気がついたら碇シンジだった   作:望夢

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小難しい説明は一先ず終えたから戦闘は再び勢い任せに書いてしまいました。結果怒られそうだけど、ついてこれるヤツだけついてこい!!を再び発動して読者を篩にかけるクソ作者でスマナイ。


君の名は──

 

 第4の使徒襲来。

 

 先の第3使徒戦により甚大な被害を受けた国連軍の出動は無し。

 

 第3新東京市の都市迎撃システムが空中を飛ぶ使徒へ攻撃を仕掛けるが効果は無し。

 

 日本政府からエヴァの出動要請が来るが、現金な奴らだ。

 

 しかし国連軍もお手上げ、N2地雷も効かん使徒は、政府のお偉方からすれば昭和映画のゴジラがやって来た気分にでもなるのだろう。

 

 それを思えば、使徒を倒したエヴァを有する我々へ矢の催促をするのも仕方のない事なのだろう。

 

 初号機とレイのシンクロはぶっつけ本番ともあり皆息を呑んだが、起動には成功した。シンクロ率は43.4%。起動できたのならば戦って貰わなくてはならん。

 

 地上に出た初号機はATフィールドを中和しつつライフルでの射撃を試みる。

 

 しかしパレットライフルの弾丸は使徒の体表で弾けて爆煙を生むだけで効力はない。あの弾丸も巡洋艦の主砲並みの口径はあるのだが畏れ入る。

 

 続けて場所を変えながら射撃をする初号機へ、使徒はその胴体と頭の間にあるY字の腕の様な場所から光の鞭を伸ばし、初号機の持つライフルを薙ぎ払った。脇にあったビルがいとも簡単に寸断されて斜めにずれた。恐ろしい攻撃だ。

 

 更なる追撃で初号機は成す術無く追い込まれていく。兵装ビルや山中の砲台群が援護するが、そうした攻撃は僅かな煩わしさを使徒に与えるだけらしい。近場の兵装ビルは寸断されるが、遠方への攻撃手段は持たないらしい。

 

 何とか体勢を立て直す初号機だが、動きが鈍い。

 

 そして初号機の足に使徒の鞭が絡みつき、初号機の巨体を軽々しく市中引き回してそして投げ捨てた。

 

 投げ飛ばされた初号機は山の斜面に激突する。

 

「レイ! 返事してレイ!! ダメージは!?」

 

「機体に問題ありません。ですがパイロットの心拍数が…! 意識レベルも低下しています!」

 

「シンクロ率急激に低下!!」

 

「ん? これは……!? えらいこった、民間人が初号機の左手の下に居るぞ!!」

 

「なんですって!?」

 

 下は随分と騒がしい。さて、レイももはや戦えるか怪しい。

 

 人類の命運は尽きたか。それとも──。

 

「セントラルドグマより高エネルギー反応を確認!! ジオフロント内に出ます!」

 

「サブ・スクリーンに出せ」

 

「は、はいっ!」

 

 部下の青葉君に命じて映し出されたスクリーンには、地下から飛び出してきた山吹色の巨人の姿が映る。その身体には僅かに光の膜を帯びている様に薄く光っていた。そして頭上に光る天使の輪、腰からATフィールドをまるで炎の様に吹き出してジオフロントから天井都市へと向かっていく。

 

「なに、アレは…!?」

 

「零号機…、センパイ、やったんですね…!」

 

 葛城君は飛び去る零号機に言葉がない様子だ。私もその1人だが。

 

 赤木君の部下の伊吹君が言うが、10年前の事を知る私からするとアレは彼の意思によるものである、そう信じてみようとする自身が居る。

 

 若い種は芽吹き、世界を救う神となるか。それとも世界を滅ぼす悪魔となるか。

 

 全ては彼に委ねられている──か。

 

「シグナル出ました! 零号機は直上、ゼロ地点より地上へ飛翔!!」

 

 モニターが切り替わり、地上の空へと上がった零号機は、そのまま急降下から初号機を襲おうと直上に迫っていた使徒へとキックを振る舞い、蹴り飛ばした使徒と初号機の間へと着地した。

 

 その様はまるで天から舞い降りた天使その物だった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 シャムシエルを蹴り飛ばして、なんかラスボスとか強敵系固有のふわり浮遊感から着地する。

 

 郊外へ向けて蹴り飛ばしてやったシャムシエルも立ち上がる。

 

 さて。武器は無いがどうするか。

 

 零号機はプロトタイプであり凍結も今日解除されたばかりで肩のウェポンコンテナも装備されていない。つまりプログナイフの1本も持ち合わせていないのだ。

 

「ッ、はぁぁぁぁぁぁぁぁ…っ」

 

 それでも頭上にある光の輪を見てイケるんじゃないかと思って、胸の内から湧き出すパワーを頭上に集めて──放つ!!

 

「バスタァァァァーーッ、ビィィィィィィムッ!!」

 

 イメージを乗せたのは同じ会社の超兵器。いや今のノリなら『炎』となった零号機は…、無敵だ! って、コーチも言ってくれそうな気がする!

 

 頭上から発射した破壊光線は真っ直ぐシャムシエルへ向かい、直撃するが──。

 

「ATフィールド…」

 

 ATフィールドに弾かれて地面に着弾。大爆発する。やっぱり初号機みたいに目が二つで目からビームしないと中和していないATフィールドは貫けないのか。

 

 ならば話は簡単だ。

 

「どうするつもり…?」

 

「決まってる。バリアを破れるのはバリアだけだ!!」

 

 地面が砕ける程の踏み込みで地を蹴り、シャムシエルに向かって疾走する。

 

 右腕を引き絞り、ATフィールドを纏わせた拳を、捻りを込めて突き出す。

 

「クソっ。受け止められるなんて!?」

 

「仕方がないわ。全力で防御されてる。死にたくないのね、彼も」

 

 だとしても、襲ってくる上にサードインパクトを起こされたら堪ったものじゃない。アダムの仔かリリスの仔か。言葉が通じないのなら、これは種族の存亡を懸けた戦いだ。

 

 ATフィールドのイメージを変える。拳に纏う形から螺旋を描く形へ。新劇では第10の使徒戦で零号機がN2誘導弾を抱えて行った掘削型ATフィールド。肘からもフィールド推進でブーストを掛ける。ちょっと痛いが我慢である。

 

 古今東西、壁をブチ抜くには──ドリル(コイツ)に限るッ!!

 

「つらぬ、けぇぇぇぇッ!!!!」

 

 右のインダクションレバーを思いっきり押し込む。高速回転する掘削型ATフィールドが、少しずつシャムシエルのATフィールドへと沈み込んで行く。

 

「いけないッ」

 

「え?」

 

 そう注意を促した彼女の言葉に沿って意識を向けると、シャムシエルがそのY字の腕から二本の光のムチを──4本出して背中側から零号機を突き刺して来た。

 

「がァァァァァァァ────ッ!!!!」

 

「ぐぅぅっっ」

 

 激しい衝撃が襲うと共に、背中に激痛が走る。それはシンジ君の記憶にある頭を貫かれた痛みの何十倍もの痛みを感じさせた。熱した棒を4本、背中に突き刺された様な感覚だ。

 

 そして背中を預けられているから見える彼女の背中に見える四つの穴。そこから流れ出る血。

 

 そうか。彼女は零号機だから、零号機の損傷がダイレクトにフィードバックされるのか──。

 

「うおおおおおおお!!!!!!」

 

 凄まじい激痛を背中に感じる。だからどうした!!

 

 彼女の方が何倍も痛いはずだ。

 

 だからこれくらい歯を食い縛って耐えてみせるのが男と言うものだろうがッ!!

 

 攻勢に転じたからか、シャムシエルのATフィールドの感触が変わった。

 

 背中から胴体に突き抜けた光のムチが眼下で蠢く。引き裂かれる前に決着をつける!!

 

「これでッ、終わりだあああああああ!!!!!!」

 

 全力防御からの捨て身の攻撃に移ったシャムシエル。それは詰みの状況を打開する一手だったのだろう。

 

 だが、防御を疎かにした分、弱まったATフィールドを突破して、零号機の両腕はシャムシエルのコアを鷲掴んだ。そして掴んだ手が紅くコア化していくのにも構わずに、両手にエネルギーを集め、集められたエネルギーが放電を発する。

 

「バスタァァァ、コレダァァァァァッ!!!!」

 

 高エネルギーを集束した両手から放電しながらコアを押し潰す。

 

 シャムシエルも零号機の胴体を貫く光のムチを震わせる。内臓が掻き回される様な激痛が走るが、アドレナリンが沸騰してきている自分はその痛みも吹き飛ばす勢いで叫びながらコアを押し潰す手に力を込める。

 

 そして亀裂の入ったシャムシエルのコアの隙間に電流が流れ込み、内部を破壊されたコアはそこからいとも簡単に砕け散った。

 

「ッ──はぁぁぁ…………。あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛、クソッ。痛いし疲れた……」

 

 多分自分も背中に穴が開いて血が出てる。インテリアのシートがヌメってる。

 

「お疲れ様…」

 

「……ゴメン。ケガさせちゃって…」

 

 敵を倒した次は謝罪だった。彼女は綾波レイの姿をしていても零号機であるのだから、零号機が傷つけば彼女にもそれが及ぶのだと考慮しなければならなかったのだ。

 

「いいわ。直ぐに治るから」

 

 そう彼女が言うと、背中の痛みが消えていく。彼女の背中の穴も塞がっていった。

 

「S2機関を解放しているワタシなら、これくらいの傷は自分で治せる」

 

「便利だなぁ……」

 

 S2機関を搭載しているエヴァ──その自己修復能力の高さにニヤケたウナギ面が頭を過る。

 

 しかしそもそも使徒ではない上にアダム由来の機体ではないはずの零号機が何故S2機関を持っているのだろうか?

 

「アナタと1つになったワタシには出来ないことはない。今はアナタが居なくならない様に擬似シン化第1覚醒形態で抑えているけれど、その気になれば第3形態にもなれるわ」

 

「おっかないんで今ぐらいでお願いします」

 

 なんだがはぐらかされた気がするが、覚醒状態の零号機ということはリリスに等しい存在へ至る一歩手前であるという事なのか?

 

 サードインパクトだって起こせると何処か得意気に胸を張る彼女。なに? ボーイミーツガールの相手はその気になれば世界を滅ぼせる涼宮さんタイプですか? いや綾波系なら長門ではないのか!?

 

 ──さて。使徒も倒した事だし、帰って一杯ご馳走になりましょうかねぇ。

 

「あ、そういえば名前どうしよう……」

 

「名前…?」

 

「お前の名前。名前が無いと呼ぶ時に困るでしょ?」

 

「名前──自己を表し、自己を定義する物。そう、ワタシは名前で呼んで貰えるのね」

 

 そう呟いた彼女は満面の笑みを此方に向けてきた。いやこりゃ変な名前つけられない。しかしあまり変な風に凝るよりも自然に呼べる名前は──。

 

「レン──。レンでどう?」

 

 見た目が綾波レイだから名前は二文字の方が収まりが良いだろうし、ふと思い浮かんだのはその名前だった。別にシンジ君の名前とレイの名前を合体させた安直な名前じゃない。漢字にすればレンは(ハス)になる。

 

 清らかな心、神聖とかという花言葉を持っている。

 

 まぁ、リリスと同質の存在なら人間からすると神様みたいな物だし、清らかな心は、純真無垢な彼女には合うと思う。

 

 問題はこの名前を彼女が気に入るかどうかだけれども。

 

「レン……。そう、それがワタシの名前。私でもないワタシの名前、ワタシだけのもの」

 

「あ、ちょっと…」

 

 身体ごと振り向いた彼女は正面から抱き着いてきた。

 

「嬉しい……。そう、嬉しいのね、ワタシは」

 

「レン……」

 

 離れてくれそうにもない。気に入ってくれたようなら何よりである。

 

 しかし彼女の事をどう説明しようか。リツコさんやら冬月先生なら色々と知っているから理解してくれるだろうが。

 

 零号機の覚醒なんてシナリオ外のイレギュラーだから、ゼーレが黙っちゃいないんだろうなぁ。

 

 しかも旧劇の世界だろうに、レンはハッキリと擬似シン化第1覚醒形態と言った。そして抑えていると言ったが、彼女の気分しだいで擬似シン化第3形態まで行ってしまうのならその時サードインパクトが起きる。なァにこの強いけど一歩間違うと人類滅びる爆弾兵器。

 

 ──その時、イデは発動した。

 

 とかモノローグで流れますよこんなの!!

 

 それでも彼女に悪気は無いのだから恐がる必要はない。

 

 要するに彼女と上手く付き合えば問題ないというだけなのであるのだから。バスターマシン7号だけど、ノノはノノである様に。彼女は零号機で気分次第でサードインパクト起こせるリリスに等しい計り知れない存在であるのかもしれないけれど、レンはレンとして、約束通り一緒に居続けよう。こうなれば一蓮托生である。

 

 取り敢えず──素っ裸なこの状況で正面から抱き合うのは、あまりよろしくないかなぁ。一応自分も男なワケです。そして相手は極上の美少女です。

 

 旧劇でもなんとなく思っていたけれど、新劇で明らかになったのは。レイって胸の形キレイで、更にアスカより多分ある。

 

『シンジ君! 聞こえてるシンジ君!!』

 

「うえ!? あ、はい、聞こえますよミサトさん」

 

「ちっ……」

 

 いやレンちゃんその舌打ちはお兄さん恐くなるからヤメテ欲しいかなぁ。取り敢えず回線を開く。でもサウンドオンリーで。

 

『……どうして映像回線を開かないの』

 

「いや、そのぉ……今、素っ裸なんです、はい…」

 

 取り敢えず恥じらいを込めた演技でそう伝えて映像回線を開かない理由をでっち上げる。流石に今すぐにレンの事を説明できるわけがない。周知する前に先ずリツコさんか冬月先生に説明してからだ。あの二人ならレンの事も理解して貰える。そしてそこからただの人間のレンとして周知させて貰うとしよう。

 

『…先ずはご苦労様、と言いたいところだけど。どうして通信回路を開かずに勝手に戦ったの? 戦闘中の指揮権限は私にあります。だからアナタは私に従う義務があります。今回は緊急事態だった為に仕方のないところもあるのも認めますが、以後この様な事は無いように』

 

 通信でお叱りを受けてしまった。いや、通信回線開かなかった此方が悪いんだけどもね。テンションMAXで頭の片隅にも無かったとは正直に言っても火に油を注ぐもんであるので。

 

「はい。すみませんでした」

 

『よろしい。それじゃあ、初号機の回収と撤収作業の支援、お願いするわ』

 

「あ、はい」

 

 そう言えば初号機にレイが乗っていたはずであるけど、初号機の事も頭からすっぽり抜けていた。

 

 初号機に歩み寄ると、エントリープラグが排出されていた。

 

「ミサトさん、初号機のパイロットは……」

 

『気絶して、病院に搬送されたわ。シンジ君が間に合ってくれなかったら、今頃どうなっていたか』

 

「そう、ですか…」

 

 これで本当に良かったのだろうか。

 

 やはりレイ1人を戦わせずに、ガギエル戦のアスカとシンジ君が二人で弐号機に乗った様に、自分とレイの二人で乗り合わせてシャムシエルと戦う事も出来たのではないだろうかと。ついそう考えてしまう。

 

 ただ、そうした時、自分はレンとどういう関係になっていたのだろうか。

 

 未だに自分に抱き着く彼女の頭を撫でてやる。

 

「んっ……。なに…?」

 

「いや。なんでもない」

 

 そう、彼女に返して、初号機を見下ろす。

 

「レン、初号機の中、わかるか?」

 

「……ええ。彼を、彼女が守っているわ」

 

「初号機からサルベージは?」

 

「……出来るかもしれないし、出来ないかもしれない。そもそも彼女がエヴァの中に居る理由が理由だもの。彼は返してくれても、彼女は還ってこない可能性もある」

 

「……そうか」

 

 生きていれば何処だって楽園になる。だって、生きているんですもの──。

 

 彼女のその言葉は好きだったが。滅びの運命を迎える人類の、脅威へ立ち向かう為に、我が子を守るために、人間の生きた証を遺すために、エヴァに取り込まれて残った彼女が還ってくることは、もう無いのだろうか。

 

 なら、彼女に会う為に全人類を巻き込んででも突き進むあの人を止めることは叶わないのだろうか。

 

 本物の、シンジ君ならば、あの人を変える事が出来るのだろうか。

 

 親子で釣りをする光景を見た時、どうしてこんな風になれなかったのだろうかと思った。それは例えifであっても。

 

 愛し方がわからず、傷つけるくらいならば遠ざけた。

 

 愛する()の愛を一身に受けた息子が妬ましかった。

 

 それでも愛していた。

 

 それでも、強い生命の鼓動に愛を感じた。

 

 本当に不器用な人である。

 

 初号機を抱え起こしながら、この親子たちはもう少し互いに会話をするべきだったのだと思った。

 

 反対されるからと、夫には告げずに初号機との接触実験を行ったユイさんも。

 

 ユイさんを失った辛さは計り知れないだろうが、愛していたのならば例え不器用な接し方しか出来なかったとしてもシンジ君を手元に置いておくべきだったゲンドウも。

 

 そしてある意味両親の被害者とも言えるシンジ君。彼の場合は精一杯の勇気を振り絞って父と対話をしていたのだろう。シンジ君に関して自分から言うことはなにもない。彼は本当に頑張っていたのだから。

 

 もう少し息子を大切に想っても良いでしょうに。

 

 初号機を抱えて回収ゲートに到達して、地下に戻る。

 

 そういえばトウジとケンスケはどうなったのか。レイが回収された時に一緒に収容されて今はこっ酷く叱られているところだろうか。

 

 EVA射出ターミナルに戻ってくれば、あとは抱えた初号機をケイジに固定して、零号機もケイジに固定。収容作業は終わりだ。

 

 エントリープラグが排出され、L.C.L.が排水される。そしてプラグのハッチが開かれると、整備スタッフを引き連れたリツコさんが待っていた。

 

「あら。お邪魔だったかしら?」

 

「からかってもなにも出ませんよ」

 

「そう? アナタも隅に置けない事くらいあるのではなくて?」

 

「この娘はまた別ですよ」

 

 厚手のタオルケットを受け取って自分と彼女の身体に巻く。

 

「歩ける?」

 

「……難しい」

 

 なんか離れるつもりが今のところ無さそうな彼女の身体を横抱きに抱える。ヒョロっこモヤシのシンジ君の身体にこんなパワーはない。しかし彼女の身体を軽いと感じる程度に力が増えていた。

 

「王子様のご帰還、とでも言うべきかしら」

 

「なんかトゲがありませんか? リツコさん」

 

「さぁ? アナタがやらかした事を隠蔽した疲れじゃないかしら」

 

 いや、まぁ、零号機の事をそのまま広めたら自分は委員会の査問会議にでも掛けられそうであるので、お疲れ様ですとしか感謝を伝えるしかない。

 

「冗談よ。諸々の精密検査がごまんと待っているから覚悟しておいてね」

 

「あ、はい」

 

 そりゃ1回パシャッって戻ってきた人間だ。それにやっぱり気の所為でなく、視線が高くなっているし、声も少し低くなってる。調子としてはTV版の頃と新劇の頃のシンジ君の声の高さの違いに近いか。あと髪の毛が肩に届いている。

 

 まぁ、何はともあれ一先ずエヴァに乗れるという一段落はついたので。

 

「コーヒー一杯飲む時間くらいありますか?」

 

「仕方ないわね。一杯だけよ?」

 

 そうリツコさんに言って、レンを抱えた自分はケイジをあとにする。

 

 ──途中で裸足なの思い出して整備士の人にスリッパ持ってきて貰いました。

 

 なんとも綺麗に締まらないと、我ながらに思いながら、S2機関の影響からか、少しマッチョになった零号機を見る。第一ロックボルトは嵌まっているし、両腕部固定ロックも機能しているものの、あちらこちら拘束具が弾けていたり変形していたりしているのが見てとれる。これ修理大変そうだと思いながら、持ってきて貰ったスリッパを履いて今度こそケイジをあとにした。

 

 

 

 

つづく。


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