男性Vがコラボするってよ【完結】   作:TrueLight

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【今日も一人で】マ〇クラG・I【宝くじ】①

「こんヒビキー。VSの(あかつき)ヒビキでーすよろしくー」

 

 配信画面にアニメチックな学生服を着た茶髪イケメンキャラが映し出されたことを確認して、俺はいつものように生配信を開始した。

 

コメント

    :雑で草

    :やる気あるんですかぁ?

    :早く同期コラボしろ

    :ひどいコメを見た

    :今日何するん?

 

 SNSで告知してたこともあり、待機してたファンがすぐに暖かいコメントをくれる。暖かすぎて血管が沸騰しそうになることもあるが。

 

「コラボ? 同期? 知らない言葉だなぁ……がいこくごかな?」

 

コメント

    :脳内から削除するな

    :ヴァーチャルシップでコラボしてないのお前だけやぞ

    :一期生の先輩に凸して♡

    :もう一期生って言い張っちゃえよ

 

「うるせーい! 俺だってしてーですよそんなもん!」

 

コメント

    :言ってしまいましたね

    :はい言質

    :他のライバーと繋がりたいって言いました?

    :拡散不可避

 

「はい知ってたー! すーぐ俺のこと直結野郎にしようとするよね! 良いもんね、一人でもゲームは出来るもんね!!」

 

コメント

    :泣かないで;;

    :ゲームって本来一人でやるもんだしな!

    :同類いて草

    :男性Vは直結野郎ってはっきり分かんだね

    :先輩はお引き取りください

 

 ヴァーチャルシップ、通称VS。俺が所属している複数のVtuberを擁する事務所だ。現在四期生の募集をかけていて、組織的には順調と言えると思う。俺の存在を除いて……。

 

「なんで男性V増えないの……? 楽しいよ……? 一緒にヴァーチャルの世界で遊ぼうよ……」

 

コメント

    :草

    :崖っぷちで手招きするのやめてください

    :なんでそこで勇気を出してしまったのか

    :企業が募集する野郎ライバーとか地雷もいいとこなんだよなぁ

 

 そうなのである。この界隈、どこを見渡しても女の子ばかり。いわゆる個人勢には男性も居ないことはないが、その辺とコラボというのは企業としても慎重にならざるを得ないのね。

 

 他の企業がやってないことを率先してやってこそ大成功を得られると考えたらしいVSは、上手く軌道に乗った一期生に続いてVtuberを募集したのだ。それが二期生……つまり俺です。

 

 募集枠は男性限定(・・・・)で三人だったのだが、俺以外は一件も応募が無かったらしい。選考で落としたとかじゃなく、マジで俺以外来なかった(・・・・・)のだ。ぶっちゃけ男性Vグループ作ろうとして失敗したのである。

 

 まぁ……募集がかかったのと同時期に別企業でデビュー予定だった男性Vの卵がやらかして、男性Vって存在自体にネガティブなフィルターがかかってたのは間違いない。当時の俺はそんなこと知らなかったんだけどね……VS一期生のファンだから応募したんだし。

 

 つまり現在、俺は企業Vtuber界隈唯一の男性Vであり、かつ同期が一人も存在しない孤高の存在であり、他ライバーとのコラボとはつまり男女コラボなので先方ガチ恋勢に叩かれることを意味するのである!

 

 燃えたくない!

 SNSで叩かれたくない!

 でもコラボしてみんなみたいにキャッキャしながらゲームしたい!

 でもでも俺が炎上して相手に迷惑かけらんないから誘うことすらできない!

 

 詰んどる。コラボしようと言えば、してくれる女性Vは間違いなくいる。むしろ持ち掛けられたこともある。でもね、気軽に受ける訳にはいかんのや……事務所(おかみ)にも慎重に行動してね、って言われてるし。

 

「寂しいよう……」

 

コメント

    :強く生きろ

    :俺らで我慢しろ

    :ホモォ……

    :なんでや女の子リスナーかも知れんやろ!

 

 確かにリスナーの存在はありがたい。一切コラボが発生しない(できない)状態の俺にとって、リスナーとは唯一の話相手なのだ。でも君ら、マルチで募集かけると僕のこと真っ先にボコすじゃん。つらいお?

 

「もういい、うじうじしてても始まらん。ゲームするぞー!」

 

コメント

    :始まった

    :空元気系Vtuberええぞー

    :ゲームってまたマ〇クラ?

    :MODのせいで別ゲーだけどな

    :G・Iちゅき♡

 

    :もうあきらめたほうが良いと思うよww

    :実際ヒビキのシード値きつ過ぎる

    :一人だし

    :宝くじ配信はここですか?

 

「キツいのは俺が一番知ってんのよね……って誰が空元気系じゃい!」

 

 コメントに適当に返しつつ、起動したゲームはみんな大好きマ〇クラ。多くのVtuberが愛用しているゲームでもある。そうだよね、マルチしやすいもんね……。新しいメンツとならバニラ(MODという追加要素を入れない基本仕様)でもいくらでも遊べるし……。

 

「今日こそ"一坪の海岸線"ゲットしてやるからな! 見てろよ!」

 

コメント

    :マジで応援してるw

    :というかいい加減終われ

    :あと一枚で終わるって言ってから二週間が経ちました

 

「しゃーないでしょー! ドッジボールイベント発生しないんだよぉ!!」

 

 ここまでのコメントで、初見さんやROMってる人にも分かったんでなかろうか? 俺がやってるのはマ〇クラの神MOD、その名も"マ〇クラG・I"。某有名週刊誌で休載しまくってる超有名コミックに出てくる架空のゲームソフト、「グ〇ードアイランド」をモチーフに作られたMODだ。

 

 ワールドはマ〇クラ規格の最大拡張マップ16枚分に固定され、ランダムに大陸が生成される。その中にはマンガ中のゲーム内で描かれた多数の街や村、イベントが発生するが、これもシード値(マ〇クラの世界を作る時に入力する文字・あるいは数字)によってタイミング、場所はランダムだ。

 

 ゲームの目的は"指定ポケットカード"の収集。原作では全100種ものカードを集める必要があるけど、このMODにおいては一人9種類で良い。マ〇クラにはインベントリが9×4で36枠あるんだが、その最上段一列が指定ポケット扱い。その下二列がフリーポケット。残りの一枠は普通に荷物を入れるとこだ。G・I風に言うとゲイン(カードをアイテムとして実体化すること)したブツがそのまま使える枠だね。あぁそうだ、呪文(スペル)カードを使うときも一時的にここに入れることになるけど。一定時間入れたまま使わないと消えちゃうんだよね。

 

 まとめると、インベントリの最上段一列を埋めたらクリアってことね。ちなみに、そこに指定されたナンバーのカード以外を入れると消滅しやがる。これは地味にひどい仕様だ、なにせクリックミスでレアカード入れちゃうと消えるんだからな! さらに補足すると、ワールドにプレイヤーが入った時点で指定される9種類のカードナンバーは重複なしのランダムだ。

 

コメント

    :いつの間にか金貯まっとるがな

    :じゃあすぐマサドラか

    :ソロで指定ポケットの番号にNo2が見えた瞬間ワールド削除なんじゃがなぁ

    :よう続けとるわ

 

「金は裏作業中に貯めました。お察し通りマサドラ行くよー。一坪の海岸線(No2の指定カード)はホラ、原作ファン的にはどうにかして取りたいじゃん? ってわけで……同行(アカンパニー)オン! マサドラへ!!」

 

コメント

    :同行www

    :あかんwwアカンパニーはあかんwww

    :毎回ここで草生える

    :同行の意味知ってますか?

 

「これしかないんだからしゃーねーだしょ!!」

 

 複数人を指定した街へ同時に移動させる呪文(スペル)カードを発動し、俺は目的の街マサドラへ。ここは唯一呪文カードを購入できる街で、ここを早めに見つけられないと詰むことも多い。アバターが光に包まれ、ビューンと一直線に空を飛んでいく様はなかなか爽快だ。この間は無敵で呪文攻撃も受けない。一人でも大丈夫! アバターの周りをキラキラ舞う輝きが涙でないことを願いたいね。

 

 今回の目的は魔法都市マサドラで呪文カードを購入すること。TCGプレイヤーなら馴染み深いかな、一パックランダム三枚入りで10000J(ジェニー:ゲーム内通貨)。ここで宝籤(ロトリー)という呪文を入手したいのだ。こいつは使用するとランダムで別のカードに変わる。ランダムなので、なんと指定ポケットカードに化けることもあるってワケよ! 仕様により俺の残る指定ポケットカード、"一坪の海岸線"はソロだとこの方法でしか手に入らない。泣ける。

 

「よーし到着わよー」

 

コメント

    :到着わよー

    :このMODってバニラのアイテムあんのかな

    :あるぞ。しかもカード化できるぞ。エリトラがゴミと化すぞ

    :せやろなぁスペル使ったほうが早いし

    :他のアイテムもそんなもんやろw

 

 リスナーと戯れているうちにバシュゥッと着地音。目の前に広がるはマサドラの入り口……うん?

 

コメント

    :あっw

    :まぁ湧くよね

    :飛んでるうちに夜になったか

    :ゾンビ3体はヤバいぞ

 

 視聴者がコメントしてる通り、俺がマサドラに入るのを妨げるように見慣れたマ〇クラのゾンビが三体。

 ただのゾンビと侮るなかれ、MODの恩恵をしっかり受けているこいつらはなんと……。

 

投石(ストーンスロー)使ってきたーー!!」

 

 スペルを撃ってきやがるのだ! お買い物を前に、三体のゾンビとの戦闘が始まった!!

 




別作品の息抜き程度に更新する予定。
作者は全然Vについて詳しくないです。他作家様方のVtuberモノ見て書いてみたくなりました。

言うまでもないことですが作中のG・IMODは作者の妄想です。存在しません。

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