男性Vがコラボするってよ【完結】   作:TrueLight

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【再戦!】マ〇クラG・I【スペルバトル!】①

『わかってんでしょうね?』

「ウッス! 自分心得てるんで。しっかりやらせていただきやすウッス!」

 

コメント

    :おはキリー

    :待ってた! ¥250

    :またよくわかんないこと言ってる

    :ツンツンキリちゃん助かる ¥30000

    :マグマダイブニキちっすちっすw

 

『みんなおはキリー! サクラフィ所属の大島キリですっ。あ、赤スパありがとねっ! 告知してた通り、マ〇クラG・Iコラボ第二弾ということでっ。今回もコイツ呼んだよー!』

「コイツて。雑じゃないスか?」

 

『え? なに、文句あんの? マグマダイブニキさん』

「アッ、いや無いッス。サーセンした! ってことでね、またお邪魔しますー。ヴァーチャルシップ二期生、男性Vマグマダイブニキこと暁ヒビキです!」

 

 ついに配信が始まり、コメント欄が賑わいだす。配信方法は前回とほぼ一緒で、向こうの枠に俺がゲスト参加する形だ。画面にはちょっと吊り上がり気味の大きな瞳、薄桃色のツインテール。小柄な身体に華々しい袴をしっかりと纏った2Dキャラクター、Vtuber大島キリが映し出されている。ちなみに背景は火山っぽいイラストになってて、周囲の溶岩溜まりからサムズアップした腕が突き出ているのが分かる。ハイ、僕ですね。

 

コメント

    :それでいいのかww

    :あんだけ変態プレイ魅せてオチがあれじゃしゃーなし

    :溶岩遊泳野郎はどうしたら燃やせますか?

    :追い打ちかけようとしてるリスナー居て草

    :キリちゃん辛辣ゥ

 

 毎度のごとくコメントの反応を窺うと、予想以上に好意的なチャットが多かった。よしよし、これは狙い通りと言っていいだろう。大島さんとのコラボで常に警戒すべきは向こうのガチファンな訳だが、そういう人にも受け入れてもらえるような関係性と建前。要するにブランディングを、SNSを通じて今日まで密にしてきたのだ。

 

 前回コラボや俺と大島さんのSNSを見ていた人に、たぶん俺たちは"マ〇クラG・I専用ケンカ友達"と映っているはずだ。そもそもG・IMODは、視聴者側の需要が非常に高いコンテンツである。原作が大人気だからね。しかも配信やら投稿の総数がめちゃくちゃ少ないからさらにそれを助長してる。なら何故動画が増えないのか? ムズ過ぎるからである!

 

 それでも俺と大島さんは互いにガチ勢を自称するほどやり込んでおり、配信頻度もG・Iに限れば上位に入る。Vtuberの中ではこの二人だけ、と言っても過言じゃない。

 

 つまり、ライバーとG・Iコラボしたきゃこの二人でするしかない、という大義名分が成り立つのだ。だから、大島さんのガチ恋勢も声高にコラボを批判したりしない。『暁ヒビキ以外のライバーとコラボすればいいのに』が使えないのだ。その上こっち側に大島さんと不必要に接近する意図が無いし、向こうもこちらの要望に応じてツンツンしてくれる。叩かれる要素は出来るだけ潰しているのだ。

 

 コラボ相手に尖った態度をとるってのはアイドル路線のライバーにとっちゃ諸刃の剣みたいなものなのに、大島さんは快諾してノってくれていた。ありがてぇね……ありがてぇけど迫真過ぎません? もうちょっと柔らかくていいんスよパイセン!

 

 まぁそういう入念な下準備が功を奏したってことだ。G・IMODコラボに限定すれば、今後あまり肩肘張る必要もないだろう。リスナーも忖度抜きに、きっちり決着つけるとこが見たいってコメントも多いしな。いや前回の結末を忖度だと思ってる人間は居ないだろうけど。

 

『さて! スペルバトルよスペルバトル! タイトルにもしてるんだから、ホンットに頼むわよ?』

「もちろんッス! 自分も全力で呪文合戦したいんで! 精一杯頑張るッス!!」

 

コメント

    :今回はこういうノリなの?w

    :前のショボ死引きずってるだけでしょ

    :キリちゃんの舎弟……アリですね!

    :ヒビキそこ代われ ¥2000

 

『しずくのみんなは知ってるかな? このゲーム、今朝大型アップデートしたばかりなのっ。配信を見てくれてたらMODの仕様とか分かってくると思うんだけど、結構色んなところが変わってるんだよ! だから、対戦を始める前にその辺をコイツに解説してもらうねっ』

 

コメント

    :この流れでコイツは笑うww

    :コラボ相手に顎で使われるライバーが居るらしい

    :羨ましい……

 

    :ドMニキ!?

    :可愛い声で辛口なのがなんかイイのは分かるw

    :ワイトもそう思います

 

 そういや大島さんのファンネームは"しずく"だったな。うちの"ライバー"と違って分かりやすくていいですね! 事務所のサクラフィは文字通り桜の木をモチーフにしてるらく、所属ライバーの名前も桜の種類から来てる。大島さんの場合、大島桜に朝霧桜って話だ。朝霧が立つと自然と水の雫が現れるからっつーことで、ファンネームは"しずく"だそうな。

 

 まぁそれはともかく、アプデ内容の説明だ。

 

「では不肖ながら、このヒビキめが。まずはリスポーン(蘇生)について! 死んでも最後にリスポーン地点に登録した場所から蘇生できるようになったよ! デスペナあるけどね!!」

『これでグッと楽にプレイできるわっ!』

 

コメント

    :ヒビユラ放送で言ってたね

    :これは配信とか動画投稿の敷居下がったよな

    :デスペナってなに?

 

 VS放送局って、もうファンの間では"ヒビユラ放送"なんて呼ばれてんのか……。この辺はボスの期待通りなんだろうか?

 

「言葉の意味は分かるよね? デスペナルティ、死んだときの罰則ね。まず、バニラだと持ち物全部死亡地点にばら撒くじゃん? G・IMODの場合、基本的にそれが無いっす。所持品は持ったまま蘇生できる。ただ……手持ちの呪文(スペル)カードをランダムに半分、死んだ場所に落としちゃいます」

 

『そもそもこのMOD、ドロップアイテムはしばらく経つとゲイン(アイテム化)してカード収集的な意味が無くなっちゃうから、ばら撒いた時点でほぼ終わりなのよね』

 

コメント

    :結構重いね

    :今までのハードコアに比べればまぁ

    :ゲインまでの時間がバニラでアイテム消えるまでのリミットより短いけど、ワンチャン回収は出来るかな?

 

「んで、デスペナについてはこっちが本題なんだけど……バインダー、つまりインベントリのカードがランダムで一枚破壊されます! しかも対象は確率的に指定ポケットが80%、フリーポケットが20%! 死んだら8割の確率でクリアから一歩遠のく訳ですな……」

『このペナルティを避けられないように、クリア条件のカードは入手した瞬間、自動的に指定ポケットに入るらしいのよねー。しかも取り出せない……!』

 

コメント

    :きっつw

    :良くできてるなぁ

    :どういうこと?

 

    :最初は割られるカードが無いから死んでも大丈夫。後半になってカードが充実してくほどペナが重くなる

    :ゲーム進めるにつれて命の価値が高くなってくのねw

    :それ考えると入手難度低いカードから順に取るのが安定しそうね。確かによくできとる

 

「しずくさんたちも詳しそうっすね! しかもこれ、手持ちの指定ポケットカードが死亡によって割れた場合、他のプレイヤーにアナウンス行くんですよ! さらにそのカードを手に入れた座標も公開、んでもってイベントフラグもリセット! どういうことか、分かるね……?」

 

コメント

    :イベントやり直せるってこと?

    :それもあるだろうけど、死んだら他のプレイヤーに指定ポケットカード取られる可能性があるってことでしょw

    :イベントフラグ復活は詰み防止に良いかもだけど、座標公開はヤバいな

    :死ななきゃok

    :それはそう

 

 大島さんが相槌を打ってくれたり、リスナーが反応してくれるのにリアクションを取りつつ追加要素をどんどん紹介していく。マサドラが探しやすくなったとか、指定ポケットの引き直し(マリガン)が出来るとか。

 

 さすがに全部を細々と解説してると時間ないなるので、要所だけべらべら喋りながら俺と大島さんはマ〇クラの世界へ降り立った。

 


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