千葉家の境界人   作:帷 銀

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めっさ遅れました。すみません。ちなみに中間考査を数日後に控えた今日いきなり書きたくなって書きました。ただの馬鹿です。
これにて『入学編』おわりです。

一応、投稿するので『連載』に戻そうと思います。三ヶ月たって更新されなければまた未完に戻します。



第六話

「くそっ、何だこいつ。速くて当たらねえ」

一人の男が手を動かしながらも声を荒げる。だが、その思いには誰も答えようとはしない。それは彼の発言を無視しようだとかそんな村八分のような理由があってではない。ただ単純に聞こえていないのだ。

室内は自分たちの発する銃撃によってコミュニケーションが取れないくらいに五月蝿い場所と化していた。

己らの願いのために彼らは銃を手に取って戦っているはずなのに開戦してから少し経つと彼らの内にははそんな理想を求めるための高揚感はなかった。占めていたのは自分たちの不甲斐なさだけだ。

魔法師を打倒するために入ったこの組合は今、魔法師でもない少年相手に逃げ回られている。

武器も手にした、仲間も手に入れた。それなのにこの惨状である。

彼らはそれでも銃の引き金を引き、何とかして件の少年を撃ち落とそうする。

 

そんな彼らの相手をしているのは雨野典嗣。

彼もまた心の中で己の主人に対して申し訳なさがあった。

彼は主人のために先に向かってテロリスト達の本拠地を暴いたのだが、大勢の人間がいる大部屋の前で待っていたのだが後から合流してきた他のテロリストたちに扉前で待機されていることを知られて銃撃戦となり、その銃声を聞きつけたとびらの向こうのテロリスト共も加わり場はより過激さを増した。

 

「なぜここにお前がいる、雨野典嗣。君はこの件には関係ないはずだ。いやむしろ喜ばしいことではないのか。君の主人である千葉エリカは第一高校の二科生だ。彼女はあの高校で屈辱的な思いをしているはずさ。それならば私たちブランシュが目指す魔法による社会差別を撤廃するという理想に一致するものがあるだろう」

おそらく首領である人物が銃撃を止めさせると雨野に問う。

 

「確かに私は貴方たちと同じ側に着くべきなのかもしれない。二科生という汚辱を与えられたお嬢様や魔法師となり得ない運命にある私はおそらく君たちと手をとって共に戦うという選択肢もある」

 

「だが、お嬢様が。ご友人方と楽しくなされていたあの方が魔法師としての威厳を守る方へとついた。だから私も其方側へとつく。なに、それだけのことさ」

 

「っ、君は。本当にそれでいいのか。君はどっちつけずだ」

 

「これでいい。私の運命はお嬢様に出会ったときには既に決まっている」

 

「……そうか。なら私たちの理想のために死に晒せ」

リーダー格とおもわれる男、はじめは銃撃開始の合図をしようとするが、

 

彼らの持つ銃が一斉に真っ二つに切れた。何の前触れもなく何の太刀筋も見えずに、そのあまりにも綺麗な断面にブランシュの人たちの背筋が凍る。一瞬で、強みが消えた。

雨野を見る。刀に手をかけた彼は居合の構えで静かにその場に立っていた。

 

「ちっ、やっぱり効かねえか。おいっ、お前らいますぐ予備を持ってこい!」

司一は側にいた数人に大声で指図する。そしてゆっくりと典嗣と目を合わせた。

 

「やっぱり甘いな、雨野典嗣」

 

「甘いのはそっちの方だ。いいのかこんなところで日本支部のリーダーが悠長としていて。もうすぐ第一高校からの援軍が来るぞ」

 

「はっ、お前と対峙した時から逃げることは頭の中にはないさ」

司一が構える。それに続いてブランシュの者たちもそれぞれに構え始めた。

 

「おいおい、徒手でくるのか。こちらは刀を所持しているのに?」

 

「どうせお前は斬れやしないさ」

司一が突貫する。右殴り、左殴り、アッパー、蹴り技も加えて相手にダメージを与えようとする。だがどれも受け止められたり避けられたりと明らかに不利であった。

他の者たちも彼と同様なんとかして当てようとする。

渾身のストレートを叩き込もうとするが避けられその腕を捕まえられて仲間の打撃のガードにされたり、典嗣の動きを止めようとして体全体を使って腰に巻きつくが膝蹴りを受けすぐにダウンする。

一人一人と脱落していき残るは典嗣と司だけだった。だが司も体力が残っていないのかフラフラと千鳥足のような状態だった。だがそんな状態も長くは続かずすぐに床に仰向けで倒れていった。

 

「あーくそ、日頃動いていないから体が思うように動かない」

 

「何故そんな体たらくで戦おうとしたのだ、貴方は」

 

「……さあなんでだろうな。私にも検討がつかないね」

 

「アレは使わないのか、あの魔法は」

 

「何だ?馬鹿にしているのか。お前にアレが効かないってことはとっくの昔に知っているさ。あんなもので勝てるのだったら私は君と相対したら速攻で使っていたよ」

 

「だが……いや、なんでもない」

 

「なあ雨野典嗣。一つだけもう一度だけ聞きたい。人と魔法師が敵対した時に君はどちらへつくのだい。人であって魔法師でなく、魔法使いであって純粋な人でない君の意見が知りたい」

 

「さっきも言っただろう。私はお嬢様の側へとつく」

 

「……そうか。じゃあ純粋な人としてのアドバイスだ。君は自分の意志を持った方がいい。お嬢様が、だとかお嬢様のためなら、だとかそんな他を考えることよりもまず君自身の意見を持った方がいい。そうでなければ君の主人が道を外したときに君は彼女を救うことができない」

 

「ご忠告感謝する」

扉の開く音がする。この場で動けるのは典嗣だけだ。だが彼は扉からは程遠い。

ということは。ドアを開けたのは別人である。つまりは入ってきたのは第一高校のメンツだった。

 

 

____________________________________________

 

 

「雨野!今回ばかりは許せないぞ。お前がエリカ嬢のことが大切なのはよく知っている。だが、流石に第一高校に不法侵入しあまつさえ『千葉』の名を使ったんだ。許しておけるはずがない」

 

ここは千葉家にある部屋の一つ。そこでは千葉家の弟子の一人が典嗣に説教していた。

 

「まあ落ち着け」

 

「ですが御当主」

 

「第一高校からも援軍の感謝が来ている。何も問題はない」

 

「お前は黙っとけ雨野。お前が原因で今話しているんだ。だから――」

 

瀬崎(せざき)。もういい」

瀬崎は当主である千葉丈一郎(じょういちろう)になにか物申そうとするが悔しくそうな顔をしながらそれっきり口を開かなかった。

 

「典嗣。今回はテロリストが第一高校に入ってきたことで起きた事件だ。君も一緒に入ってしまえば同じテロリストと括られていたかもしれない。だからあまり軽率なことはしないでくれ」

典嗣はこくりと頷いた。

 

「だが、お前のおかげで反魔法国際政治団体である『ブランシュ』を壊滅させることができた。それについては感謝する」

雨野はその後第一高校に属する十文字克人にその場を任せるとエリカの下へと向かった。それはもう彼女に怒られた。本人は良かれと思ってやったのだが勝手な行動をしたのだ、怒られて当然だ。

 

「だから、今回のことは不問にする」

丈一郎はゆっくりと立ちあがる。

 

「これからもエリカのことを頼む」

そう言うと丈一郎は部屋から出て行った。それに続いて瀬崎と呼ばれた男も丈一郎の後をついていく。

 

 

 

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「なぁ知ってるか?一高にテロリストが侵入したんだってよ」

 

「知ってる知ってる。というかあり得ないほど煙上がってたじゃん」

 

「銃声の音もしてたし。本当に怖かったわ」

 

「やっぱりアレ、テロリストだったんだ」

 

「私のお兄ちゃん。一高近くのカフェでバイトしているんだけどやばかったらしいよ?」

 

「そう考えると魔法師って良さそうな職業だけど同時に危険と隣り合わせだってことがよくよくわかったわ。なりたい気持ちもあるけど、やっぱりなりたくねぇー!」

 

普通科高校では昨日起きた第一高校の事件で話題が持ちきりだった。物騒な世の中であることは昔から変わらないがやはり近所の高校にテロリストが攻め込んだのは珍しいらしい。皆が思い思いに意見を述べていく。

 

「で、どうだったの?その渦中に自ら飛び込んだ雨野さん」

後ろから典嗣の肩に手を置きながら蓮太郎は典嗣の前にアップで顔を出した。

 

「お前にさん付けで呼ばれるのはどこかむず痒いからやめてくれ。別にどうもなかった。単純にテロリストと第一高校の生徒たちが戦っていただけだ」

 

「いやほら、可愛い子とかいなかったの?」

 

「何処に?テロリストに?」

 

「まさか。一高にだよ」

 

「見ているわけがないだろう。馬鹿なのかお前は」

 

「いやけど一人くらいは目に写らなかったの?」

 

「そんなことを言われてもな……あっ」

数人ほど、第一高校の生徒と出会ったことがあるのを思い出す。

 

「何、いた?」

 

「まあ、可愛いと思う女子なら数人いたぞ」

 

「エリカ嬢なんて言うなよ」

 

「あの方とは別に、だ。お前も求めていないだろう、そんな推薦」

 

「まあね。なんだ、真っ先にエリカ嬢って言うと思ったんだけど違ったか」

 

「確かにお嬢様は美しいがそれ以前に恩義があるから彼女をそんな外見だけの基準で評価したりしない」

 

「どう、今の生活は楽しい?」

突然蓮太郎はそんなことを聞く。

 

「どうした、いきなり」

 

「いやエリカ嬢と離れ離れになって悲しいかなって」

 

「お嬢様の護衛時間はだいぶ減ったがそれでも今の生活に不満なんて一切ない。普通に楽しい毎日を送れているさ」

 

「そう。ならよかったよ」

教卓側の扉が開き、担任が欠伸をしながら入ってくる。早寝早起きが得意だと言ったあのキッチリと何でもできる担任が少しクマのできた目をしながら教室に入ってきた。徹夜したのだろう、珍しいこともあるものだ、と典嗣は思う。

 

「はぁ〜い。朝礼始めまーす」

そんな気の抜けた声にクラスメイトたちはクスクスと笑う。こんな疲れている担任は初めてだとそれぞれが口々に言っていく。

 

「あー、あと雨野くん。昼休みに職員室来てね、昨日のことで少し話があるの」

朝礼はつつがなく終わるはずだった。が、担任が雨野を呼び出した。明るい声で言うものの彼女のその笑顔は何故か怖いと典嗣は思った。

一限目は数学だ。

そう思っても笑顔が拭えなかった。




『司一が殴り合いを習得した』
私、司一が異様に好きなんですよ。誰かアイツ主役の話書いてくれねえかな。

あと、蓮太郎がただの女好きのキャラに見えてきた。違うんだ、事情があるんだ…。あれ、事情、あったっけ?

というわけで原作なら次は『九校戦編』なんですが……、必要ですか?
というかこの主人公では関わらせることができないです。
まず魔法大学附属高校のどれにも所属してないし、それにエリカだってちょろっとしか出番ないし(ウェイターくらい。観戦は出番に入らない)。
まあ書くんですけども。

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