のびハザ×ガールズ&パンツァー 英雄達と戦車乙女たち the heroes and battle tank girls 作:白石
・アンブレラとの戦いに身を投じたメンバー(14名)
野比のび太、ドラえもん、出木杉英才、源しずか、剛田武、骨川スネオ、田中安雄、桜井咲夜、富藤雪香、アリス・アバーナシー、アンジェラ・アシュフォード、緑川雪奈、満月美夜子、翁餓健治。
・日常社会に戻ったメンバー(9名)
榛名、大鷹、島田愛里寿、山田太郎、島田響、西住みほ、緒方タカシ、レオン・S・ケネディ、白鳥渚。
その他(1名)
サーシャ
2度目の乗り込み
◇西暦2021年 1月27日 深夜 日本 アンブレラ研究島付近
「またここに戻ってくることになるとはね」
のび太は皮肉げにそう言いつつ、半年前にも訪れたアンブレラ研究島を船の上から見つめていた。
ハヴィエの一件の後、のび太とアリスはレオンと別れ、渚を南米に居る両親の元まで送り届けた後、日本にのび太、アリス、ドラえもんの3人は日本に向かって帰国の途に着いたのだが、昨日、安雄からとんでもない報告が届いた。
なんと、アジトがアンブレラの特殊部隊によって制圧され、皆が連れ去られたと言うのだ。
そして、咲夜と雪奈の二人はヘリで別な場所に連れ去られてしまったらしい。
幸い、安雄は制圧の際に外出していた上に、アンブレラにも捕捉されずに済み、この報告を送り届けることが出来た。
今、隙を見て乗り込めないか試みているところであり、のび太達にも協力を求めている。
勿論、のび太達も安雄に合流して皆の奪還に取り掛かりたいところだったが、咲夜と雪奈の運ばれた場所が半年前にのび太が訪れたアンブレラ研究島だと分かったことや、丁度近くを船が通り掛かっていたことから、先に二人の奪還を優先することにしたのだ。
そして、あのハヴィエの居城の一件から12日。
のび太は再び戦場へと突っ込もうとしていた。
◇
「しかし、まさかこの島が復活しているなんて思わなかったな」
「ここは日本でも無人島という事だけあって、かなり重要な施設が置かれているわ。近くの日向穂島にも有るけど、あそこは有人島だから研究施設も小規模だし、現在は日本の警察と軍に封鎖されているから、再建するにはここが良いと思ったんでしょうね」
のび太の呟きに対して、アリスがそう解説する。
実際、アンブレラ・ジャパンの中でもこの島に存在する研究施設は有数のものであり、貴重な設備や資料が勢揃いとなっていた。
もっとも、半年前の爆発によってそのほとんどが吹き飛んでしまったが、それでもアンブレラ・ジャパンにとってここ以上に都合の良い場所などそうそうないため、この半年で資材と人員を投入する形で、なんとかある程度の研究施設としての機能を回復させている。
「なるほど。それで、中に居る兵隊はどれ程なんですか?」
「最近再建されたらしいから詳しいことまでは分からないけど・・・10人以上の完全武装の兵士が居るとは考えた方が良いわね。ついでに、警備システムも新しいものになっていると思うわ」
「・・・つまり、マリアナ諸島とは別物と考えた方が良いと?」
「丸っきり、ね」
そのアリスの言葉を聞きながら、のび太はどうしたものかと思っていた。
勿論、兵士の数だけなら、半年前にのび太が乗り込んでいった時の方が多い。
しかし、あれはガナードとして操られていて、行動パターンの制限を受けていたからこそ相手が出来たのだ。
だが、今回はそうはいかない。
正真正銘、完全武装の兵隊とドンパチ祭りをすることになる。
そう考えると、今回の案件はどちらかと言えば、ラクーンシティでアメリカ軍の特殊部隊と戦った状況に似ていると言えた。
ただあの時と違うのは、囚われている人間の居る場所が分からないという点だ。
この点を考慮するとなると、ハヴィエの支部に乗り込んだ時のように、爆発物の使用は控えた方が良いだろう。
「・・・難しいな」
のび太は状況を改めて認識して、思わずそう呟いてしまう。
今回の作戦は予想以上に難しい。
何故なら、完全武装の兵隊が10人以上待ち構えている場所に二人で攻撃をかけ、何処に居るかも分からない二人を探さなくてはならないからだ。
しかも、武器の使用制限を受けた状態で。
「ねぇ、やっぱり辞めない?」
そんな二人を見かねたドラえもんはそう提案する。
・・・確かに今のまま島に乗り込むのは無謀な点が多い。
常識的に考えれば、一旦引いて本土に行って安雄と合流し、皆を助けて、それから救助するべきだろう。
まどろっこしいが、それが一番の最善策だ。
だが──
「そういうわけにもいかないよ。マリアナ諸島の例が有るからね」
あくまでそれは戦力という観点に限定した常識と最善策。
時間という観点で見れば、今ここで乗り込んでいかないのはリスクが大きい。
何故なら、のび太の言った通り、あまり時間をかけるとマリアナ諸島の例にあるように、別の場所に移送されてしまう可能性があるからだ。
そして、実際に移送された緑川聖奈がどうなったかを見れば、ドラえもんの提案はのび太にとってあまり取りたくない選択肢だった。
「それはそうだけど・・・」
「とにかく乗り込むしかないよ。・・・ああ、そう言えば、今思い出したけど、安雄とは連絡がついたの?」
「いや、まだ何も」
ドラえもんはそう言いながら、首を横に振る。
そう、安雄は何故か知らないが、昨日の連絡以来、通信が途絶えてしまっていた。
なので、現在は捕らえられた仲間の様子どころか、安雄の安否すら分からない。
「・・・そっか」
のび太は心配そうに呟く。
のび太から見れば、自分達より困難な任務に挑んでいるのは安雄だと思っている。
なにしろ、10人近くの人数を一斉に拐うような相手にたった一人で挑んでいるのだ。
・・・実際は拐う方も段階を踏んで行っているのだが、そこまでのことはのび太も知らなかった。
まあ、どちらにせよ、困難であるのには違いないのだが。
「捕まったのかな?」
「それか単に通信する余裕が無いかだね。・・・あと、あまり言いたくはないけど、殺されたっていう可能性もある」
色んな憶測を立てるのび太だったが、どれも憶測の域を出ないために、話をそこまでで中断することにした。
「やめよう。取り敢えず、咲夜さんと雪奈ちゃんの救出を終え次第、みんなが捕まっているY町に向かおう」
「・・・そうだね」
「そうね」
二人はそう言いながら、のび太の意見に賛同する。
──そして、装備を整えたのび太達が島に上陸するのは、それから数分後の事だった。
◇
ドドドドドドドドドド
M134ミニガンの連射音が鳴り響き、辺り一面に7、62×51ミリ弾が次々と着弾していく。
のび太は物陰に隠れながら、それらの銃弾の嵐をどうにかやり過ごしていたが、完全に釘付け状態にされていた。
「あんな格好良いことは言っちゃったけど・・・どうしようもないぞ、これ」
のび太は腕にM4カービン・アサルトライフルを抱えながら、これからどうするかを思案している。
撤退という選択肢はない。
一度上陸してしまった以上、ここで撤退してもやり直しが出来る確率は物凄く低いからだ。
しかし、現在進行形でM134ミニガン、更にはアサルトライフルによる銃撃を受けている身としては、今の進撃ですらほとんど不可能に近い。
おまけに手榴弾もグレネードランチャーも使えないとあっては尚更だ。
「相手は8人。だけど、こっちは僕一人だけ、か」
のび太は今更ながらにアリスと別れた事を悔やむ。
それなりに広い島なので、ハヴィエの支部の時と同じように手分けして探した方が良いと考えたのだが、今回はそれが完全に裏目に出ていた。
「・・・取り敢えず、あの巨大なガトリングガンを持っている奴から片付けよう」
のび太は先にM134ミニガンを持っている人物から片付けることにして、どうにか隙を伺う。
しかし、M134の弾が切れれば、アサルトライフルを持った敵が発砲してくるため、全く隙が見当たらなかった。
「くそぉ!」
のび太は悔しげな顔をするが、向こうがこちらの反撃がままならないくらいに銃撃を続けてきている為に、どうにもしようがなかった。
そんな時、またもや一人の兵士が向こうの後方からやって来る。
敵の増援。
そう思ったのび太は益々進撃が困難になると歯噛みする。
だが──
「ん?なんだ?」
向こうの兵隊の一部が後からやって来た兵士と何かを話しており、その後、3人の兵士がそのやって来た兵士と共に後方へと下がっていった。
いや、向かっていったという方が正しいだろうか?
「・・・何が起こったんだ?まあ、良いや。今のうちに」
敵に何が起こったのかは知らないが、これはのび太にとってチャンスでもある。
そして、のび太はまず当初の目標通り、M134ミニガンを持った敵に狙いを着けた。
しかし、数が減ったとはいえ敵数は5人。
なかなか隙は見当たらないが、それでもさっきよりは目に見えて銃撃の数が減っている。
その為、どうにか隙を見つけ出し、M134ミニガンの射手に照準を着けて発砲する。
ドドド
三点バースト射撃によって発射された3発の5、56×45ミリ弾はM134ミニガンの射手の頭部を直撃。
本人は防弾ヘルメットを被っていたが、それでは拳銃くらいの弾は防げてもアサルトライフルの弾は流石に防げず、銃弾は防弾ヘルメットを難なく貫通してそのまま頭部を突き抜けて絶命させた。
「よし、次!」
のび太はM134ミニガンの射手を片付けるとアサルトライフルを持った残り4人の兵隊に狙いを変更する。
そして、射撃モードをフルオートにすると、身を乗り出しながらそれらの兵隊に猛烈な銃撃を行った。
ドドドドドドド
相手のアサルトライフルの銃声に呼応するかのように、M4カービンの銃声が木霊する。
しかし、流石にアサルトライフルのフルオートとなると、どうやっても照準が若干ぶれてしまうため、のび太であっても精密射撃などほぼ出来ない。
それでものび太の正確な射撃は相手へと命中し、4人の内2人を片付けるが、そこで弾薬が切れた。
「あと二人」
のび太はそう呟きながら、M4カービンの30発STANAGマガジンを新しい物に変える。
そして、再び残る二人を攻撃しようと身を乗り出す。
すると、そこには残った二人の兵隊の内一人が自分に向かって手榴弾を投げようとしている光景があった。
(不味い!)
のび太はそう思い、その手榴弾を投げようとしていた男にM4カービンの銃口を向けて発砲する。
慌てて発砲したので、ヘッドショットこそ出来なかったが、弾丸は寸分違わず相手へと命中した。
そして、男は手榴弾を取り落とし、その拍子に手榴弾の安全レバーが外れてしまい、数秒後にその手榴弾を持っていた男と近くに居たもう一人の男を巻き込む形で爆発する。
「うわぁあ!!」
その手榴弾の爆発によって、手榴弾を持っていた男はミンチとなり、近くに居て爆発に巻き込まれた男も爆風によって体を吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる。
それでもその男はどうにか生きていたが、そんな男に対してのび太は止めとばかりにM4カービンの銃口を向けて発砲した。
ドドドド
そして、男は完全に動かなくなった。
「・・・よし、これで片付いたな。遅れちゃったし、少し急がないと」
のび太は周囲を警戒し、他に敵が居ないことを確認すると島の奥へと進んでいった。