化け物を身に持つヒーローになりたかった男の物語   作:黒崎真白

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最低・最悪の最強対とびっきりの最強

「さぁ、始めようか!」

 

 

 それは本気であると暗に示していた。

 先ほどの言葉とは違い、余裕に満ちた声。

 

 

「……っ!!」

 

 

 ほんの少しの時間。かすかに獣嵜から目をそらした。土砂災害ゾーンには一人A組の生徒がいた。

 助けるか否か。本来ならば、助けるべきだ。だが、敵は最強。

 果たしてどうするべきか。

 

 

「助けろ、ここにいられると邪魔でしかない。おい、小娘」

 

 

「……はい」

 

 

 腕を組み、ふてぶしく首を振る獣嵜。

 あの状態だと普段のようすはなりを潜めるようだ。

 隠れているつもりは一切無い。だが、個性の関係で姿が見えないはずではあるのだが獣嵜は気づいた。

 天上天下唯我独尊、森羅万象を治めるものだとでも言いたいのだろうか。それを体現できるほどの力を有している以上なにもいえない。

 

 

 

「葉隠、逃げなさい」

 

 

 圧を込めず、先生として冷静に言葉を発する。

 まだ一年。ヒーローとしての基礎もなにも子供に闘えは無理な話。

 轟、爆豪、緑谷たちの方がイカれていると言えるのだ。

 

 

 

「随分と優しいわね」

 

 

 

「お前との戦いで邪魔が入るのは一番嫌いなのは変わらん」

 

 

 

 確かにと頷きそうになった。

 喧嘩のじゃまをされれば、邪魔した奴を二人して半殺しにしていた。雄英の双璧と称されることが多かった私たちは半ば『腫れ物』として扱われる多く、止めるものは少なかった。それで仲良くなれるほど私たちの聞き分けのいい人間ではない。

 

 

「やろうか」

 

 

 バチバチと力を解放させる。

 踊り子のようにで踊り明かそう。せめて、目の前の友が楽しめるように。

 

 

 

「あぁ、やろうか」

 

 

 

 言葉を皮切りに衝撃波が辺りを襲う。目にも止まらぬ速さで拳をぶつけ合う。

 ヒーローとヴィランという間柄で括られている以上は気軽には会えない。それでも、こうして拳を会わせられることに歓喜に身を震わせられている。

 楽しくてしょうがない。それが二人の総意であった。

 獣嵜は認めた者としか拳を会わせず、ヴィランとして自衛とあっても彼は逃げるだけ。個性が悪と断ぜられるほどに凶悪である以上は人死を見るのは火を見るより明らかである以上は彼自身が個性を使っての蹂躙を好んでない。

 前に個性を使って人を殺したがあれはあの場にいた全員が獣嵜が認めるに値する人間であると認めたからだ。

 それに対する殺問もまた認めた者以外には個性を使わず昔習った格闘技を基本のスタイルとしている。

 無個性ではないのかと囁かれるほどにヒーロー活動において一切、個性を使ったことがない。

 両者ともにめんどくさい性格をしていることだ。

 

 

「こんなものか!!」

 

 

 罵声とともに蹴りを腹に入れられ壁にめり込む。此方は女だと声を大にして言いたいがそれを気にして戦ったことは一度だってない。

 だが、それこそが龍ヶ崎獣嵜なのだ。人を差別せず、ただ人を見る人間。

 

 

「まだまだだ、アーカード!」

 

 

 血の味を味わいながら、吼える。だが、黒い塊によって獣嵜が消え去る。

 

 

 

「大丈夫かい! 守人くん」

 

 

 近づくオールマイト。彼自身はヒーローとしては正しいことをした。だが、獣同士の戦いとしてはやってならない禁忌を犯した。

 命を賭けその愉悦に浸る両者からすればこれらの行動は許されることではない。

 

 

『邪魔を、するなぁ!! 貴様らぁ!!』

 

 

 雷と光が辺りを照らし、怒号が響き渡る。

 そこにもはやまともな思考はない。もはや愛しき存在へとなった者しか目には映ってない。

 脳無は獣嵜に殴られ、空の彼方へと消えさる。

 

 

 

「ちっ。これ以上はヤバイな。黒霧」

 

 

「分かりました、死柄木」

 

 

 

 性格を分かってないのはあちらであったかと侮蔑するような舌打ちをする。

 二人の個性が辺りを更地に出来るのは事前に知っているがこれ以上はそれ以上の被害がもたらすことは明確であった。

 

 

 

「獣嵜!!」

 

 

 

「!!」

 

 

 三度、拳を付き合わせようと地面を蹴り上げる獣嵜を声を張り上げ止める。

 聞ける理性があるかは死柄木も賭けであった。黒霧から聞いた話では二人の喧嘩は正しく嵐を思わせる戦いが普通であると。

 

 

「ちっ、興醒めと言ったところか。また、会おう。チャオ」

 

 

 個性を解き、虚ろのように消える獣嵜。次の瞬間には死柄木の傍らに居た。

 

 

 

「待て、待ちやがれ!!」

 

 

 昔の口調に戻ってしまうほどに昂り、苛立ちが募る。

 久しぶりの本気。だからこそ、こんな結末が許せなかった。

 何故だ、と問いたかった。貴様も本気であったのであろう、なら何故、諦めるように逃げる。

 戦いたいのではないのか。私の体を求めたのではないのか。何故だ? 何故だ? 何故だ? 何故だ? 何故だ? 何故だ? 何故だ? 何故だ? 何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故だ? 

 私では足りないのか。もう足りないのか。もはやこの程度ではダメなのか。

 強さが無いのか。何が足りない。

 

 

「待つよ。お前がヒーローであるならば、俺は俺のままさ」

 

 

 優しく笑みを携える獣嵜。そして、踵を返し穴へと消えた。

 その顔に心に光が灯る。嬉しいと言えるのだろうか。こんな気持ちはよく分かってない。

 

 

 

「……ッッ」

 

 

 声をかけるべきなのだろうか。悪態をついてバカにするべきだろうか。

 だが、こっちはヒーロー。あっちはヴィラン。その差が邪魔をする。

 

 

 

「殺問……」

 

 

 相澤が話しかけてくる。声をかけるべきなのにかける言葉が見つからない。

 相澤自身も二人の戦いはよく見ていた。強く、美しさがあった。この戦いでも目では追えぬ速さでの戦いではあったが二人の顔は容易に想像できた。

 

 

 

「イレイザー、安心して大丈夫。もう、大丈夫だから」

 

 

 

 その声は微かに震えていた。長年付き合いがあるからこそ分かる、殺問の弱音。

 昔は絶対と言っていいほどに弱音を吐くことは無かった。だが、最近はよく弱音に似た失望を溢していた。

 それは何故なのかは相澤には分からなかった。強い敵が居ないからの寂しさなのか、対等に渡り合える者が居なくなったからが故の退屈なのか。

 そもそもだ。殺問が教育職員免許状をとり雄英にいるのも雄英に務めるほとんどが反対を示した。なぜかと言われると元々の素行の悪さが原因である。

 イレイザーヘッド、プレゼントマイク、彼らの一個上の先輩で当時既にプロヒーローとして名を馳せていたミッドナイトは殺問の指導の高さは見ており、獣嵜と喧嘩してないときは時折口が悪くなるが面倒見のいい人柄であった。

 

 

 

「あまり、無理はするなよ」

 

 

 

「ありがとね。あーぁ、あれにもこれくらいの気遣いできる余裕がほしいなぁ」

 

 

 

 勝手に立ち直れるくらいの精神は持ち合わせてはいるがどうしても声をかけられずにはいられなかった。

 その言葉に振り返らずに感謝の言葉を返し、空を見上げる。

 そして、口にしたあれという単語。人を指しているのはそれなりの知性を持ち合わせていればおのずと答えは出てくる。

 そして、『あれ』という人称が誰を指しているのかはNo.ワンのヒーローであることは相澤も分かっている。

 

 

「強かったなー」

 

 

 その言葉が一陣の風と共に空へと消えた。

 思いはいつか、花開く。しかし、それは希望か絶望か。

 

 

 

 

 


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