少し校舎から離れた位置で仮面を外した翁は、校舎の中にいる生徒達に向かって大剣を肩に担ぎ歩きだした。
生徒達もどうやって姿を消したり一瞬で触手を切ったりしたのか聞きたくてウズウズしているようだった。
窓の前まで来ると生徒達からの質問責めにあった。
「やっぱりスゲーよ!どうやって姿消したんだ!」
「何処からその剣出したの!」
「それより一人で殺れたんじゃないの?。なんで殺らなかったの?」
あまりの生徒の勢いに苦笑いしていたが、一つずつ答えていった。
「あー、姿を消したのは、まあ気配遮断っていう技術みたいなものだよ。剣は烏間先生に頼んであった特注で、何処から出したかは企業秘密かな。流石に一人じゃ無理だったよ、今の僕だと。」
皆と打ち解けている様子を教師二人がみていた。烏間が不安に思っていたことは今のところ問題ないようだった。
「ふぅ、流石に今回ばかりは先生も命の危機を感じました。ですが生徒達が打ち解けれたのならそれだけでもよしとしましょう。ヌルフフフフ、プロの殺し屋として聞きますがイリーナ先生から見て彼はどうですか。」
そこにやって来た殺せんせーが、汗をぬぐいながら話しかけてきた
「私とアイツじゃタイプが違うけど、多分ロヴロセンセイと同等かそれ以上ね。それにしてもあの仮面であの動きよくもまぁアイツを連れてこれたものね。アイツ普段は殺し屋しか狙わないのに。」
「ヌルフフフ、彼には彼の事情があるんですよ。」
「イリーナも彼を知っていたのか。」
「私達の業界じゃ有名よ、仮面をつけた殺し屋殺しは。」
三人が話しているなか生徒達はヒートアップし続け気配遮断のやり方を教わろうとする人まで出てきたためプロの技を教わるのはまだ早いので急いで止めに入った。
「コラ、君たち早く帰りなさい。明日は集会なんですから。」
「えーもうちょっと位いいじゃん。」
「ダメです!さぁ帰って宿題をするまでが学校ですよ。」
「遠足じゃないんだから。分かったよじゃあね殺せんせー。」
「ハイ、皆さんサヨウナラ。」
生徒達が殺せんせーに促され続々と帰っていき、翁は渚達と一緒に下校していた。
「なぁ翁、一緒に帰ろうぜ!」
「勿論、俺で良ければ。」
帰路につくなかやはり、話題は先程の暗殺だった。
「それにしてもさっきの暗殺惜しかったよな。」
「うん、僕たちじゃ全員でも触手を何本も破壊した人なんて居ないよ。」
「まぁプロを名乗ってる以上これぐらいはね。ん?どうしたのなんか複雑な表情してるけど。」
「い、いや何でもないよ。」
これを聞いた茅野、渚、杉野の三人はビッチ先生との差に苦笑いをしていた。
「そ、それより気配遮断?だっけ?あれについて詳しく終えてくれよ。あれをクラス全員が、出来るようになれば暗殺が絶対に楽になると思うんだよ。」
「教えるって言っても直ぐに出来るようなもんじゃないよ。」
「どんなものかだけでもいいからさ!お願い!」
「わ、分かったよ。」
翁は杉野の勢いに押され話し始めた。
「教えるけど俺も感覚的なものだから難しいんだけど、遮断っていうよりは俺は周りの空気とか自然に自分の気配を紛れさせる感じかな。周りに上手く溶け込んで見えなくするっていうよりかは分からなくするようにやれば成功できると思う。」
「へー、スゴいね。やっぱり一人でも暗殺出来たんじゃない?」
「無理だね。絶対に。」
あまりにも強い否定が翁から、出たため困惑しながらも理由を聞いた。
「何で?だって殺せんせーですら何処に居るか分かってなかったのに。」
「じゃあ何で逆に殺せなかったと思う?」
「えっ、そう言われると分からないけど。」
「まっ、分からないと思うから先に答えを言うと僕の、気配遮断は完璧じゃないんだ。」
「え!?あんなにスゴいのに!」
「俺らから見ても完璧に見えたけどなぁ。」
翁の発言に三人は驚きの声を上げた。殺せんせーの目すら欺く気配遮断の技術は、端から見れば完璧に見えるため当然であった。
「僕の気配遮断じゃ気配を消せても絶対に気付かれる瞬間が出きるんだ。」
「気付かれる瞬間?そんなの有るように見えなかったよ?」
「危ない目に遭うとゾクッとしたりするだろ、あれが僕が命を奪う瞬間必ず起こるんだ。普通の人なら未だしも殺せんせーみたいにとてつもなく早いとその感覚を感じた瞬間に逃げられてしまうからね。だから、逃げられないよう触手を切ってみたんだけど駄目だったから僕一人じゃ今は無理なんだ。」
「完璧に見えても弱点があるんだな。」
「ならあの仮面は何なの?口調も変わってたけど。」
茅野が、特徴的な仮面について尋ねた。口調も全く変わっていたため気になったようだ。
「あれは、仕事の時に必ず着ける物なんだ。口調が変わるのはまぁ、ルーティーンみたいなものだよ。それより明日、集会があるんでしょ。少し楽しみだな。」
翁は、あまり話したくないのか話題を集会の事に変えたが三人は集会と聞き顔を曇らせた。
「あれ、何か不味かった?」
「そっか翁君は知らないよね。僕達のクラスはエンドのE組って呼ばれてて落ちこぼれが集められてるんだ。」
「え!そうなの。はじめて聞いたんだけど。」
「暗殺の為に呼ばれたからかな。集会にいくと本校舎の皆からの嘲笑の視線に耐えなきゃいけないんだ。」
「ごめん、何か。」
E組について話す渚の表情をみて翁は、謝っていた。
「仕方ないよ、知らなかったんだもん。それに私も入ったばかりだからあまり知らないし。」
茅野のフォローのお陰で暗い雰囲気から明るい雰囲気に戻った。
駅に着いたため翁は、三人と別れた。
「それじゃ皆、サヨナラ。」
「うん、また明日。」
「じゃあな。」
「バイバイ。」
笑顔で見送った翁は三人の姿が見えなくなると急に真剣な表情になった。
「さて、そろそろ仕事の時間かな。」
そう呟くと椚ヶ丘の町へと消えた。