「どこだぁあああ犬ッコロォオオオオオ! 出てこいやァアアアア!!」
『お願い……! 何か出て……!! 出して……!!』
コメント
:えっちだ……
:野郎がうるさ過ぎて使えないw
:使 う な
:借金取り893VS祈る聖女VSダークライ
タイムアップが迫る中、勝負が拮抗してる俺と大島さんはなりふり構わず指定ポケットカードを探していた。ダイヤ剣なんて持ってたから予想していたが、大島さんのクリア条件には宝石系のカードが含まれているんだろう。配信開始直後の、見つけたらOK発言にも当てはまるしな! なもんで絶賛
俺はと言えば、叫んでいる通り
「ちぃっ、牛羊豚は居やがるのにオオカミだけ見つかんねぇ……!」
『っ、やったエメラルド! お願い……あぁ出ないよぉ~~っ!!』
ヤベェ、大島さんがそれっぽい反応するたびにドキッとするぜ……! 今のは"美を呼ぶエメラルド"チャンスだったのかな? バニラのエメラルド鉱石から確率で出る指定ポケットカードだ。運悪く外したらしいね。
コメント
:五分切ったぞ
:キリちゃんがんばって!!
:めっちゃ熱いなぁw
:なんやかんやギリギリまで競ってるのいいわ
:どっちが勝つにせよ決着は付いてほしいねぇ
:宝石系出やすいイメージあるけど、普段は時間かけてるからそう感じるだけなんだろうな
と、俺と大島さんの接戦に盛り上がるチャット欄。よーしよし、このコラボ自体は大成功だったなぁ! あとはどうオチをつけるかだな……思考が芸人のソレですねぇ!
そうして間もなく迫る終了時間にハラハラしていると、どうやら運は俺に味方したらしかった。この状況にピッタリの要素が二つ! 地上を走り回って新しく読み込んだ
「くっくっく、さぁ運命の時だ! 大島キリよ、この群れに犬ッコロが居ないことを祈るんだなぁ……!!」
『なっ、オオカミの群れ!? 出ないでお願いお願いお願いお願い……!!』
コメント
:本気で祈ってるww
:決まるか?
:やだーキリちゃん勝ってー!!
:キリちゃんにどうせぇとww
大島さんが早口に唱え、コメントが決着の気配に加速する中。俺は手元の金インゴットをオオカミの群れの中心に放り投げた。すると……?
「おやおや、めんこいねぇ。ほらもっとお食べぇ? そうさな……名前は"シルバー"なんて付けちゃおっかなぁ!?」
『きぃゃああああああっっ!?』
コメント
:やべぇ声出てるぞww
:キリちゃん負けちゃったかー……
:これで終わりなの?
:まだちょっと時間あるけど、向こうのテンション的にクリア条件の三種だろうから終わりやね
:ブラフワンチャンあるから!
:確かに、一応お互いのカード確認するまではなんとも
「ふっはっは!! まぁリスナー諸兄の言う通り? 俺が嘘をついているかも知れんしなぁ? どうだ、落ち合って確認するか? ん?」
『ぐぅぅ……っ! そうねぇ……! 配信的にもその方がみんなに伝わりやすいでしょうしねぇ……!!』
コメント
:おいたわしや……
:死ぬほど悔しそう
:キリちゃんこのゲームガチ勢自称してるからなぁ
:向こうが変態過ぎたんや
うーむ……OK! 俺が勝つとなっても、コメント欄は荒れてないな。……しかし、それだけじゃあダメなのである。今までそういうコメしてた人たちは黙ってるだけなのかも知れないからね。そういうリスナーにも、少なくともこのコラボは『悪くなかった』と思ってもらいたい。これからの流れ自体は、それはそれで言い争いの種になるかもだけど……男女コラボの燻りに比べりゃあなんてことないだろ!
「ではスタート地点で合流だ! 共闘前に掘ってたくらいだ、そちらは近場だろう? 俺が到着するまでは採掘してて構わんぞぉ? ぬぁーっはっはっはぁ!!」
『ギリギリギリギリ……!!』
大島さんが歯ぎしりするのを聞きながら、俺はゲーム内で空を仰ぎつつスキップする。
「ふんふんふーん♪ 見てくれ画面の前のリスナーたちよ! 空はこんなにも美しい!! まるで俺様の勝利を讃えているかのような……あっ。あっ、アッ! あぁああっ!!」
『……? え、なに?』
コメント
:腹立つなぁw
:ふんふんちゃうぞフン野郎
:糞野郎で草
:ん?
:なんだ?
:うっさw
ばしっ、ばしっ、ばしっ。特有の弾けるような音が一定間隔で鳴り響き、それに合わせて俺は声を上げる。演技臭くはなってないと思うぜ、なんてったって数えきれないほど同じ目に遭ってきたからなぁっ!!
そして数秒後、俺のゲーム画面左下。大島さんの画面にも同じメッセージが届くのであった。
"vshibiki は溶岩遊泳を試みた"
『はっ?』
コメント
:えっ
:はぁ?
:wwwwwww
:何しとん
:全ロス?
:こ れ は ひ ど い
俺のキャラは上を向いて走っていたので、足元の溶岩溜まりに
「……はい。というわけでね、皆さん今回のPVPコラボいかがでしたか? いやぁ熱戦でしたが、勝者はこの暁ヒビキということでね!」
『いや、ちょ……はぁっ!? 何してんの!? 何してんのアンタ!? えっ……マグマダイブしたってことっ? アイテムは!?』
コメント
:はいやったー
:さすがヒビキ!マヌケ野郎だぜ! ¥2828
:どうせ調子こいて地上のマグマ落ちたんやぞ
:アーカイブ残しますよね?w
「あ~……あれ、これちゃんと録画出来てない系? あぁいやアイテム? うん無事っすよ? 何となくチェスト作って入れてたんで? 無事っすよ? うん」
『嘘つきなさいよ! 合流するのにアイテム置く意味無いじゃない!!』
コメント
:最初にアーカイブ残すって言ってましたよね!
:はいこれ録画代 ¥10000
:ヒビキの活躍見に行くね♡ ¥20000
「ちくしょぉおおおっ!! なんでマグマ池あんだよっ!? 周りの木とか燃えてなかったんだがっ!?」
コメント
:化けの皮はがれて草 ¥250
:オオカミ湧かせるためにチャンク読んだばっかだからでしょw
:空がどうの言ってるからやぞマヌケ
:ヒビキの勝利を讃えた空はどんな色なんやろなぁ? ¥8888
:そりゃ真っ赤でしょうよww ¥763
『えっ、これどうするの? 勝負はっ?』
「……まー、判定的には俺様の勝利なのでは? 先に三種集めた方の勝利ぞ?」
コメント
:結果無くしてんだから負けに決まってんだろw ¥490
:コンプチェックのための合流段階で死んだしなぁ
:アーカイブの確認は今出来ないし、ヒビキの負けっしょ
:やぁ良い勝負だった ¥888
:キリちゃんおめでとー!!
:大方の予想通り炎上しましたね! ¥2000
「はい僕の負けでーす! やぁ大島さんさすがだなぁ! リスナーさんも言ってますよ! 燃えるようなアツいバトルだったって!!」
『ざけんじゃないわよーっ!! んぁあ~~もぅ……! なに? なんなのっ? なに大事なとこで死んでんのっ?』
「いや、その……ハイ! すんませんっ!!」
コメント
:ガチ謝りで草 ¥370
:キリちゃん的にはなぁ
:試合に勝って勝負に負けた感
:まぁキリちゃんの勝ちでしょ!向こうも言ってるし!!
:せやな!キリちゃんおめ!ヒビキはなんで負けたか明日までに考えといてください ¥10000
:じゃんけんパイセン!?
『くぅ……アイテムは、無いのよね?』
「ウッス。全ロスしましたッス。ウッス」
『……はぁ~~……。はいじゃあ決着! マ〇クラG・I対決、アタシが勝ちました! やったー!』
コメント
:全然嬉しそうじゃないww
:ヤケクソ感w
:ぜーんぶヒビキが悪い ¥5353
:間違いないww ¥250
『でもっ!! アタシはぜんっぜん納得してないからっ!! いい!? 絶対また勝負しなさいよっ!? 勝負の途中ならともかく、終わってから死ぬなんて冗談じゃないんだからねっ!?』
「ウッス! 自分、また挑戦させてもらいたいッス! ウッス!!」
『みんな、今日は応援ありがとう! 今回はこんな感じで勝ちを拾ったけど、アタシは不本意だからねっ? もっと腕を磨いて、今度は実力で勝って見せるから! また、応援してね?』
コメント
:もちろん!
:キリちゃんは気高いねぇ ¥5000
:それに比べてヒビキとかいう輩はよぉ
:おいヒビキ逃げんなよテメー ¥10000
:普段見れないキリちゃん見れて楽しかったよ!
:それはあるw
:コラボの時は大体キャリーしてるからなぁ
:ガチキリちゃんまた見たい
:はい再戦代 ¥20000
「そのスパチャ一切俺に入らないんだけど……あっ、嘘ッス。謹んでまたお相手致すッス。ウッス!!」
『はいっ! ということで、今回お呼びしたのはヴァーチャルシップより! 暁ヒビキさんでしたーっ!!』
「改めて、お招きありがとうございました!! リスナーの皆さんね、申し上げました通りアーカイブ残しますんで! 良かったら見ないでくださいねっ!!」
コメント
:良かったら見ないでは草
:良くないから見ます^^ ¥2525
:コメント欄で煽り散らかすからな ¥1000
「君らに人の心はないんかね?」
『ではでは時間も押してるのでっ。おつキリーっ!』
「あっ、お、おつキリー!」
コメント
:おつキリー
:おつキリー
:早くアーカイブ上げてね♡ ¥2000
:ヒビキ視点楽しみだなぁ ¥5000
:おつキリー
「ふぅーっ……」
無事に大島さんの配信枠が終わったことを確認して、俺はいつもの癖で伸びをした。すると。
『ねぇ、ちょっといい?』
「あっ、はい。なんですか?」
通話がつながったままの大島さんから声がかかった。そらそうや、こっちはこっちで解散せんとね。
『……その。最後なんだけど……』
最後? 配信の終わり際、何かあったっけな……再戦のことかな?
「またPVPってことなら是非! 今日は凄い楽しかったです!」
『そうじゃなくて……まぁ、良いか。そうね、次また戦えばいいだけよねっ!』
? 何やら分からんが、大島さんの中ではケリがついたらしい。それもマジでまた呼んでもらえるのか。嬉しいねぇ……。
「はい! 楽しみに待ってますね! 俺も腕落ちないよう練習しとくんで!」
『……ねぇ、その口調なんなの? 配信中はもっと、なんていうか……フランク? だったのに』
「いや、そりゃあ大島さんがすぐに"戦おう"なんて言うから、そのノリで……。事務所が違うって言っても、俺からすりゃあ大先輩ですし」
『いやそういうの良いから! アタシとアンタはライバルなのっ! アタシがそう決めたの! いいっ!? 今度は
「そういうつもりは無かったんですけ……だけど。分かった、俺もコラボでずっと敬語とか緊張するし。これでいいんだよな?」
『ええ! いい? ぜっっっっったいまた誘うからねっ。首洗って待っててよね?』
その言葉に、思わず俺は笑みを浮かべた。あぁ、いいなぁ……。こんな風にガチバトルできる相手なんて、そうそう居ないよなぁ。それも同じV、3D化もしてる大先輩だ。最終的なリスナーの反応も悪くなかったし……SNSとか配信後のエゴサも必要になるだろうけど。
俺もようやく、Vtuberの輪ってのに本格的に加われたような。そんな感覚に包まれていた。
「もちろん! 次は正真正銘、俺も大島さんも視聴者も! 全員が納得する勝者を決めよう! 約束だ!!」
『ええっ、約束よ!! ……ところで、大島じゃなくて、キリでもいいのよ?』
「それは……ほら、まだいろいろ怖いから」
『怖い? 何が?』
「いや分かるでしょ? ボク男、アナタ女。オーケー?」
『ふーん……ヘタレ』
そこまで言うと大島さんは、一方的に通話を切りやがった。……なんやこの女ァ!! ……ま、いいさね。大先輩とはいえ、大島さんは例の事件の被害者じゃないからな。直接コラボ依頼してきたこともあって、この辺のリスクは実感できないのかも。
これからも、その辺は俺が考えればいいことだろう。そうやってフォローするのが全く苦にならないくらい、楽しいコラボに誘ってもらえたんだから。
今から待ちきれないくらい、大島さんとの再戦が楽しみだ。
以下二人の指定カード。9D100でそれぞれ決めました。
98(S)シルバードッグ
94(S)盗賊の剣
66(S)魔女の痩せ薬
64(B)魔女の媚薬
46(A)金粉少女
40(B)超一流ミュージシャンの卵
31(S)死者への往復葉書
22(A)トラエモン
8(S)不思議ケ池
89(A)税務長の籠手
79(A)レインボーダイヤ
78(B)孤独なサファイヤ
73(A)闇のヒスイ
65(S)魔女の若返り薬
54(A)千年アゲハ
43(B)大ギャンブラーの卵
25(B)リスキーダイス
8(S)不思議ケ池
被ってる不思議ケ池も触れたかった……