ガンダムビルドダイバーズRe:RISE Re:Story   作:神の爪牙にして不忠者

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赴く決意

翌日。昨日のガンダムベースでの出来事……モモさん曰く、ガンプラ女子会……は、閉店時間ギリギリまで続いた

 

女性だけということもあって、会話はかなり盛り上がった。中にはあたしの知らない情報もあったりしたし、かなり為になった部分もある。ステアさんとカナリさんの所属するフォース、アークエンジェルズが、リアルも女性で構成されている200位以上ランクのフォースだと知った時は驚いた。そんな2人と会った事もあり、あの時作ったルプレクは、何気にSEEDの戦艦であるアークエンジェル風のカラーリングで仕上げる事になったりする

 

しかし、中でも一番驚いたのは、モモさんとアヤメさんの2人が、まさかあのビルドダイバーズの一員だと知った時だった。リクとサラの話題になった時に言っていた事で、此れにはびっくりした

 

やっぱり、周りからはあの2人の事は砂糖発生器だと思われているみたいなのは、共通認識だった。でもあのモモさんとアヤメさんの2人はその辺の認識が無い。どうやら毎回一緒にいるからか、完全に慣れてしまっている様子だった……慣れって怖い

 

因みに、あたしが今入っているBUILD DiVERSの事は、ちょっと隠しておいた。例のあのエルドラの件もあるし、これについて関わる事は、出来る限り今日おじさんと話すまでは伏せておいた方が良いと思ったから……

 

 

 

そんな女子会に名残惜しさを感じながら、その日の夜は姉の住むマンションに泊まり、そして今日、おじさんの所へと姉の運転する車に乗っていた

 

 

「……」

 

 

そんな帰り道、あたしはずっと昨日の事を思い返していた。ガンダムベースの事。リアルでのヒロト、カザミ、パル、メイの事。シドさんの今の状態の事。そして、ゲームのイベントだと思っていた事が、実は全てリアルであったかもしれないという事を

 

特に、エルドラの事……昨日、言われた後はあまりの情報量と、理解出来ない部分、そしてその内容の衝撃で、あまり考える事はせず、棚上げにしていた

 

でも、一晩明けて、少しは余裕が出来たから、やっと言われた内容を整理出来た。理解出来ない部分はあるし、納得してないとこだってある

 

 

「どうする。か……」

 

 

メイの言葉が浮かぶ。今後の事を、自分達の次は、どうするのかを……正直な所、あたしは迷ってる

 

エルドラがリアルなら、あそこに住う人たちは皆、今もなお生きている人達だ。フレディやトワナ、アシャ、フラン、マイヤ……その人達は、今もなおヒトツメの脅威にさらされている。それを見捨てる事なんて、出来る訳がない

 

あと、エルドラが本当にリアルなのか。どうしてGBNを介して行く事が出来たのか。あそこであたし達はなぜ、ガンプラと共に現実に実体化出来たのか。あのヒトツメは、なぜデスアーミーにドートレス、そしてグレイズを模したものなのか。なぜシドさんが、あそこであのような事になっているのか……なぜ、エルドラにビルドダイバーズの名が知られているのか

 

それら、幾つかの謎がある。知らない事を、知らないままにしておくのは嫌だし、気になっている。だから、ソコをまず解明したい……

 

そして、ほかの皆。多分だけど……皆、行くと思う。メイはシドさんの救出の為に行くだろう。そういう感じの雰囲気してたし。パルも、あの三人組とも仲が良いし、それにあの村の人達と最も深く接していたので、ほっとけないと思ってそうだし。カザミは……あんなこと言ってたけど、あそこの人達のために行くと思う。アイツ、意外と気にしてるっぽいし

 

ヒロトは……うん、行くだろう。誰かの為に、何かをしてくれる人だから、ね……

 

だから、あたしも行くべきなんだろう……

 

 

 

 

でも……行ったところで、無事に帰ってくる保証はあるの……? だって、あのシドさんが、あんなことになってるんだよ? リアルでは病院で意識不明で眠っていて、意識は、エルドラでヒトツメになっている。もしかしたら、洗脳ってやつ? をされているのかもしれない……

 

あの人の強さを知っている。今のあたしたちでも、束になって掛かっても、勝てるかどうか怪しい……そんな人が負けて、あんな事になって……もし、あたしが同じ目にあったら……

 

 

「……どう、しよう……」

 

 

決められない。行きたいけど、不安が立ちはだかって、一歩が足りない……どうしたら……

 

 

「はぁ、さっきからブツブツと……アンズ、少しは静かにしてて欲しいんだけど」

「ん、あ、ごめん」

 

 

色々と考えていたことを、つい口から漏れていたみたいだった。車を運転しているお姉ちゃんから突っ込まれた

 

ツキザト・イチゴ。東京の大学を今年の春に卒業して、そのまま東京で地元の名産品を販売しているアンテナショップを、大学で同じ地元の同級生達で経営している人だった。今回はお姉ちゃんが東京に住んでて助かった……ちなみに、ガンプラに関しては全くの興味なくて、あたしがガンプラ好きなのをあんまし快く思ってくれってない

 

 

「全く、なんで制服着たまんま東京まで来たんだか。サクラギのおじさんからは、理由は聞くなって言われてるし……」

「……まぁ、ちょっとね……」

「ふ~ん。まぁ、別にどうでもいいけど」

 

 

だからか、あたしに対しては少し口悪い感じに接してくれるけど、いきなり東京にきたあたしを理由を聞かずに泊めてくれたり、こうして車に乗せてくれたりするので、まぁ仲はそこまで悪くはない

 

そんな姉と共に……あたし達の実家まで、車を走らせていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車で走ること、約四時間。一度着替えと荷物をとりにいく為に、今あたしが住まわせてもらっているお母さんの実家に寄って、昼過ぎに、あたし達はようやく実家のある街へと入った。そして実家……ではなく、おじさんの家へと向かった

 

最初からお互いに目的地はそこだし、もうお父さんもお母さんもおじさんの家に行ってるみたいだった

 

そして、おじさんの家に……この町の中でとりわけ一番広く、大きな家へと到着した

 

 

「よぉ、わざわざ悪かったな、イチゴ。そしておかえり、アンズ。」

「おひさしぶりです、サクラギさん」

「こんにちは、おじさん」

 

 

玄関へと入っていったら、おじさんが……サクラギ・タイアンさんが待っていた

 

サクラギ・タイアン。お父さんの会社の上司であり、あたしにとってガンプラの師であり……あたしの安価スレの中で唯一のコテハンでやっている、安価ダイバー応援団長、その人だ

 

この辺りの土地の所有者という大地主であり、今はサクラギリゾートグループというグループの会長を勤めている人だ

 

 

「長旅で疲れただろ。どうだイチゴ、ひとっ風呂入っていくか?」

「あ、じゃぁお言葉に甘えて、いただきます」

 

 

あたしが中学に上がる前までは、サクラギ採石所という自分の持っている山を削って墓石や石畳用の石を採ってそれを売ってた会社の社長をやっていた。だけど、あたしが中学に上がる頃、採石所の地下に温泉の源泉があることが判明し、それを自社で掘り当てたことで、その経営方針を採石から一転して温泉街の経営へと変え、この辺り一帯をリゾート地へと変えたなかなかに大胆な人だ。おかげでこの町は今や温泉街として名を馳せており、大勢の温泉客を迎えることで発展を遂げるに至った

 

その温泉街の全てを取り仕切ったり、温泉の権利なんてものを持っているから、その収入でそうとう稼いでいるらしく……かなりの富豪な人物になっている。だからか、GBNのスポンサーをやってたり、運営会社の株もそれなりに持ってたりする

 

姉がやってるアンテナショップに色々と手伝ったりしてたようで、姉的には大恩人ということらしい……だからか、おじさんには頭が上がらない、らしい

 

ちなみに……見た目がなぜか、老成した三日月・オーガスに似ているのが、なんとなく気になっているところだ……でも服とか雰囲気とかが、テイワズのマクマードの方に似てるので、なんだか妙なミスマッチ感を感じてしまう

 

 

「さて……立ち話もなんだ。親に挨拶したら、何時も通り、庭の蔵に来い」

「……はい」

 

 

そうして、おじさんとの挨拶がすんだら、おじさんの奥さんと一緒に料理を作っていたお母さんと、今だに仕事をしていたお父さんのところに行って、そのあと、庭にある土蔵のような建物へと向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

おじさんの家の土蔵、そこはおじさん専用のガンプラ用の建物であった。高価な機材や工具、塗装ブースと、あのガンダムベースの制作スペースばりの環境があったり、おじさんが制作した多数のガンプラが並んでたり、お店の在庫かとおもうレベルの積みプラの数があったりもする。そしてなにより一番目を引くのは、GPDの筐体だ。これがあるので、すぐに制作したガンプラの動作テストができると言っているので、定期的にメンテナンスしているようだった

 

 

「すまなかった」

 

 

この部屋に入ってそうそう、おじさんはあたしに対して頭を深く下げて謝罪してきた。理由は当然、いきなり東京まで連れていかされ、そこで性別バレまでされるということを招いたことに対して、だ

 

まぁ、確かに急だったし、しかも学校の登校中だったし、おまけに首都圏まで行くことになったし……みんなと、リアルで対面することになったのは、正直怒ってもいいと思う。けど、みんなと出会って受け入れられて、そしてガンダムベースに行って、あたしと同じ人が大勢いるという事実を知ることができた。だから、逆にあたしの方が感謝してるぐらいだ

 

 

「謝らなくていいですよ。東京に行って……みんなと出会えたことは、決して悪いことではなかったですから。その……あたしが女だと知っても、みんなはそれを受け入れて、くれましたから」

「っ……そう、なのか……?」

「はい。ですから、どうか頭をあげてください」

「……そうか、そうか……良かった……彼らが、受け入れてくれる者達で、良かった……」

 

 

受け入れてくれた。その言葉を聞いて、おじさんは安堵していた。おそらく、リアルで出会って、どんな仕打ちをされたのかを気になっていたようだ。でも、それが予想してたことの真逆だったことに、すごく安心したようだった

 

 

「……っていうかおじさん、運営からいろいろ聞いていたって言ってましたけど……いったいどこからどこまで何ですか?」

「あ、あぁ……運営から聞いたのは、シドー・マサキの現在と、それについてメイというELダイバーに捜査協力を依頼したということだ。あとは、まぁお前さんがスレcで報告していたことだけだ」

「なるほど。つまり、エルドラとか、そういうのは聞いていないということなんですね」

「あぁ。昨日の電話で、初めてその単語を聞いた……それで、どうなったんだ? 一昨日のストーリーミッションは。なんかそれの影響で、あの大規模電波障害を起こさせてしまったなんて言ってたが……」

「そう、ですね……とりあえず、その前に出てきたあの軌道エレベーターの所から、かな……」

 

 

 

 

 

しばらく、あのラストミッションのことについての説明と、衛星兵器のこと、そこで会ったアルスとかいうやつのこと、実際に戦ったシドさんのこと、そして衛星砲を打たれた後のこと……エルドラのことを、記憶しているところを余すところなく、説明した

 

そこから、昨日直接会った現在のシドさんのリアルの現状と、衛星砲が打たれた後に電波障害が起きたことなど、色んな事を全てを加味した結果、エルドラがリアルではないかという仮設が出たこと

 

そして……今後、どうするのかを……行くのか、行かないのか、ということを……

 

 

 

 

 

「……なんか、ファンタジーを通り越したことになってんだな、今」

「そうですよ……まともに考えようとすると、頭がおかしくなりそうですよ……」

 

 

聞いた感想は、やはりファンタジーなことになっているということだけだった。まぁ確かにその通りなので、他に言いようが無い

 

色々とありえないことを言われて、少し険しい表情をするおじさんだったが、すぐに考えを振り払い、あたしの目を見つめてきた

 

 

「ところで……お前は行くつもりなのか、その……エルドラ、というところに」

 

 

やはり、問うてくることはそれで……間違いなく、一番気にしている部分であるのだろう。ヘタをすると、命の危険性が孕んでいるのだから……そんな所へ、人の子を……ましてや自分の唯一の弟子とも言える大切な子を、そんな死地に赴くことなど……本人としては、止めたいと思っているんだろう

 

 

「……正直言いますと、行きたいという気持ちはあります」

「っ」

 

 

でも、それでも、あたしは今の気持ちを直接伝えた。あの星のことを、放っておけなかったから。皆が行くと思っているから、あたしだけビビって隠れるようなことはしたくないし……

 

 

「みんなと……みんなの為に、あたしは行きたいと……そう、思っています。けど……」

「けど……なんだ?」

「……シドさんが負けたほどに強い奴らと戦って、勝てるのかどうか……下手したら、二の舞になってしまうんじゃないか、とか……そう、考えているところもあるので、あと一歩が踏み出せない。そんな感じ、です……」

 

 

やはり、考えてしまうのはシドさんのこと。あの人の強さを知っているがゆえに、そのせいで一歩が踏み指すことができないでいる……多分、行きたい気持ちが一番だんだろうけど……でも、もしもということが引っかかってしまう

 

 

「……なるほど。そういうことか……」

 

 

それを見かねたおじさんは……ある一つの方法を提案する

 

 

「なら、あいつらを使えばいいだろう」

「あいつら……あ」

 

 

その一言で……おじさんが言わんとしていることが理解出来た

 

つまり……あのスレを使えと、そういうことなんだと思う

 

そういえば、電波復旧してから、あのスレを見てなかった……関東行ったり、みんなと会ったり、色々と考えてたりで、見に行く余裕無かったな……

 

 

「今晩でも聞いてみろ。あいつら、復旧してから、ずっと掲示板に張り付いているみたいだしな」

「そう、ですね、行ってみます」

 

 

あいつら……まだ掲示板にいるかな……


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