……それも、人の痛みを自分の痛みと捉えて受け止め、その上で彼奴に寄り添う人間じゃねぇと、彼奴の歪まされた心は元に戻らねぇと思った。そうすると、今の二課のメンバーの中ではヒビキが適任だろうな』

 

「……そう、なのか…」

 

 ゼロにそう言われ、昨夜の出来事を思い出す。あの時、アタシと翼はネフシュタンの少女と刃を交えようとした時、響はネフシュタンの少女とアタシ達の戦いを止めようとしていた。

 ネフシュタンの鎧は、アタシ達の落ち度が原因で盗られたもの。それを纏った少女が目の前に現れたのだからアタシも翼も思考や判断がそれ一色になるのも仕方ないとは思う。

 しかし、それでも響は少女に寄り添おうとして、あの場で四苦八苦していたのだろう。言葉を介さない動物とは違い、アタシも翼も、あのネフシュタンの少女も言葉を話せる人間だから。

 

『……それに、俺がこの時間まで一言も話せなかったのはあの時俺が時間を弄った反動だからよ』

 

「─────えっ? それ……ど、どういう事だよッ! ゼロの力については色々聞いていたけど、アタシ、そこまでは聞いてないぞッ!?」

 

『まぁ待てって。それについては今から話すからさ』

 

 先程のシリアスな話から一転し、とんでもない一言がゼロの口から語られる。あの時、ネフシュタンの少女との一戦にて鎧の性質が少女の命を蝕んでいる事に気づいたゼロは、ウルティメイトブレスレットが使えなくてもなれる唯一の姿『シャイニングウルトラマンゼロ』に変身したようだ。

 その姿となったゼロは時間操作能力を駆使する事が可能で、その力を以てネフシュタンの少女の時間を弄り、侵食を食い止めただけでなく侵食が進む前の状態にまで戻した。だが、その力はゼロ自身に相当な負荷をかける為に多用は出来ないらしい。

 だが、自分が救える命を見捨てる事をせず、アタシにもその負担がかからないように配慮しながら時間操作を行い、少女の侵食を元に戻した後は糸が切れるように意識が闇に沈んでいったらしい。あの時、気づけばアタシ一人でぽつんと立っていた事に首を傾げていたが、それで納得がいった。

 

「……嗚呼、なるほどね。だからあの時ゼロは返事しなかったのか」

 

『そういうこった。まぁ……カナデ達に余計な心配かけた事は、悪いと思ってるよ』

 

「そりゃあ……その力って時間そのものに干渉してるんだろ? 仕方ないよ。旦那達には後でアタシから説明しておくからさ」

 

 しれっととんでもない事をやり遂げているゼロに感心しつつ、ゼロがある疑問をアタシに聞いてきた。ウルティメイトブレスレットそのものの力が封じられている件に関してだ。ウルティメイトブレスレットが使えない一番の原因は聖遺物が関連しているんじゃないか、と。その際に聖遺物について、特にアタシと響が纏うシンフォギアの元となっている聖遺物『ガングニール』について詳しく教えてほしいと頼まれていた事を思い出した。

 了子さんの受け売りにはなるが、ゼロに説明すべくガングニールについて話し始める。ガングニールは、一度投げれば必ず標的を貫き、自動的に所有者の元へ戻るとされる、北欧神話の主神オーディンが振るう神槍。その穂先の欠片を元に作成されたのがアタシと響の纏うシンフォギア。

 そこまで話すと、ゼロは自然と考え込むような声を上げていた。まだ何か気になる点があるのか、と疑問を投げかけてみる。

 

『嗚呼。ガングニールが北欧神話の神の武器だって事は分かったんだが、シンフォギアの元になるくらいの力を秘めた聖遺物だ。流石にそれだけじゃねぇだろ?』

 

「……鋭いな、ゼロ。でも、それ以上の事はまだ謎なんだよ。聖遺物は異端技術(ブラックアート)の結晶だからまだまだ研究は進められていて、少しずつ分かってきている事もあるけど未解明の部分もまだ多いんだーって、前に了子さんがボヤくように呟いていたし」

 

『……なるほどな。ガングニールを含めた聖遺物に秘められた力諸々に関しては今後の研究結果に期待、って事か』

 

「そうなる。それで、どうなんだ? ゼロが気になってた事は全部伝えたと思うし、ゼロの疑問は解決したのかが気になるんだけど……」

 

『……嗚呼、大丈夫だ。ブレスレット(コイツ)が使えない理由を俺なりにいくら考えても何も分からねぇし、四苦八苦してたが、カナデのおかげでようやく合点がいったような気がするぜ』

 

 合点がいったとはどういう事だろうか、と聞く前にゼロは語り始める。ゼロが身につけているウルティメイトブレスレットは、ウルトラマンノアから授けられたバラージの盾、後のウルティメイトイージスが変形したブレスレット。つまり、ウルティメイトブレスレットはノアの力の一端という事となる。

 ウルトラマンノアは『神』として崇められていてもおかしくない存在である為、ノアの力がガングニールに秘められた、まだ解明されていない謎の力によって無力化されている状況下にあるウルティメイトブレスレットはある種の奇跡が起きない限りは使えないとみていい、とゼロは語った。

 

「……そうなのか。なんか、ごめんな…」

 

 それを聞いていたアタシは少なくとも責任を感じた。つまり、ゼロはアタシの命を助けたばかりに本来の力を発揮出来ないという事に他ならないからだ。そう思ったら自然と謝罪の一言が口から漏れた。

 

『……ん? 急に謝るなんてどうしたよ? 前も言ったかもしれねぇが、こういうのはよくある事だし別に気にしちゃいねぇから謝らなくても大丈夫だぜ? カナデ』

 

「そう、か? ゼロが言うならそうするけど。……なぁ、あの時からずっと思ってた事なんだけどさ、優しいんだな。ゼロって」

 

『………………………ん、まぁな』

 

 微妙な間の後に、生まれた時から超人としての力を有していた俺には人の心なんて分かりやしないんだがな、とゼロが呟いた気がしたが、その一言は気のせいだと思う事にする。

 それはそれとして、長らく話し込んでいたせいか休憩時間はそろそろ終わりを迎えようとしていた。一旦仕事に集中すべく、仕事の意識へと切り替えたアタシは午後の仕事に向かう。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ───時は遡り、ネフシュタンの少女と二課所属の装者達が死闘を繰り広げていた頃の事。ウルトラマンゼットと一体化している小日向未来は、大切な親友である響がいつまで経っても帰ってこない事に疑問を抱いていた。

 思えば、ツヴァイウィングの新曲が収録されたCDが発売された日から今まで、響の様子は何処かおかしかった。いつもなら放課後は私と一緒に帰っていた筈なのに、時々慌てた様子で先に帰っててと言い残して何処かへと行ってしまう事が多々あった。

 CDの発売日に響と別れ、一人で寮へと帰ろうとした時に不幸にもノイズに遭遇し、私は一度死んだ。しかし、幸か不幸かウルトラマンゼットと名乗る謎の巨人と一体化する事で炭化していく身体と失われる筈だった命を繋ぎ止め、それからは普通に日常を謳歌出来ている。

 だが、私が一度死んだ事やウルトラマンゼットの事は響に話していない。響を無駄に心配させる事はしたくなかった為である。

 

『……ミク。そんなに考え込んでどうかしたでございますか?』

 

「……えっ? あ、いえ。ちょっと、響の事が心配なだけですから。大丈夫ですよ、ゼットさん。心配してくれてありがとうございます」

 

『心配するのは当然でございますよ。それはそれとして、ヒビキ、というとあの少女でございますか。いつもミクと一緒に居る笑顔が絶えない元気な少女の……』

 

「はい、そうです。今日も帰りが遅くなるという事で、私だけ先に帰ってきてこうして待っているんですが……流石に遅すぎるなーって…」

 

 深く考え事をしていた為か、ゼットさんが心配して声をかけてきた。こういう時に誰か居てくれる事に少なからず感謝をし、ゼットさんとたわいない会話をしながら外と部屋を繋ぐ扉が勢いよく開けられるのを待ち続けた。

 しかし、響は上手く隠しているように思えるが、私は既に知っていた。響が見た事も無い鎧姿に変身し、認定災害のノイズと戦っていた事を。ツヴァイウィングの二人も響と似たような鎧を身に纏い、各々武器を手にしてノイズと戦っていた事を。

 

(あの事を聞いてもいいんだろうけど、どうせ響の事だから私を心配させまいと誤魔化すのが目に見えてるし……)

 

 そんな事を考えながら腰に取り付けられているメダルホルダーから三枚のメダルを手にする。これが各地に散らばっている事を改めて考えてしまい、人知れずため息が出てしまった。

 それから少し経って扉が勢いよく開けられ、外の空気と共に響が帰ってきた。まずは遅くなった事を叱る。それから夕ご飯にして、お風呂に入ってさっぱりした後はベッドに入るだけだったのだが……。

 

「あれ? 響、こんなの持ってたっけ…?」

 

 先にベッドに入った響のスリッパの足元に赤く縁取られた硬貨のようなものが二枚、転がっていた。気になって拾ってみると、私が持っているメダルと同じものだと分かった。

 私が持っているメダルに描かれている、ゼットさんのお師匠さんにあたる三人の巨人の横顔とは違い、シンプルなデザインの巨人の横顔と何処か機械的な印象を受ける巨人の横顔が描かれていた。取り敢えず後で響に聞いた後にゼットさんに聞いてみようと思った私は、響の隣に入り込んだ。その後すぐに眠気に襲われ、夢の世界へと旅立っていく。

 

 その時の私はまだ知らない。近い内に、再びゼットさんに変身して戦う事になる事を。ツヴァイウィングの二人と響の三人と戦ったネフシュタンの少女に思わぬ形で遭遇する事を。そして、ゼットさんのお師匠さんと先輩に出会う事になる事を。




遅くなって申し訳ない(ドゲザッ)
次こそ、早く投稿致しますので…(´・ω・`)

それでは、お読みいただきありがとうございました。
また次回(・ω・)ノシ

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