幻想郷にTSUBAMEいないからKARASUを落とす 作:丹羽にわか
活動報告の方でSSのネタ募集してたりするのでリクエストなどございましたらどうぞ
「すみません。差し出がましいのですが、こちらの妖を荼毘に付したくて・・・」
白蓮と名乗ったゆるふわ癒し系美少女僧侶が申し訳なさそうに言う。
妹紅が炎の妖術を使うとは話していないが、焼け焦げた妖猪の死体の状態からこちらが火を扱う術を持っていると推測した上でのお願いだろう。白蓮自身もそういった類の術は修めていそうではあるが、恐らくは意図的に伏せている可能性が高い。
自分の神秘に対する感知能力は、半世紀を超える時を妖怪の山の麓で過ごし、自然や神秘に慣れ親しみ研ぎ澄まされた故にかなりのものらしい。尾を複数持つような練達の狐狸の変化の術も何となくだが判別できる。
そして、そんな俺の目の前で微笑む僧侶は確実に人外の領域に足を踏み入れている。妖怪が人に化けているのか、人が妖怪の類に変化したのかまでは判断できないが・・・今のところ特に悪意は感じないから大丈夫だろう。
つまり・・・拙者は一向に構わん!!
「好きにすれば」
「ありがとうございます」
そっぽを向いた妹紅が突き放した態度で白蓮に答えている。
どうにも白蓮に対しての態度がツンケンしているが、おそらくは過去に色々とあったのだろう。竹取物語で語られる出来事から数百年。蓬莱人として生きていく中で、宗教に対して何かしら思う所があるのかもしれない。
まあ、ツンケン厭世系不老不死美少女退魔士とゆるふわ癒し系魔人僧侶の組み合わせは確実に尊いので、是非とも拝むべく適度に絡む所存だが。
「~~~~~~~~~~」
そんな風にまだ見ぬ百合へ思いを馳せていると、パチパチと燃える音が鳴り始める。
妹紅の炎によって獣の肉と脂が焼ける匂いがあたりを満たし、白くたなびく煙が初夏の青空に消えていくのを見送りながら、白蓮が経を唱えている。
「・・・物好きな奴」
手近な木の幹に背を預けた妹紅が、その様子を横目に呟く。
警戒している、というよりは白蓮の存在そのものが気に食わないといった様子だった。
好感度的にはマイナス寄り。このままでは二人の百合を拝むことは中々難しいかもしれない。
だがしかし。
共に過ごした一日に満たない時間の中で特に感じたのは、妹紅の善性だ。
不老不死になり、不遇な日々を数百年と過ごしながらも世を恨まず、悪に堕ちずに退魔士として人々を助けるそのあり方。例えそれが悔恨に塗れた自罰的な側面があるとしても、時折覗く少女らしい言動や素直な反応は、生来の善性の表れだろう。
「妹紅殿」
「・・・あんだよ」
声をかけると肩をはねさせ、ばつが悪そうにこちらを見上げてくる。美少女の上目遣いは心臓に悪いがどうにか堪える。このような反応も、自分が「いい事」をしていないという自覚があるから。
「隣、いいかのう?」
「ッ・・・勝手にしろ」
恐らくは叱責されると思っていたんだろう。一声かけると息を詰まらせてから投げやりに答え、妹紅は腕を組んで顔を伏せてしまった。苦笑が漏れているのを自覚しながらその隣に腰を下ろす。
結局のところ、妹紅は人を嫌いになったり貶めたりといった事が苦手な、お人好しの善人。僧侶である白蓮を第一印象で嫌ってはいるが、相手のことを知れば知るほど嫌いになれない性質。つまり。
「待っておれば勝手に百合が生まれるわけよ・・・くっくっく・・・」
勝ったな、ガハハ。風呂入ってくる。
「燃え尽きろぉぉぉぉ!!」
「甘い!!」
妹紅が構えた両手から放たれた白熱の炎弾を、踏み砕いてせり上がった地面を盾とすることで防ぐ白蓮。
「チィッ!! これならどうだぁぁぁッ!!」
防御されたことを悟った妹紅は背から炎を吹き出しながら接近し、炎を纏わせた飛び蹴りを放つ。
「ふふっ、その意気やよし! でもまだまだですよ!!」
その一撃をクロスした両腕で真っ向から受け止めた白蓮は、その重みと熱に笑みを浮かべながら跳ね返すと、後ろに跳んだ妹紅に拳を振りかぶって追撃をかける。
「せいッ! やあッ!」
「ぐッ!? がッ!?」
ドゴッ!! ドガッ!! バキッ!!
平和だったはずの山間は一瞬として戦場と化した。
「なあにこれぇ」
思わず間抜けな声を漏らしてしまう。
おかしい。先ほどまで、妹紅と白蓮の二人は普通に会話していたはずだった。
俺の思い描いていた、ツンケン妹紅と母性マシマシ白蓮の百合は確かにこの手にあったはずだ。
だが、それはスルリと手の平から零れ落ちてしまった。
「何を間違えてしまったのだ・・・」
いや、原因ははっきりしている。
二人が話している最中に、つい「白蓮殿は何の妖怪でござるか?」と口を滑らせたのが原因だろう。転生した時から妖怪と関わり、人よりも妖怪の方が知人友人の多い自分にとって、人に変化している妖怪というのは特に警戒の対象ではなかったのだが、退魔士である妹紅からすると『悪意をもって人を欺き陥れようとしている危険分子』という扱いになってしまうらしい。
そこで白蓮がとぼけてくれれば間違いとして流せたのだが、彼女は一瞬だけ目を見開くと「ふふっ、ばれちゃいましたか」と笑みを浮かべて見せた。
妹紅は当然警戒をマックスに引き上げ、その身に炎を纏い戦闘態勢へ。白蓮に悪意や敵意を感じられずに内心首をかしげていると、怯えていると勘違いされたのか「お前は私が守る!!」と自分をその背に庇う。それは美少女相手にやってほしかった。誰得やねん。
「改めて名乗らせていただきます。私は白蓮。人をやめ魔に染まった・・・そう、魔人とでも言うのでしょうか。ふふっ、魔人僧侶、白蓮と申します。どうぞお見知りおきください」
ちょっとカッコつけすぎでしょうか、とはにかむ白蓮。かわいい。
当然妹紅はそれに警戒を緩めるわけもなく、さらに火力が増し背後に庇われている俺は汗が噴き出してくる。
そこから白蓮が一人語る。かつては只人の僧侶であった事。弟である命蓮がこの世を去り、死への恐怖から人をやめたこと。今は表では普通の僧侶や退魔士として活動しつつ、裏では人に害をもたらさない妖怪たちを保護していること。自分たちにその正体を明かしたのは、妖を供養するという行為に嫌悪を抱かず、自らが人外であると気づいて尚も敵意を向けてこないその価値観が、同志になってくれるかもしれないという期待を抱いたからということ。
人をやめた身である妹紅はその思想に思う所があったのか火の勢いが若干和らぎ、熱気で頭がボーっとし始めていた自分は意識をはっきりさせる。
白蓮が求めてきたのは、これから妖怪を退治する際に、人に対しての害意が見受けられなければ見逃すか、彼女が住職を務めながら妖怪たちを匿っている寺を紹介してほしいという二点。
退魔士でない俺は特に言うことはないかな、と口を噤むこと暫し。無言だった妹紅が一歩踏み出し「私と勝負しろ」と勝負を吹っ掛け、白蓮が「いいでしょう」と応じた。
そして今。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッッ!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッッ!!」
思考が逸れている間に妹紅と白蓮は至近距離でのラッシュの撃ち合いをしている。
屈強な背後霊が拳を繰り出しているように見えるのは幻覚だろう。というか元々荒んだところがあった妹紅はともかく、聖人オーラ溢れていた白蓮が獰猛な笑みを浮かべながらぶん殴っているのは違和感しかない。説教(物理)系バーサク僧侶だったとはこのリハクの目をもってしても読めなかった。
「こ、れ、で、終わりだぁぁぁァァッ!!」
「ッ!!!!」
妹紅がラッシュで打ち勝ち、吹き飛ばした白蓮に対して炎翼で加速して突っ込むと、インパクトの寸前に体をひねり、速度に遠心力が加わった炎の回し蹴りを放つ。
それは人の身で喰らえば防御ごと「く」の字に折れ曲がり、燃やし尽くされる必殺の一撃。受け止めた白蓮の足が地面を踏み砕き、舞い上がった砂塵で視界が覆われる。
だが、相手は只人ではない。
「く、そ、がぁッ!!」
「いい、いいですよ妹紅さん!! でも、まだですッ!!」
煙が晴れる。悔し気に歯を食いしばる妹紅。彼女の蹴りを曼陀羅のような障壁で受け止め、尚笑みを崩さない白蓮。
明確な力の差がそこにあった。
「破ぁッ!!」
「しまッ!? がはッ!!」
白蓮は妹紅の足を掴むとそのまま地面に叩きつけ、反発で浮き上がった彼女を蹴り上げる。その身は木々を超えて宙に放り出され、絶大なダメージから意識が飛びかけている妹紅は炎翼での姿勢制御も出来ずに自由落下を待つのみ・・・の筈だった。
「南無三ッ!!」
超人的な跳躍力で妹紅よりも上空に躍り出た白蓮が、その身にオーラを纏いながら踵落としを繰り出す。
流星と見間違うような勢いで地面にたたきつけられる。
慌てて駆け寄ると、全身に治癒の炎を迸らせながら妹紅は呻く。
「ぐッ・・・小次郎、ごめ・・・」
その言葉を最後に、妹紅は意識を失った。
なんで??????????????
白蓮さんがかなりはっちゃけていますね。。。おかしい。。。おかしくない。。。?
文が剣キチになりかけてたり白蓮がグラップラーだったりしてますが読者の皆さんは諏訪湖のように広い心で許してくれるでしょう
妹紅・白蓮編が終わったら西行編に行くつもりなんですが、10世紀前後で活動してそうな原作キャラっていますかね。。。? 紫は登場予定ですが。。。そちらもよければ活動報告へどうぞ
キャラ崩壊タグが必要そうなので失踪します
(久々の執筆で超遅筆なんで気長にお待ち下せえ)